【完結】チート転生者かと思ったが特にそんなことは無く、森に引き籠もってたら王様にスカウトされた   作:榊 樹

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作者は狂スロ大好きです。


抜錨

 

「Arrrrrrrrthurrrrrrrr!!」

 

 

そう叫ぶ黒騎士にぶっ刺さるいくつもの視線。

なんでそうなってるんだと驚くガウェインに、こんな時に何をしてるんですかと呆れるマシュ、そしてやってくれたなこのNTR騎士と怒る立香と、いきなり出てきて叫び出した初対面の鎧男になんやコイツとガチの不審者を見る目になっているシロという、最優の騎士と謳われた者の登場としては散々も散々なものであった。

 

しかし、狂化状態にある今のランスロットに、そうした周囲の視線に気付ける筈もなく。

それでも敵味方の判別は付くのか、誰かの名前のようなものを叫びながら、一番目立つケルヌンノスに向かって駆け出すと・・・。

 

・・・四方八方から襲いかかってきた呪いの触手に為す術もなく取り込まれ、小さな山となった呪いの塊にアルビオンが突っ込み、呪いの塊は爆発四散した。

 

 

「いや何してんのー!?」

 

「・・・いえ、お待ち下さいマスター!」

 

 

あまりの出落ち感に、英雄相手とは言え、さしもの立香も盛大にツッコミを入れるが、ランスロットの存在にいち早く気づいたガウェインが声を上げる。

そんな彼が指し示す方向を見れば、そこには空を旋回する純白のアルビオンの背中に、黒い点のようなものが見受けられた。

 

それはアルビオンが振り落とそうと錐揉み回転をしたり、光の速さで急降下からの急上昇をしても落とすことは叶わず、アルビオンはそれを嫌がるかのように滅茶苦茶な軌道を描いて飛び始めた。

 

 

「トイレにこびり着いたカビみたい」

「先輩、シィーッです!」

 

 

最悪な例え方をする立香に、曲がりなりにも義娘であるマシュがジェスチャー付きで咎めるが、否定しない辺りにマシュの本音が漏れ出ており、緩みかけていた空気をガウェインが咳払いをして締め直した。

 

 

「・・・さて、あちらの飛龍はランスロット卿に任せるとして。あの見上げるほどに巨大な獣は、私が引き受けましょう」

「いえ、アルビオンの意識が逸れたのであれば、やりようはあります。貴方と黒騎士様には足止めを・・・・・・ん、ランスロット?」

 

 

ガウェインの提案に待ったを掛けたシロが、妙に聞き覚えのある名前に首を傾げると、声を掛けられたガウェインがそちらに振り向く。

 

 

「ん? ・・・えぇ、彼がどうかしましたか? あ、申し遅れました。私、円卓の騎士の一翼を担っておりました、太陽のガウェインと申します」

「ガウェイン・・・ガウェイン?」

 

 

これまた聞き覚えのあり過ぎる名前に、なぜ元同僚と同じ名前なのかと、聞けば聞くほどに疑問符がポンポン浮かぶシロは首を捻り続ける。

少し思案して、彼らが妖精騎士の着名の基となった円卓の騎士の一人であることに気付くと、ついつい好奇心からある事を聞いてしまった。

 

 

「・・・もしや貴方は、汎人類史(そちら)側のモルガン様のご子息である、あの・・・?」

「・・・えぇ、まぁ・・・。あー、デイム・ベディヴィエール、出来ればその・・・」

「・・・?」

「・・・いえ、なんでもありません」

 

 

出来るだけ失礼のないようにと、シロにとっての最大限の褒め言葉と言うか、不名誉とは一切無縁の非常に光栄な肩書きとともに自分の推理が正しいかを確認しただけなのだが、当のガウェインは普段の彼を知るものからすれば二度見するほどに物凄く微妙そうな顔をしており。

何故そのような顔をされるのか皆目検討の付かないシロは再び首を傾げ。それに対してガウェインは、今のやり取りだけで異聞帯(こちら側)のモルガンが俄に信じがたいことに相当慕われていたのだと察してしまい、何をどう言っても誤解されるか、この幼い少女の顔を曇らせる気がしてならず、思わず言葉を濁してしまった。

 

 

「・・・それより、今何か言い掛けませんでしたか?」

「ん、あぁ・・・。モフモフではなく犬の方を、トドメは我ら()がするので隙を作って欲しいのですが。出来ますか?」

「ふむ・・・えぇ、分かりました。私一人であれば厳しかったでしょうが・・・デイム・マシュと共であればそれも容易いことかと」

「あ、はい! マシュ・キリエライト、僭越ながらお供します!」

 

 

無理矢理、軌道修正をしたが、そも悠長に話をしている暇はあまり無い。

 

アルビオンが戦線に加われそうにないと悟ったバーゲストが、触手を弾けさせ、四方八方から追随するように動かしながら突撃して来る。

 

それを合図に、シロは天へと矢を放ち。空へと舞い上がる閃光を背に、ガウェインとマシュは駆ける。

 

 

「はぁッ━━━━!」

 

 

衝突はマシュが、周囲の触手はガウェインが捌き、僅かな拮抗が生まれる。

足を止めたバーゲスト、その隙を逃さぬように彼らの身体の隙間を縫って矢が襲い掛かるが、即座に纏い直した触手がそれを防ぐ。

 

そして、足を止めたのはこちらも同じ。

彼方に居るはずのケルヌンノスだが、大き過ぎるが故にその遠近感は狂い、想定した以上の速度で展開される呪いが周囲を囲み、逃げ場を無くす。

 

一瞬にして追い詰められたかと思われたが、しかし、次の瞬間には空から光の矢が降り注ぎ、撃ち抜かれた呪いの壁の隙間からマシュ達が後退する。

 

 

「ほう、これは・・・」

 

 

敵の情報を得るための、一連の攻防。

ガウェイン自身、宝具を解放すれば切り抜けられた場面であったが、態とピンチを装ったのはシロへの疑心が拭えなかったため。

 

ベディヴィエールの名を冠しており、感じられる存在感も並大抵のものでは無いが、しかし一人の騎士として信頼に足る人物かは別の話。

 

友の名を授かっていただけに、侮っていたつもりなど無かったが、それでもまだ甘かったかと、ガウェインは笑みを零した。

 

 

「・・・失礼。見かけによらず、という奴ですね。どの世界でも、彼の名を持つ者はみな(したた)かのようだ」

「名・・・? あぁ、妖精騎士の」

 

 

トリスタン、ランスロット、ガウェインと来て、であれば次は自分の番か、と密かに期待していたシロであったが。

様子を見るに、彼ら円卓の騎士と同じように、隻腕の騎士が来る気配は無く。

 

既に会っていることに気付いてないシロは、敵を前にして内心少しションボリしつつも、彼方から襲い来るケルヌンノスの触手を射抜き続けていた。

 

 

「出来ることなら腰を落ち着けて言葉を交わしたいですが、どうにも私に残された時間は僅かのようだ。名残惜しくはありますが、今は己が使命を全うしましょう」

 

 

言い終わると同時に、ガウェインの魔力が膨れ上がる。

それが宝具解放の準備であると悟ったマシュは、次で決めるのだと気を引き締める。

 

 

「行きますよ、マシュ!」

「はい!」

 

 

態勢を整えたバーゲストが踏ん張り、触手を四散させ、魔力を撒き散らす。

当たれば即死級の面制圧による攻撃を。しかし、歴戦の騎士たちは紙一重で躱し、捌き、急速に距離を詰めていく。

 

 

「はぁッ━━━━!」

 

 

宝具ではなく、剣圧に魔力を載せた範囲攻撃。

迫り来るバーゲストの触手を一振で消滅させ、続くマシュが宝具を解放する。

 

 

「━━━━真名、開帳 "いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)"!」

 

 

白亜の城が顕現し、行く手を阻む。

無数の触手が雪崩込もうともビクともしない城塞の影の向こう側。

 

触手に覆われた壁面を前にして吠えるバーゲストは、しかしその壁の奥から確かにその声を聞いた。

 

 

「━━━━矢を番えろ、銀色の蒼穹(スイッチオン・アガートラム)

 

 

詠唱とともに、何処からか集まる眩い光の粒子が波となり、シロの手の平へと収束して行く。

集い、束ね、廻り、形を成して、一本の槍へと姿を変える。

 

そして、手の平に浮かぶ一本の槍を掴み、弓へと番える動作に合わせて、螺旋の槍がより細く、捻れ、引き絞られていく。

 

 

「■■■■■■■■!!!」

 

 

あれはマズイ、と。本能で悟ったバーゲストが、自身が行える最大火力の魔力を乗せた咆哮で迎撃。

遠くから同じく危険を察知したケルヌンノスが、バーゲストを巻き込むことも厭わず、数倍の量の呪いで持って、津波の如く城を押し流そうとするが、城塞の上で剣を構える騎士がそれを通す道理は無い。

 

 

「この剣は太陽の写し身 もう一振りの星の聖剣! ━━━━"転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)"!!」

 

 

先の魔力放出とは比べ物にならない、文字通り太陽の如く燃え盛る熱波が、それら攻撃を全て焼き尽くした。

 

 

「グルルァッ・・・!?」

 

 

遠くから援護するケルヌンノスは兎も角、間近で直撃したバーゲストは思わず怯む。

それでも触手が焼け落ち、表面が焼け爛れた程度で済んだのは、流石は大厄災の化け物と言った所か。

 

しかし、これらは全て布石に過ぎず。

触手が消え去り、再び姿を現した白亜の城塞の奥で、守護者がその矢を構え、その時をずっと待っていた。

 

 

「━━━━"偽・最果てに届かぬ銀色の鏃(ロンゴミニアド Ⅱ)"」

 

 

そうして、城塞を内側から削り、尚も勢いを落とすことなくバーゲストの脳天に直撃した光の矢は。

 

一切の抵抗を許さず、バーゲストの顔から胴に掛けて全てを抉り取り。さらには奥で構えていたケルヌンノスへと空間を削りながら突き進み、幾重にも重ねた呪いの触手を容易く突き破って、何千年という怨念が何層にも積み重なったケルヌンノスの頭部を消し飛ばした。




一方その頃、トイレのカビは・・・。
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