【完結】チート転生者かと思ったが特にそんなことは無く、森に引き籠もってたら王様にスカウトされた   作:榊 樹

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意外と好評でびっくり。
短いけど、どうぞ。


灯台下暗し

凄い人を見続けると、自分にもその力があるのではないかと錯覚を起こすようになるし、憧れの人を想い続けると、自分もああなりたいと夢を抱くようになる。

 

そんな訳で、再び旅立つことを決めました、チート転生者です。

・・・ふっ、みなまで言うな。

俺とて馬鹿ではない。人は学ぶ生き物なのだ。

 

過去の教訓から俺は付近のモースを遠くからこっそり観察し、脳内で何万通りものトライアンドエラーを繰り返し、そして数々の失敗を積み上げて大賢者OREとなったチート転生者は、遂に結論に辿り着いた。

やっぱ無理だわ、あれ。

 

まずね、少しでも触れたらアウトってのがもう無理ゲーなのよ。そんなん戦いの素人にどうしろと。

投擲とか、魔法とかの遠距離攻撃も考えてはみたが、そもそも遠過ぎて当たる気がしないし、仮に当たったとしても一撃で倒せるビジョンが全く思い浮かばない。

なんせ、こちとらチート能力はチート能力でも、代償有りのチート能力(かっこいい)なのだ。使うべきところはきちんと見極めねばならない。

 

あと、アイツら基本的に群れで動いてんだよな。前回のソロがマジでレアなだけで、一体居たら少なくとも周りに二、三体は居るのを覚悟しなければならない。ゴキブリかよ。

 

そこで、俺は考えた。

丸一日、寝る間も惜しんで考えに考え、英雄様の7分の1スケールのフィギュアを完成させ、それをさらに丸一日掛けて修正を行い、そしてぐっすり眠って朝目覚めると、エジソンの再来と言っても過言ではない奇抜的で独創的な発想が電球と共に閃いた。

 

そうだ、倒せないなら、倒さなければいいじゃない、と。

 

ふっ、これには過去のチート転生者達も脱帽せざるを得まい。なんせチート転生者ってのは、自分に特別な力があると知れば、それを使い潰して目の前の問題をどうにか解決しようとするお人好しばかりなのだから。

だが俺は違う。そんな平凡なチート転生者共と一緒にしないでもらいたい。俺は目の前ではなく、もっと先の未来を見据えているのだ。

 

今は力を蓄え、いつの日か何処かの誰かがモースを倒してくれる日が来るのを耐え忍ぶ、それが最善策だ。具体的には英雄様とか。

それに聞く所によると牙の氏族なる者達はモースに耐性があるのだとか。

 

であれば、モース退治とか言う危ない仕事は彼らに任せ、俺は、自分が出来る身の丈に合ったことに尽力すべきなのだ。適材適所とも言う。別にビビってる訳では無い。

 

うむ、我ながら実に合理的な発想だと惚れ惚れしてしまう。

 

そこからどうしたら旅の話に繋がるのかだが・・・まぁ、英雄様に憧れたって言えばそれまでなのだが。

何も人(妖精)を助けるのはモース退治だけではない。いくら無敵ボディとは言え、日常生活を送ってると何かと不便なことが多い。

そういう問題を解決する、所謂、便利屋のようなことをして、ついでに英雄様のことも布教しつつ、彼女の力になれればなー・・・的な下心を抱いてみたり・・・。

 

てな訳で早速、村のみんなに困ってることは無いかと聞いて回った。結果、忙殺されて旅どころではなくなった。

俺が考えていた以上に困ってることは多かったらしく、無敵ボディの性能を存分に発揮して日夜駆け回る日々が続いた。

 

そして、心が折れた。

 

いや・・・無理っすよ。俺が浅はかだった。誰かのために働くことがこんなにも大変なことだったとは思いもしなかった。

これを英雄様は、各地を旅しながら当たり前のように続けてる訳でしょ? 凄過ぎ。俺の中で英雄様の株がさらに上がった。株が。

 

やっぱ俺には布団の中でヌクヌクしてるのがお似合いな訳ですよ。あー、ホント安心するわー。

え? 旅はどうしたって?

・・・そんな事より、この英雄様抱き枕を抱き締めて夢の中へと旅立つことの方が先決である。

 

あぁぁぁ・・・英雄様と一緒に寝てる・・・好き・・・。

 

 

 

 

 

 

・・・よし、行くか。

は? 何処にって・・・そんなの旅に決まってるだろ。

まさか、さっきの話を真に受けていたのか?

ふぅ、これだから凡人は・・・┐(´д`)┌

 

いやまぁ正直、人助けを目的に旅するのは、困ってる人が多過ぎて旅にならないのだが・・・。

 

俺にはまだやらねばならないことが他に残っている。

そう、布教だ。

 

まぁ、俺がやるまでもなく英雄様の名声は全世界に轟いていることだろうが、恐らくこの世界にはオタ・・・英雄様を崇めるための物が存在しない。

であれば、これは最早、天啓に等しい。文字通りこの世界でただ一人、英雄様を広められるのは俺しかいないのだから。

 

こちらも広めねば無作法というもの。

 

 

 

 

 

 

 

旅を始めてから暫く。

 

突然だが少し前に、虫が居ないとか言ってたやん?

居たわ、虫。それもめっちゃデカいの。

 

一応、妖精に分類されるし、意思疎通は出来るっぽいのだが、生憎と何を話しているかはまるで分からない。

ただ懐いてくれてるのは分かるし、なんだかム〇キングの世界に迷い込んだみたいで凄い楽しかった。

 

何より、みんな良い子たちなのだ。

言葉は分からないがこっちの話は理解しているのか、英雄様の話をするとみんな楽しそうに聞いてくれて、等身大フィギュアを上げたら凄い喜んでくれたし、お気に入りの布団一式(抱き枕付き)も上げたら、みんな身を寄せあってそこで寝るようになった。

 

・・・まぁ、一緒に寝て朝起きたら群がられていた時とかはかなりゾワッとしたが。

英雄様のお話の途中で全身を這いずり回られるのはいいが、寝てる時とかに不意打ちは勘弁して欲しいです。

 

 

 

 

 

 

 

なんか国が出来たらしい。

 

あまりにも居心地良くて暫く虫さん達の森で過ごしてから、久しぶりに旅へと出て最初に立ち寄った街でそんな話を聞いた。

 

モルガン様とやらが女王様になって、暦も女王歴というものになるんだとか。因みに百年前の話である。

 

この世界に暦の概念あったのかよという衝撃の事実と、俺どんだけのんびりしてたんだという笑撃の事実に、ただただ呆然とするしかなかったが、そんな事よりも俺の心を引いてやまないものがあった。

 

なんかみんなの身体に令呪とか言う紋章が刻まれているのだ。

何あれカッコイイ。

 

俺も欲しかったが、どうやって手に入れたのかと聞けば女王様に刻まれ、毎年税金代わりに魔力を支払わされているのだとか。存在税とか理不尽過ぎて草生える。

 

しかし、笑ってる場合じゃないと気付いたのはそれから少ししてからだった。

 

誰か困っている人は居ないかと街をフラフラ歩いていた時のことだ。衛兵さんに呼び止められたのだ。

俺そっくりな似顔絵を手に、この者を知らぬか、と。

 

・・・・・・ふっ、眼帯をしていなければ即死だった。

 

オッドアイが珍しいのか、行く先々で興味を持たれ、挙句の果てには頂戴とまで言われたことがあったので、その対策とファッションも兼ねて装備していたのだが、こんな所で役に立つとは。

先見の明とはこの事かと、思わず自画自賛してしまった。

 

いや、そんなことを言っている場合ではない。

衛兵さんは、女王様が何故その者を探しているのかは知らなかったっぽいが、俺が見ず知らずの女王様に狙われている理由なんて一つしか思い当たらない。

 

・・・税金、払ってねぇ。

 

なんせ、この税のシステムはそもそもとして令呪とやらが無ければ成り立たない。それが身体に刻まれていない俺が払えていないのは最早火を見るよりも明らかな訳でして。

 

現代のような消費税とかだったら、何も買ってないのでまだなんとかなったが・・・。

存在税とかいう生きてるだけで払わなければならない税を、しかも百年分って・・・無理、絶対搾り取られて死んじゃう。

 

女王様が凄い穏便で優しい方だった場合、少しくらい免除してくれるのではと期待したが、聞けば聞くほど溢れ出る圧政に、そして玉座に就いた時に発したと言われる言葉に、淡い希望を抱いて白状すれば死ぬと察してしまった。

 

まぁ、そんな訳で女王様の影に脅えて、また部屋の隅で布団にくるまる生活に逆戻りな訳ですけども。

 

しかし、そうは問屋が卸さないのが世の常。

みんな苦しんでるのに、一人だけ税を払わない奴が居ればどうなるか。

想像にかたくない想像を、想像に想像を重ねてしまい、大人しく部屋の隅でヌクヌクしておくことも出来なくなってしまった。

 

だが妖精が居ない場所へ逃げた所で、そこに居るのは大抵がモースの群れ。

結局、逃げに逃げて辿り着いた場所が、再び虫妖精さん達が暮らす森だった。

 

だが、これが中々に英断だったと気付いたのは割とすぐの頃。

思い返してみれば彼らも令呪は持っておらず、同じ税を払っていない者同士、何かに怯える必要も無く、他の妖精達は何故かここへ近付こうともしない。

 

英雄様の布教が出来なくなるのは残念だが、命あっての物種。時間は有り余っているので気楽に行こうと、一先ずは虫妖精さん達への布教を再度行う所から始めようと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

居ない。

 

 

『え? 両目が赤と青の瞳をした妖精? ・・・さあ?』

 

 

居ない、居ない。

 

 

『ここに居たって言われても・・・なぁ、お前は知ってるか?』

『いや、覚えてないな』

 

 

何処にも居なかった。

 

 

「何処です・・・何処に、居るのですか・・・」

 

 

私の英雄、私の救世主。

 

何度も救った。何度も裏切られた。

救って、裏切られて、また救って、また裏切られ。

 

心なんて何度も折れかけた。

こんなことをしても無駄だと、何度も諦めそうになった。

 

でも出来なかった。

だって、感謝してくれたから。

 

ただ、水を運んであげただけなのに。

ただ、モースを倒しただけなのに。

 

たった、それだけの事で・・・そんな小さな事で、貴女達が喜んでくれたから。ありがとうと、そう言ってくれたから。

 

なのに、どうして・・・何処にも居ないのですか。

 

 

『あぁ、それなら確か・・・あっちの方に住んでたような』

 

 

そうして、漸く掴めた手掛かりを。

藁にも縋る思いで走った先に見た物は━━━━荒れに荒れた無惨なボロ小屋の姿だった。

 

 

「そん、な・・・」

 

 

今まで見てきた、同じ区画に住む妖精が住む家とはまるで違う粗末な家。到底、人が住めるとは思えない犬小屋のようなそれは、柱が朽ちて屋根が落ち、中の家具は何者かによって好き放題に荒らされた痕跡があった。

 

誰がこんなことを、何故彼女がこんな仕打ちを。

 

その怒りを押し留められていたのは、単にあの子と断定出来る材料が無かったから。

名も知らぬ私の英雄が、こんな目に遭っていたことを認めたくなかったから。

 

けれど、怒りに染まった私の頭は、図らずとも思い出してしまう。

 

あの日、あの時、あの子がお礼を言ってくれた次の日。

彼女を探そうと情報を集めようとして、聞いてしまった真実。

 

 

『左右で目の色が違う子? うーん・・・あぁ、そう言えば、少し前に新しくそんな子が生まれたような・・・』

『あれだよ、あれ。色んな玩具作ってくれたり、俺達に家を作ってくれた』

『あー、あの妖精かー! すっかり忘れてた!』

 

 

なんの対価も求めず、誰にも名を知られず、求められるがままに無償で働き続けた生粋のお人好し。

 

そんなお人好しを、名も知らぬあの子とは別に、私はもう一人知っている。

何処までも善良で、底抜けに優しくて、だから怒ることも逃げることもできず、ボロ雑巾のようになるまで利用され続け、最期は私の腕の中で感謝しながら死んで行ったもう一人の赤い英雄。

 

だから、容易に想像出来た。

あの子も、赤いあの子と同じように使い潰されたのだと。

最後は使い物にならなくなったあの子で、遊んだのだろうと。

 

 

「ぁぁ、あぁぁ・・・」

 

 

本当に助けたかったモノだけが、この手から零れ落ちた。

守らねばならぬモノだけが、無闇に傷付けられた。

 

繰り返すのか、また繰り返すのか。

 

どうしてだ・・・。

私なら、幸せにしてやれる。

私なら、お前達を守ってやれる。

 

なのに何故、私の前に現れてくれない。

何故、いつも間に合わないんだ。

 

一度で、たった一度でいい。

お前達が心から幸福を感じられる、そんな人生を送って欲しいだけなんだ。

 

 

「・・・いや、まだだ」

 

 

幻術を解き、元の姿に戻る。

 

私に気付いた妖精達が慌てて逃げようとして、青黒い炎に焼かれて息絶えた。

 

 

「まだ、希望はある」

 

 

そうだ、まだ終わった訳じゃない。

もしかしたら、何処かで生き延びているかもしれない。こことは違う別の場所で、次代が生まれてくるかもしれない。

 

見つけ出すんだ、必ず。

例え、幾万もの犠牲を払おうとも、どれだけの死体が積み上がろうとも、あの子達だけは・・・。

 

 

「待っていて下さい、私の英雄達。必ず、必ず・・・見つけ出してあげますからね」

 

 

その言葉と共に女王モルガンは青黒い炎に包まれ、その場から姿を消した。

 

 

 




時系列に矛盾が生じたりするかも。
許して。
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