ロボトミ。   作:epitaph

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書きたいから書いたの!
仕方ないよね!


ロボトミ。

ふーんふふーん

やぁ!私はkだ!僭越ながらもあのL社にて支部を任される管理人さ!

この動画を見てL社を知らないなんてないと思うけれど、すごい簡単に説明しておこう!

"恐怖に立ち向かい、未来を作る"そんなモットーを掲げた我が社はこの都市で使用される電力の多くを供給するエネルギー企業なんだ!クリーンアンドエコロジー!特にはW社、R社なんかとも提携を結ぶすごい会社さ!

早速だけどまずみんなが気にしている雇用条件を説明しよう!

大企業だからこそのしっかりとした福利厚生に社員全員に提供される”巣”内の住居!家族がいるならそれにみ合った住居が提供されるよ!そしてなんといっても贅沢が許されるほどの給与にボーナス!休日はちゃんとあるし、有給休暇だって保証されてるからそこらの弱小会社とはわけが違う!キャリアアップのサポートだってバッチリさ!向上心が豊かなら社内で開催される勉強会にも参加しよう!

貢献できるか不安だって?大丈夫!皆最初はそうさ!適性に合った部署に配属されるから心配なんていらないよ!頼りになる先輩達がしっかりと面倒をみてくれるからね!

次は労働環境についてだ!

やりがいのある仕事に重くも心地よい責任!何より頼れる仲間達と職務へ邁進できる環境ときたら!おまけにクールな秘書までいるんだぜ!?最も秘書は管理人の特権だけどね!期待させてゴメンね!

僕らの働きぶりが都市を支えているだなんて思うとすごいやりがいを感じるよ!

さあ!あまり長ったらしい説明も嫌だよね!?

今日はそんな素晴らしい我が社に於ける1日の業務を紹介しようと思う!これは特別なことなんだぜ!?就職を控えたみんなのために無理を通して用意したんだ!最近は何だかんだと厳しいからね!

もし君達がこれをみて共に働きたいと思ってくれればとっても嬉しい!我が社は何時だって若い力を求めているんだ!これは建前なんかじゃないよ!?もしいいなと思ってくれたのなら是非!エントリーして欲しい!僕らは君達と一緒に働ける時を待っている!

じゃ!紹介動画に移ろうか!君達が自分の未来を決める一助になることを祈ってるよ!

ーーーーーーーーーーーーーーーーL社第3支部のよる企業説明会で放送された動画より

 

 

「あ”あ”あ”あ”あ”!くそっ!くそっ!くそっ!」

『管理人!2区の収容が完了しました!次の指示を!』

「最低限のエージェントを残して3区に移動しろ!選別は任せる!収容違反だ!クラスはHE!精神汚染に強い奴を連れてけ!」

『っ!了解しました!...大丈夫でしょうか!?』

「行け!到着したら連絡しろ!指示を出す!易々とは死なせん!急げ!」

『!っはい!』

 

書類が散らばり、けたたましいサイレンと鳴り止まない通信機の通知音が響き渡る一室で、一人の男が頭を掻き毟りながら各所へと矢継ぎ早に指示を飛ばしている。指先は独立した器官のようにキーボードの上を目まぐるしく動き、目はギョロギョロと目の前のモニター群から離れることはない。壁一面に備え付けられた多数のモニターは警告灯に赤く瞬きながら施設内部と思われる画像を写している。キャリアーに積んだ書類を運ぶ者。機械を抱えてメインルームに飛び込む者達。サブルームの隔壁を操作する者、武器を片手に昇降機のボタンを連打する者に、そしてそう、口で言い表せぬ異形の存在と戦う者達。まるでパニックホラーのような光景をだ。

 

「第5支部のクソどもがっ!何がクラスZAYINだ!何が安全だ!黒の兵隊なんか寄越しやがって!半壊規模の被害が出たからと手を伸ばしてやればこれか!」

『管理人!5区に収容違反発生!次元屈折変異体とホームアラウンドヘルパー!』

「人的被害はっ!?...よしっ!負傷者を4区のメインルームまで下げろ!隔壁を動かす!オフィサーを走らせろ!物理防御を固めたエージェント2人でヘルパーをサブルームに隔離!残りは4区からの増援を待って精神、複合持ちを主軸に変異体を鎮圧しろ!それまでは牽制!6区には行かせるな!絶対にだ!」

『了解です!』

『管理人!3区に到着しました!指示を!』『管理人!』『管理人!』『管理人!』...

「あ”あ”あ”あ”あ”!!クソが!!」

 

”Lobotomy Corporation"

通称L社と呼ばれるその企業は近年”翼”の一翼に列された新規新鋭の大企業である。

業種はエネルギー産業、環境に負荷を与えず莫大な電力を提供しますの謳い文句に違わず、どのような日にも安定した電力を都市へと供給し続けることから評価は極めて高い。公表される業績は右肩上がりで社員待遇も素晴らしく、大勢の入社希望者を採用しながら事業を急拡大する姿勢はまさしく新時代の巨人だ。

だからこそ識者達は想像する。L社が所有する”特異点”がどのようなものかを。無尽蔵に湧き出すエネルギー、その源泉を。

 

「あ”ー、管理人より全職員へ。現時点をもって非常事態レベルを0と判断する。負傷者は多いが死者はない、みな良くやった。負傷者は医師の判断で業務へ戻れ。また、就労時間中だが全職員に45分後の15時時点から30分間の有給休憩を許可。5、6区の担当エージェント達はすまない、それぞれ交互にとってくれ。順番はチームリーダー間で決めろ。昼休憩が取れなかったことを踏まえ終業時刻を一時間繰り上げる。最後に、みな良くやった。以上、終わる...」

 

がらがらと掠れに掠れた声で最後の通達をすればどさりと、精根尽き果てたかのように椅子へと倒れ込む。朝には整えられていた髪型は乱れに乱れ、常には強い力の宿った瞳は空中を虚ろと眺めている。

口も呆と開けたままの姿は就労時間にも関わらず如何なものと顔をしかめるものだが、部屋には男一人しか居ないため指摘する者はいなかった。

 

死者のようにぴくりとも動かないままにきっかり100秒、蘇るように弛んだ顔が締まり瞳に明かりを取り戻すとガリガリと頭を掻きながらキーボードに手を伸ばす。いくつかの操作を行いサブモニターに映しだされたのはビデオチャットアプリで、目的の登録名をポイポイとグループ枠に放り込む。そのままコールをかけて何度目かの送信音の後、モニターに6つの顔が表示された。

 

「おう、お疲れさん」

各々から返される労いの声が止めば早々と本題を話す。

「先日行ったアブノーマリティ達の収容区画整理から8日。そっから初めての大規模収容違反が今日あったわけだが、その感想を聞きたい。どうだった?まず1区から」

『はい!第1区チームリーダーのライリが報告します!設備、職員共に損害は軽微。教育チームとして低ランクエージェントを多く抱えた....』

1区から5区までのチームリーダー達から挙がる報告を聞く限り好感触。エージェントのランクとアブノーマリティの脅威度に対応した区画分けによって遊兵がでず対応力を維持しやすかったという。

まあまあかと頷いて聞いていれば報告も最後になる。

6区、当支部においてクラスWAWを最も多く収容し、最高ランクのエージェント達によって管理される地獄。それを率いるリーダーから。

『第6区チームリーダー、チャーリーから報告する、前に。なんだあれは。管理人。』

 

言外にでも伝わってくるのは今日の朝に新規収容されたアブノーマリティ”ピンクの兵隊”のことだ。

先月に大規模収容違反を起こして半壊した第5支部への救援として、一部アブノーマリティの移管を承諾していた。そうして運び込まれた3体の内の1体で、具体的に何を移管するかも事前には説明されず、移管当日に書類が届くという対応のまずさ。

立ち会いとして各区チームリーダーが搬送庫に揃う中、やっと届いた書類を管理人室で捲る管理人。

書類の遅さに機嫌を損ねつつも最初は平常だった。

1枚、2枚と捲り、ああこいつらかと3枚目に目が通された瞬間。

即座に出された指示は各チームリーダーの早急な現場復帰、説明は後だとアブノーマリティの緊急収容。特に第3収容物には注意しろと殴るように言い切る。そして精鋭の揃う5,6区のエージェントから半数抽出し各区に再配置を行った。

職員達が突然のそれに不安を覚え、それでも収容が無事完了され、いざ開封処理が行われたときそれは起こった。

各区画の通路に、サブルームに、昇降機の中に突如発生した黒炎。その中から現れた、収容されたばかりのアブノーマリティ。黒いハートの中に浮かんだ兵隊達は敬礼をすると共に黒炎を撒き散らしながら進行を始めた。

悲鳴と怒声。各所のスピーカーから流れる初期警告音[ファーストトランペット]

管理人は即座に指示を出した。各区チームリーダー達にはマニュアルに沿った行動を、再配置されたエージェント達には出現したアブノーマリティの鎮圧を。

通路を嘗める黒炎、呼応するように収容違反を起こすアブノーマリティ達、対応に走るエージェントにフィクサー、指示を出し、設備を動かす管理人、実に6時間もの激闘。

 

「あれは人の感情に影響される。嫌悪、愛着、どちらにもだ。そうして得た感情が閾値を越えればああやって暴走する。感情の蓄積量の大まかな....」

皆に説明するのは書類にもかかれていなかった情報。恐らくまだ、俺だけが知る。

「......で多分第5支部の奴らはあれに頼ったんだろう。頼めば助けてはくれるからな。だが不穏さは感じ取っていた。だからこっちに送った。向こうで散々感情を詰め込まれて、それがこっちで爆発した。そんなところだろう。最初から真っ黒だったしな」

今後あれを管理する4区のリーダーへは後で取説を送ると話を締め、チャーリーの報告を促す。

新しい管理体制への賛否。結果は全員一致で賛成となった。

 

 

ならばよしと頷く管理人に向けられる畏怖、敬意、安堵、他にも様々な感情を宿したいくつもの目。

管理人を除いたこの場の誰もが知っている。この支部の異常さを。仮にも区画の責任者を任される者達だ。才能があり職務への意欲も高い。他支部との情報共有も盛んに行っていた。

 

『取り敢えず次の支部間会議でこの件は打ち上げる。んで第5支部のクソを締め上げる。復旧に忙しかったんだろうが移管物管理書類を後回しにするとか信じらんねぇ』

 

犠牲者を前提にした管理方法、収容失敗によって貯まらない管理情報、職員を生け贄にして抽出されるエネルギー。そんなのが当たり前なのだ、他の支部では。

 

『ただお前らには朗報もある。アブノーマリティのやつら、散々暴れて満足したのか大量のエネルギーを吐き出しやがった。日産要求量の実に2400%超だと。笑えるわ。ボーナスに期待しときな』

 

誰も死なず、数日で纏められる管理書類、アブノーマリティの取扱書。毎日のように規定値を越えて生産されるエネルギー。

 

『話が脇道に逸れたな。では今後も新体制を継続とする。よし、会議おわーり!時間になったらちゃんと休めよ!』

 

一方的な通達と共にぶつんっとモニターが途切れた。なんとも忙しない。どうせ自分は休まずに今日の経緯報告書を作成するのだろうに他人へは休めとは。

 

「お疲れ様です、チャーリーさん。やー、今日のはすごかったですね」

「リーダーと呼べリーダーと。後半には同意するがな」

「おっとすみませんリーダー。5区のマリエルさんが来ています。恐らく休憩についてでしょうか」

「だろうな、わかった。お前は持ち場に戻れ」

 

顔を覗く死を意識する毎日、輝くような生を実感する日常、頼れる上司に裏切りを怖れず協力できる同僚達。

なんとまぁ、楽しくて素晴らしい仕事場だろうか。

 

 

 

静かな一室だ。整頓された書類は几帳面に机の上に並べられ、手元にあったキーボードは引き出しへ。壁一面を覆うモニター群はスタンバイ状態に移行して何も映さず、明かりの点いた電灯も一つだけで薄暗い。

 

キンキンと金属音がなる。男が手元で玩ぶライターは漸くといった呈で口元の煙草に火をつけた。

 

『社内は禁煙だったと記憶していますが』

唐突に声が聞こえた。椅子に座ったまま横に顔を向ければいつの間にかすぐ隣に女性が立っている。

もうそんな時間かとぼんやりと。口から煙を溢しながら。

男の様子には無関心に言葉は続く。

『本日の業務、ご苦労様でした。報告書はすでに受領しています。あなたが社にもたらす

利益はいつも素晴らしい。他の支部では.....』

言葉が続く。無機質な、代わり映えのない一方的なもの。

私からは以上です、あなたからは何かありますかと付け加えられるのは好成績を出し続ける者へのご褒美か。

本社へある程度の要求が認められると教えられても返す言葉もまたいつもと変わらない。

「アンジェラ、私は...君の助けになれているかい。深い地獄の底に居る君の」

『......』

 

じぃっと、こちらを覗く瞳を見つめ返す。

何かを見つけるように、何かを探すように。

 

そうして無言のままに暫く、彼女は現れた時の様に唐突に姿を消した。

残り香もなく、初めから居なかったかの様に。

 

「なんなんだろうねぇ、この感情は」

 

紫煙だけが言葉と共に宙に解けた。

 

 

 




何を書きたいのか、何を伝えたいのか、何を表現したかったのか
読み返して見ると分かる文章の繋がりがね...
まあいいでしょと後悔せずに公開する勇気はあるから大丈夫!
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