【完結】チート転生者かと思ったが特にそんなことは無く、森に引き籠もってたら王様にスカウトされた 作:榊 樹
いやー・・・お見事。
割れる。
「先輩、アルトリアさん! 良かった、お二人とも無事で・・・!」
「あれ? ここって現実・・・? 魔力切れで解放された訳じゃないし・・・って、粉々に割れてる!? これ国宝級なのにすっごい、だいたーん!」
「え、ぁ・・・と、とても、禍々しい魔力を放っていたので、つい勢いで・・・。だ、だいたん、だったでしょうか!?」
「・・・いえ、素晴らしい判断でした。私では、価値に戸惑って壊せなかったでしょうし。貴女の判断のお陰で、私たちはこの通り無事なのです」
アルトリアには、元から折れるような希望とか抱いてなかったからそこまで問題では無かった。
問題なのは人理の修復という大任を担った立香だったが、それも自分の意思で乗り越え、そしてもう一人は━━━━。
「・・・・・・?」
キョロキョロと辺りを見回し、自分の置かれている状況をいまいち理解していないアホだ。
いや、まさかとは思ったけど。
「・・・あれ? そちらの方は・・・ご一緒に閉じ込められていたと見て、よろしいでしょうか?」
「・・・・・・ 」
この中で唯一、面識の無いマシュがそう尋ねるが、仮にも敵である彼女を前にしてアルトリアと、妖精騎士と同じ雰囲気を感じた立香は警戒を強める。
そして、そんな二人を見て味方とは限らないと察したマシュも戦闘態勢に入る。
しかし、そんな四面楚歌な状況であろうと、妖精騎士ベディヴィエールは一切武器を構えようとはしない。それどころか脅威ではないとばかりに棒立ちのまま、アルトリアの方をジッと見詰める。
頭のてっぺんから、靴の裏側まで。
無論、それは比喩であるが、それ程までに凝視して来る彼女を前に、さしものアルトリアと言えど、居心地が悪くなってくる。
「あ、あの・・・何か・・・?」
「・・・その服・・・もしかして、誰かから貰った?」
「え、あ、・・・はい。ウェールズの森の妖精達に・・・」
「ふーん・・・」
思わず答えてしまったが、その質問に一体なんの意味があるのか。いや、そう言えば、彼女はあの虫妖精と交流があったハズ・・・。
少しでも情報を得ようと慣れない思考を必死に繰り返すアルトリアへと、妖精騎士ベディヴィエールは無表情のまま近付く。
武器を収めているとは言え、立場上は敵である彼女が無表情で近付いて来るのはちょっとした恐怖だった。
だけど、下手に動いて本格的に敵対されても困るので、こうして突っ立ってることしか出来なくて・・・。
「・・・・・・」
「・・・あ、あの・・・?」
目の前で止まり、至近距離で下からジーッと睨んで来る妖精騎士ベディヴィエールに後退ろうとして・・・。
突如、目の前から姿が消えたかと思うと、膝にガクンっと軽い衝撃が来た。
「あっふん!?」
所謂、膝カックンをモロに受けたアルトリアは、そのまま膝を突いて四つん這いに。
咄嗟に起き上がろうとして、けれども背後から肩に置かれた手によって抑え込まれた。
「ジッとしてて」
「え、あ、ちょ・・・」
仕掛けて来た!? とマシュ達も戦闘に加わろうとして、けれども妖精騎士ベディヴィエールが何処からか取り出した物に目を丸くする。
それは、櫛だった。
簡素な作りの、神秘の内包量が尋常ではないことを除けば、なんの変哲も無いただの櫛。
それを慣れた手付きでアルトリアの髪へと通し、丁寧に髪を
「・・・・・・」
「・・・・・・」
異様な空気が流れる中、少しして妖精騎士ベディヴィエールは手を止めて首を傾げる。
今度はアルトリアに立ち上がるように促し、素直に従う彼女の体をペタペタ触っていく。
「え、ちょ・・・!?」
「動かないで」
それは身体を触っていると言うより、服を正していっているようだった。
そうして、暫く弄ったあと、数歩下がってアルトリアの全体を視界に収めると、顎に手を当てて考え始めた。
「・・・やっぱり、ダメですね」
「え・・・?」
何がダメなのか。と言うか、何を確かめていたのか。
当事者なのに全く状況が分からないアルトリアへ、妖精騎士ベディヴィエールは残念そうに言う。
「違和感があります。でも・・・もうこれ以上、弄りようがないくらい完成されてます」
「あの・・・?」
「別人なのは承知ですが、それでもここまで容姿が似ているというのに・・・オーラが違うというか、毛程も知性が足りていないと言うか、もうなんか色々と残念過ぎて・・・はぁ、勿体無い」
「・・・・・・」
貶しているとか、敵意があるとかでもなく。心の底から、何処までも純粋に残念そうにする妖精騎士ベディヴィエールに、あれ? もしかして今、物凄く失礼なこと言われた? とアルトリアが怒りを抱き、顔を真赤にウガーッと怒鳴ろうとして・・・。
「・・・いっそ、中身を丸ごと入れ替えてみるか?」
ボソリと聞こえた声に、顔を青くする。
他者の心が見えるだけに、その言葉が何処までも本心だと分かってしまったから。
だから、この話は早く切り上げるべきだと、話題の矛先を立香に向けようとして・・・物陰からヌッと人影が現れた。
「あんらぁ!
「・・・なんだコイツ」
人影の正体はペペロンチーノ。
立香たちを助けようと爆走していたマシュの手助けをした張本人であり、妖精騎士ベディヴィエールに「え、これ人間なの?」と驚かれている
そんな彼女から、ここがあのベリル・ガットが根城にしているニュー・ダーリントン、その郊外にある地下施設であることを知らされる。
ここを見付けられたのはマシュと立香の縁を手繰り寄せれたお陰でもあり、ペペロンチーノがお礼を言うと・・・何故かベリル・ガットの名前を出した辺りから殺気立っている一人の騎士の方へと視線を向けた。
「・・・ところで、私の思い違いじゃなければ、そっちの子は妖精騎士ベディヴィエール・・・で、いいのよね? 見るのは初めてだからあんまり自信無いんだけど・・・」
「え、あの行方不明となっていた妖精騎士ベディヴィエールですか!? な、なるほど、理由は分かりませんが、閉じ込められていたのですね。・・・って、つまり敵じゃないですか!? マスター、私の後ろへ!」
タイミング的に彼女のことを知る機会が無かったマシュは置いておくとして、立香は先程からチラチラと自身に向けられる視線に違和感を覚えていた。
殺意はとっくに消えていて、向けられているのはなんと言うか・・・期待、のような眼差し。
どっかで会ったっけ・・・、とウンウン悩む立香に、妖精騎士ベディヴィエールは態とらしく髪を掻き上げ、眼帯を見せ付ける。
「・・・さっ」
「・・・・・・」
「・・・すっ」
「・・・・・・」
「しゃきーん」
「・・・? ごめん、私たちって何処かで会った?」
立香の何気ないその言葉に、顎に手を添えて決め顔をしていた妖精騎士ベディヴィエールはあからさまにショックを受けて隅っこで体育座りになった。
あ、やば、と立香が口が滑ったと気付いた時には既に遅く、隅っこからブツブツと愚痴のような声が聞こえて来た。
「いえ、分かってましたけどね。秘密主義的なこと言われてたから、なんとなくそうなんじゃないかなーと思ってはいましたけど・・・。そうですか、やっぱりそうなんですね。私ってそんなに影が薄いんですか、そうですか。そりゃ秘密にしたいことの一つや二つありますけど、普通に街に降りることだってあるのに、注目とかまるでされてなかったのって・・・別に気を使ってくれてたとかじゃなくて、普通に気付かれてなかっただけなんですね。ははは、超ウケるー・・・」
あ、これマジで失言したわ、と慌てて弁明しようとした立香だが・・・・・・なんとなく、その姿がいつの日かのあの子とダブって見えて、足が止まる。
「・・・もしかして、エーちゃん?」
「・・・!」
振り向き、パァァァッ! と顔を輝かせ、ハッとしてぷいっと再び壁を向く。
でもそんな私不機嫌ですよアピールなんか無視して、立香は彼女へと抱き着いた。
「エーちゃん! エーちゃんだ!!」
「わっ、わっ・・・!?」
「エーちゃん! エーちゃん! エーちゃぁぁぁん!!」
「ぇ、な、なに!? え、ちょ」
「なんでここに居るの!? どうしてここに居てくれちゃってるの!? 」
「わぁぁ!!? わぁぁ、わぁぁぁっ!!?」
「いや理由なんかどうでもいい! エーちゃんがここに居てくれるだけでいい! この感動ッ! 言葉にならなぁぁぁい!! うひょぉぉぉぉ!!」
「わぁ・・・わぁ・・・ぁぁ・・・!」
「あぁ、この手触り! 抱き心地! 腕の中にすっぽり収まるサイズ感!
「ぁ・・・ぁぁ・・・」
「頬ずれば頬ずるほどにエーちゃんだぁぁぁ!! 舐め回せば舐め回すほどエーちゃんだぁぁぁ!!」
「・・・・・・がくっ・・・」
「えぇぇい!! もっと触らせてぇぇ!! もっと抱き着かせてぇぇ!! もっと舐め回させ━━━━」
「先輩、お気を確かに!!」
「おぐふぉ!?」
わたくしごとですが、本作品の感想数がまさかまさかの1000件を超えました。
記念としてサプライズを用意しているのでお楽しみに。