【完結】チート転生者かと思ったが特にそんなことは無く、森に引き籠もってたら王様にスカウトされた   作:榊 樹

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足で弓引くってどういうこと? って思ったけど、なるほどそういうのもあるんですね。
凄い性癖に刺さりました。


小さな桃源郷

あれから色んなことがあった。

俺以外にバーゲストさんやメリュジーヌが妖精騎士を拝名し、それぞれ妖精騎士ガウェインと妖精騎士ランスロットとなったり。あの近接戦闘では負け無しのウッドワスさんが何故か前線を退いたり。果てには鏡の氏族が「予言の子」とか言う、なんか如何にも王道そうな予言を残して、気付けば滅ぼされてたり。

 

本当に色々なことがあったが、今一番気にしていることは妖精騎士ランスロットだ。

銀髪でロリっ子で凛々しくて、プライベートはすっごいお喋りで、あとオーロラさん(特定の誰か)に大きな好意を抱いている。

 

・・・・・・いや、俺とキャラ被ってね?

 

強いて言えば、戦闘スタイルが異なるって点だが・・・よく良く考えてみれば、俺は近接戦闘はしないものの、彼女は上空から爆撃(敵の届かぬ位置から攻撃)を行ったり、二刀流であったりと、意外と共通点が多い。あとどっちも空を飛べる(跳べる)。

 

・・・いや、うん。キャラが丸被りしてることに関しては別にいいんだ。被せようとして、あんなキャラになった訳では無いのは知ってるから。

 

ここで俺が気になった点というのが、特定の誰かに大きな好意を抱いているということだ。

・・・・・・同志獲得チャンスでは?

 

 

そんな訳で早速、彼女の下へレッツラゴー・・・したかったのだが、生憎と彼女はオーロラさんのことが好き過ぎて、仕事は常に飛び回って俺以上に最速で終わらせるし、終わったらソールズベリーまで直行するので中々話す機会が得られない。

いや、それならそれで俺もソールズベリーに行けばええやんって話なのだが、ご存知の通り、俺がオーロラさんと接触することはモルガン様が難色を示しているのでそうもいかない。

 

どうしたものかと、ウッドワスさんが治める街で彼が経営しているお店の個室で食事していると、目の前にオーナーであるウッドワスさんが座った。

 

 

「依頼したものは持って来たか」

「・・・ここに」

 

 

何処かソワソワしている彼に、スっと一枚の紙を渡す。

ソレは今は前線を退いて見られなくなった、過去の剛力無双なウッドワスさんの姿が描かれた一枚の絵画だった。

 

それを受け取ると「ほほう・・・」と満足そうに品定めを始めた。

 

 

「中々、私の獰猛さと凶暴さを兼ね備えた良き一枚ではないか」

「・・・本当にいいの?」

 

 

大変ご満悦な所悪いが、実はこれ、ウッドワスさんの意中の相手でもあるオーロラさんへのプレゼントとして、少し前にウッドワスさんから依頼された物なのだ。

 

いや、確かに自分でも誇れるくらい、記憶だけを頼りによく描けたなって自画自賛するレベルでカッコよく描けたが、そもそもとしてウッドワスさんは獰猛さや凶暴さとは無縁な紳士を目指している。

そこにコレをプレゼントすれば全てが水の泡ではないのかと思ったが、どうやら彼の考えは違うらしい。

 

 

「良いも何も、これは元々貴様が言い出した事だろう? 確か・・・ギャップ萌え、だったか。これでオーロラ様のハートはズキューンだと」

 

 

・・・いや、確かに言ったし、恋愛相談もされたけどさ。

「手始めに一人称変えてみたら? 」とか、「モルガン様は"俺"って一人称が凛々しくてカッコイイと仰っていた」とか言って本当に実践したかと思えば、後から嬉々とした様子で「オーロラ様に "そんな野性味溢れる貴方も素敵" と褒められたぞ!」と言われた時は、思わず大型犬を連想してしまった。

 

もうなんか、小学生の男子を軽くあしらってる年上お姉さんのような構図にしか見えないんですけど。絶対、脈無しなんだろうけど・・・これが恋は盲目ってやつか・・・。

 

 

「・・・報酬」

「・・・・・・分かっているとも」

 

 

しかし、それでも俺がウッドワスさんのお手伝いをするのには、きちんとした理由がある。

 

俺の言葉に忌々しそうにしたウッドワスさんが背凭れのある椅子に横向きで座り、俺は彼の背後へと回る。

目の前には以前よりも増してモフモフ度が上がり、毛先に至るまで物凄く手入れされた毛皮の山が・・・。

 

そこへ容赦なく、俺は全身で抱き着いた。

 

 

「おほ〜・・・しぁせぇ・・・」

「貴様、一分だけだからな」

 

 

俺が対価として提示したのは一分間のモフらせ自由権。

 

本当に心の底から嫌そうな顔をしつつも、ご自慢の毛皮を褒められて満更でも無い様子のウッドワスさんに、遠慮無く攻めまくる。

 

 

「そんなこと言って・・・ほらほら、ここか? ここがええんか?」

「くっ、殺せ・・・!」

 

 

もふもふするだけでなく、顎の下をコショリしたり、獣耳を揉み揉みしたりと、これまでの鬱憤を晴らすが如く堪能した俺は、妖精騎士ベディヴィエールとして取り繕うことも忘れ、頬を緩みに緩ませた。

 

 

「はぁ〜・・・♡ ご馳走様♡」

「はぁ、はぁ・・・くそ、好き放題しおって・・・!」

 

 

たった一分だと言うのに、終わった頃にはグッタリなウッドワスさん。

これ程に上等な毛皮ならオーロラさんも簡単に堕とせそうな気もするが・・・そういう手はやらない感じなのかな?

 

 

「・・・因みに、モルガン様はもっと上手い。テクニシャン」

「な、なんの話だ・・・」

「ふふっ、分かってる癖に」

 

 

さて、食事も済ませたし、やりたい事も終わったのでこの辺りで退散しますか。

今更だけど、ウッドワスさん狼なのにベジタリアンとか、色々と溜まったりしないのかな?

今度、お肉の差し入れでもしてあげようかな。我慢は身体に良くないって言うし。

 

 

 

 

後日、モルガン様を見てソワソワする大型犬が散見されるようになったとか。なんでやろーなー。

あと何故か、オーロラ様から熱烈なアプローチ(当社比)を貰えるようになったらしい。良かったね。

 

 

 

 

 

 

モルガン様に娘が出来たらしい。

意味不明過ぎて草生える。

 

しかし、どうやら実の娘では無い感じ。

真名をバーヴァン・シー、着名した名はトリスタン。

 

真っ赤なドレスとハイヒールが印象的な、色々とお勉強中のお母様大好きっ子である。

そんなバーヴァン・シーが、俺の下に尋ねて来た。なんでも、日頃の感謝を込めてお母様に何かお礼がしたいのだとか。

 

 

「・・・そこで何故自分に?」

「認めたくはないけど、お前、お母様一番の騎士なんだろ? あのクソ犬には聞きたくないし、消去法」

「・・・ふふっ、そういう事であればこの妖精騎士ベディヴィエール、微力ながら力になりましょう。なんせ、モルガン様(いち)の騎士なので」

「・・・・・・人選、間違えたかも」

 

 

とは言え、モルガン様の好みってあんまり知らないんだよな。娯楽よりお仕事優先って感じのバリバリのキャリアウーマンだし、お仕事以外で外に出てるのを見た事がない。

 

 

「ふむ・・・では、料理などは如何でしょう? 妖精に食事は必要無いとは言え、美味であれば娯楽として十分機能します」

「料理・・・私、した事ないんだけど」

「そこは自分にお任せを。美食家なウッドワスさんの舌を唸らせた実績がありますので」

「あの食わず嫌いを?」

 

 

まぁ、お肉関連の物はとことん食べてくれなかったが。

一週間、良い匂いのする出来たてステーキを持って追い回した事があるが、それでも食べなかったからな。

肉に親でも殺されたのか。

 

 

「・・・では用意しているので、汚れても大丈夫な服装で厨房に来て下さい」

 

 

そんな訳で急遽始まりましたお料理教室。

こちとら調味料どころか食材すら真面な物が無い時代から、英雄様グッズを作る傍らで密かに工夫に工夫を重ねていたのだ。

まぁ結局、美味しい物は作れなかったが・・・。

 

しかし、それから千年以上が経過し、今や食材も調味料も使いたい放題の特権階級である。その気になれば、各々が嫌いな物すらも好物にさせてみせる自信がある。

 

・・・・・・絶品虫料理とか出せば、モルガン様の虫嫌いも治るかな?

 

 

「・・・ほう、意外と手先が器用ですね」

「失礼ね、私はお母様の娘よ。このくらい出来て当然だっつーの」

「いやしかし、本当に見事な包丁捌きです。この調子だと、モルガン様もお喜びになられる美味しい料理が出来るでしょう」

「そ、そう・・・?」

「はい。料理が完成する頃にモルガン様もこちらへいらっしゃるようなので、一番美味しい出来たてを召し上がってもらいましょう。きっと、褒めて下さいます」

「へ、へぇ・・・お母様が・・・・・・ふーん・・・」

 

 

・・・可愛いなコイツ。あとチョロい。

 

頬を赤らめ、視線を(せわ)しなく動かし、頬がニヤけそうになるのを必死に抑えようとして失敗した赤いお耳のバーヴァン・シー。

 

そんな心ここに在らずといった様子で野菜を切っていたものだから、当然と言えば当然なのだが。野菜ではなく自分の人差し指を切ってしまった。

 

 

「痛っ」

「おや・・・少し、指を見せて下さい」

 

 

切った指を持ってパクリ。

口の中で消毒して体液を拭き取り、絆創膏を貼る。

 

 

「これで良し。包丁や刃物を扱う時は気を付けて下さい。貴女が傷付くとモルガン様が悲しまれますよ」

「っ!? ・・・!! ・・・ッ!? ッ!!?」

 

 

その後は玉ねぎを切って一緒に大泣きしたり、鍋を混ぜる大変さにバーヴァン・シーが愚痴を漏らしたり、味見をしようとして火傷しそうになったので変わりにふーふーしてあげたりと、結構順調に出来上がっていった。

 

 

「・・・あの、さ」

「何か?」

「前から気になってたんだけど、その、眼帯の下って・・・やっぱり見えないの?」

 

 

そして、後はモルガン様を待つだけとなり、暇潰しに二人で駄弁っていた時、そんなことを聞かれた。

 

 

「・・・あぁ、これですか。いえ、別に見えない訳では無いんです」

 

 

ちょっと大きめの黒い眼帯に触れて、物思いに耽る。

今ではお風呂くらいでしか見なくなった、自身の赤い瞳を。

 

 

「なら、なんで着けてんのよ」

「封印です。誰も傷付かないように封じるための。その封印が解かれた時、きっと・・・この世界に大いなる災いを齎し、多くの者を不幸にしてしまうでしょうから」

「そ、そう・・・なの・・・。ごめんなさい、軽率に聞いていい事では無かったわ・・・」

 

 

根は良い子なので・・・と言うか、今がちょっと反抗期なだけで、本当は俺が上げたモルガン様グッズを寝てる時に抱き締め過ぎて壊してしまい、それで大泣きするくらいには本当に心優しい女の子なので、こうして偶に素が出てしょんぼりすることがある。

 

そんな可愛い可愛い女王様の愛娘に、俺は優しく笑い返してあげる。

 

 

 

 

 

 

「・・・まぁ、嘘ですが」

「は?」

「単に、お洒落で着けてるだけ・・・って、ァーごめんなさいごめんなさい! 引っ張らないで下さい! やめっ、ヤメロォー! 」

「・・・・・・」

「あっ、あっ、やめて下さい、あ、でも離したら、それはそれで痛そうなので、そのままゆっくり、ゆ〜っくり俺の方へ戻して下さい。いいですか? ゆっくりですよ? ゆっくりってば━━━━」

 

 

「・・・何やら騒がしいな。何かあったのか、バーヴァン・シー」

「・・・あ、お母様!」

「ちょっと待っ・・・ア゛ア゛ア゛ア゛!! イイッ↑ タイ↓ 目ガァァァ!!↑」

 

 

 

のたうち回る俺と、とても爽やかな笑みで近寄るバーヴァン・シーに、何故かモルガン様は今まで見たことも無いような美しい笑顔を浮かべていたとさ。

ちゃんちゃん。

 




成長途中のトリ子、何かに目覚める。
悪辣な魔女の出来上がり。
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