ここは呉鎮守府、時刻は 0600前
総員起こしの少し前だ。
「ふん。今日も海軍の朝か。」
なにが海軍だ、負けたくせに。クソが。
いかん、海軍の事を悪く言ってはだめだ。
俺は朝の鍛錬を怠らない。
俺には帝国臣民であり、なにより男子としての矜持があるからだ。
「男は、負けたからと言って、精神まで折れてはならない。」
俺は士官学校時代に教えていただいたのだ。
俺の恩師に。
、、、。
そんな俺は、0400にすでに起床をすませ、身辺整理を行っていたのである。
まぁ当然だ。俺は提督だからな。
さて、柔剣道は提督の嗜みである。
今日の鍛錬は剣道だ
内容は素振りにしておく。道着は剣道袴なのだ。
いくぜ。
※※
「神前に、礼!」
うーん。清々しい。
解説をする。
剣道や柔道の道場には神棚が祀られているのだ。
そして稽古の前後には必ず神前への礼を行うことを慣習としているのであーる。
これが、実に俺には尊い慣習に思える。
清々しいことこの上ない。
諸兄よ、俺と共に汗を流そうではないか。
とはいえ、0430近くの道場には俺しかいないのではあるがね。
「よしっ。道場に、礼っ」
「でちっ」
※※
なんだ?
誰かいるのか
「皆さんに、れいっ」
「ですぅ。」
うるさいな。
誰もいないはずの道場に声が聞こえてきた。
なんだか調子が出ない。
敗戦処理の疲れから少しおかしくなっているのだろうか。
フン。
それがどうした。
男にはそんなものは普通だ。
※※
、、、素振りができない。
艦娘の声が聞こえている。
現実のことが不確かだ。
あの敗戦時の作戦で、全ての艦娘はおれの失策で沈めてしまったはずだ、いや、俺が自ら沈めたようなものだ。
おかしいぞ。艦娘はいないのに。
今の俺は一人提督だ。公的身分はそうだが、任務内容は廃屋の管理と進駐軍へのおもてなしに過ぎない。
道場も廃屋になっている。
妖精さんも居ないはず、、居ないんだ。
妖精さんにはあの日、終戦の詔の日に涙のお別れをしたはずだ。俺は忘れていないぞ。帝国海軍軍人として忘れるものか。
「ゴメンナサイ、デモ、ナカナイデ」
「サヨナラ」
妖精さんなど、居ない。
※※
「いますよ」
「わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーああああ」
おれは素振りをやめ、稽古中に有るまじき大声をあげた。
竹刀は放り投げたのだろうか。
よくわからない。
さっきから俺の目が見えていないのは、涙による遮蔽効果である。
俺の視界は涙的で機能しなかった。
「大日本帝国バンザイ。帝国海軍バンザイ。」
アノタタカイデ
オレハ、
オレダケイキノコッテシマッタンダ。
ゴメンナサイ。センパイテイトク。
ゴメンナサイ、オトフサン、オカアサン。
ゴメンナ、オレノアイシタ、カンムスタチ、、。
、、、、
fade-out
(Openingが聞こえる。海の色を見ても何も感じなくなった俺に。)
※※
0600総員起床
大淀「朝礼を始めます。明石さん。提督さんのご容態は?」
明石「、、、」
各艦の泣き声、すすり泣きや、悔し涙、が講堂を支配していた。
しかし、鳴き声で始まる朝礼などない。私は帝国海軍の秘書艦としてそれを許さない。
大淀「明石、もう一度言うぞ。提督の現状を報告せよ。これは上官命令、、、だ」、、、どうだ、私は泣いても言い切ったぞ、褒めろ長門。
明石「ひっく。」
大淀「あかしぃいいい、ふくしょうしろぉおお。報告だぁあ。」
私は教育的指導の制裁のため、明石に接近した。
「やめろ。」
これは長門の声だ。私は長門に羽交い絞めにされた。長門め、秘書艦に逆らうとはな。くそっ。くそっ。
長門「大淀、貴艦は涙腺および感情面に不具合をきたしている。よって長門が貴艦の業務の代行を行う。」
なんだと、この馬鹿が、秘書官は私だ。
「各艦は休め。明石は私と大淀とともに執務室に来い。」
うるさいな。
うるさいんだよ長門。
前から気に入らなかったんだ。