これは、当時は新任の提督だった私が、ある鎮守府に着任してしばらくしたころの話である。
読んでいくうちにわかることと思うが、ここに書かれた内容には「艦隊これくしょん」で調べることのできる他の内容と違っている部分が多々あり、違和感を覚える方も少なくないだろう。
当鎮守府においてもこの件を確認したのだが、「艦隊これくしょん」に居住する「妖精さん」と呼ばれている存在の気まぐれによるものだとの返答だった。
一般的な人間の理解が及ばない「妖精さん」の気まぐれであるのならば、そういうものとして納得するべきであろう。
それはこの鎮守府と同じ名前の鎮守府の存在が明らかになったり、「艦娘」や「深海棲艦」と呼ばれる存在が同じ呼称であるにもかかわらず言動が違っていたり、物理法則その他におかしいところがあったとしても同様であろう。
かく言う私自身もいまだに現状を受け入れかねているところもあるが、徐々に慣れていくであろうと自分自身に言い聞かせている毎日を送っている。
さて、そろそろ本題に入ろう。
ある日の出撃において、他の鎮守府、艦娘たち、深海棲艦たちに知れ渡った事故が起きた。その内容について簡単にではあるが、ここに記すものである。
もしかすると同様の事故が私の知らないところで起きている可能性もあるが、それについては全く別の出来事と考えたほうがいいであろう。
私自身もそういうことがあるとは思ってもいなかったために、最初聞いた時には自分の耳を疑ったものである。
これを真似する者などいないと思うが、仮にそうするにしても時と場所を考えたうえで当鎮守府のような大事にならないようにしていただきたいと願っている。
その事故が起きた時、駆逐艦白雪を旗艦とする艦娘たちの艦隊は製油所地帯沿岸に出撃していた。
同航していたのは軽巡洋艦名取と五十鈴、駆逐艦菊月。いずれも戦闘経験は浅かった。
4隻は、海域を進むうちに強力な深海棲艦隊と遭遇した。
編成は戦艦ル級1、雷巡チ級1、軽巡ヘ級1、駆逐艦イ級2。後に明らかになることであったが、この海域に出没する敵艦隊としては決して珍しくない編成だった。
両艦隊は接近して戦闘を開始。双方とも被害が出て撤退した。
鎮守府側は駆逐艦菊月が大破、軽巡洋艦名取が中破、駆逐艦白雪が損傷。深海棲側は戦艦ル級および軽巡チ級が大破。
これも後に明らかになることであるが、戦闘の結果自体は他のそれと比較して何か特別だったわけではない。
ただ経緯が特別だっただけだ。
これからその経緯の一部を、双方の報告書をもとに明らかにしていく。
報告内容については、当時の様子をなるべく忠実に再現したつもりである。