運命は、すべての者に平等に与えられていないのではないか?
このような疑問は、あるいは報告書に記すべき内容ではないのかもしれない。
しかし、後日入手することができた深海側の報告書を一読してそのような感慨にふけったことは確かである。
入手方法は特に秘匿するほどのことではない。事故の起きた数日後、鎮守府に封をされた「ガラス瓶」が流れ着いたのだ。
この「ガラス瓶」の見かけや感触が「ガラス瓶」に似ているだけで、私の知らない物質で生成されていて鎮守府を危機に陥らせる可能性も疑ったが、「妖精さん」が触れても大丈夫であることを保証してくれたので、封を開けた。
そこには我々の解読できる言語で書かれた手紙が入っており、深海側の一員の名と、当日何をしたかったのか確認したい旨、そして返事を置く場所が記されていた。
その場所に、海の中で読むことができるように処理をした報告書を置いた。ただそれだけのことなのだ。
指定した場所の近くに深海棲艦が待ち受けていることも考えられたため、報告書を置く任についた艦娘たちは慎重に慎重を重ねたうえで接近したが、艦影を見ることなく無事に帰投を果たした。
それからまた数日経って、手紙と深海側の報告書が入ったガラス瓶が鎮守府に流れ着いた。
そこに書かれていた内容から、当日に深海側で起きたことが判明したのである。
深海側が記した事故の内容については、我々の報告書と重複するところが多いために割愛し、戦闘後の出来事についてのみ記すこととした。
また、記すにあたっては、深海側が使用する言語の翻訳結果をそのまま記すと解読に苦労する方もいるため、一般向きの言語を用いた。
なお、深海側との情報交換は現在も続いているが、その内容は上層部が閲覧して開示可能と見なした範囲についてのみおこなわれている。
開示可能と判断された内容がどういうものかについては、他に入手可能な媒体を確認するなどして判断していただきたい。
別の鎮守府で深海側との接触が様々に描写されていることは私も承知しているが、私のいるこの空間と正確に一致しているわけではないことも確かであるため、そのような情報に接したとしても「他ではそうなのだな」という感想くらいしか返しようがないのが実情である。
もちろんこれに目を通している方においては、このようなことは読む前から承知しているであろうから、私からわざわざ注意するほどのことでもないと思う。
読む側も様々な事情を承知しているという前提に基づいて、上層部から開示可能と認められた深海側の出来事を公開するものとする。