やはり筋肉。筋肉は全てを解決する。 作:あかう
な、話です。
多分やらかした!
さて、そんなわけで前回、二人の犯人を発見したベル君一行。
ベートにされた二人の犯罪者はそれぞれの行動を開始した。
一人はベル君達へ特攻。
一人は地上へ逃走を始めた。
そこで、敏捷の低いベル君とガレスが特攻してきた方を迎撃、及び捕縛。
残りの人達に逃げた方を追わせることにした。
と、突っ込んできた鎧の男の攻撃を防ぐベル君。
その長剣による一撃はベル君の纏う衣服を裂いただけで、ベル君の肌を傷つけるには至らなかった。
しかし、反射された様子はないことから恐らくLvは 4以上だろう。
攻撃が防がれたとわかると素早く退く男。
突如始まった攻防に散り散りになる冒険者達。
それを見たベル君が口を開く。
「ガレスさん、コイツで確定でよさそうです」
「なんじゃと? 此奴は男だが?」
「いえ、アレは上から皮を被っているだけです。鎧も体型を隠すためのものでしょう。アレは女性です」
流石人体には明るいベル君。
どうやら表情の不自然さと、動作からそこまで推理できたようだ。
「チッ。こうも簡単に気づくか」
鎧の男──女は、高い声色でそう答えると、偽の顔を鷲掴みにし、強引に剥がす。
男の顔の下から、確かに女性の顔が覗いた。
その顔は非常に整っており、目は黄緑色に輝いている。
引き千切った顔を「用済みだ」と地面に叩きつけた女。
その瞬間急激に腐り果てたそれを見て、何かを察したのか顔を歪ませるベル君。
「アレは恐らくハシャーナさんの……」
「なんと」
「そこまで分かるのか、化け物が」
そう、ハシャーナの首を潰したのは苛立ちによる衝動的な行動ではなかった。
皮を剥がしたことを悟らせまいと取った行為だったのだ。
確かに合理的だと心の中で吐き捨てるベル君。
「ええい、くそ、きつくてかなわん」
と、鎧を外す女。
胸、胴、四肢。
インナーに包まれたそれらは実に見事であり、確かにティオネ以上の体型をしている。
あの鎧はさぞ窮屈だったことだろう。
だが、この状況でそんなものに気を取られるわけにはいかない。
二人は来るであろう攻撃に備え、構えをとる。
「行くぞ」
剣が霞む程の超連撃。
上下左右から縦横無尽に繰り広げられる不可避の攻撃。
だが、この二人に元より回避など必要ない。
籠手で、斧で、肉体で。
一度の瞬きの間に十を超え打ち込まれる攻撃を悉く防ぐ。
数秒が経過しても、二人に傷は未だ一つも無い。
攻防の果て、たまたま入った肘打ちが剛筋之皇帝に掛かり、反射された。
「ぐうッ!?」
空中にいたために吹き飛ぶ女。
すぐさま体勢を立て直すが、突然の攻撃に、精神的な衝撃は大きかった。
「クソッ! 化物どもが!」
そう吐き捨てる女。
ベル君とガレスは此処が攻め時だと突っ込む。
しかし、女は素早く身を引くと、懐から草笛を取り出し、吹いた。
ガレスはその行動を取る人間に心当たりがあったようだ。
「何じゃと!?
「流石に第一級どもを一人では厳しいのでな!」
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!』
街の至る所から食人花が飛び出す。
ベル君は焦った。
「コイツらは!」
思い出される怪物祭での光景。
武器なしとは言えLv5が3人がかりで互角に戦っていたモンスターだ。
街から出ることも叶わないLv2、3の冒険者が鉢合わせしたならば確実に死ぬだろう。
そこで、巨人を使うことにしたベル君。
「破壊せよ破壊せよ破壊せよ深淵より這い上がりし不死の巨人雷霆はもはや霞むまで遠のいたぞ!」
「【ティタノマキア】!!」
15Mの巨人を一気に二体召喚させるベル君。
「何だ!?」
「おおう、こりゃまた凄いもん持っとるのぅ!」
「あの
と、命令を下すベル君。
巨人達は命令に従い、食人花に向かい、歩き出す。
ベル君の126倍ものステイタスを誇る巨人だ。
殲滅も時間の問題だろう。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
そして、遠くで女体型のモンスターが姿を現す。
ベル君も初めて見るそれは、非常に醜悪で、見るに耐えないモンスターだった。
「ありゃ50階層の……」
「ええい! 全てが台無しだ!」
再びの突撃。
流石に女も学習したようで、少し間合いをとり、的確に急所である首を狙ってくる。
だが、ベル君にも、ガレスにもそんなものは通用しない。
筋肉は首にもあるのだから。
むしろ先ほどより手数が減ったおかげで攻勢に出る暇すらできた。
ジリジリと距離を詰めてゆく二人。
食人花も、巨人たちによって着実にその数を減らしている。
数分が経ち、ついにベル君が攻撃の間合いに入った。
食人花も視界の中にいるものは全て倒された。
攻撃をガレスが弾き、隙ができた。
ベル君が空いた胴体へ拳を突き出す。
そして吹き飛ぶ
そう、吹き飛んだのはベル君だ。
背後にいた食人花の攻撃を食らったのだ。
さて、諸君。
いきなりだが、『モンスターハンター』というゲームをプレイしたことがあるだろうか。
あ、別にこれ限定というわけではない。
他の有名どころだと『マインクラフト』『ゼルダの伝説』
それと『フロムシリーズ(ダークソウル等)』
とりあえずこのようなジャンルのゲームであれば何でもいいのだが────
質問だ。君たちはこれらのゲームで、
「とあるモンスターと戦っていた時、背後から突然攻撃された」
「突然のモンスターの攻撃で行動をキャンセルさせられた」
という経験はあるだろうか?
経験者はかなりいるものだとは思うが、これらをされた時、多くの人は『イラつく』のだ。
さて、もう大体わかっただろう。
今、ベル君は「これら」を同時にされたのだ。
それもある程度の痛みも伴って。
さらに大嫌いな植物モンスターに。
当然、いくらベル君が温厚とはいえ、イラつく。
つまり──────
さぁ! 読者諸君!
【
「ベル!」
店の壁に突撃し、派手に壊したベル君。
瓦礫に座り込むようにして項垂れるベル君は一向に動こうとしない。
巨人もその動きを止めたかと思えば、地面に沈むようにして消え去った。
「ん? 何だったんだ? あの硬さは……斬撃への耐性か? 打ちどころの問題だったか? まぁいい。しかし、随分呆気なかったな」
「……!」
女はどうやらベルが死んだと思ったらしい。
分析をしながら視線を外し、ガレスに向かう。
そして食人花の頭部が降ってきた。
それは無惨にねじ切れ、潰され、ひしゃげている。
上を見ると、頭部を失った食人花だったものが、死んだことを思い出したように倒れ始めたところだった。
倒れる食人花を横に飛ぶことで回避する女。
何事かと周囲を見渡すと、浮遊する腕を見つけた。
腕は浮遊しながらとある一点へと向かっている。
そこには、項垂れたままであったが、確かに立っているベル君がいた。
「貴様……! 生きてッ!?」
ベル君から突如溢れ出した圧に気圧され、口をつぐむ女。
ベル君はゆっくりと顔を上げると────
「破壊せよ、破壊せよ、破壊せよ。偉大なる三眼の大神よ、秘めし大いなる怒りのままに」
詠唱だ。
女はそれを止めようと体を動かそうとするが、震えて動くことができない。
魔力がベル君へと収束し、魔法は放たれる。
「【ラハショガッテン・マハーデーヴァ】」
背後に現れた魔法陣から、青い人型が姿を現す。
その姿は炎に包まれ、全容は見ることができない。
その全身が魔法陣より完全に出て、そのまま地上6M程まで浮上した時、ベル君の近くを浮遊していた腕が、3M程の人型に吸い込まれるようにして融合した。
そして────────
『フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ!!!』
炎が霧散し、全貌が明らかになる。
青い肌に虎の皮を纏い、首に蛇、腰に龍を巻いている。
四本ある腕のうち、一つの手に三叉槍を持ち、髪には三日月の髪飾り。
精悍な顔の、その額には第三の目が付いている。
そして何より、それは圧倒的筋肉であった。
さて、読者諸君。
もうわかっているだろうが、この特徴は完全に『破壊神シヴァ』だ。
流石に露骨すぎるだろう、と思ったかもしれないが、安心してほしい。
これはベル君が召喚した────────
そう、これこそがこの魔法の効果。
『シヴァ』に極めて近い同位体を下界へと喚び出し、使役する。
で、だ。
この魔法で喚び出した『化身』。
それは神々の下界での行動を、力の使用を縛るために存在する規約。
それを、
まぁ、そんなわけでこの『化身』はしっかりと神の力を使える。
流石に本体である破壊神の足元にも及ばない程度の力しか使えないが、まぁ下界においてこれより強い存在は確実にいないだろう。
そんなのに対し、人間如きに苦戦している女が勝てるわけもなく。
『フハッ!』
「ぐ、ああああッッ!!!」
と、まぁ浮遊する化身が軽く放った衝撃波でぶっ飛んでいった。
あ、念のため言っておくがこの化身、しっかりと本体が遠隔で操作しており、本体といつでも会話もできる。
まぁ、そんな感じでぶっ飛んでいったがベル君がそんなので怒りを収めるわけもなく、追撃をしようとシヴァに指令を出すとかいう大層罰当たりなことをするが、シヴァはそれに従ってくれる。
化身が瞬間移動し、殺戮を開始しようとしたその時。
突然、ダンジョンが大きく揺れた。
「!?」
『ほう? この気配……』
ベル君が驚愕し、シヴァが何かを感じ取った。
ダンジョンの天井を見上げると、巨大な亀裂が走っている。
「馬鹿な……ここは十八階層じゃぞ!?」
そう、ここは十八階層。本来ならば此処ではモンスターは生まれないはずなのだ。
だが、ダンジョンは神を憎んでいる。
神威どころか、神の力すらもダダ漏れにさせている化身の存在を察知したダンジョンは、神を抹殺せんと刺客を送り込んだ。
天より、神殺しの刺客が生まれ落ちる。
それは十八階層に聳える大樹の半分ほどもある、巨大な狼だった。
狼が着地し、ダンジョンが再び大きく揺れた。
『ふむ、北の……フェンリルとか言ったか? それに似てはいるが……』
狼が立ち上がった瞬間、第三の瞳より、熱線が放たれる。
それは、的確に狼を撃ち抜き、爆発。
狼は産声を上げることもなく、跡形も残さず消し飛んだ。
『ふん、こんなものか。さて……と……む。逃したか』
どうやらあの女は狼に気を突られているうちに逃げたらしい。
どうしたものかとシヴァはベル君に指示を仰ごうと戻るが、ベル君は倒れており、いつの間にか戻ってきていたロキ・ファミリアの面々から介抱されていた。
『ぬ? おい、そこの者ら、其奴はどうした?』
ロキ・ファミリアのことなど知らないシヴァは、とりあえずぶっ飛ばそうと思ったが、なんか見た感じベル君に友好的そうだったので、とりあえず話しかけて見ることにした。
「あぁ!? 何なんだテメェ!」
「敵!?」
「いや待って! この人筋肉だよ!」
「筋肉……味方?」
「ああ、そいつはベルが魔法で読んだやつじゃ」
まさか筋肉で味方判定するとは。
流石である。
これからも励むように。
『で? 其奴はどうしたのだ?』
「えっと……ベルは今、精神疲弊で倒れてるの」
『精神疲弊?』
「魔法の使いすぎじゃ」
まぁ当然だ。
神の化身を喚んだのだから、相応の精神力を消費していなければおかしいというものだ。
正確には熱線で精神力が飛んだのだが。
『ふむ……了解した。では其奴のことを頼んで良いか?』
「……はい」
『我は一足先に戻っていよう』
と、姿をかき消す化身。
そんなわけで色々ありすぎて疲れまくった一行はもう帰ることにした。
帰路で一番大変だったのはベル君の運搬だったそうな。
そんなわけで次回は帰還直後からである。
一方その頃。
『邪魔するぞ』
「おや? ゲェッッッ!? 何故此処に居る貴様ッ!!? 帰れ! 天界へ帰れ!」
『ふん、我への恩を忘れたか? ……あー。あの毒痛かったなー』
「グヌゥゥゥッッッ!!! ……仕方あるまい……!」
『分かったならば疾く茶を出せ』
「ぐぅぅ…………」
いい具合にこき使われるインドラであった。
いやー・・・シヴァ様です。
ちなみにフェンリル(偽)は普通に黒龍並みに強いです。
あと此処での化身の扱いはラジコンみたいな感じでお願いします!