やはり筋肉。筋肉は全てを解決する。   作:あかう

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 熱闘!筋肉バトル!
 な話です。


8話 祭りは筋肉になった。

 さて、そんなわけで前回、女神フレイヤにより多数のモンスターが脱走したわけだ。

 脱走したモンスターは手当たり次第に周囲の建造物、及び住民に対し破壊、或いは傷害行動を起こしていた。

 だが闘技場の場所がバベルの近く、つまるところダンジョンの近くであったことが幸いし、周囲にいた冒険者達が対処に当たっており、あまり被害は出ていない。

 その中にはかの【剣姫】、アイズ・ヴァレンシュタインの姿もあり、モンスターは次々と彼女によって灰と魔石、たまに素材に変えられている。

 モンスターの数もみるみる内に減少し、鎮圧はもはや時間の問題だった。

 

 そんな中、一体のみ他と違う挙動をするモンスターがいた。

 銀色のゴリラこと、シルバーバックだ。

 そのゴリラは闘技場正面の大通りをひたすらに突進していた。

 その目に白い髪をした筋肉だけを映して。

 

 ベル君はベル君で闘技場の方へ向かって爆走していた。

 モンスターが脱走する瞬間を目撃したベル君はその持ち前の責任感故にモンスター達を討伐しようとしているのだ。

 そんな具合で真っ直ぐ正面を向いて走り続けているので自分を狙っているゴリラの存在は既に把握していた。

 それが所謂「筋肉モンスター」であることも。

 

 そこでベル君は筋肉バトルの姿勢を──────とらずにLv2としては過剰ともいえる、というか過剰な力を内包したその拳で一撃の下、魔石ごと粉砕した。

 いやお前筋肉バトルは!? と思ったかもしれない。

 そう、今作のベル君は確かに筋肉だ。筋肉なのだが根の部分ではちゃんとベル君なのだ。

 自分の都合を優先せず、街の住民の安全をまず確保するためにシルバーバックとの筋肉バトルにかまけているわけにはいかないと判断したからこその行動のだった。

 

 しかし、フレイヤにとってその結果は当然望むものではなかった。

 フレイヤの目当ては強敵との勝負により輝くベル君の魂を見ることと、副産物として筋肉同士のくんずほぐれつを見ることだったからだ。

 だがシルバーバックは人選────もとい怪物選ミスだった。

 弱すぎたのだ。

 

 フレイヤはベル君がこの街に来て冒険者になってから大体一ヶ月であることを既に把握していた。

 だからこそフレイヤはベル君がLv1で、なおかつアビリティも精々力とかがDやCになっている程度であろうと判断し、ちょうどいい筋肉モンスターとしてシルバーバックを選んだ。

 のだったが、その読みは後方右斜め上75°の方向に外れていた。

 

 だがまぁ、これは外れていて当然の読みだろう。むしろ当たっていたら怖いまである。

 例え神だろうと誰だろうと冒険者になって一ヶ月の人間がLv2になっていて潜在値も4桁超えてるなどとは思わないはずだ。

 

 そんなわけでフレイヤは憤慨した。

 なんで魂輝かせてくれないの!? と。

 なんで筋肉同士で組み合わないの!? と。

 正直ベル君からしたら「いや知らないですよそんなの」と言った感じなのだがフレイヤからしたら憤慨ものだった。

 そこで、フレイヤは急遽発案した第二プランを実行することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、ベル君は無双していた。それはそれは無双していた。

 脱走したモンスターは強くて精々Lv 2の前半、アビリティHかGくらい。

 ベル君の腕のワンパンでぶっ飛ぶ範疇であり、つまりそういうことだった。

 今も大型の犬のようなモンスターをグチャッとし、魔石を回収していた。

 周囲の民衆もその見事な筋肉とワンパンを見て拍手を送っている。

 

 その時、上空から巨大な何かが飛来する。

 キリとした錆色の目に、真一文字に口を結んだ様は正に武人。

 体表は浅黒く光り、うねる筋肉はベル君のそれには劣るものの、それは大岩、巌、それか鋼。そんな風に形容するのが一番だと自然と思わせるようだ。

 そしてこれまた錆色の頭髪の合間から覗くのは特徴的な猪の耳。

 それはまごうことなき都市最強冒険者(オッタル)であった。

 ただ、その男は普段とは違い、銀色の(かつら)を被っていた。

 

 

「…………」

「…………」

「「「「…………」」」」

 

 周囲に微妙な空気が流れる。

 誰もが“え? これどういう状況? ……もしかして自分がツッコんだ方がいい感じ? “

 と、困っていた。

 長い長い数秒間の時間が流れ、満を持して武人がその重い口を開いた。

 

「俺はシルバーバックだ」

 

 意味不明だった。

 本当に意味不明だった。

 その場にいた人間達は宇宙を背負う。

 そんな人間達の姿とオッタルの謎宣言に居合わせた神々は誰もが抱腹絶倒した。

 今度は周囲に神々の喧しい笑い声が充満する。

 そして、ついに耐え切れなくなったベル君も声を上げる。

 

「あの……いい筋肉ですね。どこのファミリアの冒険者さんですか?」

「俺はシルバーバックだ。いいな?」

「アッハイ」

 

 どうやらシルバーバックだったようだ。

 ベル君は「確かにシルバーバックみたいな筋肉だ、つまりシルバーバックなんだろう」と自らに暗示をかけることに成功した。

 周囲にいた人々も彼はシルバーバックだと認識することに成功したようだ。

 読者諸君もだ。彼はシルバーバック、いいね? 

 

「さぁ、どうしたベル・クラネル。シルバーバックだぞ」

「えっと……つまり戦え、と?」

 

 オッタrゲフンゲフン。シルバーバックはその問いに対し、構えることで応答とした。

 ベル君も大きなため息を一つ吐き、構える。

 

 互いに一瞬見合い、その刹那の後、周囲をとてつもない衝撃波が襲う。

 凄まじい勢いで起こった圧倒的筋肉同士の衝突。

 要塞VS絶対防御(シルバーバック)の筋肉バトル開幕である。

 

 そんなわけで始まった筋肉バトル。

 まず、開幕直後に組み合った二人だが、一方的にシルバーバックが押している。

 流石のベル君もLv7の膂力は厳しいものがあるようだ。

 

 ……あ、いや違った。

『流石のベル君も強化種のシルバーバックの膂力は厳しいものがあるようだ。』だった。

 ちょっと読者諸君には脳内で置き換えておいてもらいたい。

 

 それはそれとして相手のシルバーバックもベル君の巨体を投げ飛ばすのは厳しいようで、なんとかベル君を浮かせようと押し出しつつ上向きに力を働かせる。

 ベル君はその自身に対し斜め後ろ向きに働く合力を利用することにした。

 組み付き時の前傾姿勢から後ろに大きく反り、それと同時にシルバーバックを引き寄せる。

 

「!?」

 

 シルバーバックは慣性に従い、ベル君の体の上へと移動する。

 そして、ベル君はそのまま更に大きく体を反らせ、シルバーバックの頭を地面に叩きつけた。

 バックドロップである。

 シルバーバックはほんの一瞬、急激な視界の変化に驚愕し硬直したが、すぐさまベル君の手を振り解き体勢を立て直す。

 その動きから察するに、どうやらほとんどダメージは食らっていないようだ。

 

 と、ここで取っ組み合いは分が悪いと判断したシルバーバックは戦闘スタイルを拳に切り替える。

 腕を畳み、胸の前に置く。

 ベル君もそれに合わせ、構えを変えた。

 第二ラウンドの開始だ。

 

 シルバーバックの恐ろしく速く、重い拳が咄嗟にガードしたベル君の腕に突き刺さる。

 ベル君はそのあまりの衝撃の強さに吹き飛ばされた。

 Lv 7の本気の突き。

 ベル君はスキルの効果で平気だったが、本来ならば腕ごと体に風穴が開いていてもおかしくない威力だ。

 むしろなんで骨折すらなしに吹っ飛んでるだけなんだと言った感じだ。

 

 着地し、そして三回転。その間に体勢を立て直し、未だ残っている慣性を地面を滑って消し、停止するベル君。

 その眼前では既にシルバーバックが拳を振り上げていた。

 明らかなる殺傷力を秘めたその拳を、ベル君は真っ向から受け止めるなんて馬鹿なことはせず、横から腕を叩くことでなんとか受け流した。

 が、それはシルバーバックの読みの範疇内であったようで、バランスを一切崩すことなく二の拳を繰り出すシルバーバック。

 当然、一発目を受け流すことでやっとだったベル君はまともに体で受ける。

 

 またも吹っ飛ばされ地面を勢いよく転げるベル君。

 ベル君は道に広がっていた露店をいくつかボウリングのようにぶち壊し、何個目かの露店で受け身を取る。

 そのまますぐには起き上がらず、自身の眼前。吹っ飛んで来た方向へ足ばらいの動作を行う。

 

 すると、なんということだろうか。

 突っ込んできていたシルバーバックが顔から勢いよく転ぶ。

 ベル君は先ほどのシルバーバックの攻撃から追撃を読んでいたのだ。

 シルバーバックが体勢を立て直すその隙にベル君は覚えたての魔法を詠唱した。

 

「破壊せよ破壊せよ破壊せよ深淵より這い上がりし不死の巨人雷霆はもはや霞むまで遠のいたぞ」

「!!!」

「【ティタノマキア】!!!」

 

 流石はベル君。

 その長い詠唱を自慢の肺活量で一息の間に終えた。

 地面に淡く光り輝く魔法陣が現れる。

 そして、

 

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 巨人が降臨した。

 

 

 ベル君の背後に現れた巨人の上半身。

 ベル君の精神力をほぼ全て注ぎ込んだそれは、上半身だけだというのに8M程もある超巨体を誇っていた。

 その姿はマネキンに鬘を被せたようなのっぺりとした見た目をしており、体はストレートグレーだ。

 そして何より、それは筋肉であった。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」

 

 巨人の大樹の如き大腕がシルバーバックに向けて振り下ろされる。

 シルバーバックはそれに対し腰を深く落とし、

 

「ぬぅんッ!!」

 

 拳で迎撃した。

 二つの拳が激突し、巨人の大腕がいとも容易くはじき飛ばされる。

 

「ハァッ!」

「!!!?」

 

 そこにベル君の蹴りが炸裂する。

 シルバーバックは一瞬、予想外の攻撃に体をくの字に曲げるが、力が足りないのかやはりダメージを受けていないようだ。

 ベル君がバックステップで巨人の下へ戻り、 2対1の第三ラウンドが開始されようとしたその時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベル君の後ろの民家が突如として爆発した。

 

「「!?」」

 

 戦いに水を差されたことに対して憤慨した実は戦いを楽しんでいたシルバーバックと、ここからどのような展開に持っていくか考えていたのにもかかわらず思考を中断させられ腹を立てたベル君は破壊された民家の方を見た。

 

 すると、そこには巨大な植物と、それと戦うロキ・ファミリアのアマゾネス二人とアイズ・ヴァレンシュタインの姿があった。

 

 

 

 

 

 




戦闘シーン超むずい。

ちなみに巨人の見た目は
黒っぽい灰色の粘土で作って色付けをしなかったwii fit トレーナー(男性 超マッチョ)みたいな感じ。
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