名探偵ファイン ~消えたティアラの行方~    作:甘党むとう

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逃げきりシスターズ

「なんだか緊張するね」

 

 ファインが小さく呟いた。

 

 水を打ったように静かな会場。レース直前と似た緊張感に、トレーナーの額から思わず汗が流れ落ちた。堪えきれず時計を確認する。カチッ、カチッと進む秒針がいつもより遅く感じる。だが、秒針は確実に進んでいき、そして、十二の数字に到達した。

 

「みんな~!! こ・ん・に・ち・は~~っ☆

 あなたのハートをスマートにダッシュ♪ 最強ウマドル~、スマートファルコンですっ☆」

 

『きゃぁーー!!』『ファル子せんぱーい!!』『かわいいーー!!』

 

 ライブが始まった。

 曲がながれると同時に、ステージ裏から登場したスマートファルコン。

 さまざまな歓声が小さな会場を埋め尽くす。

 

「今日はきてくれてありがとうっ!

 最高のライブにするから、みんな、最後まで楽しんでいってね~~!!」

 

 客席の端から端まで、そして奥にいる観客まで、全員に向かって手をふるスマートファルコン。

 トレーナーは一瞬、スマートファルコンと目が合ったような気がした。

 

「よ~し! それじゃあさっそく始めよう!!

 一曲目は~~、『立ち位置ゼロ番!順位は一番!』!!」

 

 曲がかかる。

 みんなの視線は、スマートファルコンに釘付けになった。

 

ーーーーーーーーーー

 

「……GO AHEAD!  未来DAYS!!」

 

 曲が終わり、スマートファルコンが決めポーズをとる。

 われんばかりの歓声と拍手が沸き起こった。

 

 トレーナーの手も、自然と動いていた。

 

「ありがと~~~!!!

 みんな! ここまで楽しんでくれてるかな~~?」

 

『イェーイ!!!!』

 

「まだまだライブは続くから、ファル子から目を離しちゃダメだぞっ❤」

 

 客席にハートを送ったスマートファルコンが、手を振りながらステージ裏へとはけていく。

 

 どうやら休憩時間のようだ。

 水分補給をとるものや、感想を語り合うものがちらほらと見えはじめた。

 

 ファインが頬を上気させながら、スカーレットとデジタルに話しかけている。

 

「ファル子ちゃん、すごかったね!」

 

「はい! キラキラと輝いていて、とってもかっこよかったです!!」

 

「ええ、ええ。逃げシスのライブは毎回セトリや細かな振り付けが変わっていて、何度来ても楽しめるんですよねぇ。今回は『UNLIMITED IMPACT』のかっこいいファル子さんが見られて、最高でした!!」

 

 興奮が覚めやらぬ会場。

 だが、本当の逃げシスのライブはここからだった。

 

ーーーーーーーーーー

 

 休憩が始まってから十分が経とうとした頃。

 それまで騒がしかった会場が、水を打ったように静かになった。

 

「みんな~っ、おまたせ~~~っ☆」

 

 見計らったように飛び出してきたスマートファルコン。

 あたたかい歓声が、スマートファルコンを迎え入れる。

 

「水分補給はできたかな? 体調管理をしっかりして、ライブを楽しんでね!!

 ここからは逃げ切りシスターズの公式アカウントで告知したように、特別ゲストといっしょにライブを披露するよ! みんな、準備はいいかなぁ~~??」

 

『フゥーー!!』

 

「うんうん!! 準備万端だね!!!

 それじゃあいくよ。『逃げ切りっ!Fallin'Love Remixバージョン』!!」

 

 (逃げ切り! 逃げ切れ!)

 

 イントロが流れる。

 

 『(逃げ切り! 逃げ切れ!)』

 

 観客たちが声を合わせ始める。

 

 『『(逃げ切り! 逃げ切れ!)』』

 

 いつの間にかステージ上から姿を消したスマートファルコン。

 どこにいったのかと探していると、突然、ステージの端からキタサンブラックが現れた。

 

『きゃぁーー!!』『キタちゃーーん!!』『こっち向いてーー!!』

 

「どんな問題もすぐにお助け!!

 私がいるところは、いつでも?」

 

『まつりだ!!!』

 

「どこでも?」

 

『まつりだ!!!!!』

 

「だれとでも??」

 

『おまつりだーー!!!!!!!』

 

「漆黒の空に輝く花火! 魔法少女マジカルブラックことキタサンブラックです!!

 今日はよろしくお願いしまーーーす!!!」

 

『キタさーーん!!!』『かわいいーー!!!』『かっこいいーー!!!』

 

 中央で口上を述べたキタサンブラックがステージの右端へ移動する。

 それと同時に、ステージの左端からサイレンススズカが現れた。

 

『きゃぁーー!!』『スズカさーーん!!』『うつくしすぎるーー!!』

 

「私の名前はサイレンス……。だけど、みんなの声が聞きたいな」

 

『かわいいよーー!!』

 

「もっと?」

 

『『かわいいよーーー!!!!!』』

 

「まだまだ?」

 

『『『かわいいよーーー!!!!!!!』』』

 

「ありがとう。サイレンススズカ……今日も駆け抜けます」

 

『スズカーー!!!』『あいしてるーー!!!』『生きててくれてありがとーー!!!』

 

 サイレンススズカがステージの左端へ移動する。

 

 客席にいる全員が理解していた。

 

 すでに二曲ものパフォーマンスを披露したウマ娘。

 ウマドルとして、逃げシスのリーダーを務めるウマ娘。

 彼女が……登場することを。

 

 全員が、彼女を待ち望んでいた。

 

「お・ま・た・せーーーーーーっ!!」

 

『きゃーーー!!!』『ファル子せんぱーーい!!!』『まってたよーーー!!!』

 

「あなたのハートにカムバック☆

 元祖ウマドル~?」

 

『スマートファルコン!!!』

 

「ラブリーキュートな~?」

 

『スマートファルコン!!!』

 

「ファル子が逃げたら~?」

 

『追うしかなーーーい!!!』

 

「大きな愛で捕まえて☆

 最強ウマドル~、スマートファルコンですっ☆」

 

『きゃーーー!!!』『かわいいーーー!!!』『最強ウマドルーーー!!!』

 

 ステージの端にいたキタサンブラックとサイレンススズカが、中央に移動する。

 三人揃った逃げ切りシスターズ。

 

「さあ、みんな! ここからが逃げ切りシスターズの本領発揮だよ!!

 最後までファルコたちから、目を離しちゃダメだぞっ!!!」

 

 沸き上がる歓声。

 彼女たちが歌い、踊り始める。

 

 その姿から、トレーナーは最後まで目を離すことができなかった。 

 

 

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