これは「空の神兵」という歌の冒頭である。
人類大戦の開戦劈頭、帝国陸海軍がパレンバンに有って落下傘部隊を投入した。当時の活躍を歌った詩である。
臣民である市民階級に受け入れられ、市井では大いに流行したものだ。
今、現在。
妖精小隊は、中隊に編成替えが行われる。
現在では深海棲軍を相手取るのは、人類と妖精、そして艦娘の合従軍であった。
「藍より蒼き」ソロモンの大空に。
管制塔「こちら管制塔、ひばり中隊、応答せよ」
(This is Operation Control Tower, "Hibari Squadron." Answer Me.)
隊長「管制塔へ、こちら、ひばり中隊長。」
(To the tower, This is "Hibari Squadron.". I am a leader.)
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管制塔「CODE Δ(Delta) 、Sixty-Six 、Repeat(繰り返す)。CODE Δ 、Sixty-Six」
中隊長「SK Roger(ひばり了解), CODE Δ ,Sixty-Six. Repeat! CODE Δ 、Sixty-Six!」
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CODE Δ (Delta) は、「DENGEKI-SEN O IDOME : 電撃戦を挑め」の頭文字Δである。Sixty-Six は、「(秘匿座標系における)位置(6,6)へ」だ。
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ソロモン諸島は、かつての人類大戦における激戦海域であった。
どうやら現在でもそうらしい。
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ーその純白に赤き血を、捧げて悔いぬ奇襲隊。ー
中隊の乗機は、隼2型改、電探搭載、自発推進弾搭載の最新型。
格闘戦重視であるが、零式と違い、航続力が無い。
基本、電探で索敵、所定座標に遷移する。
奇襲戦闘。
それは自発推進弾による遠隔攻撃。
帰還はその後の事になる。
2型改にとって、格闘性能は最早、予備性能の類である。
奇襲時に予期せぬ対空戦が発生しなければ良いのだ。
敵は戦闘機ではない。
主敵は、わが輸送船団を狙い来る水雷戦隊、潜水艦隊だ。
(潜水艦の恐怖は、まだ、ないのであるが。)
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ひばり中隊、春仁中隊長の率いる中隊は、妖精中隊と呼ばれ、深海棲艦共から恐れられていた。
妖精の舞う空は美しく、それでも残忍ではあったであろう。
戦果がそれを証明していた。
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夕焼けに染まる隼、ひばり中隊。
急降下爆撃、「Dive:ダイヴ」と呼ばれる機動による位置取りが完了する。
後は自発推進弾(じはつ・すいしん・だん)の仕事に任せ、敵機、または、艦砲射撃の餌食とならぬよう急速離脱を行う。
敵さんからしたら歯がゆい敵。それが「ソロモンのスカイラーク」
ひばり中隊だった。
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春仁「各隊へ。第一小隊から順に被害報告を。」
シルフ「第一小隊。損失機なし」
オベロン「第ニ小隊。損失機なし」
オンディーヌ「第三小隊。…損失機…2」
春仁「ご苦労、帰還だ。」
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春仁「(第三小隊は、残念だったな。)」
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自発推進、乃至、爆進弾。
帝国陸海軍共同による研究の成果物である。
直進性はやや西側のそれに劣るものの、悪くはない。
発射速度で互角。命中距離が2パーセント程、西側の「ロケッティア技術」に勝っていた。
帝国の誉れである。
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水偵005「駆逐艦撃沈3、巡洋艦大破とミトム」
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あきつ丸「こちら船舶輸送師団、あきつ丸である。ヒ隊の船団護衛に感謝する。」
春仁「ヒ隊了解。【よいお食事を。】」
あきつ丸「貴様らもな、少尉。【よいお食事を。】」
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ひばりは、ソロモンの空を、海を守護しつづけていた。
船舶輸送司令部からの感謝状が届くだろう。
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後日、なんと、陸海合同本営から感謝状が来たのである。
馬鹿元閣下も、さぞや悔しがったろう。
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「かも番隊」に追放したハズの彼、春仁が、成績を残し、海軍に帰ってくる。
このままだと原隊である駆逐隊に復帰する…。
馬鹿元「まずいのぅ」
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馬鹿元閣下は、身の振り方をどうすべきか愛人と寝屋で相談している最中であった。
最も、その愛人とやらは、線家の手配の者であったのであるが…。
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愛人「馬鹿元閣下は、やりすぎましたな。」
父上「お静かに。」
愛人「は。」
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発 帝国陸海本営
宛 ソロモン船舶輸送司令部
海軍少尉、線春仁、原隊ヘノ復帰ヲ命ズ。
仔細ハ追ッテ沙汰ス。
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大佐「しまったな…。我が飛行連隊の撃墜王殿を失うとは。」