チート転生者かと思ったが特にそんなことは無く、森に引き籠もってたら王様にスカウトされた 作:榊 樹
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インナーに映るお臍の陰は非情に良き。
燃える、燃える。
秋の森が、燃え尽きる。
「
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一つ、また一つと、声が炎の中に消えていく。
実り豊かだった秋の森を、灼熱の地獄へと変えた妖精騎士ガウェインは、女王の命令をただ忠実に遂行し、無抵抗の虫けら共を斬り捨てる。
逃げることが出来ないように予め炎で逃げ道を塞ぎ、追い詰められた虫けらを、
それは普段のモース退治や反逆者の粛清に比べれば、あまりにも容易い仕事だった。
弱者を嬲ることに思う所が無いわけではない。だがそれ以上に、奴らは陛下の逆鱗に触れた。
それが一体なんだったのか、ガウェインには
大方、途中で見付けた予言の子を模した品々を見るに、異邦の魔術師らに加担していたのだろう。
それらの一部は既に燃え上がり、炎が体に燃え移ろうとも必死に守ろうとする虫共のついでに破壊しようとも思ったが、
あの腹黒い土の氏族に見せれば、いつも浮かべる気色の悪い笑みを崩し、涙すら流すのではなかろうかと思えるほどの完成度。
なんとなく、勿体無いな・・・と、そう思った。
心を殺し、任務を遂行していたガウェインですら、一瞬見惚れるほどのそれらを前にして・・・けれども彼女は、握った
「
「
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虫けら共の、相も変わらず意味の分からない悲鳴が、なんだか少し変わった気がした。
だが、それに気付いたのは既に
一振りで周囲を焼き付くし、そこに残るはグッズ共々灰と化した虫けらのみ。
最早、先の悲鳴の意味を答える者は、誰一人として居なかった。
◇◇◇
女王軍、ウェールズの森へ進行中。
その報を受けた予言の子一行は、大至急そちらへ急行したが・・・時すでに遅し。
秋の紅葉で彩られていた森は今や見る影もなく、無慈悲なまでに轟々と燃え上がっていた。
「―――、あ」
それでも、と。
まだ生き残っているかもしれない妖精を助けようと森の中を突き進む。
けれど、そこに居たのは女王軍の兵士と、既に物言わぬ死体となった虫妖精たちだった。
「あ、ぁ―――ああ゛あああ゛あ!! おまえら、お前らァ゛ぁぁ゛!!」
我を忘れたアルトリアが、兵士たちに襲い掛かる。
巡礼の鐘を鳴らしたことで女王軍の兵士すら恐れる魔力をその身に宿したものの、自身を全く
アルトリアを止めようにも、まずは女王軍からと立香たちも応戦する。
そうしてアルトリアの奮闘もあり、撃退することに成功したが、それで治まる怒りではなかった。
「はぁ、はぁ・・・! 逃げるのか、ここまでしておいて逃げるのかぁ!! 許さない、忘れない・・・! みんな、みんな殺しておいて・・・!」
「落ち着いて、アルトリア! 今はウェールズのみんなを助けないと!」
「放して! あいつらが逃げる! 殺さないと! あいつらなんか、あんな奴らなんか、生かしておく価値なんて―――!」
バシン、と乾いた音が響く。
それはアルトリアを正気に戻すために放った立香のビンタの音であり、その衝撃にアルトリアも漸く理性を取り戻した。
「―――あ。・・・・・・ごめん、なさい。私、目の前が真っ赤になって・・・」
「こっちこそ、殴ってごめん・・・。それより、今はみんなを・・・」
「はい・・・以前、彼らが逃げていた木の上なら、もしかして―――」
「無駄だ、掃討はとうに終わった。あとは森を焼き払うのみ。・・・救援に来るのが遅過ぎたな。これが、お前が鐘を鳴らした結果だ、予言の子よ」
少しだけ抱いた希望を、即座にぶった斬ったのは、誰あろう妖精騎士ガウェイン。
彼女の任務はウェールズの森の浄化であるが、既に巡礼の鐘を鳴らし、女王モルガンと敵対することを示した予言の子は敵も同然。
そうして始まった戦闘は、けれども意外なことに妖精騎士ガウェインが劣勢となっていた。
と言うのも、前回散々苦しめられた謎原理の魔力食いはアルトリアが用意した
イーブンとなった状況では、
「くっ・・・! 魔術師を守る小道具とは小癪な・・・!」
「ふん、やられっぱなしで黙ってると思った? 思い知れ、この暴飲暴食の肥満騎士!」
「肥満・・・!? 貴様、私を愚弄するか!」
「あったりまえだ! 何が妖精騎士だ、ふざけんな! 女王の命令に従うだけ、妖精を守ってもいない! あの円卓の騎士を名乗るなんて烏滸がましい! ・・・というか私知ってるし。お前の真名、エクターの伝票に有ったし。心して聞け、そして思い知れ! お前の真名は"バーゲスト"! 黒犬公、雷雲食いの"バーゲスト"! 騎士の真似事はもういいでしょ!? 女王の
そうして、アルトリアによって真名を暴かれ弱体化すると思われたバーゲストだったが、しかしその魔力量は寧ろ以前より増大していた。
それというのも、闇夜を生きる彼女にとって、日中において力を発揮する着名は自身を縛る足枷でしかなかったのだ。
「え、ちょ、
「そこで弱気になるのかよ!? お前さん、ほんと勢いで生きてるな!?」
「いや、アルトリアの気持ちも分かる! どうなってるんだ、真名が判明すれば、霊基の上乗せは消えて弱体化する筈なのに・・・! これじゃ、まるで――――!」
あまりに想定外の事態に、立て直すべきかを考える一同だが、それをオベロンが止める。
なんせ、彼らはバーゲストのさらに上に位置する女王を倒そうというのだ。"妖精騎士"の一角すら倒せなければ、そんなものは夢のまた夢。
それにオベロンにとっては森を焼かれ、民を焼き殺されたのだ。少なからず私怨が入るのも仕方無いだろう。
「力を貸してくれ、アルトリア、立香! この森を踏みにじった女王の犬に、弱者の意地を見せてやる・・・!」
――――ほう、では見せてもらおうか。虫けらの意地とやらを。
だが、オベロンの決意も虚しく、彼が見せられたのは自身を貫いた槍から飛び散る、己の腸だけだった。
◇◇◇
「・・・ん」
目が覚めた。見慣れたベッドの上で、気怠い身体を起こす。
なんだか、とっても幸せな夢を見ていたような気がして、凄く夢見が良い。誰か、とても大切な人に抱き締められて、撫でられまくられて、スーハーされて、それから、それから・・・。
でも、それは少しの間だけで、頭が回り始めると眠る前のモルガン様との出来事を思い出して悶える羽目に。
いい歳こいてガチ泣きとか、我ながらちょっと無いわ・・・。あ、いや、記憶を無くしてる時も泣いたんだっけ。確か、ホーちゃんが・・・・・・やめよう、本気で悲しくなる。
ちょっと鬱になりつつ、謹慎が空けたのはそれから翌日のこと。
数年ぶりの出勤で、人払いが済まされた玉座の間にて、"妖精騎士ベディヴィエール"として御前に
「お前が居なくなってから、ここ数年の記録を蓄えたものだ。飲め」
「はっ」
数年という期間は妖精にとって一瞬とは言え、意外と馬鹿にならない。特に、ここ数ヶ月は"異邦の魔術師"こと立香さんや"予言の子"であるアルトリアさんが動きを見せた。
今後の身の振り方も含め、それらを自分の中で整理するために大人しく渡された水を
すると、大量の情報が脳内へと一気に流れ込み、それらを余すことなく記憶していく・・・していく、のだが・・・。
「・・・・・・」
「・・・どうかしたか?」
与えられた情報、記憶した知識の中で、どうしても見過ごせないものがあった。
信じたくはない。何かの間違いだと叫びたい。
けれど、あのモルガン様が"伝達の水"に蓄える記録を間違える筈もない。
期間も数年分しかないので、大量の情報が
否定する材料を見付けたかったが、モルガン様のずば抜けた優秀さがその全てを否定してしまう。
であれば、これは嘘偽りのない事実。
紛れもない現実に起こったこと。
でも、それでも、確認しなければならない。
「陛、下・・・ここ数年の記録は、把握、しました・・・」
「そうか。では・・・」
「ですが一つ、どうしても聞かねばならぬことがあります」
「・・・なんだ、何か不備があったか?」
「いえ、違い、ます。違うのです」
口が震える。
信じたくないと、涙が溢れそうになる。
でも、聞かないと。これだけは、どうしても・・・。
だから、だからどうか、嘘だと言ってくれ・・・!
「陛下が・・・ご結婚なされたのは、本当ですか?」
「? ・・・あぁ、そうだが。それがどうかしたか?」
事も無げにそう言うモルガン様を前にして、俺に出来たことは、ただ只管に無表情を貫き、感情が爆発するのを必死に抑える事だけだった。
悲報、主君が知らぬ間に人妻になってた件について。
この心の悲しみを、俺はどうすればいいんだ・・・。
教えてくれ、ホーちゃん・・・!
オベロン退場の後はお通夜モードですが、割と原作通り。
強いて言えば、モルガンの攻撃だと断定できる材料がないダ・ヴィンチちゃんが"もしかして超長距離狙撃って弾丸を転移させるとかそういう感じ?"と勘違いしそうになったくらい。
ポーチュンを期待してくれた方々には本当に申し訳無い。
別に、アホのことで頭一杯になってたモルガン様に忘れられてたとか、そんなんじゃないから。ただちょっと百年ほど寝坊しちゃっただけだから!