【完結】チート転生者かと思ったが特にそんなことは無く、森に引き籠もってたら王様にスカウトされた   作:榊 樹

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前回、原作主人公の名前を"藤丸 立香" としましたが、記憶喪失時はトリスタン(汎人類史)と同様に、名前が変更されており、正しくは"ハーミア" となります。
ご指摘してくださった方々、ありがとうございます。


お布団の妖精

「私が住んでる所・・・ですか?」

「うん、いつも随分と遠くの方に行ってたから、気になって・・・」

 

 

そう言うハーミアに、あー、と宙を見る。

まぁ、ハーミア達の人柄は知ってるし、知られて困ることはないからいいけど・・・。

 

でもなぁ・・・別に真新しいものなんて特に無いんだよなぁ・・・。あるとすれば、揃うと頭お花畑になる妖精が二人くらい・・・。

 

 

「・・・・・・ま、いっか。うん、じゃあ丁度いいからホーちゃんも一緒に」

 

 

人気者のハーミア達が嫌われ者の私達の住処に行くことを、他の妖精にバレたら面倒なのでこっそりと。

 

見慣れた山の中を歩き、特にトラブルもなく、目的の家が見えて来た。

すると、さっきまで和やかな雰囲気だったのが一変し、トリストラムさんが常に携帯している不思議な弓を構えて、ハーミアの前に立った。

 

 

「下がって。居ます、ヤツが」

「っ!?」

「「・・・?」」

 

 

ポカーンとする私とホーちゃんを他所に、二人の緊張は高まる一方。

なんだか通じ合ってるみたいで羨ましいと思う反面、そういう呑気なことを言ってる状況じゃないことくらい、流石の私でも気が付いた。

 

遅れながらも杖を構えて警戒・・・はしつつも、一体何処の誰を警戒してるのかとチラチラと二人を盗み見る。

すると、その視線の先はどう見ても私達が寝泊まりしてる家であり、そうなると彼らがヤバいと感じてる存在は家の中に居る訳で・・・。

 

 

(・・・え、それって今エールちゃんがピンチってこと!?)

 

 

未だに状況が分からなくてオロオロしてるホーちゃんに説明する暇もなく、家の方へと駆け出そうとした時、玄関替わりの天幕からひょっこりと何かが顔を出した。

 

それはハーミア達が警戒しているような恐ろしいナニカではなく、私達がよく知るシルエットの毛布を被ったスタイルで気まずそうにこちらを覗くエールちゃんだった。

 

 

「ぁ、ぁの・・・ど、どうか、しましたか?」

「エーちゃん!」

「っ・・・ほ、ホーちゃん!」

「あっ・・・!」

 

 

駆け出したホーちゃんをハーミアが止めようとしたが、エールちゃんの方に意識を向けていた彼女にそれは出来ず、エールちゃんの前まで走っていく。

 

それに気付いたエールちゃんもパァ〜っ! と笑顔を咲かせると、天幕から体を出してホーちゃんを出迎えた。

 

 

「ぉ、おかえり・・・! ホーちゃん、怪我は無い・・・?」

「う、うん、大丈夫、だよ・・・心配してくれて、ありがとね・・・」

「ううん、ホーちゃんが無事で良かったよ・・・そ、それで・・・ナナシさん、そちらの方々は・・・」

 

 

いつものやり取りを終えて、こちらを怯えたように見るエールちゃんへと、私はどうしたものかとハーミア達を見る。

ハーミアはさっきの私みたいにポカーンとしてて、トリストラムさんは警戒はしているものの、その表情は困惑が大部分を占めていた。

 

あー、これ私がどうにかしなきゃいけないヤツかと、コホンと咳払い。

 

 

「あー・・・えーっと、二人とも・・・多分、その・・・うん、大丈夫だから落ち着いて。ほら、エールちゃん・・・あの布団被ってる子も驚いちゃってますから」

 

 

私の言葉に、ハーミアは自分達の勘違いだと気付いて苦笑を、トリストラムさんは警戒しつつも弓を降ろしてくれた。

 

 

「えっと、ごめんね・・・」

「・・・・・・すみません、ご不快な思いをさせました」

「ぁ、ぁ・・・いえ、えっと・・・な、何か、俺が・・・やっちゃいましたか・・・?」

 

 

取り敢えず、このままでは埒が明かないので家の中へ。

 

机があるものの、それでは数が足りないので全員ベッドへと座り、凄く自然に両隣を陣取ったチビッ子組とそれを見て凄く何か言いたそうなハーミアを無視して、話を始める。

 

 

「えー・・・こちらはお二人もご存知のホーちゃんです。それでこっちのお布団の妖精がエールちゃんです」

「ど、どうも・・・お、お布団の妖精、です・・・」

「え、エーちゃんってお布団の妖精だったの!?」

「そ、そうなの、だからこうして、ギュッとすれば、一緒に暖まれる」

「え、エーちゃん・・・!?」

「ホーちゃん・・・!」

「エーちゃん・・・!」

 

 

何故か私に抱き着く二人を無視してると、爛々と目を輝かせてるハーミアに嫌な予感がした。

 

 

「はい!」

「はい、ハーミア」

「ハーレムですか?」

「違います」

「ありがとうございます」

 

 

何が?

真顔で否定した私に頭を下げるハーミアに疑問を持ちつつも、いい加減ずっと引っ付いている二人を引き離す。

 

 

「「ぁ・・・」」

「ありがとうございます!!」

「だから何が・・・」

 

 

心が見えようとも、まるで意味が分からないことってあるんだなぁ・・・と、私はこの時初めて知った。

 

尊い、とは。キマシタワー、とは。

 

 

「・・・私からも一つ、よろしいでしょうか?」

「はい、トリストラムさん」

「では・・・そちらのエールさんは、もしや名のある大妖精だったりするのでしょうか?」

 

「「「・・・・・・?」」」

 

 

その問いの意味は分かるが、何故エールちゃんにその質問をするのかが全く理解出来なくて、私とエールちゃん、ホーちゃんは首を傾げる。

 

エールちゃんが大妖精・・・多分、上級妖精の事なんだろうけど、ベッドの端で丸まってる姿とかを知ってる身としては、そういうのが全く想像できない。

いや、だって・・・エールちゃんだよ?

臆病で、寂しがり屋で、甘えん坊な、子供みたいなエールちゃんが上級妖精?

 

・・・うーん、多分トリストラムさんはなんらかの確信を持ってるんだろうけど、いまいちピンと来ない。

 

 

「・・・そ、そうなの? エーちゃん・・・?」

「・・・・・・ふっ、どうやら、気付かれてしまったようだな。俺の真の力に・・・!」

「ッ!?」

 

 

いつものお馬鹿な雰囲気が霧散し、眼帯に手を当てそう言うエールちゃんに、トリストラムさんが即座に立ち上がり弓を構えた。

 

しかし、その先にあるのは誰も居ない空間で、辺りを見渡してみるとさっきまでカッコ良く決めていた筈のお布団の妖精はベッドの隅の方で丸まっていた。

 

 

「ご、ごご、ごめんなさいごめんなさい! 冗談です嘘です本当にごめんなさい! もうしませんから、お命だけはぁ・・・!!」

「っ・・・」

 

 

さっきとは真逆の、どう見ても虐げられて来た者の反応にトリストラムさんが明らかな動揺を見せた。

その隙を狙ったかは定かではないが、事態の変化に気付いたホーちゃんがエールちゃんを守るようにトリストラムさんの前に出て両手を広げた。

 

 

「だ、ダメ、です! エーちゃんを虐めないで! ば、罰なら、私がいくらでも受けるので、え、エーちゃんは、許してあげて下さい!」

「ッ!? わ、私は・・・・・・いえ、すみません・・・神経質になり過ぎていたようです。少し・・・頭を冷やしてきます」

 

 

落ち込んだ様子のトリストラムさんが、天幕をくぐって外に出た。

事態が収まったことに気付いたのか、恐る恐る顔を上げたエールちゃんがキョロキョロと辺りを見渡した後、ホーちゃんに気付くと、そのまま近付いて来たホーちゃんにギュッと抱き締められた。

 

 

「よしよし、怖かったね。大丈夫・・・もう、大丈夫だから。エーちゃんは、私が守るから・・・」

「ぁ、あぅ・・・ありがとね、ホーちゃん・・・」

「ううん、私の方こそ・・・いつもありがとう・・・」

 

 

二人だけの空間に、私は空気を読んで黙っていた。

ハーミアは、トリストラムさんが出て行った方を頻りに気にしていたが、二人のやり取りを見て、ソッと目を伏せた。

 

 

 

(はぁ〜〜〜〜っ・・・エッモ)

 

 

やはり彼女が考えていることを、私は理解出来そうになかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

家から少し離れた木の根元にトリストラムは腰を掛け、いつも手にしている弓を弾き、音楽を奏でていた。

元はハープだったソレは、美しくも悲しい音色を(かな)で、記憶を失っていようと指は自然と弦を弾いていた。

 

 

(・・・やはり、獣が居ない。いや、近寄ろうとしない。これはナナシさんによる魔術ではなく、あの少女の存在を恐れているから・・・)

 

 

トリストラム自身、己の感覚を疑っている訳では無いが、それでも感じる強大な気配と幼子のように怯えていたエールという少女の姿がどうしても一致しなかった。

 

必死に身を隠し、怯えて許しを乞う姿は、どう見ても強き者に虐げられて来た弱者の姿。決して、自身が弓を向けていい相手では無かった。

 

 

「・・・・・・」

 

 

ハープの音が()んだ。

そして、弓を傍らに置いたトリストラムは、そのままの状態で背後の草陰に隠れる存在へと声を掛けた。

 

 

「隠れずともいいですよ、エールさん」

「っ!?」

「もう、頭は冷えました。・・・よろしければ、こちらに来て、少しお話をしませんか?」

「・・・・・・」

 

 

草陰から出て来たのは、トリストラムの予想通り、お布団の妖精ことエールだった。

トリストラムの顔を窺いながらも、恐る恐る近付いて、トリストラムの横にちょこんと座り込んだ。

 

 

「・・・ぁ、あの・・・さ、さっきは・・・ごめんなさい・・・」

「? ・・・一体、なんの事でしょう?」

「ぁ、えっと・・・ぉ、俺が・・・悪巫山戯したから・・・嫌な思いを、させてしまって・・・」

「・・・・・・いえ、謝らねばならないのは私の方です。勘違いで貴女に弓を向けてしまい、申し訳ありません」

「あっ、あっ、そ、そんな・・・頭を上げてください・・・! わ、悪いのは、俺の方だったんです。そ、そもそも・・・俺が、あんな事しなければ・・・」

「それを言うなら、私こそあのような質問をしなければ良かっただけの話です。やはり責任は私にこそあれ、貴女は何一つ悪くありません」

「い、いやでも・・・俺の方が・・・」

「いえいえ、私の方が・・・」

 

 

気付けば、どちらが悪かったのかの言い合いが始まり、真面(まとも)だったのは最初だけ。

お互いに徐々に意味不明な言い分を並べ始め、そしていい加減、理由が無くなってきた所で二人は顔を見合わせて、どちらからともなく吹き出した。

 

 

「ふふ、こんなに笑ったのは・・・久しぶりですね。やはり、まだまだ肩の力が抜けていませんでした」

「俺はホーちゃんと、昨日も沢山お話して、ナナシさんは毎晩一緒に寝てくれるので、毎日が楽しいです!」

「それは羨ましい。ではまた今度、こちらへ伺っても?」

「はい! 基本的にベッドに居ますので、いつでも! あ、でも・・・夜中は危ないので日が昇ってる時にしてください」

「ええ、もちろん」

 

 

最初の気まずい空気は何処へやら。

トリストラムだけでなく、エールすらも自然に笑って、語り合っていた。

それはまるで竹馬の友のように。二人の前に隔たっていた壁は、いつの間にか完全に取り払われていた。

 

 

「改めて、自己紹介を。・・・私はトリストラム。見ての通り、超絶技巧の素晴らしい弓使いです」

「エールです。自分でも驚きですが、お布団の妖精です」

「ほう・・・それはとても興味深い妖精ですね。因みにですが、立ったままでも快適に寝られるお布団などはありますか?」

「もちろん! 少し前にも、似たような・・・物を作った、ことが・・・あるん、ですけど・・・・・・。ご、ごめんなさい、よく、思い出せなくて・・・」

「あぁ、そう言えば、ここはそういう所でしたね。これは失礼を」

「あっ、あっ・・・でも、普通の枕なら、多分、今お使いの物より、もっと寝心地の良いものを作れます・・・!」

「ほほう、ではその至上の枕とやらをお願いしても?」

「任せて下さい!」

 

 

そんな微笑ましいやり取りを見守る三つの影。

 

エールが上手くやれたようで微笑む彼女達は、さて、これからどうやって登場したものかと、結構真剣に悩むことになるのだった。

 




各地域の滞在期間などで原作改変がありますが、二次創作自体が原作改変みたいなものなのでタグ付けは見送りました。
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