やはり筋肉。筋肉は全てを解決する。   作:あかう

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 筋肉最強!
 な、話です。


 実は前回の蛇足の余白のところにちょっと仕掛けがあるんだけど意味は全く無いぞ!


19話 双頭竜は筋肉でいける。

 さて、そんなわけで前回、リリがツッコミと化した一行。

 明らかに普通ではない圧倒的無敵要塞(ベル君)超広範囲殲滅砲台(ヴェルフ)に振り回され、もはやリリは疲弊していたが休むことなど異常者二名が勿論許すはずもなくぐんぐんと下に降りて行く。

 

「なぁベル。俺にもう少し魔剣撃たせてくれよ。俺も経験値が欲しい」

「いいけど……大丈夫? 倒し切れる?」

「そん時は二本同時撃ちって言う奥義があってだな」

「うーん……人間の声帯の都合上難しいんじゃない?」

「どうでもいいので帰らせてくれませんかね……」

 

 中層へと突入し、Lv2相当のモンスターが多数出現し始めるが、ベル君の筋肉の前になす術なく沈んでゆく。

 怪物の宴すらヴェルフとリリを庇いながらポージングをしているだけで殲滅したベル君に最初の方はヴェルフもツッコミを入れていたが、数分も経てば慣れたようで自分も戦いたいという主張をしてくるようになった。

 リリはどうやらもうすでに筋肉にツッコミを入れることを諦めてしまったらしい。

 この調子ならば染まるのも時間の問題だろう。

 

 そんなこんなあって十八階層に到達した3人。

 ちなみにここまでにかかった時間は十階層から1時間である。

 うん、いいね。とても良く狂っている。

 

 で、ここに来るまでの過程でとんでもない量の魔石とドロップアイテムを獲得していた一行はとりあえずリヴィラへと寄ることにした。

 リヴィラはつい先日にかなりの被害を受けたはずなのだが、もう既にほとんどの修復が終わっていた。

 街には先日とは比べ物にならない程活気があり、とても騒がしい。

 リリはその街が見えた時「やっと休める」と、心のうちで歓喜した。

 

 しかし、街に入った瞬間そんな希望は木っ端微塵に砕けた。

 そう。確かに街は賑わっていた。街は賑わっていたのだが、それは────

 

『56! 57! 58! 59!』『次ぃ! このままリヴィラを一周だぁ!』『上! 下! A! B!』『お前もっとしっかり脚抑えろ!』『おい! 肉はまだか!』

 

 街の至る所より響く筋トレの声のものだった。

 リリの目は凄まじい勢いで光を失っていくがそんなこと知ったこっちゃない異常二人は換金屋に歩いて行く。

 その道中でなんでこんなに街が筋肉になっているのか聞いてみることにしたベル君。

 流石のベル君もあの事件からまだ一日しか経っていないのにこれ程までの変化が起きたことに驚いたらしい。

 

「あの……すみません。何でこんなに筋肉なんですか?」

「あぁ? そりゃお前筋肉だからだろうが」

 

 つまりそういうことだったらしい。

 完全に筋肉に染まった読者の方ならば理解できただろうが、まだ染まりきっていない者は恐らくちょっと何言ってるかわからないだろうと思うので、今の会話を翻訳すると、

 

「あの……すみません。何故皆さんは筋トレをしているのですか?」

「剣姫って言うやべーやつがいるじゃん?」

 

 という具合になる。

 文脈的にどこぞの剣姫さんが布教したのだろう。

 いつの間に宣教師にクラスチェンジしたんだ剣姫さんは?

 いや、随分前にしてたな、そういえば。

 で、洗脳のタイミングはベル君がレヴィスと戦っている間だろうか。

 何にせよ良くやってくれたぞ剣姫さん。

 

 そんなこんなで、筋肉に汚染された街の換金所にてしっかりと魔石とドロップアイテムを換金した一行。

 リリは「換金の待ち時間で休める」などと思っていたが、そのあまりの量に色々と面倒臭くなってしまった換金所の人が適当に金貨を詰めた袋を渡してきたため、待ち時間なんてものはなかった。

 リリはそのあまりの理不尽さにもういっそ逃げ出してやろうかと思ったが、詰まった金貨の量を見て物凄い元気になった。

 その時のリリが浮かべた表情は、つい3秒前とは比べ物にならない程晴れやかな、花が咲いたような笑みであった。

 しかし目は死んでいる。

 汚染が未だ初期段階だった時のエイナが同じような顔をしていたが、それでもまだエイナの方がヤバかった。

 彼女の瞳には虚空が広がっていた。

 しかしリリの場合はまだ暗黒に留まっている。恐らく十分に汚染しきれていないのだろう。

 もう一押し何かが必要である。

 

 そんなわけで換金が終わったベル君一行は、再び凄まじい速度でのダンジョン探索を再開した。

 本来であれば罠や、強力な状態異常を使うモンスター、そして初見殺しの多い十九階層から二十四階層を筋肉によるゴリ押しで最速タイムで突破するベル君達。

 状態異常も罠も筋肉大魔神(ベル君)に通用すると思ったら大間違いである。

 

 そして爆速で二十五階層に到達したベル君達。

 二十五階層に入ってまずベル君達を迎えたのは幅400Mの超巨大な滝、グレート・フォールであった。

 

「おぉ。初めて見るが随分とデケェな」

「リリもです。まさか此処に来るなんて夢にも思っていませんでしたよ」

 

 と、感嘆の声を漏らす二人。

 リリはともかく、ヴェルフも結構まともな事を言っている。

 が、ヴェルフの何倍も良く狂っているベル君は何と言ったのかというと、

 

「飛び降りたら楽しそうだし、ショートカットできるしで一石二鳥だね、コレ」

 

 何とも筋肉らしい意見である。

 

「まぁ、ベル様ならもしかしたらいけるかもしれませんが、リリ達は……」

「あー……そうだな。でもまぁ……なんだ。俺達は難しいだろうから、ここは大人しく正規ルートで行こうぜ」

 

 リリが着実に汚染されていっている。

 ここで「ベル君ならいけそう」という旨の発言をしていることがその証拠だ。

 だが、まだ二人ともベル君の事を甘く見ているようだ。

 ベル君は非力な者でもいけるようになる“手段”を持っているのだ。

 

「破壊せよ、破壊せよ、破壊せよ。深淵より這い上がりし不死の巨人。雷霆はもはや霞むまで遠のいたぞ」

「え?」

「は?」

「【ティタノマキア】」

 

 唐突に詠唱を開始したベル君。

 魔法が発動し、現れたのはベル君と同じサイズの巨人二体。

 此処で勘の良い人はベル君の考えに気づいただろう。

 

「うおっ!? 何を……ってお前、まさか……!」

「……リリは察しました」

 

 巨人二体が二人を担ぎ上げる。

 巨人二体とベル君は確かな足取りで滝の方へと歩を進め、迷いなく巨大な滝に飛び込んだ。

 

「うおおオオオオオオオオオッッ!?」

「きゃああああああああああッッ!?」

「すごい! 楽しい!」

 

 上から絶えず降り注ぐ重力によって加速された水流によって普段よりも速いスピードで落ちることを強要される3人。

 とんでも無い速さで落ちていく感覚に晴明の危機を覚え、絶叫するヴェルフとリリ。

 そしてベル君は呑気にアトラクション気分である。

 流石筋肉。筋肉は余裕も生み出すのだ。

 

 そんな感じで落下を初めて10秒ほど経った時、

 

「ベッ、ベル様!? 下から何か来てます!?」

「え? あー……大丈夫じゃない?」

 

 大丈夫ではない。まぁ大丈夫なのだが。

 とまあ、速攻で矛盾していくがとにかく、下から迫って来ているものの正体は────

 

「グギャアッッ!?」

「も……迷宮の孤王(モンスターレックス)……」

 

 二十七階層に出現する階層主、グレート・フォールを移動し、突如現れては絶望を撒き散らす巨大な双頭竜。

 アンフィス・バエナだった。

 そんな竜の二つある頭のうちの一つの鼻っ柱に見事激突したベル君達。

 突然の大質量の突撃に滝を登って来ていた竜はたまらずもんどり打って滝壺へと落下してゆく。

 筋肉とは重いのだ。

 

 竜が滝壺に叩きつけられ、迷宮が大きく揺れる。

 ベル君達はのたうち回る竜の腹の上に着地した。

 暴れ回るアンフィス・バエナ。

 ベル君は巨人に指示を出し、3人を岸へ投げさせた。

 

 ベル君の20倍近いステイタスを誇る巨人達の投擲はしっかりと成功。

 ベル君がまず降り立ち、後から飛んでくるヴェルフとリリを受け止める。

 

「おいおい。どうするんだ、ベル?」

「……リリはわかってます。ええわかってますとも」

 

 リーダーであるベル君に意見を乞うヴェルフ。

 もうなんか察したリリ。

 ベル君が出した答えは勿論、

 

「倒そう!」

 

 当然であった。

 むしろそれ以外の選択肢がない。

 あったとしても「倒す」か「討伐する」か「撃滅する」くらいの違いしかない。

「はい」と「イエス」を選ばせるようなものだ。

 

「そうこなくっちゃなぁ!」

 

 と、魔剣の連射を開始するヴェルフ。

 ようやく起き上がったアンフィス・バエナに、クロッゾの魔剣による総攻撃が突き刺さる。

 

「フッ!!」

 

 と、アンフィス・バエナに突っ込んでいくベル君。

 ちなみにしっかりと水面を走っているので滝壺の中心部に竜がいても何ら問題ない。

 え? 水面を走っていることが問題だって? 

 筋肉だから良いんだよ。

 

「ハァッ!」

 

 竜の背中に飛び乗るベル君。

 そこには命令待ちの巨人達がいた。なんともよくできた巨人である。

 そこでベル君は巨人に二手に別れさせ、左右の頭をそれぞれ殴らせることにした。

 多分一回戻してからデカいの召喚した方が良いんだろうが、時間がかかると判断したようだ。

 で、ベル君はというと右の方の頭を殴りにいった。

 

「オオオオォォォォォォアアアアアアアアアアアアアアアァァァァッッッ!!!」

 

 流石のベル君達も階層主を一撃で倒すのは無理だったらしい。

 竜の頭を二人がかり、もう一方を入れれば三人がかりで殴りまくるベル君達。

 どこからともなくオラオラという声が聞こえて来そうではあるが、もし聞こえて来たとしてもそれは幻聴である。

 

 横合いからヴェルフたちが魔剣で焼き、上でベル君が筋肉でゴリ押す。

 そんな“むしろモンスターが可哀想“な光景が繰り広げられる。

 ちなみに、ベル君もしっかりと魔剣で焼かれているが、筋肉の方が強いので無傷である。

 

「なんかもう、何も考えない方がいいんでしょうか」

 

 リリが思考を放棄しようとしている。

 非常にいい傾向だ。潔く筋肉になれ。

 

 と、そんな具合に竜を焼き続け、殴り続け、1分が経ち、2分が経ち、3分が経ったころ、無事にアンフィス・バエナさんの右の頭蓋骨が限界を迎え、脳にダイレクトアタック。で、左も同様に潰して、ベル君一行はアンフィス・バエナ討伐に成功した。

 何とも呆気ない……呆気ないか? まぁとにかく呆気ない終わりであった。

 物言わぬ亡骸となった竜の肉体をひたすらに筋肉パワーで掘り進み、魔石を回収したベル君。

 核を抜き取られ灰と化してゆく竜の肉体から飛び降り、再び水面を走る。

 巨人達も後ろから着いてくる。

 今更だが水面を走っている姿は烈海王のヤツを想像してもらうと分かり易いだろう。

 

「おう! やったな!」

「やったね!」

「すごいんですねー筋肉ってー」

「そうだよ!」

 

 ベル君に賞賛を送る二人。

 約一名目が逝っているが気にしない。

 まだエイナの瞳に広がる深淵には遠く及ばない。

 

「で? どうするよ。こっから」

「うん、そうだね……せっかくだし、深層逝ってみようか!」

「そーですねー」

 

 と、更なる深み、深層へ向かうことになった一行。

 ちなみに未だに突入から3時間経っていないので、まだ日帰りで行ける距離だ。

 マジでぶっ壊れています本当にありがとうございます。

 

 で、そんなわけで次回は深層である。

 一体、リリはどうなってしまうのだろうか。

 

 

 

 

 





 リリは……まぁ、もう少しで染まるから。
 ソーマは……原作通り……ではない感じでアポロンと一緒に。

過去編どれにする?

  • 幸せな世界線√(ハッピーエンド)
  • 不可避の悲劇√(ノーマルエンド)
  • 平和の礎√(バッドエンド)
  • 粉微塵の星√(XKクラスシナリオ)
  • そもそもいらん。
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