名探偵ファイン ~消えたティアラの行方~    作:甘党むとう

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「ファインさん、スカーレットさん。お二人とも、とても似合ってます!」

 

 隊長とフラワーがつくった花冠を、頭に乗せるファインとスカーレット。

 あの後、隊長の言葉に共感したフラワーが、隊長と共に二つの花冠を完成させた。

 シロツメクサの花冠。芝生やグラウンドに多く生えているシロツメクサをつかった花冠。

 その花冠は、シロツメクサの白い花が隙間なく並べられ、どの角度から見てもきれいな花が顔をのぞかせる。

 

「どうかな? トレーナー」

 

 首を少し傾けるファイン。

 

 トレーナーの心臓が、一瞬止まる。

 

 かわいい。確かにこれは、世界で一番似合っているかもしれない。

 ファインの花冠は隊長がつくったもので、スカーレットのもの(フラワー作)と比べると少し不格好だったが、そんなこと関係ない。

 ファインと花冠。これはもう、国宝ものだ。

 

 隊長と目が合う。ドヤ顔の隊長。

 トレーナーはそんな隊長に、最大級の賛辞を心の中で送った。

 

「とっても似合ってるよ、ファイン。あとは……」

 

 シロツメクサ。日本ではクローバーとも呼ばれている。

 そう、あのクローバーだ。幸運の四つ葉のクローバー。

 

 フラワーと隊長が花冠をつくっている間、トレーナーはある提案をスカイに持ちかけられていた。

 トレーナーはその提案を、二つ返事で了承した。

 その提案とは……。

 

 右手をファインの前に差しだす。

 

「わぁ! 四つ葉のクローバーだ!!」

 

「ファイン、少しかがめるか?」

 

「うん!」

 

 ファインが頭を下げる。

 トレーナーは慎重に、ファインの花冠に四つ葉のクローバーを差し込んだ。

 左耳の前。白い花と四つ葉。

 

 うん、完璧だ。

 四つ葉のクローバーを探して本当によかった。

 

 トレーナーは嬉しそうに笑うファインを見て、満足げに微笑んだ。

 

「ファイン、似合ってるよ」

 

「ありがとう! トレーナー」

 

 隣では、スカイがフラワーに四つ葉のクローバーを見せていた。

 フラワーの笑顔が光る。どうやら、むこうもうまくいったみたいだ。

 

 スカーレットにも見つけた四つ葉のクローバーを渡した後、花冠を頭に乗せた三人を、隊長が一眼レフのカメラで写真に収めていった。いっとき、みなティアラを忘れ、楽しい時間を過ごした。

 

ーーーーーーーーーー

 

「そうだね。思い当たるのは三カ所かな」

 

 犯人は猫ではないか、と考えを伝えたスカーレットにスカイが答える。

 スカイ曰く、トレセン学園内の猫にも縄張りがあって、荷物置き場を訪れることができる猫は三匹しかいないらしい。猫たちは盗った物を決まった場所に隠すので、その三匹の隠し場所にならティアラがあるかもしれない、ということだった。

 

 ファインの指示により、三組に分かれる。

 スカイとフラワー、ファインと隊長、トレーナーとスカーレット。

 

 尻尾を激しく揺らし、喜びを隠せない隊長をよそに、こうしてトレーナーたちはあらためてティアラ探しを始めることになった。

 

ーーーーーーーーーー

 

 トレーナーとスカーレットが向かうのは、トレーニングコースから最も離れた隠し場所。ウマ娘寮に近いこの場所は、収集癖の強い猫の隠し場所のようで、ティアラのある確率が一番高いらしい。

 

「トレーナーさん。今日は本当にありがとうございます」

 

 目的地へ向かう道中。突然、頭を下げたスカーレット。

 トレーナーは彼女に顔を向ける。

 

「ファインさんとお出かけしてたのに、こんなことに付き合わせてしまって」

 

「全然だいじょうぶだよ。ティアラ、見つかるといいね」

 

「はい。早く見つけないと……」

 

 スカーレットがつぶやく。

 早く見つけて安心したいのだろう。その気持ちは分かる。

 

 スカーレットは模範的な優等生だ。勉学に励み、頼まれごとも率先して引き受ける。そして、レースも強い。今日の模擬レースは調子が悪かったようだが、彼女の実力が高いことは周知の事実だ。トレーニングを意欲的におこなうことにくわえて、日頃の態度の良さから、トレーナー間のスカーレットの評価はとても高い。

 スカーレットのトレーナーが、どうやったらスカーレットのようなウマ娘になるのか教えてほしい、と頼まれる姿は学園でも何度も見かけたことがあった。

 

「そういえば、スカーレットのトレーナーは今何してるんだ?」

 

 ピンッと伸びるスカーレットの尻尾。

 スカーレットの目は急に泳ぎ、「あー。えーっと」と口ごもり始めた。

 

 この話題はあまりよくなかったか。

 後悔するトレーナー。

 

 だがそんなトレーナーに気づくことなく、隠しきれないと判断したのか、スカーレットは話し始めた。

 

「私のトレーナーは、今。……休んでます」

 

 消え入りそうな声。だがそれは一瞬だった。

 

「すいません! みなさんには手伝ってもらってるのに。

 でも、本当は今日休みの日だったところを、私が無理矢理練習にしたんです。昨日の昼にグルーヴ先輩に無理言って合同練習に参加させてもらって。だから、トレーナーは休みを返上して付き合ってくれたんです。私のトレーナー心配性だから、ティアラが無くなったっていえばきっと休まず探しちゃいます。だからどうか、私のトレーナーには内緒にしてくれませんか。都合がいいのはわかってます。でもお願いします!」

 

 またも頭を下げるスカーレット。

 しかし、それは先ほどよりも深いものだった。

 トレーナーはそんなスカーレットを見て、間髪入れずに答えた。

 

「そうか。わかった。

 なら、今日中にティアラを見つけないとな」

 

 スカーレットが顔を上げる。

 そこには、笑顔があった。

 

「ありがとうございます!」

 

 優しいウマ娘だ。

 

 スカーレットは安心したのか、ホッと胸をなで下ろしていた。

 

 そんなスカーレットを見て、トレーナーはスカーレットのトレーナーのことを考える。

 基本的に、トレーナー業に休みはない。トレーナーは、担当ウマ娘のスケジュール管理やトレーニングメニューを考えること以外にも、様々な書類の整理や、次レースへの対策、メディアへの対応など、やるべきことが山ほどある。特に中央で活躍するウマ娘を担当するものの忙しさは計り知れない。

 おそらく、スカーレットのトレーナーは今、一日分の書類整理に追われているのだろう。

 

「本当にすいません」

 

「いいんだよ。その気持ち、わかるから」

 

 これはスカーレットのトレーナーの為にも、今日中にティアラを見つけなければ。

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