やはり筋肉。筋肉は全てを解決する。   作:あかう

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 し・・・脂肪!?コレ全部脂肪!?
 滅さなきゃ!(使命感)




 10万いった!?10万いった!?
 10万行ったああああああああ!
 みんなありがとおおおおおお!
 


24話 二十四階層は不健康だった。

 さて、そんなわけで二十四階層の食糧庫に突撃することになったベル君一行とヘルメス・ファミリア。

 彼らは今現在とんでもない速度で迷宮を大量発生したモンスターを轢き殺しつつ爆走していた。

 Lv7と圧倒的筋肉の前にはたまに存在するトラップも状態異常も意味を成すことは無い。

 

 ベル君とオッタル、それと巨人達(アイズ、リリ、ヴェルフ所持)の後ろに付いて、ひたすら魔石を回収しながら走るヘルメス・ファミリア。

 団長であるアスフィは絶えず昏い目でブツブツと何か呟いている。恐らく限界が近いのだろう。

 

 そんなこんなで会敵たくさん、魔石大量、被害0で二十四階層に到達した彼らだったが、もう既にヘルメス・ファミリアの団員殆どが息も絶え絶えになっている。

 一体誰がこんなことをしたというんだ。そんな奴は筋肉の下に裁いてやらねばなるまい。

 

 そんな感じでヘルメス・ファミリアは死にかけているが、一応は危険な迷宮の中で立ち止まっているわけにもいかない。

 疲労回復のポーションを呷り、再び駆け出す。

「出費が……」と嘆く万能者がいたかもしれないがそれはまた別の話である。

 

 迷宮をぶっ壊しながら食糧庫へと文字通り一直線に進むベル君一行。

 二十七階層の木のような軟らかい壁ではベル君達の障害とはなり得ないのだ。

 壊しすぎて途中でちょっとジャガ丸君が出たが2秒と経たず粉砕された。

 実に哀れであるが、ベルくんの前に筋肉を持っていないジャガ丸君が出てきたのが悪い。

 法律も素っ裸で高速道路のど真ん中に寝転がる人間は守ってはくれないのだ。

 

 そんな感じで突っ走っていると壁が徐々に岩肌へと変化していき、完全な岩窟へと変容する。

 オッタル曰く、食糧庫へと近づいている証拠らしい。

 流石のベル君一行もこれを無理矢理突破しようとするとさらに時間がかかると判断し、偶然繋がった正規ルートへとルート変更を行った。

 

 ちなみに食糧庫とは各階層に存在する文字通り食料────ただしモンスター用────が生み出される広間である。

 食糧庫はモンスターへと食糧を供給するという役割を担っているため、階層ごとにその階層のモンスターに合わせた姿形と生み出す食糧を変化させる。

 二十四階層の食糧庫はギルドが公表している情報、それと2大最強ファミリアの二人の証言からすると『液体が滲み出す石英の大主柱を中心とした大空洞』である。

 

 あれほど大量にいたモンスターの気配が完全に消え失せたことに若干の警戒を持ちながら道なりに進んでいくと、『それ』はあった。

 

『それ』とは、道を密閉するように通行止めする巨大な壁だ。

 

「な、なんなんですか? これは……ルルネ。本当に道は合っているのでしょうね!?」

「道なんてもうわかんないよ! でも途中の地形は合ってるっぽかったからここで間違いないと思う!」

「オイオイ、わざわざここまで来て通行止めか?」

「あー、きもちわるいですねー」

 

『それ』は少なくとも自然にできたものではなかった。

 明らかに壁の材質が違いすぎる。

 

 緑色で、ぶよぶよとした、油ぎった光沢が気持ち悪い、肉の壁。

 それはまるで植物のようであったし、腫瘍のようでもあった。

 その場にいた誰もが見たことすらない『それ』は正に『謎』だった。

 

「ぬぅ……!」

「オッタルさん? どうしました?」

「……すまん。臭いが、少しな」

 

 確かに嗅覚へと意識を集中させれば腐臭が漂っている。

 只人にとってはそうでもないが、猪人であるオッタルからしたら強烈な匂いなのだろう。

 同様に嗅覚が発達した犬人であるルルネ・ルーイも顔を顰めている。

 

「……他の経路も調べます。ファイガー。セルン。他の者を引き連れて二手に分かれて探索を行なってください」

 

 と、アスフィが指示を出すと、大柄な虎人とエルフの青年が動いた。

 彼らは予備の地図を受け取り、元来た道を引き戻る。

 

「深入りは厳禁。異常があれば直ちに帰還してください。今現在此処にはオラリオ最強勢力が存在すると言っても過言ではないのですから、此処へと戻ってさえ来られれば安全です」

 

 追加で指示を出すアスフィ。

 確かにこの場にいる面子だけで他の冒険者を全員倒すことは十分可能なので、嘘ではないだろう。

 

「あの……アスフィさん?」

 

 ベル君が恐る恐る話しかける。

 

「なんですか? ベル・クラネルさん」

「別れるよりはここの横道を掘り進んで迂回した方が安全なんじゃ……」

「………………………………そうですね。では皆さん。ベル・クラネルさんが道を作るので追従してください」

 

 今現在、一行は道が塞がっているから進めない。だから他の道を探す、といった状態だったので、道を作れるのであればそれをやることが最善なのだ。

 

「じゃあ、行きますよ?」

 

 巨人二体に構えさせるベル君。

 全員が自身の後ろにスタンバイしたことを確認したベル君は巨人達に命令を下す。

 

 ズガガガガガ、と耳障りな音が洞窟の中に反響する。

 全員、特に亜人達は耳を必死で塞ぎながらそのあとを追う。

 ダンジョンは生きている。だからもたもたしていると道が塞がってしまうのだ。

 

 巨人の拳によって生み出された礫を外に吐き出しながら半円を描くように進んでいくと、突然グチャッ、と気味の悪い水気を含んだ音が石を削る音に混じって聞こえた。

 始めはほとんどが石の掘削音だったが、その音の割合はどんどん増えていく。

 ベル君がそろそろ止めさせるべきかと思い始めた頃、前方より風が入り込んで来た。

 どうやらトンネルが開通したらしい。

 

「えっと……? うわッ!」

 

 皆に先んじて洞窟を出たベル君だったが、外の光景に思わず声を漏らす。

 洞窟の繋がった先は圧倒的緑。

 天井、床、壁、見渡す限り全てが先程の緑色の壁に覆われ、さらにその全てが腐臭を放っている。

 しかも内部はじっとりとしていて、生暖かい。

 そのため光景も相まってまるで生物の体内にいるような感覚になる。

 先に道が見えるが、それもまるで胃へと続く食堂に見える。

 

「皆さん…………ッ!? 拙ッ!」

 

 皆に外の光景を伝えようとして、慌てて肉の壁を殴るベル君。

 肉の壁が閉じ、洞窟を閉ざそうとしていたのだ。

 

「……これは」

 

 グチャッ、と音を立てて破ける肉の壁。

 ベル君の手には腐臭のする液体が付くが、特に問題はないらしい。

 

「皆さん! 外は先程の肉壁に包まれています! 先は続いていますが進みますか!? 進みますね!? 進みましょう!」

「え、ええ。そうですね。これは異常事態です。先に進み、根源を探らなくてはなりません」

「うん……行こう」

 

 と、そんなわけで進むことが確定したわけだが、やることは変わらなかった。

 とりあえず先頭と最後尾に筋肉達を配置し、全速全身する。

 

「おい、ベル。一体どうした? いきなりやる気になったが」

「それはですね。この肉壁です」

「む? それがどうし……いや、まさか!?」

「はい、この肉壁────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脂肪です

 

 

 

 

 

 

「う、うおオオオオオオオオオおおおおああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 オッタルは脂肪が大嫌いであった。

 無論全部というわけではない。

 オッタルだって敬愛するフレイヤの────特に胸部と臀部についている────脂肪については素晴らしいとすら思っている。

 

 しかし、オッタルは脂肪が嫌いだった。

 その発端は昔、未だオッタルがLv1、つまり子供も子供であった頃にまで遡る。

 

 オッタルは来る日も来る日も『戦いの野』にて殺し合いを繰り広げていた。

 しかし、とある日のことだった。

 フレイヤ・ファミリアの貯蓄を貯めるために大規模なダンジョンアタックをすることとなった。

 オッタルは、そのうちの上層を担当する部隊に加わり、十二階層から十階層を何度も往復していた。

 

 そんな中、オッタルは十階層にて怪物の宴に巻き込まれた。

 周りを取り囲むオーク達。

 推奨Lv1とはいえ後半のアビリティを要求されるオークに囲まれたオッタル。

 仲間たちはもう既に十一階層に向かっているので助けは期待できない。

 

 しかし、オッタルの目は死んでいなかった。

 オッタルはその頃は短かった剣を構え、果敢にオークの群れへ突貫し──────

 

 沈んだ。

 

 同じく突っ込んできたオークの腹に顔から突っ込んだのだ。

 その時、オッタルの猪人として、『戦いの野』を生き抜くサバイバーとして、他とは頭ひとつ抜けた五感は、この極限状態にて悍ましい感覚を普段の数倍敏感に感じ取った。

 

 気味の悪い水音を含み歪んでオッタルを包むその脂肪は、柔らかく、それでいて硬い。じっとり、ギトギトとした汗と血、油と老廃物が配合された表面を覆う液体は異臭を放ち、えも言えぬ塩味をオッタルの舌へと伝える。

 その後、オークは半狂乱になったオッタルに惨殺されたが、殺されたオークの残滓はオッタルの五感にしぶとく丸一日こびりついていた。

 

 斯くして、オッタルは脂肪がトラウマになった。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!」

 

 そんな脂肪に囲まれたオッタルは、背負った大剣でやたらめったらに壁の中を切りつけ出した。

 

「オ、オッタルさん! 気持ちはわかります! 分かりますから落ち着いてください!」

「アアアアアアア! うおアアアアアアアアアア! ぐアアアアアアアアア!」

「お、落ち着いて! 落ち着いてくださぁぁぁぁぁい!?」

 

 ベル君がオッタルを取り押さえにかかる。

 いくらLv7とはいえ、冷静さを失っているのならば対処はベル君でも容易いのだ。

 

 ちなみに、ベル君の「気持ち」は「こんなに贅肉まみれなのは許せない」であるため、ベル君も脂肪がトラウマなわけではない。

 

 ──────一方その頃──────

 

 

「レヴィス、侵入者だ」

 

 赤い光が白づくめ男と、赤髪の女を照らし出す。

 男の警告に、女は一言。 

 

「モンスターか?」

「いや、冒険者だ。やはり来た」

 

 冒険者だ。そう聞いた二人の周囲にいる者達が浮足立つ。

 駆けずりまわり、喚き散らす彼らを一瞥する女。

 

「相手は中規模パーティ。先頭には頭のおかしい筋肉ダルマ」

「何ッ!?」

 

 筋肉ダルマ。その単語に異様に反応した女。

 肉壁の一部、月を思わせる青白い膜を食い入るように見つめる。

 そして女は見た。数日前、自分を脅かした白髪の筋肉を。

 

「…………私は帰る。後は勝手にやっておけ」

「は? ……いや、待ッ……ほ、本当に帰った……だと……」

 

 男がもう一度膜を覗く。

 

「……準備は、しておくか」

 

 男が余裕たっぷりに歩き出す。

 この後どのような運命が待ち受けるとも知らずに。

 





 脂肪大嫌いオッタル君。

過去編どれにする?

  • 幸せな世界線√(ハッピーエンド)
  • 不可避の悲劇√(ノーマルエンド)
  • 平和の礎√(バッドエンド)
  • 粉微塵の星√(XKクラスシナリオ)
  • そもそもいらん。
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