【完結】チート転生者かと思ったが特にそんなことは無く、森に引き籠もってたら王様にスカウトされた   作:榊 樹

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支援絵を頂きました。作者のテンション上がりまくりです。
https://syosetu.org/?mode=img_view&uid=396196&imgid=100008


柔らかな絵のタッチが凄く好みだし、ビジュアルがマジでイメージ通り。
作者も描いてはいるんですけど、どうしても硬い感じになっちゃうんですよね。


謎多き一般妖精

救世主トネリコ。

記憶を取り戻し、名を取り戻し、そして使命を取り戻した俺が綴る、新たなる伝説の1ページ目は・・・社会勉強から始まった。

 

 

「武具など無粋。真の救世主は・・・目で殺す!」

「いや殺しちゃダメ! 追い払うだけだから!!」

 

 

ここはソールズベリーの外れにある広大な畑。

俺たち救世主一行はオベロンが残した伝言により、ここの管理者である妖精の頼みを聞くことになり、畑を荒らす鳥たちを追い払うことになった。

 

 

「穿て! エクスプロージョン!!」

「だぁから、やり過ぎだっての!! てか、武具は無粋じゃなかったの!?」

 

 

とは言え、力を取り戻した俺に、そこらの害鳥が敵うはずもなく。

周辺被害に気を配りつつ、鳥に当たらないように目や杖から青黒いビームを出している内に鳥たちは我先にと逃げて行った。

 

 

「はっはっはー! どうだ、我が爆裂魔法の威力! 思い知ったかー!」

「なるほど、害鳥はああやって追い払うのですね。参考・・・にはなりませんでしたが、助かりました」

「あ、畑被害を減らしたいなら、近くに案山子(かかし)を作っておいた方がいいですよ」

「かかし・・・ですか?」

 

 

鳥など大したことはないが、何度も駆り出されては他の困っている人達の下へと行けない。

そこで、救世主が出る必要のないものは出ずに済むように対策を教えようと思ったのだが、不思議そうに首を傾げられた。

 

 

「貴女を似せた像のことです。そうすれば、鳥たちは貴女に監視されていると誤認し、まず貴女の像から攻撃します」

「まぁ! そんな方法があったなんて・・・もしや、天才ですか?」

「「ふふ、否定はしません」」

 

 

補足を入れてくれた赤髪の貴公子ことトリスタンさんとドヤ顔していると、後ろから呆れたような声が聞こえてきた。

 

 

「あの・・・エール、じゃなくてトネリコちゃんはまだしも、トリスタンさんも基本はああいった感じですか?」

「いや、まぁ・・・しっかり注意できる相棒がいれば、本当に完璧な騎士になるんだけどね・・・。それに名を思い出したとは聞いていたけど、そっちのトネリコちゃんは随分と聞いてた話と違うというか、その・・・お転婆な感じなんだね」

 

 

お転婆とはなんだ、お転婆とは。

・・・てかナナシ、じゃなくてアルトリアさんも"まだしも" ってどういう意味ですかね。

言っちゃぁなんですけど、多分貴女もコッチ側だよ。

 

 

「え、ちょ、それってどういう・・・」

「ホーちゃん! どう、かっこよかった?」

「う、うん、すごく、かっこよかったよ・・・?」

「ホーちゃん・・・!」

「え、エーちゃん・・・」

 

 

あー・・・・・・好き・・・。

やっぱ、持つべきものは親友だよなぁ。

 

 

「それにしても、ソールズベリーの畑は凄く広いね」

「人間の模倣とは言え、ブリテンの北部では随分前から農業自体は盛んだそうけど、南部では不人気なんだ。現在の領主であるオーロラの指示のもと、やっと本格的に始まったんだって」

「私もここまで広い畑は初めてみました。けど、なんで今まで不人気だったのでしょう」

 

「それは、モースが出ると放棄せざるを得なかったからです」

 

 

なんでも、北部に比べて南部は頻繁にモースが出るので力のある妖精くらいしか町の外へ行けず、そうでなくとも百年周期で起こる"厄災" によって、畑自体をまた作り直す必要があるそうな。

その"厄災" も、助かるのは基本的に女王様のお膝元であるキャメロットに棲む妖精だけ。

ここソールズベリーの領主であるオーロラ様だけはキャメロットへの入城を許可されたものの、他の妖精に許可が降りず、それでオーロラ様も入城を拒否した結果、女王様の怒りに触れてオーロラ様の入場許可も取り消されたのだとか。

 

 

「そうですか、貴女も女王にご不満を・・・。近頃は反女王運動も各地で起きていますが、そちらに参加されたりは?」

「え・・・・・・い、いえ、別にそこまでは・・・。"厄災" は恐ろしいけれど、女王陛下の軍隊の方がもっと恐ろしい。特に、訓練された妖精の兵士たちと、それらを指揮する女王の加護を受けた騎士―――妖弦のトリスタン、太陽のガウェイン、湖光のランスロット、そして隻眼のベディヴィエール。あの4騎の妖精騎士が居る限り、女王陛下に逆らうことはできないのです」

 

「―――は?」

「―――え?」

「―――なんて?」

 

 

隻眼のベディヴィエール・・・うっ、頭が・・・!

 

 

「エーちゃん・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

場所は変わってマイクの酒場。そこで予言の子一行は重々しい空気のまま、机を囲んでいた。

 

 

「緊急会議を開きます! 議題はもちろん妖精騎士! 女王モルガンに仕える4騎の妖精騎士だ!」

 

 

そんな訳で急遽始まった円卓(机)会議。

アルトリアにより、妖精國では常識とも言える妖精騎士についての説明がされ、"円卓" という言葉に反応した立香たちに疑問を抱いたアルトリアが汎人類史での自身の同一存在が成した偉業を知って硬直するなどのトラブルがありつつも、話は当事者とも言えるトリスタンを中心に進んでいった。

 

 

「"妖精殺し"、"血の踵"・・・なるほど、そちらの私はそのような・・・」

「でもトリスタンさんは真逆の方です。立香とともに戦うアナタの姿は、なんていうか、嵐の中の花のようで。どんなに激しい状況でも姿勢を崩さず、凛とした姿で、自身の最善を尽くす・・・この國では、そういう方は本当に少ないのです。違う世界の私とはいえ、トリスタンさんのような方に信頼してもらえていたと思うと励みになります」

 

 

そんな、トリスタンにとって最重要でもあった妖精騎士トリスタンについての話はアルトリアによっていい感じに締めくくられ、笑みが漏れたトリスタンは続いて自分と同じくらい重要な親友について尋ねた。

 

 

「隻眼のベディヴィエールは・・・一言で言うと、謎の多い騎士です」

「謎、ですか・・・?」

「はい。どんな妖精なのか、今まで何処で何をしていたのか、その経歴を知る者は本人と女王モルガンだけと言われています」

 

 

基本的に城の中に居て、姿を現すのも仕事としてキャメロットの城壁に出て来た時だけ。それも空を駆けて行き来し、街から城壁の上はあまり見えないものだから、その姿を見れるのは空を駆けていく一瞬だけ。

 

それでも尚、その名が知れ渡っているのは、妖精國の者であれば、誰もがその光景を目にしたことがあるから。

 

 

「光の矢・・・」

「何処からともなく降って来ては、モースを跡形もなく消し飛ばす天の光。キャメロットに響く轟音と共に、ブリテンを翔ける一条の閃光。古くからブリテンを守って来た平和の光は、けれども・・・ここ数年でピタリと消えてしまいました」

「それは・・・なぜ?」

「分かりません。なんせ、元より情報の少ない騎士です。何処で何をしているのか、それを知る者は女王モルガンだけで、それでも明確な解答は避けているらしく・・・。中には、妖精騎士ベディヴィエールはもう死んでいるのではないかと、そういう噂が流れるほどです」

 

 

黙り込むトリスタンに、重苦しい空気がその場を支配した。

全くの別人とは言え、ベディヴィエールという名はトリスタンはもちろん、カルデア組にとっても一時期を共にした仲間であり、その思い入れは大きい。

 

そんな人物と同名の存在に何か良からぬことが起きたかもしれないのだ。

それが冷酷で恐ろしい女王の配下をしているとなれば尚のこと。もしかしたら、妖精騎士ベディヴィエールのあまりの人気を危惧した女王の手によって、既に処刑されているかもしれない。

 

他ならぬ、モルガンの悪辣さに振り回されて来た円卓の騎士であるトリスタンは、そう思わずにはいられなかった。

 

 

「大丈夫です・・・!」

 

 

そこへ、聞き覚えのある脳天気な声が響いた。

気にしている余裕が無かったとは言え、何故かずっと黙っていたトネリコの声だった。

 

 

「モルガン様は、お優しい方です! それに、妖精騎士ベディヴィエールはモルガン様(いち)の騎士! 処刑なんて、そんなこと有り得ません!」

 

 

ちょっと聞き逃せない単語が幾つか飛び出したことで、頭の回転が最も早いダ・ヴィンチちゃんが、慌てながらトネリコへと詰め寄る。

 

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待って・・・え、なに? 君は妖精騎士ベディヴィエールについて、何か知っているのかい?」

「? そりゃ勿論ですとも! 誰よりも詳しいです! なんたって、俺は・・・俺は・・・・・・あれ? なんで知ってるんだっけ?」

 

 

なんとも不確かで、頼りにならなさそうな情報源ではあるが、それでも今は少しでも情報が欲しいダ・ヴィンチちゃんは、情報の真偽はそういうのがお得意な探偵様に任せるとして、疑問に思ったことを質問し始めた。

 

 

「女王モルガンが優しいって・・・君は会った事があるのかい?」

「はい! 昨日も会って、それから・・・・・・あれ? 昨日だっけ? 一昨日? もっと前・・・? うーん、もしかしたら明日?」

「どんな感じの人物か、印象だけでも覚えていたりはしない?」

「どんな感じ・・・どんな・・・・・・・・・甘えん坊?」

「ぶふっ」

 

 

誰かが吹き出し、そちらを向けば、そこには真顔のトリスタンが。

 

 

「・・・あと、凄く親バカです! あ、でもあの子は今反抗期で・・・ぐぬぬ、眼帯引っ張ったの許さないからな・・・!」

「ちょ、本当に待って! 次から次へとツッコミどころ満載な情報を投げ付けないで! 立香ちゃん、ホーちゃん、代わりにツッコんでて!」

「なんでやねーん!」

「え、ぁ・・・な、なんでや、ねーん・・・!」

 

 

ホーちゃんを撫で繰り回し始めた立香は置いといて、尋問は続く。

 

 

「眼帯・・・そうだ、ずっと気になってたけど、怪我の治りが早い筈の妖精の君が、眼帯を付けてるのには何か理由があるの? それともただ見えないだけ?」

「・・・ふっ、これは我が抑え切れぬ邪悪なる魔力を封印するための術式。例え、びっくりメカメカ幼女と言えど、そう簡単に―――」

「そういうの今は本当にいらないから、真面目に答えて」

「あっ! あぁぁぁ! すみません特になんでもありません! 単にお洒落で着けてるだけ―――ア゛ア゛ア゛!! イイッ↑ タイ↓ 目ガァァァ!!↑」

 

 

のたうち回りながらも、何かとてもデジャブを感じるトネリコであったが、嗜虐的な笑みを浮かべる赤い少女が脳裏を過った時点で思い出すことをやめた。

 

 

「えーっと、なんだっけ・・・あー、そうだそうだ。妖精騎士ベディヴィエールが女王モルガン(いち)の騎士ってのは、どういうこと?」

「・・・? どうも何も、自他ともに認める事実では? 娘公認ですし」

「・・・・・・そっ・・・かぁ。自他ともに、認めてるのかぁ・・・。・・・・・・うーん・・・私は今、自分でも鼻で笑ってしまうような仮説を立てているんだけど・・・いや、今はよそうか。変に話が拗れたら面倒だし、もっと決定的な証拠を得てからにしよう」

 

 

頭を(ひね)り、うんうんと(うな)っては、何も考えてなさそうなトネリコを見て、有り得ないだろと首を振るダ・ヴィンチちゃん。

そして、滅多に開かない目を開き、トネリコへと熱い眼差しを送るトリスタンと、相変わらずホーちゃんをぽふぽふしてる立香。

 

情報を整理したいということで、頭を抱えたまま部屋へと戻るダ・ヴィンチちゃんの言葉を最後に、今日の会議はこれでお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

一方その頃、キャメロットのとある一室では・・・。

 

 

 

「~~~~ッ!!」

 

 

枕に頭を(うず)めた女王様が、ベッドの上で足をジタバタさせていた。

 




もうアホの私服はコッコロ衣装でいいかなって・・・。
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