【完結】チート転生者かと思ったが特にそんなことは無く、森に引き籠もってたら王様にスカウトされた   作:榊 樹

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前回のイラストについて、結局なんだったのかと言うと。
単に、描写し忘れてた外見の変化を絵で補っただけです。

あれのために一話から伏線張ってたのに、思いっきりド忘れしててショックが凄かった。


円卓の騎士

大厄災が訪れ、せめて聖槍だけでも回収しようと向かった大穴から、呪いの神が這い出てきて。

周囲の存在を見境無しに呪い始めたソレは、当然ながら立香達の乗る船をも襲った。

 

逃げようにも、敵の量は甚大であり、速度も到底振り切れるものでは無かった。

最早、絶体絶命。全方位を呪いの腕で囲まれ、全滅まで秒読みとなった時、それは現れた。

 

悍ましく、純白の五本の尾。

いくつもの異聞帯でカルデアを邪魔していた筈のコヤンスカヤが、呪いからカルデアを守ったのだ。

 

それだけでは無い。

彼方から放たれた光の矢が、一拍遅れて世界に降り注ぐ。

雨のようで、けれども不思議とカルデアに被害は無くて。

島に牙を剥いた呪いのみを、ただ正確に撃ち抜いていく。

 

 

「エーちゃんだ・・・!」

「いやちょっとこれは出鱈目過ぎないかい!?」

 

 

見覚えのある、けれども規模が桁違いの、圧巻という他ない光景に湧き上がるカルデア陣営。

 

しかし、そんな中、この世界へ来て初めて出来た今は亡き友の願いを。

ブリテンを守って、と。後悔と懺悔が混じった声でそう言い残して死んだ友の頼みを叶えるために。

 

一連の騒動を起こした黒幕にとって最も目障りな勢力であるカルデアを守ろうと、身を張ったコヤンスカヤは。

 

想像以上に禄でもなかった呪いの塊を一身に受ける中で、視界の端に捉えたこちらへ向かって来る光の矢。途轍も無く見覚えのあるソレに気付いた時、確かに聞いた。

 

 

心底バカにしたような、腹立つ顔が容易に想像出来てしまうような声色で

━━━━ぷ、ざまぁwwww

と。

 

 

「ァぁ゛ あ゛ッんの゛ ォ゛クソガキィぃ ッィ!!」

 

 

普段の理知的な声は影も無く。

獣のような断末魔を最後に、ビーストの幼体は光の矢に呑まれていった。

 

 

 

 

ストームボーダーを発進させてから2時間。

ブリテンを救うと意気込んだものの、結局救えたものなんて何一つありはせず、ただ滅びていくブリテン島を見ていることしか出来なかった。

 

最後の頼みの綱も。一度はブリテン島に歯向かい、けれども隻腕の騎士に諭され、そうして守護者として覚醒したシロの力を持ってしても、巨大な力を持つ個の群れには、多勢に無勢であった。

 

ただでさえ一体でも手一杯だと言うのに、世界を滅ぼせる大厄災が利害の一致から徒党を組んで襲って来るのだ。ある程度拮抗しているとは言え、押され、決定打に欠けていることに変わりは無い。

一手でも間違えれば、その瞬間には吹き飛ばされ、畳み掛けられ、格ゲー並の連携攻撃で追撃される。

 

しかも、厄災たちはそこに居るだけでモースを生み出し、ブリテン島に居る妖精を滅ぼそうとする。

その結果、シロの意識は厄災を前にしておきながらも、守護者としての機能が仇となり、強制的にモースへと意識を向けさせられる。

 

ブリテン島全土を見渡せる守護者としての権能が、未来視に近い先読みを可能とし、予め空へ放った矢がモースを迎撃するが、それも無限では無い。

必ず、何処かのタイミングで装填する必要があり、そしてそれを容易く許す厄災達では無い。

 

湧き上がる魔力がその小さな身を守り、見た目の割にダメージは少ないけれど。それでも、その様は傍から見ればただの弱い者虐め。

 

徐々にボロボロになっていく姿は、このまま行けばそう長くない内にヤられ、殺されてしまうのでは、と。そんな最悪な未来を立香達にさせるには、十分過ぎるほどに悲惨な光景であった。

 

しかし、今立香たちがやるべき事は、加勢などではない。

もっと大事な、この地獄のような戦いを終わらせられる使命を果たさねばならない。

 

その為に、今この場は小さな守護者一人に託し、彼らは星の内海へと渡った。

アルトリア・キャスター。楽園の妖精の使命を果たすために。

 

 

 

 

世界の始まりを知った。

妖精たちの罪を知った。

妖精國が妖精國たらしめる、その原罪を知った。

 

そうして、星の内海へと辿り着き、そこで厄災の真実と守護者たるシロが今回の厄災には決して勝てない事実を知った。

 

ブリテン島を守るはずの防衛機能は、急造であったからこそ、欠陥だらけであったから。

なんせ、そもそもがガワだけ真似た模造品だ。肝心の中身が、まるで伴っていなかった。

 

だから、中身は自分たちで創ることにしたのだ。

 

妖精を守るため、妖精に害を成せないようにした。

妖精を助けるため、妖精に逆らえないようにした。

危ない時に守ってもらえばいいから、危なくない時は力を扱えないようにした。

 

そうして出来上がったブリテン島の守護者。

みんなの為に、命を賭して悪へと立ち向かう理想の英雄。

絶対に負けない、倒れても何度だって立ち上がる無敵のヒーロー。

 

その結果、ヒーローは守るべき筈の妖精たちに、良い玩具が出来たと、何度も殺され続けた。その役目を果たすことも無いままに。

 

ヒーローは負けちゃいけないから、死んでも蘇るけど。

蘇る度に妖精の願いを聞いて、身を賭して叶えていたから、厄災が起きる時はいつも死んでいた。

 

死んで、死んで、死んで。

とんだ失敗作だと、創造主に貶されて。

役立たずだと、守るべき者たちに石をぶつけられ。

 

だから、いつまで経っても改善しようとしない創造主に代わって、その欠陥をモルガンが直すことにした。

守護者としての性能を参考に、最も力を引き出せる武具を与えた。

いつでも力を引き出せるように、聖杯も霞む魔力タンクを用意してあげることにした。

ギフトによって存在を上書きすることで、削られた感情を抱けるようにした。

 

出来ることはやり尽くして、与えられるものは全て与えて。

けれど、やはり感情だけは上手くはいかなかった。

 

悪感情は抱けるようになった。しかしそれは、妖精以外の者に対してのみであり、どうあっても妖精達に対しては無関心以外の感情を抱けることは出来なかった。

正真正銘の妖精たるウッドワスやバーヴァン・シーを気にかけていたのは、モルガンのお気に入りだったから。大切な人が大切にしていたモノだから、そういう風に扱っていただけで、別に彼らに対して特別な感情があった訳ではなかった。

 

だからせめて、あの子が害されないようにと力を与え、名声を与え、その力をブリテン全土に見せつけることで、手を出してはならぬ、自分達では適わぬ存在だと民衆に広めた。

 

そうして出来上がったのが新たな守護者、妖精騎士ベディヴィエールだった。

 

しかし、そうなってまでも取り除けなかった兵器としての欠陥が。妖精を害することが出来ない欠陥が、今この大厄災においては最悪の事態を齎した。

 

妖精の醜悪さに絶望し、完全に堕ちてしまったバーゲストはまだいい。不味いのは、妖精を核として取り込んだケルヌンノスとアルビオンだった。

 

ケルヌンノスも、アルビオンも、その存在自体はどちらも等しくブリテン島の敵だった。しかし同時に、彼らの核となる者たちは、まだ妖精として生きていた。闇に堕ち、モースへと成り果ててはいなかったのだ。

 

その結果、二つの厄災は妖精として認識されるようになり、それはつまり守護者が討ち滅ぼすべき敵では無いということを意味していた。

 

故に、いくらシロが攻撃をしようとも、他ならぬシロ自身が無意識にその軌道を逸らしてしまう。守護者としての機能が、反逆をしようとする守護者を咎めるかのように、強制的に狙いを外させられる。

 

 

自分たちの危機だと言うのに、それを守ろうとする者の足を引っ張る滑稽さに、思わず絶句する立香たちだが、今はそんな事で足踏みをしてる場合ではなかった。

 

シロを助けたいと言うのなら、ブリテン島を救いたいと言うのなら、星の内海まで来た使命を果たさねばならない。

 

そのための試練を乗り越え、遂に聖剣を創る鍛錬場たる選定の場まで辿り着き。

あのアホに借りを返せなかったのが心残りだと、そう言い残して消えた村正を犠牲に、アルトリアによって立香たちは聖剣の基型を手に入れた。

 

手に入れて、今度こそブリテンを救うために、マーリンの小細工によって猶予を手に入れた立香たちは、もう一度表の世界へと戻るのだった。

 

 

 

 

吹き飛ばされ、噛み砕かれ、貫かれ。

徐々に内側へダメージが蓄積され、呪いが身体を犯し始めて、死にかけの所へトドメとばかりに総攻撃を仕掛けられた。

流石にあの状態であれを受けては無事では済まない。

 

だと言うのに、気付いた時、目の前には勢揃いした大厄災たちと、周囲にはまだ破壊し尽くされる前の島の景色。

 

目を覆うほどの破壊の閃光も、耳を貫く爆音も、確かに覚えている。いや、正確にはその記憶がある。

自分のものでは無い。島が保存している記憶だった。

 

 

「これは、レイシフト・・・?」

 

 

覚えのある現象に、しかし何かが違うと察するものの、それが何かも分からないし、どうでもいい。

例えそれがなんであったとしても、こうして再び戦える機会を得られたことに変わりは無いのだから。

 

けれど、時間が巻き戻って、敵の攻撃が分かるからと言って、別にシロが強化された訳では無い。未来を知った行動を取れば、それに合わせて厄災たちは攻撃を変え、対応してくる。

 

結局はさっきの二の舞。またボコボコにされ、痛め付けられ、ダメ押しとばかりに彼方まで吹き飛ばされる。

 

吹き飛ばされ、地面を跳ね、漸く止まったそこで。

瓦礫を退かして立ち上がると、自身を呼ぶ声がした。

 

 

「エーちゃん!」

「先輩! ━━━━真名、開帳 "いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)"!」

 

 

一瞬誰のことかと思ったが、そう言えばそんな風に呼ばれていたな、と。

こちらへ向かって来る呪いの塊を、突如出現した白亜の城が防ぐのを見ながら、呑気にそう思った。

 

 

「・・・なぜこちらへ? 貴女たちはもう、ここへ用は無いはずですが。あとその呼び方やめてください。割と黒歴史なので」

「用ならあるよエーちゃん! 」

「やめてください」

 

 

島が保存してる記憶から、何かしら目的があってまだこの世界に残っていたのは把握していたが、あのレイシフト擬きが起こった時点で恐らくそれは達成された。

 

ならば、最早滅びるだけのこの世界に用は無いはずだ、と。

冷たくあしらおうとしたシロへ、立香は一歩も引くことなく断言する。

 

 

「助けに来たんだよ、エーちゃん!」

「必要ありません。あとその呼び方やめてください」

「あ、マシュ、もうちょっと頑張って!」

「はいぃぃ!!」

「・・・」

 

 

先輩の無茶振りに必死に答える健気な後輩と、黒い鎧を纏ったその姿をジッと見詰め、急にソワソワし始めたシロ。

 

 

「それに、貴女たちも知ってるでしょう。妖精など、この世界のことなど、救うに値しないと。こんな糞みたいな生命体、先の世に残してもなんの得にもならないと」

「うん、知ってる。妖精たちも、私たち人間と同じだってこと」

「・・・同じ?」

 

「妖精にも、良い妖精と悪い妖精が居た。人間と同じように、悪さする妖精が居れば、それと同じくらい良いことをする妖精も居た。まるで子供みたいに、無邪気に他者を傷付ける妖精が居た。でも、自らの過ちを認めて、成長した妖精も居た。始まりの6人がやった事は、正直どうかと思うけど・・・だからって、それが今この時代の妖精たちが滅んでいい理由にはならない。エーちゃんが、その罪を一人で背負い続ける理由にはならないよ」

「・・・さては態と呼んでいますね?」

「それに、このままエーちゃんが負けちゃったら、今度は外の世界が滅ぼされる。今度こそ、私たちの世界が確実に滅ぼされるんだ。私たちの力だけじゃ足りない。エーちゃんの力も必要なんだ。だから助ける! エーちゃんのためじゃない。この世界のためでも、妖精を救うためでもない。自分たちの世界を守るために! ・・・それでもエーちゃんは、逃げろって言うの?」

「・・・・・・」

「先輩、もうッ━━━━━」

 

 

夥しい量の呪いが白亜の城を穢し、トドメとばかりにアルビオンが旋回して城へと一直線に突撃してくる。

あれを受け止める力は最早無く、撤退を進言しようとしたマシュだが、地平線の彼方から瞬きもしない時間で距離を詰めたアルビオンが、城塞へと激突する。

 

そこへ光の矢が降ってくるが、やはりソレがアルビオンへ当たることはなく、僅かな拮抗を経て崩れ去った白亜の城から、太陽の如き閃光が弾けた。

 

 

「世界の命運を掛けた戦い。信念を貫き通すその覚悟。その声を聞いた以上、いつまでも控えてる訳にはいきません」

 

 

否、太陽そのもののと言っても過言では無いその光から、一人の騎士が歩み出る。

 

 

「孤独な戦いの道を選んだ我が友と、同じ道を歩もうと言うのなら。例えそれが貴女の意思であろうと、見過ごすことなど出来ない」

 

 

あらゆる不浄を清める焔を有する聖剣ガラティーンをその手に。

太陽の如き熱き情熱をその瞳に宿した至高の騎士。

 

 

「突然の同僚面など煩わしいでしょうが、どうかご容赦を。貴女の大切なモノを護る戦いに、共することをお許しいただけますか、デイム・ベディヴィエール」

 

 

円卓の騎士"太陽のガウェイン"が、立香の声に惹かれ、その姿を現した。

 

 

「あ、貴方は━━━━!」

 

 

召喚される筈のない汎人類史の英雄の登場に、驚愕するマシュだったが。参上したのは、何もガウェインだけではない。

 

もう一人、この場に相応しき資格を持ったモノが、その砂煙の中には居た。

 

マシュの霊基が反応するほどの。円卓最強と謳われた騎士の中の騎士が、純白の鎧を身に纏い、その光から姿を━━━━━。

 

 

「Arrrrrrrr!!」

 

姿を・・・。

 

「thurrrrrrrr!!」

 

「・・・・・・」

 

 

・・・現すことはなく。

代わりに、全てを呑み込む漆黒の鎧に包まれた狂戦士が、狂ったように雄叫びを上げていた。

 

 

「・・・・・・」

 

 

そのあまりにも残念と言うか、期待を裏切りに裏切ってくれた父の姿に。

マシュは残念なモノを見るような、心底蔑んだ目で、その黒騎士を見ていたとかいなかったとか。

 




ビースト。災害の獣の総称。
つまり、厄災だな?(ガバ判定)
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