軽巡ヘ級です――こんな感じでいいんですか?
ああ、すんません。よくわからないんで――
艦娘たちがいなくなったんで、オレらも引きあげることにしたんです。
で、途中までは問題なかったです。
そりゃ、ル級の――ル級さんは時々ケツさすってたし、チ級ね――チ級さんはチ級さんで頭さすってましたけど――
あ、それとル級――さんは2、3日くらい前から機嫌悪かったです。ほら、あの、食べたモノが出ずにつまる――いや、他の誰かがそう言ってたのを聞いたもんで。
で、帰っている途中でだんだん速度が落ちてきて――ケツさすってたル級さ――んが腹押さえるようになって――顔つきはコワくなるし、顔色は普段より悪くなってたし、汗も浮かべてたような――
そんで、しまいには、
「止まれ!」
そう叫んだんです。とても苦しそうな声で。
止まったら今度は、
「ワタシの周りを囲め!」
きつい口調で言いだして。
言っていることわかんなくて互いに顔見合わせていたら、もう一度周りを囲めって言うもんですから、とりあえずル級さんの周りに立ったんです。
そしたら次には、
「ワタシの反対側を向いて周りを見張れ!」
怒っているというか、すっげえ焦ってました。
その時はまだ何したいのかわかんないけど、しょうがないから言うとおりにしたんですよ。
周りは――全部海でしたね――陸なんかどこにも見えませんでした。
一度ル級さんのほうに向こうとしたんですけど、すぐに、
「こっち向くな! ゼッタイ見るな!」
いや、もう――
まあ、言われたとおりに――あー、オレはル級さんの後ろにいました。
右にチ級さん、左と背中がイ級です。
チ級さんと左にいたイ級を、ル級さんを見ないようにしながらチラチラと見てたんですけど、どちらも何しようとしているかはわかっていないようでした。
そしたら、ル級さんのほうから金属の鳴る音がして――って言うか、ゴソゴソと何かしているような音がし始めたんですよ。
チ級さんの表情が変わりました――いや、消えた、のほうかな?
いや、確かに普段から表情消えてるみたいな感じですけど、それよりもっと消えてました。
「え? ――は? ――やるの? ――それ、ここでやるの? ――ねえ?」
そんなことをブツブツつぶやき始めたんです
オレと左にいたイ級はまだわからなかったです。たぶん、背中のほうにいたイ級も――そこまでカンのいいヤツじゃなかったはず。
そうしているうちに、ル級さんの――あー――ノドの奥から出しているような声って言ったらいいんですかね。
つまり――(記録者注:ここでへ級は“ん”に“ ゛ ”をつけたような声を数秒ほど出した)って感じの声でした。
ところで、その――オレだけなんですかね――聞いたらいけないと思えば思うほど、かえって集中して小さい音が気になるのって。
いや、あの時のオレだったら、見えないくらい遠くの鳥の鳴き声も聞き分けができたんじゃないかと思うんですよ。いや、ホントに。
もうこうなってしまうと、この後どうなるかは誰でもわかることじゃないですか。
どんな音が聞こえるかなんて想像つくじゃないですか。
嫌ですよ。そういう趣味ないんですから――ないです。そう言われてもないです。いつかお前もその良さに気づくとか、そういうのいいですから――いや、そういう趣味持ってるんですか?
あ、ああ。いるんですか、そういうの――はあ――そうなんだ。
ま、まあそういうのはともかくとして。
もう雰囲気というか、空気というか。そういうのがマズイ状況になってきていて。
逃げたいとは思いましたけど、逃げたら逃げたでそれもマズイことになりそうだし。
何とかしなきゃというか、どうなってもいいやというか――
音聞きたくないから、大声出すことにしたんです。
歌ったかどうかは覚えてないです。
けど、チ級さんとイ級らがオレと同じように声出したのは知ってます。
そりゃあ――どっからどう見ても変な光景だったろうなとは思いますよ。ええ。
履いているもの全部降ろして座り込んでるル級さんの周りにオレらが立って大声出しているんですから、変じゃないと思うほうがどうかしているくらいはわかりますよ。
誰も来なかったし、見てなかったからいいですけど――そうなっていたら、ですか?
あー――考えたくないですねー
特に真っ最中の時は――
あの、話の続きしていいですか?
しばらくしてル級さんがオレらの背中たたいて、言ったんです。はい。
「もうやめていいぞ」
その時の表情は、さっきまでがウソみたいに晴れ晴れとしていて――
いや、解放されたというか、やり遂げたというか――
そんな気にはなりましたですね。ええ――