それなりに平凡な鎮守府の事故聴取結果報告書   作:垂直離着陸式扇風機

4 / 5
深海側報告書 報告者:軽巡ヘ級

 軽巡(けいじゅん)(きゅう)です――こんな(かん)じでいいんですか? 

 ああ、すんません。よくわからないんで――

 

 艦娘(かんむすめ)たちがいなくなったんで、オレらも()きあげることにしたんです。

 で、途中(とちゅう)までは問題(もんだい)なかったです。

 

 そりゃ、ル(きゅう)の――ル(きゅう)さんは時々(ときどき)ケツさすってたし、チ(きゅう)ね――チ(きゅう)さんはチ(きゅう)さんで(あたま)さすってましたけど――

 あ、それとル(きゅう)――さんは2、3(にち)くらい(まえ)から機嫌(きげん)(わる)かったです。ほら、あの、()べたモノが()ずにつまる――いや、(ほか)(だれ)かがそう()ってたのを()いたもんで。

 

 で、(かえ)っている途中(とちゅう)でだんだん速度(そくど)()ちてきて――ケツさすってたル(きゅう)さ――んが(はら)()さえるようになって――(かお)つきはコワくなるし、顔色(かおいろ)普段(ふだん)より(わる)くなってたし、(あせ)()かべてたような――

 

 そんで、しまいには、

()まれ!」

 そう(さけ)んだんです。とても(くる)しそうな(こえ)で。

 ()まったら今度(こんど)は、

「ワタシの(まわ)りを(かこ)め!」

 きつい口調(くちょう)()いだして。

 

 ()っていることわかんなくて(たが)いに(かお)見合(みあ)わせていたら、もう一度(いちど)(まわ)りを(かこ)めって()うもんですから、とりあえずル(きゅう)さんの(まわ)りに()ったんです。

 そしたら(つぎ)には、

「ワタシの反対側(はんたいがわ)()いて(まわ)りを見張(みは)れ!」

 

 (おこ)っているというか、すっげえ(あせ)ってました。

 その(とき)はまだ(なに)したいのかわかんないけど、しょうがないから()うとおりにしたんですよ。

 

 (まわ)りは――全部(ぜんぶ)(うみ)でしたね――(りく)なんかどこにも()えませんでした。

 一度(いちど)(きゅう)さんのほうに()こうとしたんですけど、すぐに、

「こっち()くな! ゼッタイ()るな!」

 いや、もう――

 

 まあ、()われたとおりに――あー、オレはル(きゅう)さんの(うし)ろにいました。

 (みぎ)にチ(きゅう)さん、(ひだり)背中(せなか)がイ(きゅう)です。

 チ(きゅう)さんと(ひだり)にいたイ(きゅう)を、ル(きゅう)さんを()ないようにしながらチラチラと()てたんですけど、どちらも(なに)しようとしているかはわかっていないようでした。

 そしたら、ル(きゅう)さんのほうから金属(きんぞく)()(おと)がして――って()うか、ゴソゴソと(なに)かしているような(おと)がし(はじ)めたんですよ。

 

 チ(きゅう)さんの表情(ひょうじょう)()わりました――いや、()えた、のほうかな? 

 いや、(たし)かに普段(ふだん)から表情(ひょうじょう)()えてるみたいな(かん)じですけど、それよりもっと()えてました。

「え? ――は? ――やるの? ――それ、ここでやるの? ――ねえ?」

 そんなことをブツブツつぶやき(はじ)めたんです

 

 オレと(ひだり)にいたイ(きゅう)はまだわからなかったです。たぶん、背中(せなか)のほうにいたイ(きゅう)も――そこまでカンのいいヤツじゃなかったはず。

 そうしているうちに、ル(きゅう)さんの――あー――ノドの(おく)から()しているような(こえ)って()ったらいいんですかね。

 つまり――(記録者注(きろくしゃちゅう):ここでへ(きゅう)は“ん”に“ ゛ ”をつけたような(こえ)数秒(すうびょう)ほど()した)って(かん)じの(こえ)でした。

 

 ところで、その――オレだけなんですかね――()いたらいけないと(おも)えば(おも)うほど、かえって集中(しゅうちゅう)して(ちい)さい(おと)()になるのって。

 いや、あの(とき)のオレだったら、()えないくらい(とお)くの(とり)()(ごえ)()()けができたんじゃないかと(おも)うんですよ。いや、ホントに。

 

 もうこうなってしまうと、この(あと)どうなるかは(だれ)でもわかることじゃないですか。

 どんな(おと)()こえるかなんて想像(そうぞう)つくじゃないですか。

 (いや)ですよ。そういう趣味(しゅみ)ないんですから――ないです。そう()われてもないです。いつかお(まえ)もその()さに()づくとか、そういうのいいですから――いや、そういう趣味(しゅみ)()ってるんですか? 

 あ、ああ。いるんですか、そういうの――はあ――そうなんだ。

 

 ま、まあそういうのはともかくとして。

 もう雰囲気(ふんいき)というか、空気(くうき)というか。そういうのがマズイ状況(じょうきょう)になってきていて。

 ()げたいとは(おも)いましたけど、()げたら()げたでそれもマズイことになりそうだし。

 (なん)とかしなきゃというか、どうなってもいいやというか――

 (おと)()きたくないから、大声(おおごえ)()すことにしたんです。

 

 (うた)ったかどうかは(おぼ)えてないです。

 けど、チ(きゅう)さんとイ(きゅう)らがオレと(おな)じように(こえ)()したのは()ってます。

 

 そりゃあ――どっからどう()ても(へん)光景(こうけい)だったろうなとは(おも)いますよ。ええ。

 ()いているもの全部(ぜんぶ)()ろして(すわ)()んでるル(きゅう)さんの(まわ)りにオレらが()って大声(おおごえ)()しているんですから、(へん)じゃないと(おも)うほうがどうかしているくらいはわかりますよ。

 (だれ)()なかったし、()てなかったからいいですけど――そうなっていたら、ですか? 

 あー――(かんが)えたくないですねー

 (とく)()最中(さいちゅう)(とき)は――

 

 あの、(はなし)(つづ)きしていいですか? 

 

 しばらくしてル(きゅう)さんがオレらの背中(せなか)たたいて、()ったんです。はい。

「もうやめていいぞ」

 その(とき)表情(ひょうじょう)は、さっきまでがウソみたいに()()れとしていて――

 いや、解放(かいほう)されたというか、やり()げたというか――

 そんな()にはなりましたですね。ええ――




トイレ擬音装置(ぎおんそうち)(じん)(?)(りき)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。