【完結】チート転生者かと思ったが特にそんなことは無く、森に引き籠もってたら王様にスカウトされた   作:榊 樹

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これまたオシャレなイラストを頂きました。
https://syosetu.org/?mode=img_view&uid=252261&imgid=99955


ステータスについて、HPの方は厄災(8931)、Atkはトネリコ(10265)という風に語呂合わせをしてるようです。こういう小ネタ好き。


奇跡

グロースターでの妖精騎士トリスタンとの一件。その時のアルトリアの勇姿に魅せられたという妖精"根無し草のガレス"が新たな仲間となり、予言の子一行は数日以内に起こるであろう"厄災" を解決するために、空に雲のような"厄溜まり" が渦巻くノリッジへと向かうこととなった。

 

出発前に虫妖精から"エールに見せてあげて"と貰った実用性抜群のコスプレ衣装を身に纏い、イメチェンして()()()なったアルトリアを筆頭に"ウェールズの森"から出発。

 

道中、"涙の河"にほぼ全員が引きずり込まれたりなどのトラブルが有りはしたものの、無事にノリッジへと到着した一行は情報収集を兼ねた観光を楽しんでいると、突然広場のほうが騒がしくなった。

何事かとそちらを見てみると、そこには黒い鎧の"予言の子"がノリッジの領主である"スプリガン"に饗されていた。

 

アルトリアを本物の"予言の子"とするならば、そちらは明らかな偽物だが、その身に宿す魔力は妖精騎士と同等かそれ以上。

しかし、それ以上に驚くべきなのは件の"予言の子"が立香たちカルデア組の仲間である"マシュ・キリエライト"であったこと。

 

居ても立っても居られなくなった立香はマシュの前まで行き、声を掛けるが、肝心のマシュには立香との記憶が無かった。未だ、"名なしの森"の呪いが解け切っていなかったのだ。

 

それでもと記憶を思い出してもらおうとする立香だったが、"予言の子 ギャラハッド"を利用する気満々のスプリガンによって、それでは困ると言わんばかりに阻止されてしまい、渋々引き下がる立香。

その後、スプリガンの手の者に襲撃されるといった騒動があったものの、色々あってこの異聞帯へと来ていた"ペペロン伯爵"こと"スカンジナビア・ペペロンチーノ"に助けられ、一先ず彼の屋敷へ。

 

そこで一日休めたものの、翌日には海から突然モースの大群が出現。十や百どころではない。千を超える群れがぞろぞろと海から這い上がり、ノリッジへと侵攻していた。

 

あまりにも唐突な"厄災"が始まったのだった。

 

 

 

 

 

けれど、こんな所で躓かないのが我らが最後のマスター。

記憶を取り戻したマシュと共に"厄災"を払い、無事に一件落着・・・のように見えたが、空に渦巻く"厄溜まり"と思っていたものが突如として牙を剥いた。

 

"厄溜まり"が中心へ吸い込まれ、空が水面を映し出す。

シンと静まり返った空の中心に波紋が広がると、そこから雷のようなものが降って来て、唯一素早く反応したマシュが皆を庇い消える。

あまりにも突然で一瞬の出来事に、しばらく状況が理解出来なかった一同。

 

だけど大丈夫。マシュは消えたけど、消滅した訳じゃない。

空に渦巻き、マシュを消し飛ばした謎の"厄災"。しかし、それはモルガンが用意していた対厄災用の大魔術 "水鏡"。

そう、マシュは消滅したのではなく、過去に飛ばされたのだ。

 

今から約2400年前の、まだ妖精歴が存在しない過去のブリテン島に。

空想樹が演算した、決して現実にはならない"もしも"の時代へと・・・。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

でも、心配することはありません。

だってその時代には、神代の魔術師と謳われた妖姫モルガンの知識を受け継いだ救世主トネリコが居るのですから。

タイムスリップと似たようなことをするのなんて、朝飯前です。

 

でもそんなことを知らないマシュは、最初は自分の身に起こった出来事に困惑するけど、"水鏡"の反応を感知してやって来たトネリコ達と行動を共にすることになります。

 

そして、短い間だけど一緒に旅をして、未来のことも少しだけお話して、ブリテン島の謎だった大穴の調査に行ったり、結局未来は変えられなかったりと、苦しくも楽しい毎日を過ごして・・・そうして、その時がやって来るのでした。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初代妖精騎士ギャラハッド。

未来を生きる、盾の少女マシュ・キリエライト。

 

今まで歩んで来た道に比べれば、小道のように短く、けれど確かに背中を任せられた心優しい少女。

 

 

━━━━━━━妖精騎士ですか? えっと、確か・・・妖精騎士ランスロットに、ガウェイン、トリスタンに・・・それから、私は見た事ありませんが、妖精騎士ベディヴィエールの四名が居ると聞きました。

 

 

そんな彼女を未来へ返すために封印した帰り道。

優しさを捨て、"救世主 トネリコ"が本当の意味で死んだ終わりの道を、モルガンは一人歩く。

 

脳裏に過ぎるのは、マシュから聞いた未来の情報。良くない事だと分かっていながらも、聞かずにはいられなかったその者の名前。

 

 

 

「・・・・・・」

 

━━━━━━ む、村のみんなを、た、助けてくれて・・・ありがとうございました!

 

 

思い出すのは、未だ色褪せぬ一人の少女。

赤と青のオッドアイと銀髪が綺麗な妖精の少女。

挫けそうになる心を、絶望しそうになる心を、何度も何度も、何度だって救ってくれた小さな英雄。

 

そんな彼女からもらった大切な贈り物。初めてもらったプレゼント。

何百年もずっと大切にしてきた胸のリボンへと手を伸ばす。

 

 

「・・・・・・」

 

 

生きていた。生きていてくれた。

もう、会うことすらできないんじゃないかと思ってた。

もう二度と、あの声が聞こえないんじゃないかと思ってた。

 

その優し過ぎる心に付け込まれて、ボロボロになるまで利用されて、動けなくなるまで弄ばれて、最後はゴミのように捨てられて・・・そして次代が生まれ、また繰り返して・・・。

 

そうさせるつもりなんて微塵もないけれど。世界は残酷なまでに、優しいあの子達へと牙を剥くから。

だから、マシュの話を聞いた時、自身の願望が多分に含まれた考察だけれど、それでも確信できた。

あの子が未来の自分の側にいる理由も、モルガンがベディヴィエールという名を与えた理由も・・・そして、眼帯を付けている理由すらも容易に想像できた。

 

なんせ、あんなに綺麗で、美しくて、輝いていたのだ。そりゃ、誰だって欲しくなるし、あの糞妖精共なら、目玉をくり抜いてでも奪い取ろうとするに決まっている。

それこそ、人間に比べて遥かに再生能力の高い妖精の体が治すことを諦めるほどに、何度も何度も・・・。

 

その事実に、心の奥底でドロリと粘着く怒りが煮え滾る。

でも、それ以上に・・・枯れ果てた筈の涙が目に溜まるほどの悲しみが、心を覆い尽くした。

 

 

「あぁ、会いたかったなぁ・・・」

 

 

声に出すつもりなんてなかった。

この気持ちも、この記憶も、消え果てるその時まで留めておくつもりだった。

だって、堰き止めるので精一杯だったから。少しでも漏れたら、もう・・・我慢できないから。

 

 

「うっ・・・うぁ・・・ぁぁ!」

 

 

本来のブリテンが滅んだ世界を"1回目"とし、それが認められない未来のモルガンが過去改変した結果できた女王歴を"2回目"とするならば、その"2回目"の世界からマシュが来たこの世界は"新しい2回目"の世界。

この"1回目"と"新しい2回目"と言う名の空想樹が演算している仮説の世界は妖精歴の終わりを境に、空想ではなく、現実となった"2回目"の世界に上書きされてしまう。

 

歴史の修正力のようなものだ。

特異点のように、よほど決定的な変化以外は無かったことにされる。何をしたって、妖精歴の終わりは元の"女王歴"に収束するのだ。

 

だからこそ、この世界のモルガンは・・・もうあの子に会えない。

女王歴に"妖精騎士ベディヴィエール"が居るということは、つまりそれ以前の時代に"妖精騎士ベディヴィエール"は存在しないということ。

妖精歴の間、トネリコは、モルガンは、彼女と会うことが出来なかったということに他ならないのだ。

 

 

「うぁぁ゛ぁ・・・ぁあぁぁ゛・・・!」

 

 

今からでも探せば遅くないと、そう思ったとしても・・・これまでの努力がその希望を容易く打ち崩す。

一体、何百年探し続けて来たと思っているのか。それはこの世界のトネリコだけではない。女王歴となったモルガンだって、ずーっとそうだ。

 

でも、それでも見付からなかったのだ。

見付からなかったから、"妖精騎士ベディヴィエール" が()()()に居るのだ。

救世主トネリコではなく、女王モルガンの傍に、居るのだ。

 

 

「ぁぁ゛ァッ゛・・・ぁあ゛ぁぁ゛ッ゛ァ・・・!」

 

 

痛みに慣れているハズの胸が、痛いくらいに締め付けられた。溢れる涙がポロポロ落ちて、腕の中に掻き抱いてクシャクシャになったリボンへと染み込んでいく。

 

一度でよかった。

たった一度だけで・・・よかった・・・。

あの時、私を救ってくれてありがとう、と・・・そう伝えたかった。

 

 

「嫌だァぁ・・・嫌だよぉ゛・・・!」

 

 

なのに、それなのに・・・彼女の名前すら知ることが出来ないなんて・・・そんなの、あんまりではないか。

未来の自分だけが独り占めなんて、そんなのズル過ぎるよ。

 

 

「ぅあぁ゛ぁ・・・! ぁぁ゛あぁぁ・・・!!」

 

 

溢れ出る涙が止められなくて、崩れ落ちた足が立ち上がらなくて。

 

寒くて、寂しいブリテンの端で・・・少女は一人、涙を流し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・英雄、様・・・?」

 




駆け足ですけど、過去編(if世界)はこれで終わり。

この後、現実という名の女王歴に上書きされるまで、トネリコ(モルガン)は全てを放り出してお布団をモフり倒してました。
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