【完結】チート転生者かと思ったが特にそんなことは無く、森に引き籠もってたら王様にスカウトされた 作:榊 樹
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余談ですが、オーロラ様の声を思い出そうとすると脳内に"しんこちゃん"が出て来るのは作者だけでしょうか。
人間牧場からの脱出に成功した予言の子一行が次に訪れたのはグロスター。
マシュらしき人物がオークションに賭けられるとのことで訪れてはみたものの、競りに出されたのは何故か囚われていた異星の神の使徒こと千子村正。そして妖精騎士トリスタンとの勝負。
流石に大立ち回りし過ぎた所為もあり、街へ寄るのは危険だと判断し、オベロンが所有する土地 ウェールズの"秋の森"へとやって来た予言の子一行。
途中で村正の事情を説明することとなり、"後になって敵だったのか" だの、"信じてたのに" だの言われるのも面倒だからと了承した村正であったが、妙な空気が流れた予言の子一行に首を傾げることとなった。
唯一、妖精騎士ベディヴィエールのことを最初から知っていたオベロンによって今まであったことを軽く説明され、既に裏切られた後だと知った村正は呆れつつも、当初の目的通りに"秋の森" へ到着。
そこで出会ったのは虫の姿をした妖精たち。
その見た目と言葉も喋れぬ知性の低さから他の妖精だけでなく女王にも嫌われ、除け者にされたオベロンの大切な領民たちだった。
「どうだい? ここがどんなに見放された土地でも、"予言の子" は来てくれるんだ。僕は嘘つきじゃなかったろ?」
少し誇らしげに虫妖精たちへそう言うオベロン。
その言葉を皮切りに、予言の子一行へと群がる妖精たち。
それぞれが思い思いに過ごす中で、何故かやたらとアルトリアの人気が高かった。
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その言葉の意味を分かる者は少なかったが、その数少ない理解者であるアルトリアは、その名前に目を見開いた。
動揺しつつも、手を引っ張られて案内された先は、アルトリアと瓜二つな容姿がプリントされたグッズの数々が並べられた異様な景色。
「えっ゛・・・」と思わず汚い声が出たアルトリアに構わず、虫妖精たちは嬉しそうにグッズを見せて来た。
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それはコスプレ服であり、フィギュアであり、布団に抱き枕であった。その他にもコップやポスター、中には銅像まであって、なんかもう・・・十中八九、自分のことじゃないだろうけど、瓜二つなもんだから色々と恥ずかしくなったアルトリアであった。
「うわすっご!? これまんまアルトリアじゃん! こっちは陶磁器のコップに、これポスター!? しかも銅像まで・・・どれも凄い精巧に作られてて、中々お目にかかれない一級品ばかり・・・・・・う、うへへ、すご・・・・・・ん? ちょっと待って、これ君たちが作ったの!?」
グッズに食い付き、美しき顔をちょっとよろしくない感じに崩して涎を垂らしていたダ・ヴィンチちゃんだったが、なぜこんなものがこんな所にあるのかと考えた瞬間、その顔は驚愕に変わった。
しかし、知性の低い虫妖精にそんなことはもちろん出来ず、では誰が作ったのかと言えば、その答えはオベロンが代わりに答えた。
「君たちのよく知る、妖精騎士ベディヴィエールが作ったものだ」
「妖精騎士・・・え、もしかしてあのトネリコが!?」
本人が居れば、"あの"ってどういう意味かと憤慨していた所だろうが、生憎とこの場にダ・ヴィンチちゃんの言葉に異議を唱える者は居なかった。
「街で"英雄様"って言葉を聞いたことは無いかい? 杖を片手にマントを靡かせた
「それって・・・もしかして、"予言の子" のこと?」
「いや、その辺は少し複雑でね。広めた本人も不本意だったろうが、救われる側からしたら"予言の子" と"英雄様"が同一人物かは重要じゃない。噂話に尾鰭が付いて、結果的に同一人物だと言われるようになってしまったが、
「・・・なるほど、それを広めたのが妖精騎士ベディヴィエールってことか」
立香が相槌を打つ傍らで、グッズの作成者は誰かと思考をフル回転させていたダ・ヴィンチちゃんが素早く答えに辿り着く。
けれど、自分で結論付けておいて、ダ・ヴィンチちゃんはやっぱり不満顔。よほど自分の結論に納得が行ってない様子だった。
だってそうだろう。
妖精騎士ベディヴィエールは女王の忠実なる
ハッキリ言って、ただの馬鹿か、破滅願望持ちの狂人としか思えない。
それとも、そうやってこちらの思考を撹乱するのが目的なのか。
抱く疑問に対して、あまりに情報が少な過ぎたダ・ヴィンチちゃんは、再び思考の闇へと沈もうとしていた。
「あの子に長く関わってきた先輩からのアドバイスだけど、あまり深く考えない方がいいよ。アレに関しては、理路整然とした論理的で建設的な理由を求めるだけ無駄だから」
「・・・何故か、納得できてしまう私が居る」
「理由なんて単純なのさ。ほら、君達の世界にも居るだろ? ある特定の物事が好き過ぎるあまり、周囲にも好きになってもらいたがる・・・所謂、オタクっていう人種が。アレは
「・・・布教?」
「そうそれ! 彼女はそれをやってるだけさ。秋の森に彼女が来ていたのもその一環」
そうして見事布教され、英雄様大好きになったのが秋の森の妖精たち。
彼らは今、オベロン達の長話に飽きたのか、村正に作ってもらった小道具でごっこ遊びをしていた。
「彼らが今やってるのも、妖精騎士ベディヴィエールが伝えた物語の一つ。数ある英雄譚の始まりのお話。モースの群れに襲われて絶体絶命の妖精の前に現れ、瞬く間にモースを蹴散らしていった出会いの物語」
悪役となったレッドラ・ビットに、大勢のコスプレをした虫妖精達が群がる。それはどちらかと言えば、リンチに近い光景であったが、まぁ本人達が楽しそうなので良しとする。
「森へ来た彼女は、本当に楽しそうに話しててね。彼らも彼女の話を聞くのが大好きだった。だから・・・僕は出来ることなら、彼女に記憶を思い出して欲しくはなかった。いや、確かに最初は彼らとの記憶が消えることを悲しんだけど・・・。それ以上に、記憶を失ってた方が彼女は幸せなんじゃないかと思ってね」
「そうか、このままだと"予言の子" とモルガンは敵対するから・・・」
「彼女がモルガンを裏切ってこちら側に付いてくれるのならそれも良し。でもモルガンは恐ろしい魔女だ。その怖さは、女王歴の初期からモルガンに仕えている彼女が誰よりも知っている筈だ。ならいっそ、全てを忘れてしまった方が彼女は・・・」
「・・・ん? ちょっと待って、今なんて言った?」
急に静止してきたダ・ヴィンチちゃんに、何かおかしなことを言ったかとオベロンや他の面々は首を傾げる。
「初期・・・女王歴の初期から仕えてるだって? 彼女が? 妖精騎士ベディヴィエールが?」
「? うん、そうだけど・・・・・・あぁ、なるほど。そういうことね」
合点が行ったのか、"うんうん、分かるよその気持ち"と一人頷くオベロン。
けれど、未だによく分かってない組は、立香が代表してダ・ヴィンチちゃんへと質問した。
「え、なに・・・? ダ・ヴィンチちゃん、何がそんなにヤバいの?」
「立香ちゃん、今が女王歴の何年かは分かる?」
「えっと・・・2017年・・・・・・あ」
自分で言ってその異常性に気付いたのか、立香も声を上げる。
そしてそれを見たオベロンは、深く深く頷いていた。
そんな二人を他所に、ダ・ヴィンチちゃんは顔を青くし、震えながらも言葉を紡ぐ。その事実を噛み締めるように。信じがたい事実を必死に受け入れるかのように。
「彼女は、妖精騎士ベディヴィエールは・・・一体、何千年生きてるんだ?」
それだけ生きてアレなの? と、ダ・ヴィンチちゃんの中でさらに謎が深まった瞬間であった。
布教されて英雄様大好きになったけど、オタクにはならなかった虫妖精さん達でした。
でも貰った物は大切にしてます。