やはり筋肉。筋肉は全てを解決する。   作:あかう

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 筋肉万歳!
 な、話です。


 ……アレ?ギャグどこ行った?


27話 筋肉は絶望を齎す。

『あー、あー! えー皆さん! おはようございますこんにちは! 今回の戦争遊戯実況を務めさせていただきます【ガネーシャ・ファミリア】所属、喋る火炎魔法ことイブリ・アチャーでございます! 二つ名は【火炎爆炎火炎(ファイアー・インフェルノ・フレイム)】、以後お見知り置きを!』

 

 ギルド本部の前庭。そこへ勝手に設置されたその舞台には、褐色肌をした青年が実況者を自称し、魔石製拡声器を片手に声を響かせる。

 街ゆく者達もこれには興味をそそられたようで、大勢が詰めかけている。

 

『解説は我らが主神! ガネーシャ様です! ガネーシャ様! 何か一言お願いします!』

『俺が! ガネェェェ『はいありがとうございました!』ェェエ!?』

 

 象の仮面を被った変態もいた。

 なんか若干コメントに失敗した気もしなくはないが人々は喝采を送っているので、きっと成功していたのだろう。

 

 ちなみにこんな事をしても咎められないのは、この戦争遊戯の演出の一つとしてこう言うことをギルドが認めているからである。

 戦争遊戯とは都市内外問わず様々な人やモノが動く。

 今回のような勝負が決まりきったようなモノでもそこは変わりなく、都市外から多くの観光客が押し寄せて来ている。

 

「おー、やっぱ盛り上がるんやなぁ」

「ええ、それが戦争遊戯だもの」

 

 バベル三十階。

 インドラ、ソーマを含む100近い数の神々が座るそこには、ある種の悪意が満ちていた。

 天界において最強に程近い座に位置する神、インドラ。

 その神の失墜する姿を、彼らは心待ちにしていた。

 

 で、そのインドラの隣に座っている神、ヘルメスはというと。

 

「へ、ヘルメス様。あまりくっつかないでいただけると……」

「いやいやいやいや、怖いんだってアスフィ! ソッチからじゃ見えないだろうけど僕の隣にいる神がとんでもないくらい怖い顔してるんだって!」

 

 すっごい情けなく震えていた。

 

「は、はぁ……ところで、そろそろでは?」

 

 そんな神々の中、たった一人だけ混じっている眷属、アスフィは居心地悪そうに指摘する。

 言われたヘルメスはゴソゴソと懐を漁り、懐中時計を取り出す。

 

「……そうだね。頃合いだ……ウラノス! 力の行使の許可を!」

 

 ヘルメスが顎を上げ、中に向かって声を張り上げる。

 神威を乗せた声。それは空間を振動させ、数秒後。応答が返ってきた。

 

『許可する』

 

 ギルドの方面より都市全体に響き渡る、重厚な神威を纏った声。

 それを聞き届けたオラリオ中にいる神々が、待ってましたと一斉に指を弾き鳴らした。

 その瞬間、空に円形の鏡が出現する。

 

「「「オオオオォォォォォおおお!!!」」」

 

 都市の至る所で浮かび上がる、無数の窓。

 神の力を目の当たりにした人々は色めき立つ。

 

 千里眼の能力を持つそれは、遠く離れた場所からも一部始終を見通すことができる、下界において行使が許された唯一の特例。

 

『では鏡が置かれましたので、改めて説明をさせていただきます! 【ソーマ・ファミリア連合】対【インドラ・ファミリア】、と言うより【ベル・クラネル】! 形式は総力戦! 戦闘開始は正午からですが、両陣営、すでにオラリオ近くの平原にて、睨み合っております! こう見ると戦力差が圧倒的ですが、どう思われますか!?』

『…………ガネーシャ、だ』

『はいありがとうございましたー!』

 

 円形の窓に映るのは色とりどりの旗を掲げた軍隊と、それに対する一振りの旗を持った巨漢。

 都市はそのイジメと言ってもいい光景にも盛り上がりを見せる。

 

 どうやら冒険者達の間ではどちらが勝つか、ではなく何秒生き残れるか、の賭けも行われているらしい。

 まぁ、そちらは非公式なので少なめの金額で、遊び感覚だが。

 

 酒場の中心近くに座った胴元の冒険者が賭けの集計を行う。

 

「1000と、1っつったとこか……一応、賭けるヤツはいるのか」

「どうせ神連中だ。オッズが……ああ、そうだ。今回はギルドのヤツを使うんだったか……おおう、1,01と134。圧倒的だな」

「オイオイ。大丈夫なのかコレ?」

「おう。見ろよ、ピッタリ1.01だ。超過分は貰えるらしいから、これでもう少しインドラ・ファミリア側に賭けるヤツがいりゃあ俺たちも稼げ」

 

 

 

 

「インドラ・ファミリアに1億だ」

「同じく……2千万」

 

 

 

 

「ええエエエェェェ!? お、『猛者』に、『剣姫』!?」

「い、1億ぅ!? マジすか!?」

「さっさとしろ。受け付けるのか、受け付けんのか」

「う、受けます受けます!」

 

 金を渡し、適当な椅子に並んで座る二人。

 

「えっと……コレで……あぁ、そうか、変わらねぇのか」

「お、オイオイ。取り分はどうする」

「そりゃお前、山分けでいいだろうがよ」

「あ、ああ。そうだな」

 

 そんな会話と、神々(ギャンブラー)の懸命な、どこか軽い声を聞きながら、二人は意見を交換し合う。

 

「どうなると思う?」

「巨人で、一瞬」

「……同じく、だ」

 

 約2秒で終わった。

 気まずい空気が二人の間に流れる。

 ちなみになんでこの時期にアイズがいるかというと、戦争遊戯の処理に追われたギルドが遠征の強制任務を発効できなかったからである。

 

 そんな感じで戦争遊戯の開幕を誰もが今か今かと待ち望む。

 そして、

 

『間も無く正午になります! …………はい! 鐘が鳴りました! 戦争遊戯、開幕です!』

 号令のもと、大鐘の音と、大歓声が戦争遊戯の開幕を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大群が、ベル君に殺到する。

 

 最初にベル君に刃を振るったのは、豹人の青年であった。

 青年はLv5であり、卓越した敏捷値が自慢だった。

 

 微動だにしないベル君の首へ狙いを定めた刃を振り切る。

 斬り飛ばした。そう青年は思った。

 しかし、彼の脳が感じ取った感触は、ひどく空虚なものだった。

 

 あの肉を断つ感触、骨を削る感触。それが一切存在しなかった。

 怪訝に思った彼は確認のために後ろを振り返り、そして吹き飛ばされた。

 

 

 

 

「────────────は?」

 

 そう声を漏らしたのは何処の誰だったか。

 

 戦場か、街か、塔の上か、その全てか。

 神か、人間か、両方か。

 

 都市内にある無数の目。それが潰れた豹と、折れた剣と、白髪の筋肉を絶え間なく廻る。

 理解できない、理解したくない。

 

「クク……」

 

 戦場に居る者も、酒場で騒いでいた連中も、皆一様に凍りつく。

 あり得ない。あり得ていいハズがない。

 

「クク、クハハハハ」

 

 段々と、理解する。理解させられる。

 見える光景が現実を押し付けてくる。

 理解していくほどに、何かが腹の底から這い上がってくる。

 

「クハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 

 そして、理解する。した。してしまった。

 Lv5の冒険者が、第一級が、主力の一角が、Lv2に、為す術なく倒されたことを。

 

 

 ────────負ける。

 

 そう思い当たるまでに、数秒。

 彼らの唇まで這い出てきた何かが、途端に弾けて、溢れ出す。

 

「「「「「「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」」」」」

 

「クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」

 

 響き渡る絶叫。

 轟く哄笑。

 

 雷霆の神は嗤う。

 酒の神は崩れる。

 

 破壊の神は舞踏を送る。

 天空の神は沈黙を貫く。

 

 

 

 ────オラリオは、混沌に飲み込まれた。

 

 そして、是より始まるは、戦争など、そんな生易しいものでは断じて無く。

 極限まで鍛え抜かれた筋肉による虐殺。抗うことなど許されぬ蹂躙である。

 

 

 

 





 次回!オラリオ大混乱!

過去編どれにする?

  • 幸せな世界線√(ハッピーエンド)
  • 不可避の悲劇√(ノーマルエンド)
  • 平和の礎√(バッドエンド)
  • 粉微塵の星√(XKクラスシナリオ)
  • そもそもいらん。
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