対ありでした。またお願いします。   作:春日野つばき

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あんまりイチャイチャさせられないので、活動報告にてSSSを投稿しようと思ってます〜。
甘々、溺愛、時系列が謎時空ですが良ければどうぞ。


第21話 プテラ

「ふざけるな! おまえなんて、おまえなんてともだちじゃない!」

「ひっぐ……うええ……」

「ないてどうにかなるのかよ!! ぜんぶてめえがわるいんだろ!!」

「ご、ごめんなさ……ごめんなさい……!」

「おまえがてんりゅうびとだから! おまえが……おまえが×××!!!」

 

 

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 目が覚めて最初に見えたのは、見慣れ始めた天井だった。なんだか悪い夢を見ていたようで体が重い。モビー・ディック号の船内だと朧気な頭で思う。

 身体中が痛み顔を顰める、と「ロザ!」とエースの声が聞こえて首だけそちらを向く。

 

「目が覚めたかよぃ」

「良かったロザ……」

「……えーす、くん……ここは……?」

 

 マルコとエースが覗き込んできて真上を向き直した。頭が締め付けられている感覚があり、触ると包帯の感触がある。

 

「触んな。不幸中の幸いっつーか、頭蓋骨内に血は溜まってねーと思うけどな。頭から血ィ流してたんだ、まだ安静だよぃ」

「ここは俺の部屋だ。甲板にも近ェし、一刻を争う状況だったからな」

「……エースくん、プテラは?」

「プテラ。あの巨大な鳥みてェなやつか。アレならネーラが抑えてるはずだ」

 

 エースの言葉を聞いて「そう」と漏らしたローゼマリアは身をよじった。寝返りを打とうとしているのか、と介助しようとするとベッドに手のひらをグッと押しつけて身を持ち上げ始める。

 

「おいまだ起きるんじゃねえ! 骨ばきぼきに折れてンだぞ!」

「……プテラを、あの子、苦しんでる……」

「まだ認められねェ。これは医者としての判断だ。俺の言うことが聞けねえってンならエース! お前から言え」

「トレーナーは私以外にはいない! ポケモントレーナーの私以外にあの子を救えるか!」

「このままだと死ぬぞ。死にたくなきゃ大人しくしてろぃ!」

 

 ローゼマリアとマルコの睨み合い。エースは腹をくくった顔をしてローゼマリアを抱き起こし、そのままお姫様抱っこをして立ち上がる。

 

「エース!」

「マルコの言う通り、このまま動けばロザは死んじまう。それほどヒデぇ状態だったんだ、それは分かってくれ」

「エースくん……」

「でもロザは、アイツをどうにかして助けたいんだろ。仲間だから。アイツのことよく知ってんのは、この船じゃロザだけだ」

 

 マルコの非難する声を聞き流したエースは、ぎゅっと身体が痛まない力加減で抱きしめてしっかり自分に引き寄せた。

 

「だから俺がアイツのところまで連れてってお前の好きにさせる。でも歩かせねえ。しんどそうに見えたら即刻この部屋に戻って安静に寝ててもらう。それがイヤならベッドに逆戻りだ、どうだ?」

 

 口をポカンと開けてジイッとエースを見るローゼマリアは、少し考えてから「うん」と頷く。

 

「分かった……」

「どうしたい」

「……プテラのとこ、連れてって」

 

 これをしろ、あれをしろ、ではなく「どうしたいか」の二択を出したエース。どちらにせよ言いなりではあるのかもしれない、根本的なことを言えば何も解決はしていないが、それでもローゼマリアは自らの意思で「どちらか」を選んだ。

 よしきた、と笑ったエースは抱き上げたまま甲板へと向かう。

 

「……あのプテラ」

 

 ぽつりと呟いたローゼマリア。エースは「ああ」と小さく返答した。

 

「多分、予想だけどね」

「ああ」

「……人の手で巨大化させられてる」

 

 だから苦しんでる、とエースに身を委ねながら遠くを見つめる。思わず立ち止まって腕の中のローゼマリアを見たエース。確信をもっている顔をしていた。予想といいながらも確信があるらしい。

 再び歩き出したエースは「お前」と口を開いた。

 

「お前が自分を省みないで誰かを助けようとするのは、俺やサボたち以外の幼馴染みにそう言われたからか? それともそれは、お前がそうしたいからしてるのか?」

 

 ローゼマリアが小さく目を瞬かせ、俯く。やがてぼそりと「分かんない」と呟いた。

 

「あの2人は、いつも正しいから。まっすぐで強くて、いつも正しいことするから。あの2人が誰かを一生懸命助けようとしてたから、私もそうしようって……」

「それはお前の意思なのか?」

 

 エースの言わんとしていることが分からない、とローゼマリアは顔を上げる。

 

「俺はお前に、命を大切にしてほしい。何より自分のだ。……生きていてほしいから」

 

 弾かれたようにビクリと身体を硬直させるローゼマリア。同時にぱあっと前が明るくなり、甲板に出た。「悪ィどいてくれ」と人だかりを避けさせ前に出たエースは、座り込む白ひげと、さきほどまでいなかったポケモンが対峙しているのを見る。

 ミュウツー、とローゼマリアが名を呼んだ。

 

「どうして出てるの……?」

「<その前に聞かせてもらおうか。なぜまたそんなにボロボロなのだ?>」

「……ロコンを護ろうとしたの」

「<ハァ~>」

 

 コイツ喋った、と驚愕の眼差しを向けたエースに「この子テレパシー使えるの」と教えてくれるローゼマリア。口煩いらしくうんざりした顔をしていた。

 

「ネーラね出したの」

「バナ~」

「<色々と誤解が生じていたようでな。私が通訳となっただけだ。……それで、プテラに吹き飛ばされて全身の骨が折れる重体の君がなぜここにいるのか、無知な私に懇切丁寧に納得のいく説明を求める>」

「プテラを助けるため以上!」

 

 全身の骨が折れる、その言葉に白ひげも動揺した。鍛え抜いた屈強な男ならいざしらず、刀や拳銃どころか荒事にだって慣れていないような深窓のご令嬢が全身骨折。マルコが「再生の炎」を灯していたのを知っている白ひげでも、まだ生死を彷徨っていると思っていた。

 

「<君は相変わらず無茶をする! フレア団の時を覚えているか。あの時はイベルタルだった! 死を司るあの巨鳥を前にして君は無謀にも前に出た! 死ぬところだったんだぞ>」

「死ななかったでしょ」

「<そういう問題ではない! ええいネーラもなんとか言え! はじまりをうたうあの町はなんだ、超人伝説の始まりだとでもいうのか! あの町の出は心底普通じゃない!>」

「バナバァナ」

 

 ご立腹のミュウツーにフシギバナがけらけら笑っている。

 知覚していない異常をミュウツーが見つけ次第絶対安静にさせる、と睨まれてローゼマリアはツンとそっぽを向いた。

 眠っていたプテラが「ねむりごな」の効果が切れ目を覚まして、近くにいたローゼマリアを睨みつける。

 

「初めましてプテラ。私は×××。×××タウンの×××。ポケモントレーナーです」

 

 プテラに向き直ったローゼマリアは改めて名を名乗った。それは誰の耳にも届かず、砂嵐のようにザラついて宙に消えた。

 ポケモンたちには聞こえているのかプテラは睨むのを止めてジッと見据えている。

 

「まずは人の無礼を謝罪させてください。あなたがそのような姿となったこと、苦しんでいる声が聞こえます。嘆き悲しむ声もまた、聞こえてきます。詳細までは分かりませんが、きっと、あなたにとても……、とても辛く苦しい目にあわせてしまった」

 

 ザワっと船員たちが動揺した。ローゼマリアが崩れ落ちるように額を甲板に擦り付けたのだ。

 

「ぎゃあ」

「……教えてください。あなたを苦しめた愚かな人を。今も苦しめ、そしてなぜロコンを狙ったのかを」

 

 ローゼマリアの頬を伝ういく筋もの涙。プテラは落ち着いた様子でミュウツーに視線を移した。

 頬をぺとりとプテラに付けたローゼマリアは少ししてからバッと身体を起こす。その目は揺れて口はわなわなと震えていた。

 

「そんな」

「なんてこと……っ」

 

 顔を覆ったローゼマリアの背中がぶるぶる震える。どうした? とエースがその背を支えながら聞けば、涙で顔をぐしゃぐしゃにしたローゼマリアと目があい、かつてを思い出してずきりと胸が傷んだ。

 

「この子、母親を目の前で殺されてる……っ」

 

 悲痛な叫びが甲板に木霊すまでは。

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