【完結】チート転生者かと思ったが特にそんなことは無く、森に引き籠もってたら王様にスカウトされた 作:榊 樹
前回、登場した地域は二種類あり、一つはキャメロット(モルガンが居る城)から西の位置にあり、虫妖精さん達とオベロンが居る"秋の森" 。
もう一つはキャメロットから南西の位置にあり、主人公が誕生した土地でもある"コーンウォールの村"となります。
この"コーンウォールの村" は女王歴約1800年頃に殺された領主が残した呪い(忘却の呪い)によって村が霧に覆われて "名なしの森" となってしまいます。
つまり、前回での主人公視点の時は秋の森に行っており、モルガン視点で初めて"名なしの森" へ行ったことになります。
説明不足により、読者の皆様に混乱を招いてしまい申し訳ありませんでした。
多分、またやらかします。
"予言の子"。
何年か前に、鏡の氏族によって予言された妖精國を救う者のこと。
巡礼の鐘を鳴らす旅をして、絶対的な女王を打ち倒してくれる救世主。
それが他ならぬ私のことだと幼い頃から村のみんなに期待され、なんやかんやで十六歳まで育てられた私は、予言通り、巡礼の鐘を鳴らす旅に出たのです。
「なーんて、張り切って各地を回ってみたものの、"予言の子"に誰も興味無し。何処もかしこも伝説の"英雄様"が蘇るとかで大盛り上がり。相手にもされず、不貞腐れた私は、こうして"名なしの森" へ来るのでした」
まぁ、悪名高い"忘却の呪い"も、"楽園の妖精"である私には効果無しでしたけど。
期待外れもいい所。
きっと、私のことを知った他の妖精達もこんな気持ちだったのかなぁ・・・。
「・・・・・・はぁ、でも偶には全部忘れて休んでもいいでしょ。頑張った自分へのちょっとしたご褒美と言うか、いやまだ何も頑張ってはいないんですけど・・・英雄様とやらが蘇って、みんなもそれを望んでるなら、別に私が頑張らなくたって・・・・・・うん、もうなんでもいいや! お休み!」
そうして、新入り用という建前で与えられた、広場から離れたテントの中でいじけ虫になった私は、全部放り出して不貞寝するのでした。
◇
先客が居たと気付いたのは、それから目が覚めてすぐのこと。
こちらを見下ろす黒い影。その中でも一際目立つ赤い瞳と目が合った時、影は慌てたようにベッドの隅の方へと逃げて行った。
「・・・・・・え!? え、何事!? なに、新種のモース!?」
寝惚けてた頭が醒めて、傍らに置いていた杖を構える。
しかし、よく見たらそこにあるのは毛布の塊。動く気配はなく、ただジッと・・・いえ、よく見たら少し震えながら、さっきと同じように布団の隙間からこちらを恐る恐る覗いてた。
「・・・あの?」
「ッ!!?」
声を掛けただけで布団越しにも分かるほど大きくビクつき、その様を見て敵意が無いことを察した私は、杖を下ろした。
でもあちらはそうではなく、ベッドの隅で変わらず警戒されている状況にどうしたものかと罪悪感に駆られてしまう。
「あー・・・えっと、怖がらなくて大丈夫ですよ〜・・・何もしないので〜・・・」
武器を向けておいてどの口が言うのかと、自分の考え無しな行動に後悔してしまうが、今更どうしようも無い。
必死に笑顔を取り繕って、無様さが際立つ言い訳を並べ立てる。
「・・・・・・ほんと?」
「ほ、ホントですホント! ほら、何も持ってないでしょ? 杖もぽーい!」
全身を布団が包んでいるのでよく分からないが、恐らく顔であろう部分がこちらを向き、意外と好感触な反応にヤケクソ気味に無害さをアピールする。
すると、すすすとこちらに寄って来て、布団の中からひょっこりと顔を出した。
「あの、えっと・・・エールって、言います・・・。お、お姉さんの、お名前を・・・聞いてもよろしいでしょうか・・・?」
「あ、私は・・・私はー・・・・・・アルー・・・いや、キャー・・・・・・でもないな・・・」
赤い瞳がよく映える銀髪に、幼い顔立ちには不釣り合いな黒い眼帯。髪を掻き分けて生えてる耳から、恐らく風の氏族だろうが、その背に翅らしきものは見当たらなかった。
そんなエールという少女に問われた質問に、私はなんと答えるべきか迷った。
なんせ、元々は自分の役割を放棄したくてここまで来たのだ。効果が無かったとはいえ、どうせならもう少しだけ予言の子ではない自分で居たかった。
「あ、あっ・・・す、すみません。嫌なことを聞きました。そ、そうですよね、貴女も辛いことがあって、ここへ来たんですよね。ど、どうか・・・今のは、聞かなかったことに・・・」
エールちゃんの提案に、渡りに船だと思ったのは、私がいけない子だからだろうか。それとも、彼女に私が"予言の子"だと知られるのが怖かったからか。
結局、名は言えず、何かしらの偽名を言うでもなく、私は名無しの少女"ナナシ"として、彼女と接することとなった。
「へぇ、エールちゃんはここに来て、結構長いんですね」
「ま、まぁ・・・そう、なんですけど・・・。ただ、ほら・・・ここって、記憶が・・・曖昧に、なるじゃないですか・・・。だから、もう・・・どれくらい居たのか、定かじゃなくて・・・。じ、実は・・・エールって、名前も・・・本当か、どうか・・・怪しいくらい、ですし・・・」
「そ、そう・・・だったんだ・・・」
「あ、あっ、でも・・・寂しくは、ないんですよ! 村のみんな、はいい人ばかり、ですし・・・そ、それに、お友達だって、出来たんです!」
「へ? お友達・・・?」
田舎娘の私には縁のない存在を目の前の少女は持っていると言う。
明らかに人付き合いが苦手そうなこの子とのお友達なら、もしかしたら私ともお友達になってくれるかなって、そんな下心が芽生えて、ちょっと興味が湧いた。
「こ、この、エールって素敵な名前も、そのお友達から、貰ったんです・・・。た、多分・・・そろそろ、帰ってくるかと・・・。あ、ほら・・・」
何かを見付けたように指さした先には、ボロボロな翅に、今にも消えてしまいそうな雰囲気を持つ、エールちゃんと同じくらい小さな妖精がいた。
その子は中に入ってくるなり、私とエールちゃんを交互に見て、オロオロしだしたが、そんな彼女へとエールちゃんが布団を被ったまま駆け寄った。
「おかえり、ホーちゃん! 怪我、してない?」
「う、うん・・・大丈夫だよ、エーちゃん・・・ありがと」
「えへへ」
抱き着いて、お互いに挨拶を交し、気付けば私は蚊帳の外。二人だけの空間を瞬時に作られ、「あ、この間に割って入るのは無理だわ」と私はホーちゃんと呼ばれた子と友達になるのを早々に諦めた。
くそう、これがリア充ってやつか。
なんか周囲にお花がポワポワしてるし。
「と、ところで・・・そちらの・・・妖精さんは・・・?」
「い、いえ、私はお気になさらず・・・あはは」
「あ、ご、ごめんさい、ナナシさん。・・・今、紹介しますね」
抱き着くのをやめ、ホーちゃんの手を引き、私の前まで立たせると、毛布は被ったまま居住まいを正したエールちゃんが私達の自己紹介ならぬ他己紹介を始めた。
「えっと・・・ホーちゃん、こちらが今朝から俺のベッドで寝ていたナナシさん、です。ここだと確か・・・名前は、思い出したくないヒトも、居るんだった、よね。だから、名無しのナナシさん、です。
それで、えっと・・・ナナシさん、こちらがお、俺の、お、おお、お友達の・・・ほ、ホーちゃん、です! えとえと、ホーちゃんは、ナナシさんと違って、名前、忘れちゃって・・・みんながホーなんたらって言ってたから、ホーちゃんです・・・!」
「あ、あの・・・ナナシ、さん・・・ほ、ホーです。おお、お願い、します」
「あ、これはどうもご丁寧に。えっと・・・な、ナナシです、はい」
・・・なんだろ、この友達の友達に会ったような感覚は。
いや、そもそも友達なんて居ませんけども。
てか私、エールちゃんのベッドで寝てたのか。
そりゃ、気になって覗き込みもしますわ。本当にごめんなさい。
「あの、すみません。私、エールちゃんのベッドだと知らなくて・・・」
「ぁ、い、いえいえ! す、凄く、お疲れのよう、でしたので・・・その、はい! ど、どうぞ、お使い下さい・・・!」
「でも、それだとエールちゃんの寝る場所が・・・」
「お、俺は・・・ホーちゃんと、寝るので、だ、だだ大丈夫です! ぅ、ぅへへ・・・」
「えぇ!?」
まぁ、お互いに小柄だからその判断は間違ってはいないと思うけど・・・。
当のホーちゃんがすっごいビックリして赤面し、それを見て耐え切れなくなったのか、言い出しっぺのエールちゃんまでも顔を真っ赤にして謝り出した。
「ぁ、あっ、いや、ご、ごめん、なさい・・・今の、な、無し・・・! あ、あのあの、お、俺、ゆ、床で、寝るんで・・・はい・・・で、ですから、お二人は、ベッドで・・・」
「い、いいいいや!? ぜ、全然嫌じゃないよ! む、むむ寧ろ、ばッ、バッチコイだよエーちゃん!!」
「ホーちゃん・・・!」
「エーちゃん・・・!」
・・・なーにを見せ付けられてるんでしょ、私は。
いえ、別に羨ましくはないですけどね。美しい友情、それもいいじゃないですか。ええ、ホント。
・・・・・・。
それにしてもいいなー、まるでお泊まりみたいで。
そう言えば私、誰かと一緒に寝たことなんて、一度もなかったなー。
まぁ、でも慣れてますし。全然平気ですし。
なんなら野宿とかもいける口ですよ、私。
「ッ・・・ほ、ほほほホーちゃん!?」
「え、ええ、エーちゃん、だ、大胆過ぎだよぉ・・・!」
「あ、ご、ごめんね、ホーちゃんと寝られると思うと、その・・・う、うう嬉しくて・・・」
「あ、そ、それは・・・・・・うん、私も・・・だよ? エーちゃん」
「ホーちゃん・・・!」
「エーちゃん・・・!」
・・・いや、ホント。
何を見せ付けられてるんでしょうね。
◇
どうして・・・こうなったのか。
「ホーちゃん・・・もう少し、寄れる?」
「ん・・・こ、こう・・・?」
仰向けで寝る私の両脇へと、エールちゃんとホーちゃんがそれぞれ横になり、私の腕を枕にして身を寄せ合うように小さな体を押し付けてくる。
「ふふ・・・ナナシさん、カチカチです・・・」
「も、もっと・・・気楽で、いいんですよ? 私達は、その・・・もう、お、お友達、なんですから・・・」
夜の静まり返ったテントの中で、両隣から声を抑えるようにして囁かれた音が耳をくすぐり、なんだかむず痒くなってしまう。
どうしてこうなったのかと言えば、それは単にエールちゃんが提案したからだった。
折角だから三人で寝ないか、と。
もちろん、私は拒否しようとした。この二人の間に割って入るなんて堪ったものでは無かったから。
しかし、何やら期待したような眼差しを向けてくる二人に私は頷くことしか出来ず、こうして三人仲良く同じ床に着くことになった訳だが・・・。
どーして私が真ん中なんですかね。
あとなんかお友達認定されちゃってますし。
「・・・・・・え、お友達?」
「ぁ、ぇ・・・ぃ、いや、でしたか? ご、ごごめんなさい。そ、そうですよね、わ、私なんかと、お友達になるなんて、ごめんですよね・・・」
「あっ、あっ、ホーちゃん泣かないで。お、俺はホーちゃんのお友達だから。ずっと、ずっとお友達だから。だから、ね? 大丈夫だよ・・・」
「エーちゃん・・・!」
「ホーちゃん・・・!」
・・・あの、私に喋らせてくれませんかね。
別に今のは嫌だからとか、そういうあれじゃないんですけど。
「いえ、とても嬉しいです。私、今までお友達とか、居なかったので。・・・良ければ、私の方からも・・・お友達になってくれませんか?」
「ッ・・・は、はい! もちろんです!・・・や、やったよ、エーちゃん・・・! こ、これで、お友達、だよねっ・・・!」
「うんっ・・・これで名実共に、新しいお友達だよ・・・! お、押せ押せな、ホーちゃん・・・カッコよかったよ・・・!」
「エーちゃん・・・!」
「ホーちゃん・・・!」
・・・それはそれとして。
なんだろ・・・人を挟んでふわふわするの、やめてもらっていいですかね。
それにもう腕どころか、ほとんど体の上に乗っかられてるんですけど・・・。
「くぁぁ・・・んぅ・・・そろそろ、寝よっか・・・」
「ん・・・んぅ・・・おやすみなさい・・・エーちゃん、ナナシさん・・・」
「うん、おやすみ・・・ホーちゃん・・・・・・ナナシ・・・さん・・・・・・・・・」
え・・・あ、そのまま寝る感じですか。
あ、はい。おやすみなさい、また明日。
・・・・・・。
これ、明日、腕大丈夫かな・・・。
取り敢えず、ロリ百合に挟んでみた。
でも残念、田舎娘はノーマルでした。