【完結】チート転生者かと思ったが特にそんなことは無く、森に引き籠もってたら王様にスカウトされた   作:榊 樹

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・キャラ崩壊
・題名ちょっと修正


着名

中国四千年の歴史とか大袈裟でしょ、と思っていた時期が俺にもありました。

気付いたら女王歴千年過ぎてるんですけど・・・。

 

流石にこのままではダメだと思い、外へ行く準備をする。

 

正直、今は女王様への恐怖はあんまり無いから、そこまで怖くはない。というか、追われているという実感が薄くなったと言った方が正しいか。

 

だって、平和な森の中で楽しいこと(布教)をして、虫妖精のみんなも英雄様大好きになって、しかも自分が作った英雄様グッズを大切にしてもらって・・・あー、離れたくないなー。

 

でも、やらねばならないのだ。

嘗て俺が布教していたのはもう何百年も前の話で、そうなると多くの妖精は次代へと変わり、布教された記憶すら失った者が大半であろう。

そんな彼らへと、ファンになれとまでは言わないが、せめて英雄様の存在と活躍くらいは知ってもらいたい。

 

そんな訳で、行って欲しくない虫妖精さん達と数々の攻防を繰り広げ、最後はみんなに笑顔で見送られながら、取り敢えず最寄りの街へと向かった。

 

数百年ともなれば、流石に景色が一変しており、まるで異世界というか・・・これだと現代に迷い込んだというか、元に戻ったというか。

とにかく不思議な感じがする街をキョロキョロしながら歩いては、情報収集を始める。

 

そして分かったことは、誰一人として俺が布教した英雄様の存在を覚えていないことだった。

予想通りとはいえ、これにはちょっとショック。

みんな、英雄様より今を統べる女王様の方が恐ろしいからか、何処もその話題で持ち切りだった。勿論、悪い方向で。

 

だが、これは寧ろ好都合なのではなかろうか。

前は厄災とかいうちょっとあやふやな脅威くらいしか無かったが、今は女王という名の明確な悪が存在している。

みんなを虐める悪い王様を、颯爽と現れた英雄様がズバババーンと解決すれば、誰もが感謝をし、そしてファンになり、何代繰り返そうとみんなの記憶に残り続けるのではなかろうか?

 

であれば、俺が今やるべき事は・・・・・・いずれ来たるべき決戦に備えて、女王様あるいはその周辺の情報収集ではなかろうか。

 

よーし、そうと決まれば張り切って行くぞー!

 

 

「見付けた」

「ひょ?」

 

 

あ、終わった・・・。

 

 

 

 

 

 

今更、後悔しても遅い。

俺なら大丈夫だと、思い上がるんじゃなかった。

ずっと、あの森で虫妖精さん達と大人しくしていれば良かったんだ。

 

何が英雄様の力になるだ。

何が今やるべき事だ。

 

過去に戻れるなら、馬鹿でアホな俺を引き摺り回してでも森に返したい。

 

なんせ俺の旅は始まる前から終わっていたのだから。

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

 

まぁ、何が言いたいかと言うと・・・見付かっちゃいました、女王様に。てへっ。

 

 

「面を上げなさい」

「ぁ、ぁぁぁの、お、お命だけはッ・・・!」

 

 

重く、低く、そして冷たい声に、身体がさらに縮こまる。

今にも首を刎ねられそうなプレッシャーに、俺はただ只管に頭を床に擦り付け、命乞いをするしかなかった。

 

 

「・・・・・・はぁ」

「ぴぃっ・・・!? ご、ごめんなさいごめんなさい」

 

 

やけに響く溜め息の後、コツコツとした足音が聞こえた。まるで余命宣告のようにゆっくり近付いてくるソレに、俺はただただ全力で許しを乞うことしか出来なかった。

 

 

「ひ、ひぃぃ・・・ごめんなさいごめんなさい」

 

 

そして、頭にピトリと触れ、さすさすと撫でられる女王様の手に、これから頭をかち割られるのか、それとも頭を引き抜かれるのか。

どちらにせよ、恐ろしい殺され方を想像して、俺の緊張はピークに達して、今にも気絶してしまいそうだった。

 

 

「・・・顔を、上げてください」

「ッ!?」

 

 

限界だった精神に、スルりと入り込んできたその声に、恐る恐る顔を上げる。

涙で視界がボヤけて全く見えないけれど、何故だかとても優しそうな顔をした妖精が、そこにはいた。

 

 

「・・・やっと、見付けた」

「ッ!? ・・・ッ!? ッ!!?」

 

 

ふわりと何かに包み込まれた。

それが女王様の抱擁だと気付くのにそう時間は要らなくて、だから色んな液体でグシャグシャになった俺の顔が女王様の服を汚してしまうと思い、急いで離れようとしたが、女性らしい細腕はビクともしなかった。

 

 

「やっと、やっと出会えた・・・私の英雄」

「ぁ、ぁぁの、あのあの・・・よ、汚れて、しまいます・・・」

 

 

豊満な胸に塞がれながらも、なんとか口に出したその言葉は、けれど女王様にとっては逆効果だったようで、より一層強い力で抱き締められた。

 

 

「いいえ、いいえ。汚くなんかありません。貴女に汚い所なんて、何処にもありません。何処までも清らかで、美しい、私の英雄」

 

 

いや、あの・・・やばい、何を言ってるかまるで理解出来ない。てか、この状況がまず理解出来ていない。

なんだ、これは・・・女王様に抱かれている? なるほど、つまりどういう事だ?

 

 

「本当に、良かったッ・・・!」

「ぁ・・・・・・」

 

 

困惑していた俺を他所に、遂にはポロポロと泣き始めてしまった女王様。そんな、聞いた話とはまるで掛け離れたか弱い少女の姿に、俺は無意識に背中を摩っていた。

 

 

 

 

 

 

それから少しして。

泣き止んだ女王様に抱えられ、玉座に座った彼女の膝に横向きで座らされ、近過ぎて距離を置こうとする俺を離すまいとする女王様に諦め、超至近距離での世間話、自己紹介・・・いや、尋問が始まった。

 

 

「今まで何をしていたのですか?」

「ぇ、ぁ・・・も、森の方で・・・あの、隠れてました・・・」

 

「何故、隠れていたのですか?」

「ぁ、えっと・・・・・・その、殺されるかと、思って」

「〜〜〜〜ッ・・・!」

「わっ、わっ・・・えっと、な、泣かないで・・・!」

 

「・・・・・・失礼しました」

「い、いえ・・・・・・あ、あの、こちらからも質問、いいでしょうか?」

「はい、なんなりと」

「ぁ、えっと・・・あの、お、自分は・・・その・・・存在税? を払って・・・いないんですけど・・・」

「・・・え?」

 

 

ピタリと固まった女王様に、あ、やらかしたと悟ったが時既に遅し。

殺される、とガクブルしていると、女王様が口を震わせながら、今にも泣きそうな声で質問してきた。

 

 

「すみ、ません。質問を質問で返すのですが・・・」

「は、はははははいっ! どうぞ、なんなりと!」

「貴女に、令呪は無いのですか?」

「ひぃ!? そ、そうです! ありません! 存在税を払ってません! ごめんなさい!」

「なら、ずっと・・・ずっと、生きてたのですか?」

「へ? ・・・ぇ、ぁ、はい・・・記憶の限り、死んではないと思うのですが・・・え、俺死んでたんですか?」

 

 

何やらよく分からない質問に、俺も自分で言ってて訳が分からない言葉を返し、そろ〜っと女王様の顔を覗き見ると、その目端にはたっぷりの涙が溜まっていた。

あ、また泣かれる。

 

 

「良かった・・・よ゛がっだぁ゛〜〜ッ・・・!」

「ひょふぁ!?」

 

 

当初抱いていたイメージとは掛け離れたそのギャップに何度も驚かされながらも、不本意ながら慣れてしまった手付きで再びギャン泣きしてしまった女王様をあやす事になった。

 

 

「ぐすっ・・・えぐっ・・・すみません・・・」

「あ、いえ大丈夫です・・・はい。・・・・・・あの、つかぬ事をお聞きしたいのですが・・・」

「はい、なんでしょう」

 

 

切り替えの早さは流石王様と言うべきか、目元の赤み以外はキリッとして、聞く姿勢に入った。

 

 

「その、自分はこれからどうなるのでしょうか?」

「どうなる、とは?」

「あの、税を払っ」

「貴女にその必要はありません」

「あ、はい。・・・であれば、えっと・・・旅をしても、よろしいでしょうか?」

「・・・・・・何故です?」

 

 

あ、やらかしたパートツー。

だが、今更引けそうにもない。こうなりゃヤケだオラァン!

 

「あのあの、自分には・・・し、使命があるんです!」

「誰です、そんなことを課した愚か者は。今すぐ教えなさい、次代が生まれなくなるまで殺し尽くしてやります」

「あ、あ、違います違います! そういう、あれではなくて、自分で課したというか・・・あの、えっと・・・」

 

 

おっと? これ言うの思った以上に恥ずかしいぞ?

憧れの人が大好き過ぎて、その素晴らしさをみんなに知ってもらおうと活動してるって・・・・・・もしかして、かなり恥ずかしいことなのでは?

 

 

「ほう、憧れですか」

「あ、あれ!? 声に出てた!?」

「何処です、その馬の骨は。私は許しませんよ」

 

 

い、言えない・・・。恐らくきっと絶対に、女王様と敵対するような方だから、言ったら確実に殺される気がする・・・。

 

 

「教えなさい、今すぐに」

「ぁ、ぁぁあの、えっと・・・む、昔、俺を助けてくれた英雄様です!」

「・・・・・・・・・」

 

 

・・・ん? なんか、女王様が固まった。どうしたんだろ?

 

 

「あの、どうか、しましたか?」

「・・・・・・続けて」

「え、でも」

「続けて」

「あ、はい」

 

 

よく分からんが、もしやこれは布教チャンスでは?

 

 

「今ではもう、本当に昔なんですけど。自分が生まれた村がモースに襲われたんです。いや、多分、それって自分の所為なんですけど・・・。なのにみんなが襲われているのを隠れて見ていることしか出来なくて、村のみんながどんどんモースになっちゃって。・・・そんな時に現れたのが英雄様なんです」

「・・・・・・」

「金色に輝く髪と藍色のマントを靡かせ、見たこともない技であんなに恐ろしいモースを相手に怯むことも無く、バッタバタと薙ぎ倒して、あっさりと村のみんなを救ってくれたんです」

「・・・・・・」

「それから、あの・・・。お恥ずかしながら、俺が体験した英雄様のお話はこれくらいなんですけど・・・。でも、とてもかっこよかったんです。俺が昔、憧れた物語のヒーローみたいで、とっても輝いて見えて、それから、それから・・・」

「もう、結構です」

「ぇ・・・ぁ、す、すみません! 長々とお話してしまって!」

「いえ・・・伝わりました。十分、伝わりました」

 

 

我に返って、とんだ無礼をしてしまったことと、いつもの癖で早口になってしまったのが恥ずかしくて顔を赤らめる俺を、女王様は俯いてギュウッと抱き締めた。

 

 

「やはり、やはり貴女は私の・・・」

「あ、あの・・・?」

 

「決めました」

「ッ・・・え、えと・・・何を?」

「貴女の名です」

 

 

な、名前・・・? え、俺にはもう名前があるけど・・・。

 

 

「いいえ、それとは別に加護を与えるための名です。よく聞いて下さい」

「は、はい!?」

 

 

か、加護? 加護って・・・え、何それカッコイイ。

 

 

「ベディヴィエール。妖精騎士ベディヴィエール。こことは違う別の世界。正しき歴史において、最後まで王に寄り添い続けた忠誠の騎士の名です」

「ベディ・・・ヴィエール」

 

 

その名を聞いた瞬間、女王様から力が流れ込んで来た。

全身を包み込む暖かく、慈悲に満ちた優しい力。

 

 

「どうかいつまでも、私の傍から離れないで下さい。約束ですよ?」

「は、はい・・・」

 

 

思わず返事をしてしまったが、後から考えるとかなりとんでもない約束をしてしまったのでは、と。

与えられた一室で英雄様グッズに囲まれながら、ジタバタする羽目になるとは、この時は思いもしなかった。

 

 

 

 

 

「ところで先程、一人称が変わっていたようですが」

「へぁ!? す、すみません! そっちは素と言いますか、つい我を忘れていたと言いますか・・・あの、その・・・」

「構いません、許します。いえ、寧ろ命令です。二人だけの時は、取り繕うことを許しません」

「え、ええ!? 」

「さぁ、もう一度言ってください」

「ぇ、ぁ・・・」

「さぁさぁさぁ、さぁ早く!」

「ぁ・・・・・・ぉ、俺!」

「・・・ムフフ」

「な、何これ・・・」

 

 




時系列的には「モース戦役(ウッドワス誕生)」から百年後くらい。バーゲストとメリュジーヌが誕生する前の出来事。
ついでに言うと、モルガン様はもう何度もバーヴァン・シーを看取った後。
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