【完結】チート転生者かと思ったが特にそんなことは無く、森に引き籠もってたら王様にスカウトされた 作:榊 樹
でも、まぁ立ち絵は思いっ切りメカ背負ってるし・・・辻褄が合わないこともないんだけど・・・。
特に伏線とかではないので、ギャグ補正的なアレと思ってください。
頼られることが、嬉しくて。
誰かの役に立つのが、生き甲斐で。
困ってる人が居たら、手を伸ばさずにはいられなくて・・・。
そんな私の"目的"が苦痛に変わったのは、いつからだろう・・・。
『ごめんなさい、ごめんなさい・・・』
無理難題を押し付けられて、出来なかったら責められて。
次は失敗しませんから、もっと上手くやるから、と。
痛くて、苦しいのに、そういう生き方しか知らないから、変わることも出来なくて・・・。
『ごめんなさい、ごめんなさい・・・』
失敗ばかりで、誰にも必要とされなくなって・・・。
そうして、誰からも頼られなくなって、誰の役にも立てなくなった私は・・・徐々に自分を失っていった。
『あれ・・・私の、名前って・・・・・・なん、だっけ・・・』
そんな出来損ないの妖精に居場所なんて、何処にも無い。
何処に行っても追い出され、除け者にされ、最後に辿り着いた嫌われ者が集まる村すらも、私に居場所なんてなかった。
それでも、前と比べたらみんな優しくて、私を頼ってくれて、失敗しても許してくれて・・・また、頼ってくれる。
例えそれが、同情から来る優しさだとしても。
本当は私の事なんて、これっぽっちも頼りにしていないと分かっていても。
それでも、どうしようもなく嬉しくなってしまう自分が惨めで、大嫌いだった。
『あれ・・・屋根、あったっけ・・・?』
そんな時、出会ったのが彼女だった。
家とは名ばかりの廃墟。柱が崩れ落ち、ボロボロに朽ち果てた家の成れの果て。
そんな私の唯一の居場所に建っていた、見違えるほどに立派なお家。
その中にあったベッドの端っこで、何かに怯えるようにして布団にくるまっていた一匹の妖精。
『ひっ・・・ぁ、ぁの・・・何か・・・御用、でしょうか・・・? みなさんの家なら、また明日、修理しますので、だから、あの・・・俺の・・・家は、あんまり壊さないで、いただけると・・・』
『ぇ・・・あっ、ご、ごめんなさい・・・昨日まで、こんな立派なお家なんて無かったから、気になっちゃって・・・。す、すぐに、出て行きます・・・。邪魔しちゃって、ごめんなさい・・・』
もしかしたら、ここへ新しく来た妖精だろうか。
理由がどうであれ、私なんかにこんな立派なお家に住む権利なんか無いので大人しく身を引こうとすれば、お布団の隙間から手が伸びて来て引き止められた。
『・・・ぇ、えっと、も、もしかして・・・ここに、住んでた・・・妖精・・・?』
『ぇ、はい・・・ぁ、でも・・・か、借りてただけって言うか・・・わ、私は、大丈夫ですので。この村に居られるだけで、私は満足ですから・・・』
あーぁ・・・また、居場所が無くなっちゃったなぁ・・・。
言葉とは裏腹に、いつものようにそうやって諦めてた私に、けれどもお布団に身を包んだ彼女は手を離してくれなかった。
『じゃ、じゃあ・・・一緒に・・・住む・・・?』
『へ・・・?』
家を建てたのは自分で、でもここに住んでた私に申し訳ないからと、そう言われて最初は遠慮しようとしたけど・・・優しくされたのが初めてだったから、誰かが手を差し伸べてくれたのは初めてだったから・・・。
目からポロポロと何かが流れ落ちて、喋ることすら出来なくなった私を、エーちゃんは優しく抱き締めてくれた。
◇
エーちゃんという初めてのお友達が出来てから、私の生活はガラリと変わった。
任された仕事も、偶に失敗することはあるし、やってる時の記憶があんまり無いけど、それでも気付いたら終わってて、村のみんなもいつもと違って怒らなくなった。
家に帰ったらエーちゃんがいつも出迎えてくれて、偶に虫料理って言うのかな? それを振る舞ってくれて。
楽しくて、毎日が幸せで。
あぁ、生きててよかったなぁ・・・って、そう思えるようになって・・・。
だから、その幸せがエーちゃんの頑張りで成り立っていたことに気付いた時、私は真っ先にお礼を言おうとした。
ずっと、影から支えてくれてて、ずっと、影から見守ってくれててありがとうって。
何か、私からも返してあげたくって・・・。
でも・・・。
『えっ゛・・・い、いやー、知らないなー、なんの事だろうなー・・・そ、それより、ホーちゃん、おかえり!』
何か理由があるのか、誤魔化そうとする貴女に、深く聞くことができなくて。
結局、私はただ"ありがとう"と、それだけを言うしかなかった。
『? ・・・うん! 俺も、ありがとうね!』
無邪気に笑って、そう言う貴女に、胸が締め付けられた。
心からの感謝が伝わらないことが、こんなにも辛い事だったなんて、知らなかった。
初めて言われた"ありがとう" の言葉が、こんなにも痛いなんて知らなかった。
けれど、貴女が本当に嬉しそうに笑うものだから、私も笑うしかなくて・・・。
それでも感謝を受け取ってもらえないのは辛かったけど、それ以上に楽しいのは本当だった。
みんなが私を、貴女が私を必要としてくれるから。
そこに自分の力で手に入れたものなんて何一つ無いけれど。
全部、貴女に用意してもらった幸せばかりだけど。
貴女がありがとう、とそう言ってくれるのが本当に嬉しかったから。
だからね、エーちゃん。
『我が名はトネリコ! ブリテンを守る、救世主なり!』
貴女が自分の名前を思い出して。
貴女が、今まで見たことないくらい、イキイキしてるのを見て。
貴女が、どんどん私を置いて行っちゃってさ・・・。
『ホーちゃん! どう、かっこよかった?』
自分の目的のために突き進む貴女が、私には眩しくて、羨ましくて仕方が無かった。
私には無いものを全部持ってる貴女が、妬ましくて仕方が無かったんだ。
ねぇ、エーちゃん。
私には、貴女しか居ないんだよ。
もう、貴女無しじゃ生きていけないの。
貴女が、私の傍から離れていくのが、何よりも辛くて、苦しいの。
私には、貴女が必要なのに・・・。
私には、貴女しかいないのに・・・。
エーちゃんは別に・・・私なんて、最初から必要無かったんだね。
◇◇◇
「これは完全に私たちの都合だが・・・アルトリア達はどうする?」
「ここまで来たら、最後まで付き合いますよ」
「俺も当然! 助けを求める所にトネリコあり! 今回もチャチャッと解決しちゃうぞー!」
「・・・・・・」
拠点としている宿屋にて。オーロラの従者であるコーラルから、はぐれたマシュが居るかもしれない人間牧場の情報を聞き付けた立香達。
ダ・ヴィンチちゃんの言葉に、アルトリアとトネリコは当たり前のようにそう言って、けれどもホーちゃんだけは黙って俯いていた。
それを心配そうに見詰めるトネリコは、どうしたのかと近付く。
「ホーちゃん・・・? ど、どうかしたの・・・?」
「・・・・・・」
「あっ・・・え、えっと、大丈夫だよ! どんなに強い妖精が来たって、ホーちゃんだけはこの俺が絶対に守るから! なんたって、俺は救世主トネリコ! 例え、相手が妖精騎士だろうと、ギッタギタのメッタメタに・・・」
「・・・うるさい」
「・・・え、ほ、ホーちゃん・・・?」
聞き間違いか。
低く、冷たい声で放たれた、突き放すようなその言葉に、トネリコは自分の耳が信じられず、震える手を伸ばそうとして・・・・・・パチンという音を立て、ホーちゃんに打ち払われた。
「うるさい・・・うるさい・・・うるさいうるさいうるさい! なにがエーちゃんだ! なにがホーちゃんだ! 出来損ないの私を見るのがそんなに楽しかったか!?」
「え・・・」
突如、豹変して、今まで聞いた事のない怒鳴り声を上げるホーちゃんに、トネリコはただ呆然とするしかなかった。
「もうウンザリなんだよ! こんな馬鹿みたいなお友達ごっこは! ずっと、ずっと陰で笑ってた癖に! 私の思いなんかなんにも知らない癖に!」
「ホー・・・ちゃん、なにを・・・」
「バレてないとでも思ってたの!? 本当に気付いてないとでも思ってたの!? それとも、どうせまたすぐに忘れるだろとか思ってたんでしょ! アンタが私に頼まれてた仕事を横取りしてたことなんか、全部全部覚えてるっつーの!」
「ち、ちが・・・そ、そんな・・・つもり、は・・・」
「だって出来る訳ないもの! 私が誰かの役に立つことなんか、出来る筈がないもの! 何百年もずっと、ずっと無理なこと押し付けられて・・・! 何度も何度も痛い思いをして・・・! それが出来たら、名前を捨てることなんて無かった!こんなに苦しい思いをしなくて済んだんだ! 」
「ひ、ひっぐ・・・ちが・・・ちがう、もん・・・ホーちゃん、は・・・」
「エーちゃんはいいよね! トネリコなんて素敵な名前があってさ! 救世主とかいう立派な目的を思い出せてさ! それに比べて私は・・・は、ははっ・・・あはははっ! 何これ! カスじゃん! ゴミ同然じゃん! 一体なんの為に生まれてきたのよ私は! 散々利用されて! 使えなくなったらあっさり捨てられて!
ケタケタと笑い泣きしながら、その身が黒く染まっていく。
ソレは狂った妖精の成れの果て。救世主の倒すべき悪の象徴。
変わり果てた友達の姿を、その場に座り込んだトネリコはただ呆然と見ていることしか出来なかった。
「・・・構えて。彼女は、もう・・・妖精ではなくなりました・・・」
「あれが・・・モース・・・」
「そう。最早、語ることも聞くことも出来なくなった生命。ただそこにあるだけで世界を汚す藻。・・・妖精を殺す、ブリテンの呪いです」
アルトリアの号令に、予言の子一行はそれぞれ武器を構える。
止めるためでも、救うためでもなく。ただ、目の前の敵を殺すためだけに。
「っ!」
立香がトネリコを回収して、宿屋の一角で戦闘が始まる。
しかし、所詮は多勢に無勢。
理性無き呪いの塊が、幾度の死線をくぐり抜けた戦士に敵うはずもなく、追い詰められたモースへとトドメを刺すべく、トリスタンが弓に手をかけ、アルトリアが魔術を発動しようとして・・・。
「・・・っ!? あ、ちょ、トネリコちゃん!」
だからこそ、立香に抱えられ避難していた筈の彼女の行動は予想外だった。
正直、暫くは動けないくらいの精神的ダメージを受けていると思っていた。
けれど、トネリコはそれでも確かに、今こうしてアルトリア達の前に立ちはだかった。
「な、何を・・・!? 」
驚くアルトリア達に、それでもトネリコはその場から動こうとはしない。
怖いだろうに震える足で踏ん張って、涙を一杯に溜めた両目で、アルトリア達をそれでも力強く睨み付けた。
「だ、だめ・・・! ホーちゃん、を・・・虐めないで!」
「早くそこから離れて下さい。お気持ちは分かりますが、トネリコさん・・・ソレはもう、貴女の知ってる子では・・・」
「分かってる、分かってるよ! もう、ホーちゃんが・・・俺なんか覚えてないことも・・・。俺の事が嫌いだったってことも・・・全部、分かってるから・・・!」
「では・・・!」
「でも・・・友達だもん! 初めて出来た、俺のたった一人の友達だもん!! 」
悲痛な表情で目を逸らしているアルトリアはまだしも、トリスタンならばトネリコを躱してモースのみを射ることなど容易だった。
迷いはある。目の前で大切な人が死ぬ苦しみ、痛いほどよく分かる。けれど、それをしなければ、今度はトネリコが呪いに犯されてしまう。
例え、本人が望まぬ事だとしても、騎士としてやらねばならぬ時がある。
「どれだけ、ホーちゃんに嫌われてても・・・。仲良しだって思ってたのは、俺だけでも・・・。それでも、俺にとってホーちゃんはたった一人の大切な友達なんだ! 」
弓を引き絞り、照準を合わせ・・・・・・モースの異変に気付いたトリスタンは、弓を下ろした。
「・・・・・・」
それは、トネリコをジッと見たまま動かないモースの姿だった。
攻撃どころか、動くことすらなく。その奇妙な両の眼は自身を守ろうとするトネリコへと向けられ・・・。
「・・・・・・■■■◾︎■・・・」
そして、何かを呟くと黒い粒子となって散っていった。
「っ!? ・・・ほ、ホーちゃん・・・?」
声に気付いて、トネリコが振り返る。
しかし、そこに、守りたかった者の姿はなく・・・。
あるのはただ、無機質な部屋の壁だけだった。
「ぁ、ぁれ・・・ね、ねぇ、ホーちゃん・・・? ど、何処に、居るの・・・? ねぇってば!」
ホーちゃん、ホーちゃん、と。
迷子になったかのように何度も叫んで、叫んで・・・そして、何が起きたのか理解して。
崩れ落ちるトネリコへと立香が駆け寄り、抱き締めた。
「うっ・・・ぐすっ・・・うぅぅ」
「ごめん、ごめんね・・・! こんな事しか、出来なくて・・・!」
「ぅぅ・・・うわぁ゛ぁぁ゛ぁあぁん!! ホ゛ぉ゛オォぢゃぁ゛ぁぁ゛あぁ゛ぁ゛ん!! 」
「ごめんッ・・・本当に、ごめん、ね・・・!」
友を救えなかった救世主の後悔が、悲しく響き渡った。
因みにオーロラへの謁見に関しては、直前になって謎の腹痛に襲われ、トネリコは欠席。ホーちゃんもその付き添いで欠席したので、ほぼほぼ原作通りです。