やはり筋肉。筋肉は全てを解決する。   作:あかう

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 くそ!筋肉が!筋肉が足りない!
 推理パートのせいで筋肉が入り込む隙がない!
 バッサリカットしてもいいが流石にそれはキツい…
 くっ……申し訳ない!皆耐えてくれ!




15話 筋肉は推理もできる。

 さて、そんなわけで前回、ベル君が筋肉によって死亡者の身元をガネーシャ・ファミリアのハシャーナだと特定した。

 ロキ・ファミリアの幹部館は“ベル君がそう言うなら“と納得した。

 だが、まだ筋肉に染まっていない者達が“それだけでは証拠として不十分だ“と喚いた。

 その威勢とは裏腹にその顔は青く、体は震えている。

 ガネーシャ・ファミリアのハシャーナといえばLv4の第二級冒険者だ。

 それがこうも易々と殺されていることを、つまりローブの女が自分以上の強者だと言うことを認めたくなかったのだろう。

 どうしても確認する、と言うことで、開錠薬を使用してしっかり確認することになった。

 開錠薬の瓶を開け、中身を背中に垂らす。すると死人の背中に碑文を彷彿とさせる神々の文字、神聖文字が浮かび上がる。

 

「そうだった、神聖文字だ……読めねぇ……」

「馬鹿が! おい! 外に出て物知ってそうなエルフ呼んでこい!」

「私が……読める」

 

 と、アイズが名乗り出た。

 ボールスはまさか脳筋オブザ脳筋が神聖文字を読めるとは思わなかったのか、驚いた顔をし、道を開ける。

 アイズは神聖文字を覗き込み、解読を始める。 

 やがて、アイズはゆっくりと唇を開き、

 

「ハシャーナ・ドルリア……所属は……ガネーシャ・ファミリア」

『!!!』

「ほら、合ってました」

 

 どうやら本当にガネーシャ・ファミリアのハシャーナだったようだ。

 ベル君がちょっと喜んでいる。

 他はスルーしているがティオナはそんなベル君に拍手を送っている。

 気遣いができるとは素晴らしい。さっさと筋肉に染まれ。

 

「間違いじゃあ、ねぇんだよな?」

「そうじゃろうなぁ。先刻ベルも同じことを言っておったしのぅ」

「冗談じゃあねぇぞ……剛拳闘士(ハシャーナ)……第二級だぞ!」

 

 これで確定した。

 ローブの女はLv4以上。

 第一級冒険者に相当する殺人鬼が、この町に未だ潜伏している可能性があるのだ。

 

「馬鹿な!」「嘘だ!」「お、俺は逃げる!」「冗談じゃねぇ!」「死ぬぞオイ!」「肩にちっちゃい重機乗せたい!」「ヤバすぎる!」「まずいですよ!」「お、おい。もう帰ろうぜ」「俺、地上に帰れたら、結婚するんだ!」

 

 騒然となるヴィリーの宿。

 多くの冒険者達がパニックとなっている。

 

「アイズ、対異常は?」

「G。毒はない」

「ふぅむ……恐らく背後から、油断を突いて、とはいえ第二級の首を一撃、か」

 

 外がとんでもなくうるさいが、中の人達は冷静だ。

 まずガレスが毒を使用した線を潰す。

 

「……イシュタル・ファミリアの戦闘娼婦は?」

「いや、違ぇ。アイツらの吐き気のするような甘ったるい匂いが残ってねぇ」

 

 ティオナとベートが有り得そうな線を潰す。

 

「そうよ。流石にあからさますぎるじゃない」

 

 と、ティオネが反応をした時、

 

「そんなこと言って! 今街にきましたって顔しといて! お前らがやったんじゃ無いのか!?」

 

 と、とある冒険者が叫んだ。

 その声に、その場にいる冒険者達の視線が一行に突き刺さる。

 確かに目の前にいる第一級冒険者の群れは、第二級冒険者を殺すことができるのに十分な戦力だ。

 ティオナが「えぇ〜?」と微妙な表情をし、ティオネが怒りのこもった視線を向け、ベートが冒険者に掴みかかり、ガレスも神妙な雰囲気を纏った。

 ベル君とアイズはどこ吹く風だった。

 

「なるほど、お前らがやったとするなら先ず筋肉どもはねぇな。で……」

 

 速攻でガレス、ベート、ベルの三人を候補から外すボールス。

 ベートは叫んだ冒険者を床に埋めた。まだ優しい方だ。

 そして女性陣を見渡し、ティオナに視線を止めると、

 

「うん、お前は無いな」

 

 と、ティオナに対し言い放つ。

 つまるところ「お前のような貧相な体では誘惑などできん」と言うことだ。

 これはティオナに多大な精神的ダメージを与えた。

 

「ああ、無いな」

「全くだ」

「むぎぃいいいいいいいいいい!!!」

 

 両手を振り上げ、暴れようとするティオナを羽交締めにするアイズ。

 さぁ、筋肉になれ。筋肉になってナイスな体を手に入れよう。

 

 続けてアイズも無罪判定をもらった。

 理由は“そう言うことは絶対知らないから“だ。

 そして最後に、ティオネに向かい、

 

「……その体を使えば、男なんていくらでも誑し込めるだろうなぁ?」

 

 確かに今いるロキ・ファミリアの女性陣の中では、ダントツでいい体型をしているティオネ。

 事細かに描写するとちょっとアレなので書かないが、ボールスが言うように男などいくらでも誑しこめる体はしている。

 さらに彼女はアマゾネスだ。そういう技法も持っていて不思議ではない。

 だが、ここにいる冒険者達はとある重要な事項を忘れていた。

 

「あぁ?」

 

 目を見開き、正に鬼のような表情となったティオネ。

 その形相は角こそ生えて無いがまさに般若。

 何かを察したガレス達が耳を塞ぎ、ベル君もそれに倣った時、憤怒の炎を爆発させた。

 

「私の操は団長のもんだって言ってんだろ! テメェらなんざ知るか! ふざけたこと抜かしてっとその股ぐらにぶら下がってる汚ぇもん引きちぎっぞゴラァ!」

 

 と、おおよそ女性の言ってはいけない言葉と、女性がやってはいけない表情で怒鳴り散らかすティオネ。

 冒険者どもをぶっ飛ばさん、と踏み出した一歩が床を粉砕し、飛び出そうとするところをティオナに抑えられた。

 逆鱗に触れた冒険者達は例外なく内股になり距離をとる。

 誰だって息子は惜しいのだ。

 安心しろ、筋肉になれば失っても生えるぞ。

 まぁ、今のところベル君限定だが。

 

「まぁ、そう言うわけじゃ。ティオネは無い」

「お、おう。疑って悪かった」

 

 内股になり股間に両手を添え、なんとも情けない姿でこくこくと首を縦に振るボールス。

 

「ふぅ……もう一度現場検証をして構わんか?」

「ああ、もう好きにしろ」

 

 自身にはもはや手に負えないと判断したのか、大人しく引き下がるボールス。

 そして部屋の奥へと進んで行く筋肉達。

 部屋が確実に筋肉によって狭くなった。

 

「ふぅむ、どうじゃ、ベルよ。何かわかることはあるか?」

 

 筋肉の、つまり人体のスペシャリストであるベル君に尋ねるガレス。

 その判断は非常に正しい。

 実際ベル君は整体の心得とかも持っている。

 

「はい、そうですね……先ず死因は首が折られたことでしょう。この頭部の破裂の仕方ならこうは折れることは有り得ませんから」

「え? じゃあなんでこんなことになってるの? 頭潰す必要なんてなかったんじゃない?」

「それはですね、第一に身元の特定をやり辛くすること、第二に苛ついていたことが挙げられます」

 

 と、推理を行っていくベル君。

 このベル君、実はフィンに匹敵する程に頭が良い。

 もはや“筋肉キャラ=頭が悪い“の時代は終わったのだ。

 

「苛ついてただぁ? 何でそんなことが分かる」

「そこに荒らされたバックパックがあるでしょう? あの荒らされ方は相当急いでいたか、苛立っていたかです。もし本当にLv 4以上ならばヴィリーさんが帰ってきても殺せますから、焦る必要なんてなかったですし、恐らく苛立ちが原因でしょう」

「ほう? 金目の物狙いかのぅ?」

「いえ、それにしてはマジックアイテムのようなものも見受けられますので、それが盗まれていないと言うことは何か他に盗むべきものがあったのでしょう。魔石が欲しかったのなら普通にモンスターを倒したほうが早いですし」

 

 本当に見事な推理を行っていくベル君。

 これにはボールスもびっくり。

 

「お前……脳筋じゃなかったんだな」

「脳筋ってどうやって鍛えるんですか?」

「スマンやっぱり脳筋だお前」

 

 そんな時。

 無言でバックパックの中身を漁っていたベートとティオネがあるものを見つけた。

 なんらかの紙だ。

 血に濡れ、碌に読むことも出来ないものだったが、かろうじて残っていた部分の紙質から、元が何であったかを特定する。

 

 

「……冒険者依頼の依頼書、か」

「汚いわねぇ……ほとんど読めないわよコレ」

 

 確かに殆ど読むことは出来ない。だが、それでも全く読めない訳ではなかった。

 何とか読める部分を抜き出していく。

 ところで、ティオネはいつの間に落ち着いたのだろうか。

 

「30階層、単独で、採取、内密に……」

 

 と、紡がれる言葉に一行の思考が膨らむ。

 アイズは何故か思考が片っ端から筋肉バトルの光景に置き換わっており、実質何も考えていなかった。完全に筋肉に汚染されていますね、コレは。

 皆さんも見習うように。

 

「なるほど、ハシャーナさんは依頼を受け、何かを採取しに30階層へ向かっていた、と。多分それが今回の事件の原因でしょうね。これだけバックパックが荒らされているのも、単純に見つからなかったのか、それとも行く途中でそもそも持っていなかったか……」

 

 と、代表するようにベル君が推論を述べる。

 筋肉が顎に手を当て、考えている姿は全くと言っていいほど似合わない。

 

「ふむ……おい、ボールス。ハシャーナの普段の装備に覚えはあるか?」

「いや、名前は有名だがここには滅多に来ねぇからな……おいヴィリー。なんか知ってるか?」

「あー……確か……前は兜を被ってたな。ガネーシャみたいなやつ。全身型鎧はしてなかった。確実にな」

「つまり、本当に内密にしてきた、と。恐らくこれではガネーシャ・ファミリアの団員にも知らせてませんね」

 

 これらは確定だろう。街の中でこれだけの騒ぎが起きているのに、派閥が動いていないということは、そういうことだ。

 

「……そうですね、ボールスさん。街を封鎖してくれますか?」

「あ? まだ街の中にいやがるってか? オレ様ならとっくにトンズラこいてるがなぁ」

「いえ、彼ほどの人物が極秘で受ける依頼、仮に犯人がそれを探していたとして、見つかっていないのならば手ぶらで帰れないでしょう。それにこちらにはベートさんがいます。逃げられさえしなければ確実に見つけられるでしょう」

 

 神妙な顔をして腕を組み、考えるボールス。

 

「……確かか?」

「確実ではありませんが、確信はあります」

「…………脳筋の言うことは信用ならねぇが、いいだろう。確率はあるだろうしな。おい! 北門と南門閉めろ! んでもって冒険者を一箇所に集めろ! 従わねぇなら取り押さえろ! 新しくきた奴らも説明だけして他のとこへ纏めとけ!」

「わ、わかった!」

 

 舎弟達が慌ただしく動き始める。 

 それを見ていた一行は、

 

「ベル……お前頭良かったんだな……」

「本当にねー。脳筋だと思ってたよー!」

「脳筋ってどうやって鍛えるんです?」

 

 リヴィラの街は、筋肉に命運を握られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのようにして封鎖されたリヴィラは、未だかつてない動揺が支配していた。

 街の南北に位置する門は大岩によって塞がれている。

 街を彩っていた美しい青と白の水晶は、侵入も、外出も防ぐ柵へと化した。

 今、リヴィラは一つの巨大な牢獄になったのだ。

 

「随分と早かったのぅ」

「ああ、応じねぇヤツは要注意人物一覧に載せるって脅したからな」

「そりゃあまた、エグいことするのぅ……」

 

 水晶広場、街の中心に集められた冒険者たち。

 その広場を埋め尽くすほどの量に対して、明らかに静かすぎる。

 原因はポージングをしているベル君だ。

 ベル君の肉圧は静寂をもたらす。

 原理としては【静寂】と同じである。

 やはり血には抗えないということか。

 

「お前ら以外に第一級がいれば分かりやすかったんだが……Lv3か2しか居やがらねぇ。コイツらにできるとは到底思えねぇんだが……」

「いや、そうとも限らんぞ?」

「ああ、本当にな」

「ええ、意外とね」

「まぁねー」

「え? どうしたんですか皆さん?」

 

 これは近くに例外がいるのだから仕方がない。

 念のため言っておくが、筋肉をつければ誰だってこうなる、というわけでは断じて無い。

 ベル君の筋肉もベル君の類稀なる素質によるものなので、普通はこうならないのだ。

 

「では、ベートさん。犯人は見つかりましたか?」

 

 と、全員が集まったことを確認したベル君がベートさんに振る。

 全員の視線がベートに集まる。

 ベートはゆっくり口を開き、

 

「ああ、居やがったぜ」

『!!!』

 

 と。どうやら見つかったらしい。

 流石ベートさんである。

 

「どこだ! どこに居やがる!」

「ああ、ソイツと────ソイツだ」

 

 ボールスが叫び、ベートに問いかける。

 ベートはその声の大きさに顔を顰めるが、指を差し、告げる。

 ベートが告げた瞬間、片方はこちらへ突進し、もう片方は脇目も降らず逃げ出した。

 ベル君が突っ込んできた方の攻撃を防御する。

 

「二人!?」

「こちらは僕とガレスさんで対処します! 皆さんはあちらを!」

「了解!」

「わかった!」

 

 と、始まった戦闘、及び追走。

 さて、一体どうなってしまうのだろうか。

 

 

 





 筋肉が・・・筋肉が少ない・・・
 筋肉濃度が足りない・・・
 次回!次回こそは筋肉を・・・!
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