対ありでした。またお願いします。   作:春日野つばき

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※今回、人によっては残酷だと思う描写が入ります。なるべくマイルドにしていますが、ご了承ください。
※先生……!! 戦闘が書けないです……!!


第12話 暴漢

「その背中の刺青(もよう)、白ひげ海賊団の「火拳」のエースだな」

「……あァ。俺に、何か用かい」

 

 取り囲まれ隙間がないと瞬時に把握したエースは、さりげなくローゼマリアを胸に囲む。同時にローゼマリアの手が腰のボールに伸びた。

 へへへ、と下卑た顔で次々に得物を取り出す輩たち。ちらりとケーシィに目配せを送るローゼマリアはそのままエースに移した。

 

「楽しい話じゃァ、無さそうだな?」

「ああ。お前を手土産にすりゃ、俺たちは海で箔が付くってもんだ」

「なるほど」

「ついでにそこの女どもも頂いてくぜ!」

 

 待ちきれなかったのか、それとも人質にでもしようとしたのか、ルルンとガロへ足を向け魔の手を伸ばそうとする暴漢。「けぇい!」しゅんっとケーシィが2人を連れてテレポートし消えた。つかみ損ねた手は空を切り、男は無様に顔から倒れる。

 

「おいで! ギャロップ!!」

「ぎゃああっぷ!!」

 

 今が好機と、バッと真上に放り投げたボールから炎のたてがみを持ったギャロップを繰り出すと、暴漢たちが少しだけ後ずさった。見慣れない動物に一瞬だけ恐怖したのだろう。エースにはその一瞬だけで良かった。

 

 

「蛍火“火達磨”」

 

 

 パッパッパッ、と小さな火の玉が2人を護るように現れ、エースの合図で暴漢たちに牙を剥いた。

 

「ぎゃああああっ!!!」

「熱ィ! あちいよ!!!」

「助けてくれェ!!!」

 

 

 火に包まれごろごろと転がる人の形をした炭。叫び声はどうしても耳に入るが、それを瞳に映さないようエースはローゼマリアの目を塞ぐ。だが微かに震えるローゼマリアに気付くエース。

 

「すこォし目をつむってろ。一気に駆け抜けちまうから」

「えっ、きゃあ!」

 

 言われるまま瞼を閉じたローゼマリアは急に感じた浮遊感に恐怖し、手探りで感じた安定感のあるものにしがみ付いた。それがエースの首だと気付いたのは、そこから低くて優しい声が聞こえてくるからだ。いわゆるプリンセスハグとか、お姫様抱っこと呼ばれるそれで運ばれる。

 

「まだ残党がいるな……」

「ね、ねえエースくん、ギャロップは?」

「ぎゃろ……ああ、あの馬か、いるぜ」

「ありがと。残党は任せて、エースくんは振り切ることだけお願い」

 

 目は閉じとけよ、と念を押されたローゼマリアはこくんと頷く。

 

「ギャロップ! 「スピードスター」で足止めして!」

「ぎゃあっぷ!!」

 

 エースのすぐ近くを併走していたギャロップは「おや」の命令に急停止して追っ手の方を向いた。横一線、なぎ払うように「スピードスター」をはく。すぐに方向転換をして走るエースを追いかけた。

 島の中心にあった繁華街から抜けて海岸線まで出るとようやく足を止めるエース。

 

「もう目ェ開けていいぜ」

 

 声を聞いてゆっくり開くローゼマリアは、思ったよりも間近にエースの顔があったことに吃驚した。鼻同士が触れ合いそうなくらいに密着していたらしい。「わあ」あまり驚いてないような間抜けなのけぞり方でエースもそれに気付いたのかボフンッと頭から湯気が出た。

 そうっと壊れ物を扱うように地面に下ろしたエースはおろおろと「す、すまねえ」と目線を泳がせる。

 

「ごめんねエースくん、重かったでしょ」

「お前は軽すぎる! もっと食えよ、食ったばっかなのになんでこんな軽ィんだ」

「え、ん、ごめん……?」

 

 なんか違うことで怒られた、とハテナを飛ばすローゼマリア。ぶるる、とギャロップが鳴いたことでハッとし意識がそちらに向いた。

 

「ありがとうギャロップ。脚は大丈夫? 痛めてない?」

「ぎゃぉっぷ」

「そう。はいポロック。他の子には内緒よ、頑張ってくれたからご褒美ね」

「っぷ!」

 

 細長く短冊に切ったポロックを食べさせていると、同じ目線のエースが「へえ」とギャロップを覗き込む。

 ローゼマリアを抱えている姿を見ているからか、敵意を感じないからか。ギャロップは気にした様子も無くもしゃもしゃとおやつに集中している。

 

「後でブラッシングもしてあげようね」

「ぶるる」

「コイツ、ええとギャロップ? か。この背中の炎はロザ、熱くねえか?」

「うん。ギャロップは良い子だからね、ママが触っても熱くないようにしてくれてるんだよねえ」

「ぎゃあっぷ」

「ママ?」

 

 え、産んだの? みたいな視線が突き刺さった。違うよ、とモンスターボールを装着できるベルトのバックル部分に触れると、スクリーンが空中に表示される。

 

「何コレすっげえ!」

「ほらここ見て。ギャロップの「おや」が私になってるでしょ?」

 

 と、はしゃぐエースの頭をかるぅく叩いてギャロップのステータス一覧を指差した。そこにはいくつか欄があり、中に「おや」という項目が確かにある。一瞬だけ「V」の文字が見えたがそれはかき消え、ローゼマリアとアルファベットで記載されていた。

 

「ああ、捕まえたら「おや」になるとかって言ってたアレか」

「そうよ」

 

 だからこの子のママなのよ~、ね~、とギャロップに顔を擦りつけるローゼマリア。ギャロップも嬉しそうに炎の尻尾をぶんぶん振っている。

 海岸線沿いに港町まで戻ろうとカポカポ蹄の音をさせながら歩いていると、ふと茂みの方からガサゴソ音が聞こえた。咄嗟にエースとギャロップが前に出ると、そこから出てきたのはイゾウであった。

 

「おっ、ようやく見つけたぞ」

「イゾウ!」

 

 草まみれのイゾウはエースたちが取り囲まれた際、ローゼマリアがどう出るかによって対応を決めようと静観していたという。かと思えば大半はエースが片付けてしまい、さらに(イゾウたちからすれば、だが)あてどない方向へと走り去ってしまったことから慌てて追いかけてきた、らしい。

 

「ギャロップ味方よ、落ち着きなさい」

「っっぷ」

 

 興奮しているのかイヤイヤと首を振るギャロップを宥めるローゼマリア。何とか宥めることに成功するが、ギャロップはいまだ害をなそうとしていると勘違いしているらしく威嚇気味だ。

 

「はぁいはい、良い子ねギャロップ。落ち着いて。ママに酷いことをするわけじゃないわ」

「ぎゃっぷ!」

 

 すりすりと頬を寄せるローゼマリアとギャロップ。3人で港町まで歩いて向かうことに。

 大分遠くまで走ってきてしまったようで、降り立った時に見えた景色とは違うものばかり。イゾウは反対側に出たのではないかと推測した。

 

「まあ海岸線を沿って行けばいずれは辿り着くだろうよ」

「ふむ、聞きたいことがあるのだがいいか? ご令嬢」

「聞きたいこと。答えられる範囲であればお答えします」

 

 軽く伸びて遠くを見るエースの後ろで並ぶローゼマリアとイゾウ。の、間にギャロップがいるが、イゾウは遠慮無しにギャロップを指差す。

 

「この動物、生き物とでも言っていいのか分からないが……これは一体どこで産まれたものだ?」

「どこで、とは?」

「この炎の馬はおれが知る限り世界の何処にもいない。先程、女性2人を消したあの茶色い生き物もだ」

 

「お前は、何者だ」

 

 射貫かれてしまいそうな視線がイゾウから注がれる。ローゼマリアは冷笑にも似た薄い笑みを浮かべた。

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