たくさんの感想、評価ありがとうございます!
誤字報告もありがとうございます!すごく嬉しいです!
今回の話、会話多めです。
話は変わりますが………
書籍六巻を読み返しました。
セバスの言うことが真実なら、ゼロ≧絶死絶命になる。
流石はゼロさん。六腕最強にふさわしい実力だぁ。
何を質問されるのだろうか、と絶死絶命は思ったが直ぐに自分がすべきことを思い出し、そちらの思考を優先させる。
すべきことは当然、法国を守ること。
(せめて自分がやらかしたことくらいは自分で事後処理しないといけない。………けどどうすれば良いのかしらこれ。詰んでない?誰か時間巻き戻してくれないかしらホントに。)
意気込みは立派だが、残念なことに絶死絶命には素晴らしい案が思いつかなかった。
「どこの国生まれだ?」
絶死絶命が情けない思考放棄をしている間に早速相手が質問してきた。
(随分と常識的な問いね。化け物とは思えないわ。今更常識人らしく振る舞っても遅いわよ。)
と、彼の愚痴はここまでにしてこの質問に対して嘘をつくか正直に答えるか考える。
が、直ぐに答えはでる。
「スレイン法国出身よ。」
自分が嘘をついて後で法国の秘匿された存在だと知られたほうが法国に悪影響を与えると考え、素直に答える。
(それに正直に質問に答えないのは勝者の権利を侵害しているから、答えて良さそうなのは正直に答えるべきね。)
あの戦いで勝者が得られる権利は、勝者が常識の範囲内で敗者を好きにしても良いというものだ。それを敗者である自分が侵害するのはまずいだろう。
(流石にこの答えだけで法国を悪くは思わないわよね。………そうであってほしいわ。―――次も答えられる質問が、いえずっと答えられる質問が来てほしいわ……。)
「………なるほど。法国出身か。では、次の質問。見たところ君は冒険者ではないようだが、どうやって生活していたのかな?まぁ簡単に言えば―――就いている仕事は?」
死んだ。
(いや生きるわよなんとしても!―――どう誤魔化すか。……これだわ!)
危機的状況だから何なのか知らないが急に頭が回るようになった絶死絶命は思いついたことを直ぐに話す。
「法国を守る兵として働いていたわ。今は武者修行をしているけど。」
「……そうか。色々疑問が残る答えだが今はいい。次の質問だ。あの装備はどこで手に入れた?」
「手に入れた方法は良くは分からないわ。私の血族から代々受け継がれてきた物としか言えないわ。」
嘘は言っていない。神の血を引いている者達(正確にはその中でも血を覚醒させた者達)が装備しているというのは事実なのだから。
「そうか、では次。生贄とは何だ?答えてくれるんだろう?」
(あー………言ったわねそんなこと。誰か取り消してくれないかしら。)
どう答えるべきか、絶死絶命は迷う。正直に答えた場合、どこで自分の正体を知ったと質問されるだろう。正直に答えなかった場合、やり過ごせるかもしれないが失敗した場合の危険度は正直に答える場合よりは遥かに高いと思われる。この化け物相手にはどちらの方が良いのだろうか。
「…………。」
「どうした?はやく答えてほしいんだが。時間があまりなくてね。」
(時間がない?いえ、今はそれよりもどうするか。といっても―――覚悟、決めるしかないわね。自分の命だけで許してもらえるか?目の前の存在に。)
自分が死ぬというのは法国とって非常にでかい損害だ。本来であれば法国は何一つ失わずに彼を招く予定だったのだから。
しかしながら最適な行動は思い浮かばない。やるしかないだろう。
ふぅ、と深呼吸をし覚悟を決め、アインズ・ウール・ゴウンを見つめる。相手がそれに驚いたのか少し警戒するような仕草をとったが、絶死絶命はそれに構わず話し始める。
「………質問には答えるわ。ただその前に少し説明させて。実は―――」
そうして絶死絶命は自分のことについて話せることは全て話した。当然ながら法国の情報は話していない。もしアインズ・ウール・ゴウンと敵対することになった場合、法国を不利にするわけにはいかないからだ。
「―――というわけで、あなたの正体を知っていたから生贄なんて言ったわ。それで………私の命一つで勘弁してくれないかしら。お願い、私の独断専行なの!法国は悪くないんです!」
そう言いながら、絶死絶命は人生においてここまで悲痛な声を出したことがあっただろうかと思う。
(もしかしたら、幼いころ有ったかもしれないわね……。どうだったかし―――いや、今は過去について考えている場合ではないわ。)
相手の反応を待つ。最早自分にできることはない。後できることは、彼が法国に敵対すると分かった瞬間に、少しでも傷を与えることだけだ。
少しして相手が口を開いた。
「……………確認したい。君はスレイン法国の使者とやらではない。法国は私を排除する意思はない。――で良いんだな。」
「はい!そのとおりです!」
「そうか。―――では、今回の件については君と私個人の間だけのことにしよう。」
「ぁ―――良かった………。」
本当に良かった。絶死絶命は心の底からそう思う。
全身から力が抜ける。背もたれに寄りかかり「あー」と疲れ切った人が出すような声を出す。
「ど、どうしたのかね?」
「いやなんか………死ぬわけにはいかないんだけど、死んでもいいというかなんというか………そんな感じよ。」
「そ、そうか。……質問の続きをしても?」
「ええどうぞ。」
自分の中に負の感情は一切ない。今なら何でも素直に答えられる気がすると思った絶死絶命は、笑顔で質問を待つ。
「了解した。では、何でそんなに強い?お前は王国戦士長よりも遥かに強い。どこでその強さを?」
絶死絶命は顔を顰める。質問内容によってクソエルフを思い出したからだ。
(まぁ、あいつに対しての感情は―――いえ、それよりも今は質問に答えるべきね。)
「それについては、神の血が流れているからね。」
「神の血?」
「ええ。神の血っていうのは―――」
自身の強さの秘訣についての質問の後も何回か質問があり、その全てに正直に答えた。そうして、質問攻めは終わった。
「よし。質問は終わりだな。答えてくれてありがとう。」
「あ、待って。いくつか聞きたいことがあるんだけど。」
「ん?何だ?」
「えっとまず………何で許してくれたの?法国の件。私、貴方を殺しかけたんだけど………。」
許してくれたのは素直に嬉しいが、彼は何故許したかを話していなかった。自分としては、許した理由を知りたい。
どんな答えが返ってくるのか絶死絶命は耳を傾ける。返ってきた答えは絶死絶命には予想できないものだった。
「ああ、まぁなんて言えばいいのか………。恩返しというか、私に人の強かさを教えてくれた者ヘの感謝を、な。私もあのように在りたいと強く思ったよ。」
(恩返し?誰への?)
彼は「まだまだ返せた気はしないがね」と言っているが絶死絶命にとって重要なのはそこではない。
その人物は絶死絶命にとっては救世主にも等しい。なんとしても名前を知りたい。
そんな思いが口に出て、「その人は誰?」と質問した。
すると彼は答えた。
―――陽光聖典隊長、ニグン・グリッド・ルーインだと。
絶死絶命は思った。彼は救世主だと。
(帰ったら神官長に相談して祀れないか聞いてみるか……。)
「質問は以上かな?」
「あ、いえあと四つだけ……」
「結構多いな。まぁいい。それで次の質問は?」
絶死絶命はぶるりとする。今でもあのことを思い出すと鳥肌が立つ。が、先程の彼の答えと彼の行動はかけ離れており、質問せずにはいられない。
絶死絶命は深呼吸をし質問する。
「私を、アンデッドでぐちゃぐちゃにした件なんだけど―――「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ゛!!」ってどうしたの!?」
急に奇声を上げるものだからびっくりしてしまう。
絶死絶命が驚いていると突然、彼が片手を前に突き出していった。
「責任とります。」
(なんの?)
「なんの?」
「いやその、精神………病んじゃったっていうか」
「………あー………」
どうやら相手は少し勘違いをしているらしい。
「確かに今でも少しこわいけど、まぁ病んじゃうほどじゃないから気にしないで。私が聞きたいのは―――」
彼に質問したかったことをする。そうすると答えが返ってきた。
その答えを聞いた絶死絶命は引きつった笑みを浮かべながら思う。
(なに!?あれが普通、いや控えめだったの神って!!ヤバすぎるでしょ!どんなリンチが行われているのよ神の世界……。神達による一方的な攻撃とか?私はそれの簡易版みたいなのをされたのね……。)
どうやら自分が他の存在とは強さの桁が違うことからあのような方法をとったらしい。
(そうなると私も少し悪い……わよね……。うん。まぁいいわ。これについては考えるのは止めよう。)
「そ、それで次の質問は?」
「え、ええ。次は私の大切なものも酷い目にあわせるとかいう。」
「ああ、あれか。お前の切り札が何なのか見せてもらうために、精神的に追い詰めるために言った。心身共に追い詰められたら使ってくれると思ってな。当然酷いことはするつもりはない。」
(そういうことだったのね………。なら私は彼の罠に嵌まったことになるわね。いえ、そもそもあの戦い自体、ずっと彼が優勢だったんだわ……。)
思い返せば自分は彼に大したダメージを与えていなかった。それでも魔力を切らせれば勝てる、格上に勝てるという考えと感情の昂りが自分の判断力を低下させた。
(あの戦いで学んだことは多い。それを成長に活かせばもっと強くなれる。)
「それで、次の質問は?」
どうやら考えすぎていたらしい。絶死絶命は次の問いを彼に投げかけようとして―――
(少し、恥ずかしいわね………。)
とはいえ質問しないわけにはいかない。絶死絶命は羞恥心を振り切って質問する。
「武器や鎧は何処に………それと、私の服は誰が着せてくれたの………?」
「ああ、鎧、武器なら君の持ってた
「………いえ、なんでも。」
自分も年頃の乙女なのだから、もう少し気を使った返事がほしかった。意識してた自分が馬鹿みたいだ。
「……最後の質問。私はこれからどうなるの?」
声に多少の不機嫌さが滲み出てしまった。自分もまだまだ若い。
が、目の前の彼は大して気にした様子もなく話し始めた。
「ああそれなんだが、先程時間があまりないといっただろう。実は君を倒したあと客人を屋敷に招いてね。別の部屋でその客人と会話をしてもらいたい。それが終わったら、もう一度私のところに来てくれ。場合によっては一つ、頼み事をするかもしれないからな。」
「了解。じゃあその部屋に案内してもらってもいいかしら?」
「ああ勿論。それと、これを。」
「これって……赤いポーション!?こんなに!?」
「ああ、それくらい有れば完全回復できる筈だ。遠慮せず使ってくれ。」
「あ、ありがとう……。」
(うわーこれ研究所が発狂する数ね。こんな数をさらっと渡せる彼、やっぱ六大神と同格なのね。)
「じゃあ移動するぞ。」
そう言われた直後、暗い所から一転、屋敷の廊下のような場所に転移する。目の前には装飾や彫られたような跡が一切ない素朴な扉がある。
準備はいいか、という真面目くさったような彼の声に思わず肯定の意を返す。すると彼は扉を軽く叩き、
「アガネイア殿。彼女を部屋に入れてもよろしいか?」
と言った。
(アガネイア?知らない名前ね。なんで私と話したいのかしら。)
知人の名前にアガネイアはなかった。そのことが、絶死絶命を少し警戒させる。
少しして、「問題ない。どうぞ。」と扉の向こうから返事があった。
「では、私は別の場所に行く。屋敷から出ないので彼との話が終わったら、屋敷内にいるモンスターに私のいる場所までに案内してもらってくれ。ではな。」
そう言って絶死絶命が返事をするよりも速く、彼は転移魔法でどっかに行ってしまった。
(ええ……もう少し色々説明してほしかったわ。こんなことなら準備はいいか言われたとき、もう少し説明してって言えばよかった。……ま、過去のことは考えても仕方ない。行きましょう。)
そうして、絶死絶命は扉を開け、部屋の中に入って行った。
◇
「くぅ〜疲れましたw…………いやホントに疲れた。」
情報量が多く、今すぐ休みたくなる。が、休んだらせっかく手に入れた貴重な情報を僅かでも忘れてしまう可能性があるので、ここで休むわけにはいかない。今はアガネイアとヘランが話している最中だ。今ほど整理する時間が取れるタイミングもないだろう。
アガネイアについては情報が少ないのでまだ考えないことにする。
(先ずは、タレントについてだな。)
正直タレントをナメていた。が、The goal of all life is deathの件で、タレントに対する認識は改めざるを得ない。
(タレントはレベル差など関係なしにプレイヤーを一撃死させることすらできる超危険な能力だ。これからは使える情報網は全て使って、タレントについての情報を集めた方が良いな。ドラウディロンにもタレントについて聞いてみるか。)
アインズはメモ帳にタレントの情報収集と書いておく。
(次に、神人についてだな。)
彼女が言うには、プレイヤーの血が流れている者はこの世界ではありえないような強さになるらしい。とは言っても、血が流れている者全員が強くなれるわけではないらしく、覚醒する必要があるそうだ。
(覚醒は彼女の話からすると才能みたいなものか?儀式でできるなら覚醒させたほうがいいだろうし。もう少し情報を得る必要があるな。後は神人の強さ。プレイヤーを殺せるほど強く―――いや待て。ヘランは「自分自身は少々特殊だから他の神人は私より強くない」と言っていた。となると、神人のレベルは……ヘランの強さを考慮すると七十後半くらいだろうか。やはり危険だな。………ヘランが自身と他の神人の強さが比較できていた。そのことから、彼女の近くにも神人がいる可能性は高いな。スレイン法国に招かれたときに会えれば強さを確かめたい。)
今のところ神人については、タレントよりは不確定要素の少ないプレイヤーを殺せる存在と定義しておき、スレイン法国に招かれてから改めて情報を整理することにする。
(後は……『ユグドラシル』産の武器かぁ。これまでのプレイヤーの転移情報から考える限り、ほぼ全て回収されているだろうし、見つからないとは思うけど一応情報は集めておくか。)
これについては優先順位は低めでいいだろう。それよりも考えるべきことは―――
(『ユグドラシル』の技術だ。どの程度発達しているかによって脅威度がまるで違う。少なくともスレイン法国は少しは発達しているっぽいな。ハンゾウ辺りに情報収集してもらうか?いや、アガネイアのような存在がいたら危険だ。表で調査したほうがいい。となると冒険者としての地位を使うのが一番だろうな。やっぱ安定した取得先が見つかるまで、マジックアイテムは節約したほうがいいか。――ん?俺こんな警戒心高かったか?)
アインズは自分の警戒心が非常に高まっていることに疑問を抱く。そんな疑問に対する答えは直ぐに出た。
(アガネイアがいるからだろうな。正直彼についてはまだ何も分かっていない。それに対して自分は能力の一端を知られている。そのことが警戒心を高めているな。)
そう思いながらアインズは廊下を歩いていく。行き先は決まっている。そこに最後の悩みの種がある。
やがてアインズは玄関を出て―――
「しッ!しッ!しッ!」
「お水に果物、どちらも美味しいでござるな!」
生贄のもとに辿り着いた。
(こいつら、マジでどーしよ………。)
◇
「貴方、エ・ランテル近郊にいた………」
「ああ、あのとき目があった者だ。それと、扉の前に立ってないで座ったらどうだね。自分だけ座っているというのはなんだか居心地が悪い。」
「あ、そうね。ごめんなさい。少し驚いて固まっちゃったわ。………じゃあ失礼します。」
「何か飲み物はいるかい?」
「えっとじゃあ水でも………。」
「了解した。では水を持ってきてくれないかい?」
「……えっと、あのモンスターは?」
「アインズ・ウール・ゴウンが召喚したモンスターだそうだ。私も初めて見た時は驚いたよ。―――と自己紹介がまだだったね。」
「あ、そうね。私の名前はヘラン。貴方は?」
「ああ。私の名前はリク・アガネイア。いや、君にはこう名乗ったほうが良いかもね。―――