チート転生者かと思ったが特にそんなことは無く、森に引き籠もってたら王様にスカウトされた   作:榊 樹

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前回のシロを諭した人物について、感想欄で
本命:オーロラ
対抗:グランド糞野郎
大穴:ベリル

こんな感じになってて笑った。


光指す道

 

臨界まで、あと少し。

 

想定外の事態が起きたが、計画に支障は無い。

 

モースの数は、妖精を上回った。

善き生贄を得た神は、目を覚ました。

 

 

・・・俺が思うに。

現実ってのは、取り返しのつかない事しかない。

 

分かってるのに悪化させたり、気付いた時には手遅れだったり、良かれと思ってやった事が、最悪の結果を招く。

 

責任は誰にあるか。勿論、誰にも無い。

だから、治しようがないし、どうしようもない。

 

 

なぁ、モルガン。

心優しき女王様。

 

結局、アイツはアンタの望まぬ道を選んじまった。

あのまま終わっていれば良かったものを。

寄りにもよって、一番醜悪で、救いの無い道を選んだんだ。

 

 

・・・よく、後の祭りと言うだろ?

全くもってその通りだよな。

 

 

だから、俺が全て・・・終わらせてやるんだ。

アンタとは違う、別のやり方で。

 

例えそれが、己の意義に反する事だったとしても。

 

だって俺は、嘘吐きの王様だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

悪しき王を討ち、未曾有の大災害を訳の分からぬまま乗り越え、そうして訪れた平和な日々。

 

戦後の処理でまだ忙しい者が多いけれど、それでも誰もが明るい明日を夢見て、新たな王の誕生に心踊らせる。

 

今日よりもきっと良い日々が訪れる。

明日はもっと楽しい一日になる。

 

多かれ少なかれ、誰もがそんな期待を胸に新しき女王のため、ソールズベリーの大聖堂へと集まる。

 

なにせ今日は戴冠式。

二千年も続く悪夢が終わりを迎えた、目出度い日なのだから。

 

 

「いやー、でもノクナレアが女王様かー。辞退した私が言うのもなんだけど、ある意味、適材適所的な? 昔っから偉そうだったしー」

「ふふっ、そうだねー。でもアルトリア、頬がゆるゆるだよ? 本当は嬉しいんじゃないの?」

「へ? あ、い、いや、これは・・・!」

 

 

友達の晴れ舞台で素直になれないアルトリアと、それを揶揄う立香。

先の戦いで思う所が無いとはいえ、それでも今日は目出度い日なのだ。

 

今は、今だけは嫌なことは忘れて、心から彼女のことを祝ってあげたい。

 

そんな思いで人の流れに従うように大聖堂へと向かっていると、ふと見覚えのある顔が視界の端を過ぎった。

 

 

「・・・エーちゃん?」

 

 

立香が振り返ったその先に件の人物は居らず、あるのは雑多な人混みばかり。

 

 

見間違いだったのかと気を取り直し、アルトリア達に呼ばれた立香は大聖堂へと向かう。

席は、一番後ろの目立たない席ではあったけれど、現れた女王の姿にそんな些細なことなどすぐに忘れ、立香達は言葉を失う。

 

王に相応しい気品と美しさを纏い、そんな彼女に見蕩れながらも、式は厳かな空気で進む。

 

 

そして―――。

 

 

 

「ノクナレアッ!!」

 

 

 

―――新しき女王が毒殺されたのは、それからすぐの事だった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

地獄を見た。

 

地獄を見た。

 

 

我ら(おれ)が生み出した、地獄を見た。

 

 

「・・・・・・」

 

 

厄災が近付き、島との繋がりが強くなって、島全体を見えずとも感じられるようになった今だからこそ。

 

モルガン様が愛したこの島をもう一度、この目で見ておきたかった。

 

 

「・・・・・・」

 

 

我ら(おれ)を諭したあの声の主。

彼の言葉に思う所が無かった訳では無い。

 

例えモルガン様が愛した島であっても、(我ら)が独善的で身勝手にあの方を裏切った事実に変わりは無い。

 

許せない。守りたくなど無い。

貴様ら(我ら)など、潔く、惨たらしく死んでしまえばいいんだ。

 

けれど、いくらそう思った所で、守ると決めてしまった我ら(おれ)の体に、最早それ以外の選択肢などありはしない。

 

幾つもの偶然が重なって、初めて実現した刹那の奇跡。我ら(おれ)がこの島の呪縛から解き放たれる、たった一度のチャンスを、我ら(おれ)は自ら捨て去ったのだから。

 

 

「・・・・・・」

 

 

だからせめて、もう一度この目で見ておきたかった。

 

モルガン様が守ろうとしたものを。

我ら(おれ)がこれから、守ろうとしているものを。

 

・・・でもまぁ、案の定と言うか。見るまでも無かったと言うか。

 

モルガン様が、こんなモノの為に二千年も・・・いや、何千年も、何万年も努力して来たのかと思うと、申し訳なさで死にたくなってくる。

 

もし、初めて出会ったあの日(一周目)に戻れるのなら、モルガン様がレイシフトを行う前に何がなんでも自害(大厄災)をするだろう。

こんな島に同情の必要は無い、貴女が命を賭ける価値など無いのだと、そう胸に刻んで。

 

 

「・・・・・・はぁ」

 

 

自分の足で、見て回って。

催促する島の声に、ささやかながらも抵抗しつつ、目的の場所に到着した。

 

焼け落ちた世界樹。

その頂上近くまで跳び乗り、島を一望する。

 

モルガン様が愛した世界は、今や血で血を洗う地獄と成り果てた。

何処も彼処(かしこ)も殺し、奪い、そして死んでいく。

 

危機的状況であろうとも、争うことを止められない愚か者共。

そんな救いようのない彼らを守る為、矢を番え口ずさむ。

 

 

「―――我らは許されぬ」

 

 

モースで溢れる島の、その先に向けて。

 

 

「―――我らは救われぬ」

 

 

神よ。

我らが優しきケルヌンノスよ、あなたの怒りは尤もだ。

 

我らは御身を裏切り、その亡骸を利用し、一万年にわたってあなたの大切な人を辱め続けた。

 

 

「―――何も知らず、何も理解(わか)らず、何も学ばず、黄昏に集い、滅び行く明日(あす)を今日も唄う」

 

 

でも、ごめんなさい。

 

滅び(それ)を受け入れる訳にはいかないのです。

我ら(おれ)にはもう、その資格が無いから。

 

 

「―――死に絶えることなかれ。

救いには裏切りを、許しには絶望を、償いには嘲りを、外なる者には盃を」

 

 

だって、それを受け入れてしまったら・・・地獄(ここ)に住む妖精たちが、消えてしまうから。

 

償い切れぬ罪を背負った者たちが、救われてしまうから。

 

 

「―――終わりはすぐそこに。

許されよ、許されよ。我らが罪を許されよ」

 

 

だから・・・ごめんなさい。

 

心優しき神様、我ら(おれ)はまた、あなたを裏切ります。

 

 

「―――しかして我らには訪れず。

女神亡きこの大地に、来たる明日など無いと知れ」

 

 

我らが望んだことなのです。

我らが願ったことなのです。

 

だから守るのです。

だから、守り続けるのです。

 

例え、もう死にたいと泣き叫んだとしても。

例え、全てを終わりにしたいと嘆いたとしても。

 

我らに救済は、必要無いのです。

 

 

「"空を駆けろ、銀色の蒼穹(シューティングスター・アガートラム)"」

 

 

未来永劫、許されぬ罪をこの地獄の底で償い続ける。

 

それが・・・我ら(おれ)が選んだ、道だから。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

逃げ場はなく、希望もない。

何処からともなく湧いてくるモースに逃げ惑う者、戦い抗う者、怯え隠れる者、それぞれが(みな)、現状を忘れ、等しく空を見上げた。

 

空を翔ける一条の光。

流星の如く、島を横断する光の軌跡。

 

神秘に満ちたこの異聞帯であっても、思わず目を奪われる幻想的な光景に、誰もが息を呑んだ。

 

 

―――――――――ッ!!

 

 

光の先が島の端まで辿り着いた瞬間、けたたましい音と共に目も眩むほどの閃光が放たれ、流星は拡散する。

 

広く、遠く、全てを包むように。

 

そうして、空を覆い尽くすほどの、星空の如き光の雨が━━━━━━ブリテン島全土に降り注いだ。

 




強さ順

シロ(大厄災) >>> シロ(妖精騎士) >= シロ(厄災) >>>>>>>>>>>>>>>>>シロ(お布団)
シロ(大地の厄災):測定不能

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