やはり筋肉。筋肉は全てを解決する。 作:あかう
アアアアアアアアアアアア!!
テスト終わったアアアアアアアアア!!
死ぬ!!!(迫真)
筋肉ヤベェ!
な、話です。
白い男ことオリヴァス・アクトは念入りに準備を行なっていた。
広大な食料庫に、かの神と契約した死兵を満遍なく配置し、食人花を待機させる。
そこら中に存在する食人花の蕾の数も十分だ。
いささか過剰なのではないか、というほどであったが、あのレヴィスですら尻尾を巻いて逃げ出すような相手なのだから、心配のしすぎと言うわけでもないだろう。そういう考えに基づき準備を着々と進めていた。
粗方の配置が終わり、作戦の伝達を終えたオリヴァス・アクトは、今あの冒険者達がどうなっているか確認することにした。
つい先程送り込んだ一体の食人花への対応の仕方などで、少し作戦を変える必要があるな、などと呑気に考えながら青白い膜へと向かっていく。
グチャグチャと不快な音を立てて歪む床を歩き、あと数Mだというその時だった。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアあああッッッ!!!」
この肉に囲まれた空間が震える程の大音量。
形容するのならば『怪物の咆哮』だろうか。
弾かれたように振り向いたオリヴァス・アクトの視界に飛び込んできたのは────
普段よりも一回り膨れ上がった巌のような肉体。
表情はまさに“鬼“。瞳は煌々と錆色を放ち、食いしばられた牙。
その存在は全身から尋常ならざる怒気を噴き出していた。
「お……猛者……だと……?」
オリヴァス・アクトは戦慄した。
かの暴食すら食らった
ほんの一瞬その怒気に呑まれ、狂気に落ちそうになった彼だったが、自身の胸に埋まったソレに縋るようにして正気にしがみつく。
「はッ、早く! 早く行け! 食人花共!」
息も絶え絶えに、情け無く屁っ放り腰で獣を指差し喚き散らすその姿は実に見苦しい。
これが人間ならば命令無視すら有り得るくらいの情け無さだったが、感情など欠片も持たない植物達は忠実に命令に従い、オッタルに襲いかかる。
地上に配置された十をゆうに超える食人花がオッタルに押し寄せる。
緑色に染まった気味の悪い大波に、オッタルは。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」
一閃。
ただ横薙ぎに剣を振るっただけのそれは、食人花を悉く吹き飛ばした。
数体は魔石を砕かれ消滅し、数体は壁に叩きつけられ沈黙し、数体の食人花が死兵達に降り注ぎ、衝撃を受けた火炎石が爆発する。
「なぁッッッ!!?」
オリヴァス・アクトは驚愕した。
「は……!? う、お、う、生まれろォ!!!」
食人花を追加で呼び出すオリヴァス・アクト。
天井に生えた蕾が開花し、震え、地面に落ち、のたうち回る。
あまりにも冒涜的なその一連の流れは、きっとこの世に存在してはならないものだろう。
生まれ落ちた食人花は五十を超える大群。
腐臭の漂う粘液を全身に塗りたくり、てらてらと輝くその姿は、ほんの一瞬だけ蛇を連想させる。
流石に猛者でもこれには対応できまい。
心の内でそう呟くオリヴァス・アクト。
その顔には既に余裕が浮かんでいた。
実に見事な変わり身である。
オリヴァス・アクトが、食人花に命令を下そうとした。
その時だった。
「待ってくださいオッタルさあああああああああんッッ!!!!」
愉快な連中が迫ってきた。
さぁ諸君、シリアスは終わりだ。やはりこの圧倒的筋肉小説にシリアスは難しい。
さて、そんな感じでオッタルを追いかけて来たベル君一行。
……え? なんだって? 前回ベル君がオッタルを押さえつけたんじゃなかったかって?
それは大体あの白髪ヒョロガリ野郎が悪い。
アイツが送ってきた食人花がオッタルのスキルに引っ掛かって、急に力が強くなったオッタルにベル君が振り払われたのだ。
やはりヒョロガリは悪。筋肉になれ、筋肉に。
ちなみにその食人花は一瞬で押し花()になった。
まぁ、巨大すぎるので栞にはできそうにないが。
なるとすればせいぜい燃料だろう。さぞ臭そうだが。
「オッタルさん! オッタルsうわキッモなんですかこの状況!?」
オッタルを追いかけることに夢中で周りがあまり見えていなかったベル君は、やっとこの状況を認識したらしい。
まぁ、流石のベル君もコレはキモかったようだ。
「ウオオオオオオオオオ!!」
それに対してオッタルはモストマスキュラー。
ヘルメス・ファミリアの背後に大宇宙が広がる。
久々の筋肉的会話だ。
どうやらオッタルは余りの恐怖と怒りのせいで言語能力を喪失してしまったらしい。
意味は『アイツらが今回の主犯だからアイツらを殺してさっさと帰りたい。フレイヤ様に癒されたい』となる。
「そうなんですか!?」
「なんで解るんですか!?」
ベル君が驚きの声を漏らしたことに驚きの声を漏らした苦労人代表。
若干目の下にできた隈が酷くなった気がするが気のせいだろう。
「いや、解るだろ」
「わかりますよねー」
「うん、解る」
まぁ、常人からしたら正論というか、そんな感じなんだろうが、この愉快な仲間達は筋肉に染まった者たちの集まりである。
筋肉に染まればこの会話は中身幼女だろうが狂っちゃっていようが魔剣キチだろうが理解できるのだ。
余りの意味不明さにヘルメス・ファミリアの大宇宙でビックバンが起きた。
新しい宇宙が生まれたのならば、そこはさぞ筋肉に溢れているのだろう。
これでヘルメス・ファミリアは筋肉だ。
「えっと……とりあえず皆殺しにすればいいんですよね?」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」(肯定)
「わかりました! ……じゃあ、行くよ!」
どうやらオッタルはかろうじて言語能力(笑)を持っていたようだ。
それを聞いたベル君が号令を出す。
更にそれを聞いた愉快な仲間達は、待ってましたと言わんばかりに動き出す。
さて、殺戮の始まりだ。
────────オリヴァス・アクトは絶望していた。
目の前の地獄から一刻も早く逃げ出したい。
これが夢ならば覚めてほしい。
こんなところで死にたくない。
そんなことばかり考えていた。
仕方も無いことだろう。何故なら、今この場で繰り広げられているものは、
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」
死が縦横無尽に駆け回り、
「ラアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」
城塞が押し潰し、
「………………!!!」
風の如き刃が吹き抜け、
「『煉獄』! 『燼滅』! 『炎帝』! 『朱雀』! 『焦天』! 『燿火』!」
炎が戦場を埋め尽くし、
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
哄笑が響き渡る。
食人花も、兵も、悍ましいほどの速度で死に絶える。
先程呼び出した巨大花も一瞬で切り刻まれ、潰され、灼かれた。
希望はない。先に見えるのは真っ暗な闇。
そんな、悪夢をそのまま具現化させたような、まさに地獄。
それがオリヴァス・アクトの前に現実として有るのだ。
もう兵力は無い。
天井と壁に無数に生えていた蕾も、もはや数えられる程度にしかない。
あの時、逃げておけばよかった。
あまりにも遅すぎるその後悔。
震える脚を鞭打ち、遠い、遠い出口目指す。
あまりに小さいその一歩を踏み出した時、愚者の意識は怒れる獣に引き裂かれた。
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…………」
「お、オッタルさん……大丈夫ですか?」
「いや、む、ぬぅ……その……申し訳ない。見苦しいところを見せた……」
「いえいえ! すごかったですよオッタルさん!」
帰り道。
背後に新世界を作り出したヘルメス・ファミリアの連中を置いて、ベル君達は迷宮を進んでいた。
だが、それは普段と比べれば遅々として、ゆっくりとしたものだった。(当社比)
「お前達に迷惑もかけてしまった……」
「気にしないで、ください。アレは、素晴らしかった、から」
「そうですよ! 俺も気にせず魔剣が撃てたんで!」
なんか返答がズレているような気がしなくもないが、どちらにせよ気にしていないらしい。
「そ、そうか……うむ、では、帰るか」
「はい!」
そんなわけで普段の速度を取り戻したベル君一行。
実は今回オラリオ崩壊の危機を救った彼らだったが、原作では拾うはずだった重要な情報を一切拾わなかった彼らは、今後一体どうなってしまうのだろうか。
…………いや、そんなことを気にする必要は無いだろう。
何故なら、彼らが筋肉だからだ。
で、翌日、猛者と剣姫のランクアップがオラリオ中に広がり、大騒ぎになるのだがそれはまた次回の話。
「フェルズ。お前やったな?」
「マジで許してくれウラノス」
そんな会話もあったとか無かったとか。
次回は一気に戦争遊戯前まで行くぞ!
過去編どれにする?
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幸せな世界線√(ハッピーエンド)
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不可避の悲劇√(ノーマルエンド)
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平和の礎√(バッドエンド)
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粉微塵の星√(XKクラスシナリオ)
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そもそもいらん。