【完結】チート転生者かと思ったが特にそんなことは無く、森に引き籠もってたら王様にスカウトされた   作:榊 樹

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陛下ピックアップで☆4バーサーカーが三連続来て凹んでました。
流石に性格悪過ぎるって・・・。


エール

ブリテン島の守護者が作られた原初の理由たる呪いの神―――獣神ケルヌンノスが大穴から這い出て来て、立て続けに一周目の世界で完膚無きまでに敗北した獣と炎の厄災が発生したことで、ブリテン島は過去類を見ないほどの滅びの危機を迎えていた。

 

地上に生きる妖精達だけではない。

死んだはずの自分たちまでもが殺されてしまうと危機感を抱いた島が、守護者たるシロに、かつて妖精騎士として生きた頃を容易く上回る力を授けていた。

 

例えそれが、一周目の世界で獣と炎の厄災に敗れた力だったとしても、彼らにはそうする事しか出来なかった。

 

そもそも、汎人類史の模造品でしかないブリテン島の守護者は、守護者とは名ばかりのただの暴力装置。

特別な加護がある訳でもなく、与えられる力は端的に言えばブリテン島に内在する魔力の使用権のみ。

 

汎人類史に存在する願望器とは比べ物にならない容量を誇る魔力タンクは、理論上はブリテン島に対する脅威を跳ね除けられるほどの力を秘めていたが、問題だったのはそれを使用する(端末)に限界があったこと。

 

いくら大海原のような魔力を宿していようと、出力できる量が蛇口一個分ではたかが知れている。

無論、それだけでも通常の厄災では充分であるし、死した頃のケルヌンノスであれば、なんとか倒せるレベルではあった。

 

しかし、今やケルヌンノスは呪いの神となり、形は違えどブリテン島を滅ぼした実績のある二つの大厄災を前に、旧き守護者の力など無力に等しかった。

 

一周目の世界と同じように、また何も出来ず、何も守れず。蹂躙される"目的(存在意義)"をただ見ていることしか出来ず、呆然と膝を着いて涙を流すことしか出来ない。

食い散らかされ、焼き尽くされ、死に絶えた世界でまた全てを忘れ、何も知らず空虚に生きる日々。

 

けれど、そんな未来は訪れなかった。

全ては、今は亡き女神によって授けられた加護のお陰。

妖精騎士として、千年の時を共に過ごした武具()が、守護者として彼らと対等に戦えるだけの力を与えてくれていた。

 

妖精騎士ベディヴィエールの代名詞とも言える認識外からの光の矢が、モースを含む、大穴から這い出てきたケルヌンノスの呪いを次々に撃ち落とす。脱出しようとしていたお客様(カルデア)に迫る触手も一つ残らず撃ち抜き、ついでに見付けた狐を背後から狙撃しつつ、塔に立て篭っていた人間(謀反者)を跡形もなく消し飛ばし、未だ無尽蔵に湧き出てくる呪いを吹き飛ばす。

 

島全体を見渡せる世界樹の上からそれだけ邪魔をしていれば、理性を無くした厄災とは言え、流石にこちらへ意識が向く。

呪いの神が、ブリテン島の守護者たるシロを倒さなければならぬ脅威と判断したのだ。

 

呪いで形作った触手の腕を伸ばされ、それら全てを撃ち落とす。

触手の余波でモース化した地上の妖精諸共射殺(いころ)すと、事前に射っていた光の雨が大穴に向かって降り注ぎ、連鎖的に起こる爆発がケルヌンノスの姿を眩ませた。

 

雨が止み、煙が晴れたそこには薄皮一枚削れた神の姿が、その傷すらも瞬く間に塞いでいき、気付けば撃たれる前と変わらぬ姿で堂々と鎮座していた。

 

その様子を見て、僅かに目を細めたシロは再び矢を番える。

 

もふもふな見た目をしておいて、その毛皮は鎧そのもの。幾重にも連なる呪いの層が、こちらの攻撃を妨げる。

最大火力を放ったとしても、恐らく核まで届くことは無い。

だが、打つ手が無い訳では無い。

 

この距離ならば、攻撃範囲で大きく上回るこちらに分がある。であれば、時間を掛けてじっくりと呪いの壁を一枚一枚剥いでいき、回復を始める傷口からさらに攻撃を叩き込んでいけば、いずれは核に辿り着く。

 

そこまで行けば、あとは大技の一つや二つ打ち込めば、それで終わり。襲い来る触手もここまで離れていれば恐れることは無い。

 

弓を引き、照準を定め、手を離そうとして・・・気付く。

こちらへ猛スピードで接近する敵の存在に。

 

 

「・・・・・・」

 

 

視線をそちらへズラすと同時に、番えていた矢を外して後ろへ飛び退く。そのまま重力に従って落ちると、直後にシロが居た場所を極光が過ぎ去り、その余波で世界樹が横に両断された。

 

そんな天変地異のような事象を容易く起こした極光は、傾く木の幹を這うように上昇すると、上空で180度向きを変え、シロを目掛けて急降下してくる。

 

それに対し、シロは再び矢を番え、照準を合わせ、今度こそ矢を放つ。

一度に放たれた数十もの矢が、寸分の狂いも無く極光の竜へと襲い掛かり―――直撃の寸前で不自然に逸れた。

 

 

「・・・!」

 

 

予想外の結果に目を開くシロだが、驚いている暇は無い。

地面へ激突する前に空中を蹴り、地面と垂直に空を翔ける。急降下して来たアルビオンもそれに追従する。

 

初速から音速を超えて飛行するアルビオンを相手に、流石のシロと言えど直線を走って逃げ切れると思ってはいない。

端から距離を取ることを考えていないシロは、アルビオンに接近される直前に宙を蹴って身を翻し、頭上を取る。

 

そのまま弓から剣へと変形させた"銀色の蒼穹(アガートラム)"で斬り付けようとして―――剣が宙を斬った。

 

 

「・・・ッ」

 

 

すれ違う二人。

即座に弓へと変形させたシロは無傷のアルビオンに背後から狙いを定めて矢を射るが、音を超えて飛行するアルビオンに追い付く筈も無く。

虚空を漂う矢の群れが速度を落とし、アルビオンが通って更地になった場所からナメコのように生えるモース達へと直撃していく。

 

そして起こる爆発、それら全てを置き去りに一瞬で天高く飛翔していくアルビオン。

そんな彼女をマシンガンの如く矢を連射して狙い撃つが、全ては空の彼方に消えていく。そうして、上空まで達したアルビオンが体勢を変えて再びこちらに狙いを定めた。

 

一直線に降下してくるアルビオンに対し、今度は矢を拡散させて弾幕を張り、数の暴力で迎撃を試みる。

 

針の穴ほどしか隙間が無い、空を埋め尽くす絨毯射撃。

一矢の威力は控えめであれど、当たればダメージは免れない弾幕に、けれどもアルビオンは速度を落とすことも、()してや回避行動を取ることも無く突っ込んだ。

 

 

「・・・あぁ、なるほど」

 

 

そして案の定と言うべきか。無傷のまま、弾幕を一矢足りとも掠らず潜り抜けたアルビオン。

その事実に、シロは先程から繰り返された不自然な攻撃の挙動に、漸く合点のいった様子で構えを解くと半身をズラし、最小限の動きでアルビオンの直撃を回避した。

 

しかし、直撃を避けようとも、相手は音速を超える速度で飛行している戦闘機だ。

後から巻き起こるソニックブームが周囲を襲い、宙に投げ出されたシロはそれが狙いだったかのように空中で体勢を立て直し、アルビオンには目もくれず、地上で暴れている獣の厄災の方へと矢を放つと、その矢を追うように宙を翔けた。

 

 

「先にお前からだ、バーゲスト」

 

 

攻撃とともに接近してくるシロに気付いた魔犬が、襲い来る魔力の矢を口を開いて吸い込む。

自身の攻撃が完全に無力化されることなど想定済みのシロは、怯むことなく猛スピードで接近し、その大きく開いた口元目掛けて剣を振り抜いた。

 

 

「■■■■ッ!?」

 

 

耳を(つんざ)くような悲鳴と共に、魔犬の右頬が浅く裂ける。

斬り付ける直前に、刃を象った魔力が吸い取られたため、あまり深くは入ってない。

 

であれば追撃するのみ。

再び刃を形成し、空中を蹴る。

眼前の魔犬は背を向け、こちらに気付いていない。

 

気付いていた所で、魔犬の魔力吸いは口からしか行えず、振り向く時間も無い。

故に、背後からの攻撃に、今の怯んだ魔犬は対処する術を持たない。

 

()った、と。

そう確信したシロを、真横から謎の質量が襲い掛かり、弾丸のように弾き飛ばされた。

 

 

「・・・ッ! ・・・ッ!?」

 

 

一度に百メートル以上も地面を跳ね、それを何度も繰り返して何処かの建物に激突し、漸く勢いが止まった。

 

瓦礫に埋もれた身体を起こし、遥か先に居る魔犬を見据える。

今の攻撃はなんなのか、自分の身に何が起きたのか。

 

それを確かめようとして、視線の先にある光景を目にして、シロは思わず溜め息を吐いた。

 

 

「・・・マジか。共闘とかするのか、お前ら」

 

 

そこにあった光景は予想外なものだった。

 

本体は変わらず穴の中のケルヌンノス。

しかし、その触手が空中を縦横無尽に泳ぎ回り、困惑している魔犬へと襲い掛かる。

 

まるで滝のように降り注ぎ、モースの呪いが魔犬を覆い尽くす。中で暴れているのか、僅かに象った犬の形に合わせて、スライムのように呪いが蠢くが、次第に大人しくなっていく。

 

それはまるで、羽化を控えた蛹のように。

一瞬の静寂の後、魔犬を覆っていた呪いの塊が弾け飛び、中から変わり果てた姿の魔犬が産声と共に姿を現す。

 

グズグズに溶け、無数のミミズのようなモノが全身を蠢く。

弾け飛んだ呪いがまるで意思を持つかのように纏まり、空を駆け回って再び魔犬へと降り注ぐ。

 

そうして、漸く身体に馴染み始めたのか。

ケルヌンノスのように呪いを身体に纏い、唸り声を上げる魔犬が、その灼熱のような双眸でシロを睨み付ける。

 

 

「■■■■■!!」

 

 

そこへさらに、先程シロを吹き飛ばしたアルビオンが旋回して駆け付けて来る。

 

呪いの神、獣の厄災、炎の厄災。

それら三体の大厄災が共謀し、ただ一人の小さな妖精の前に立ちはだかる。

 

あまりに絶望的な状況で、どう考えても勝ち目なんか無くて。

例え、傍から見れたら弱い者虐めにしか見えない構図であろうとも。

それでも、シロは両の足を地に着け、目を逸らすことなく彼らを真正面から見据える。

 

 

「・・・正直に言えば、元妖精騎士(お前たち)が少しだけ羨ましいよ」

 

 

両手に握る糸を引き、先の衝撃で彼方に飛ばされていた"銀色の蒼穹(アガートラム)"を手繰り寄せる。

 

 

「でもまぁ・・・守護るって決めたからさ。あの人が残した、宝物を」

 

 

猛スピードで地平線の先からカッ飛んで来た剣を掴み、魔力の刃を形成して構える。

 

 

「だから、壊させないよ。安い命だけどさ、この命に変えても」

 

 

シロの決意を感じ取ったのか。

魔犬とアルビオンは咆哮を上げ、それぞれが呪いと極光を撒き散らし、大穴から津波のように呪いが噴き出し、襲い掛かる。

 

それらを認めても尚、逃げるという選択肢など無く、真正面から受けて立つ守護者。

 

 

今ここに、ブリテン島最後の戦いが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

少女は夢を見る。

いつも見た夢の続きを。これまで歩んできた、夢の終わりを。

 

吹き(すさ)ぶ嵐の中をただ一人、傷付き、挫け、何度も死にたいと願った。

 

それでも歩き続けたのは、あの光があったから。

嵐の向こうで一つだけ小さく、青く輝く遠い星。

 

転んだ時、泣きながら立ち上がる。

疲れた時、がむしゃらに顔を上げる。

 

どんな時でも星は輝いて、どんな時でも少女に勇気と希望を与えてくれた。

 

 

でも、それももうおしまい。

星は見えなくなって、どこへ歩けばいいのかも分からなくなって。

 

 

全てを諦め倒れ伏す少女に、けれどもソレは訪れた。

 

 

 

 

・・・誰?

誰かが私を庇ってくれてる。

 

二人で、何か布のような物を広げて、必死に何かを訴えかけていた。

 

 

―――がんばれ♡ がんばれ♡ ほら、ホーちゃんも!

―――ぇ、えっと・・・が、がん・・・ばれ♡ がん、ばれ♡

 

 

嵐の中で、あまりにも場違いに楽しそうな声と、恥ずかしそうな声が聞こえて。

 

立つ気力なんて無かったのに。

もうここで、終わるはずだったのに。

 

応援、されちゃったからかな。

どうしてか、不思議と力が湧いてくる。

 

 

―――がーんばれ♡ がーんばれ♡

―――が、がーんばれ・・・♡ がーんばれ♡

 

 

 

だから、だから・・・もう少しだけ。

あとほんの少しだけ、頑張ってみようって。

 

 

そう、思えたんだ(立ち上がれたんだ)

 

 

 




一周目のブリテン島を終わらせた厄災について。
原作で術ニキが言及したのと、モルガン様と言えど準備も無しにモフモフを封じられるとは思えないので、今作では獣と炎の厄災が滅ぼしてます。






次にお前は、
なんだこの傷とリボンは!? と言う。

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