ミミナナと姉妹になりました、頑張って生きてます 作:興味本位
1、
見えるから観える
わかるから理解する
当たり前は非日常ではない
視点の違いはどうしたってあるものだ
私たちは仲良く歩く
唐突に石が飛んでくる
「いなくなっちまえ!!」
「ばーかばーか」
「親なしこども~~」
「あるくなよ」
「むらからでてけ」
当たり前に石が投げられて
馬鹿が馬鹿の真似をしている
子どもが大人の真似をしているのだ
私たちだって好き好んでここに来ているわけじゃない
買い出しに来ているだけだ
そっちが来なければ
こっちだって変なことなんてしませんわい
「さっさと行って、はやく帰ろう」
「……帰ってもだけどね」
「美々子、そんな暗いこと言わない」
周りはそんな調子だけど
私たちは私たちなりにやっている
いい状況かどうかと聞かれれば
悪いに決まっていますけど
と逆ギレ紛いな状態にはなるが
それでも悲観的になるよりずっといい
だって決めたのだから
無知で無力で何もできない子供だけど
私も幸せになって
二人のことも幸せにすると
二人の幸せは私が届けると
わかっているから
何とかしなければと
変わらない木を抜けて
変わらない田んぼを見て
変わらない店を見て
時代が止まった街並みに欠伸をしながら進む
風景がいい空気がいいと表現すべきだろうが
こんなものは見慣れている
一日二日休憩がてら来るのなら違うが
産まれてから変わらない光景
変わらない人間
変わらない醜悪
変われない私たち
ちょっと考えれば涙が出そうなことばかりだ
店先について購入したいものをかごに入れ
店員に渡すと無視されるので
口頭で購入品を告げ
代金を置いて店を出る
ただお金の確認だけしっかりしてもらった
後から言いがかりをされても嫌なので
「お昼外で食べる?」
「そうしよっか」
「なら、この前見つけた川の近くがいいな」
「なんで?」
「あそこなら誰も来ないから」
よし、そこに行って笑うとしますか
最近どうだったとかじゃない
そんな普通な会話ができるほど日常は輝いていない
だから会話するんじゃなくて
一緒にいる
誰にも邪魔されないで
3人並んでぼーっと
平和な時間を楽しんで
ちょっとずつ会話をして笑う
微かな幸せで
確かな時間だった私たちにとっての
2、
この前の一件から考え続けてることがある
「幸せ」とは何なのか
へんな意味ではないが
へんな意味か4歳児が幸せとか考えるんだから
雑な部分で幸せになるとはどんなのかって思考を巡らせてる
必須条件で
・この田舎から出る
・大人から殴られない
・衣食住が十全である
・学校に行って
・普通に生きる
「3人揃ってね」
「どうしたの寧々子?」
「ん~、なんでもないよ」
心配をかけることではない
ある意味で確定した未来をどう軌道修正させるかという話だ
私たちは助けられる
それは決定事項
そうならない理由はない
だってここが最終地点になっているから
夏油傑の最終点かつ出発点
きっかけが溜まり溜まって
防波堤が崩壊して流れ出した
その呪いはなんていうのだろうか
意義と言っていたし
意味もあると言っていたか
細部のことは覚えきれていないのではっきりとしてないが
呪術の世界では決定的な事象の一つだ
人が火を使い始めたように
地ではなく天が動くと知ったように
呪いは祓いきれないと示しているように
そんなこと言っても仕方ないけどね
人は人、世界は世界、私は私であるなら
理由を求めるのこそ無粋だ
夏油傑は限界を迎える
そこにはミミナナが絶対いる
このあやふやな確信が蜘蛛の糸だ
さて助けられた後は幸せなのかと言えば
幸せに決まっている
やってることは常識的には悪だが
それでも最高の環境だと思うし
私たちの受けた痛みを他に対してやってるだけだからと
雑な正当性まで見えてくる
でもなぁ
私たちが同じところまで落ちる必要はないだろうとも思ってしまう
私たちは綺麗なまま幸せになりたいなとも思えてしまうのだ
もちろん夏油さまにも同様なことが言える
あなたがそこまで落ちる必要はないのだと
全てを捨ててまで選ぶ価値はそこにあるのだろうかと
不遜にも思えてしまった
歩みを進める奥の奥へと
うっそうとした緑に心からの吐き気を催す
自然にはヒアリング効果があるという
実際あるのかもしれないが
この場所は私たちの傷の証でもあるから
癒されるってことはない
この緑の世界しか知らない二人にとって
癒される空間でもないのかもしれない
目的地に到着する
誰もいないその空間に美々子は大きく息を吸う
「ここだけは好き」
「誰もいないからでしょ?」
「そうだよ、菜々子もそうでしょ?」
「まあね、寧々子もでしょ」
「悪くはないかな~」
はっきりしないな、と笑われながら
さっき買ったおにぎりを出す
ご飯の時間だ
キラキラと輝く川を眺めながら
3人並んで食事をする
「アタシ決めた!」
「どうしたの菜々子?」
「この田舎から絶対出てやるって」
「みんな思ってるよ」
「わかってるけど、改めて決意表明」
菜々子は大きな声で言う
「アタシは幸せになってやる!!」
「もちろん美々子と寧々子と一緒に!!」
かっこいい文言だ
私にも力があればなって心から思うよ
「うん、約束」
「そしたら、大きなベッドで3人並んで寝ようよ」
「いいね、それ!」
「大きなテレビ買って、見切れないくらいの映画借りて」
「途中で寝ちゃって、明日また見返して」
「いっぱい料理作ってお腹いっぱいご飯食べて」
「3人揃って寝よう」
私たちの秘密の話
夢のない夢の話
普通なら望んで手に入る
異常でも頑張ったら手に入る
現実的な非現実的な話
だって私たちは子供で
なんの力も持ってないから
今できることはとっても少ないから
「絶対幸せにするからね」
私は言う
「寧々子だけじゃ無理でしょ」
「寧々子だけじゃ意味ないよ」
「「3人で幸せにならなきゃ」」
二人の笑顔があんまりにも可愛かったので
川に飛び込みたくなった
「寧々子!!この川意外と深いんだよ!!」
ちょっと危なかったでした