暑い夏の日、反省房で雑魚寝をする十七駆逐隊と提督である。
提督「あのさぁ。浦風」
浦風「なんじゃ、ウチは機嫌が悪いんじゃ」
またまたコミュニケーション障害である。
これには戦前から悩まされていた。
提督「ならいいや、今から独り言をいうから。」
ゴロゴロし始めた提督。蚊取り線香に気を付けてね。
提督「おれは敗戦の日から一年間お前らとの生活を棒に振ってた。」
「けど、一日たりともお前らの事を忘れたことはないぜ。ただ具合が悪くてお前らを認知できなかったそうだから。それはすまなかったよ。」
浦風はまだ無視を決め込んでいる。
提督「こうしてまたお前らと話が出来てうれしいよ。幸い明石の出してくれている処方は、いまの俺を助けてくれているからな。」
科学的にいうと、認知は情動によって阻害されやすい。
例えば恐怖、後悔、嫉妬、怒り、悲しみ、哀しみ等々が情動であり、提督の場合は怒りと哀しみが脳を支配していたのだ。
それに加えて艦娘との別れの記憶である。
提督「あの日、みんなでお帰りなさい会を開いた時は、嬉しかったな。泣いちゃったもんなおれ。」
浦風「、、、ダメ提督。泣き虫提督」
提督「( ゚д゚)え、そこディスるとこなん。」
浜風「提督、浦風は好きという感情表現が少し苦手なようです。わたしもですが。」
提督「、、、あ、そうなんだ。ま、いいや。ありがとうな、みんな。」
磯風「それはもう何回も聞いたぞ。まあ、何回聞いても悪くはないな。」
提督「あ、う、え。まあその、なんだ。俺の障碍は対症療法で一生かけてしまわなければならないものらしいよ。」
浦風「何が言いたいんじゃ。提督」
提督「科学的にいうとおれは障碍者なんだってさ。つまり欠陥品なのかなぁ。」
浦風「うるさいで。だまれや。ハブて虫。」
提督「とほほ。事実を科学的にいっただけなんじゃけど。具合が悪くてすまんかったのぅ。」
浜風「提督の具合の良しあしは関係ありません提督。浦風の怒りの原因は貴方が自分のことを欠陥品なのかなぁといったことです。」
提督「、、、そうか。」
浦風「怒ってなんかおらん。みんなの顔をみてみんさい。」
提督「何々、泣いてるのけ。」
浦風「ばかたれ、今気づいたんか。」
提督「知るか、俺は辞令が出るかもしれないから早めにお前らに言おうとしただけだ。」
浦風「うわああああ、うわあああ」
提督「やめろ。いきなりうるさい」
谷風「てやんでぇいっ、まだ判ってないようだねぇ提督。にぶちん。あたい達はみんな提督と別れたくないんでぇいっ。」
提督「あ、、、。」
磯風「海底の泡から再び浮かび上がることが出来たのは、提督、あなたの優しくて強い愛のお陰です。私はそう信じています。」
提督「磯風、おまえ、ちゃんとしゃべれるんだな。」
磯風「、、、どうも。」
谷風「そんなことより、提督も、大の男が、泣くんじゃねぇってんでぃ。あと、磯風も。」
涙を拭いた五人は懲罰の夜を思い出話をして過ごすことに決めた。
初めての出会い。磯風の料理。浦風と谷風の鉄板焼き対決。浜風の意外な趣味。
話すことはいくらでもあったからだ。
新鎮守府の近くの畑ではキリギリスが鳴いていたが、五人は聞いていなかった。
話に夢中だったからだ。
監視用機器の向こうで、大淀がまたすすり泣きをしていた。