インフィニット・ストラトス Dark Knight Story   作:DASH君

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MISSION 08 理想のヒーロー

ラウラside

 

私はラウラ・ボーデヴィッヒ・・・・だがそれは識別上の記号。

最初に与えられた記号は―――――遺伝子強化試験体C-0037。

人工合成された遺伝子から作られ、鉄の子宮から生まれた闘う為だけの存在。

あらゆる分野で私は優秀だった、ISが登場するまでは・・・・

ISが登場してから適合性向上の為、私の左目に擬似ハイパーセンサー

越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)』を施される。

しかし、理論上不適合が起こる筈も無かったこの処置で左目が金色に変色

常に稼働状態でカット出来ないまま制御不能に陥った。

この『事故』を機に私は部隊の中でもIS訓練の後れを取り

『出来損ない』の烙印を押されてしまった。

そんな中、出会ったのが教官である織斑 千冬である。

彼女の教えに従い、私は再び部隊最強の座に君臨出来た。

私は教官に憧れていたが、教官と接する内に彼女の心の闇を知る。

2人の弟の存在・・・・その存在が彼女を苦しめている事を知ってしまった。

教官を苦しめる者・・・・例え、肉親だとしても排除しなければならない。

しかし、実際に敵対して私は思いもよらない驚きをしてしまう。

 

『俺は千冬姉や春斗と仲直りがしたい。出来ちまった亀裂を直したい。ただそれだけだ。』

 

この時の織斑 一夏の表情は2人の弟の存在を知った時の教官の表情に似ていた。

この感情は何なんだ?驚きと同時に初めて知った何とも表現し辛い感覚に襲われる。

気付けば私は教官に呼び出されて指導室に入っていた。

 

「呼ばれた理由はわかるな?ボーデヴィッヒ。」

 

「ハイ、教官。」

 

「“織斑先生”と呼べと言っただろう。」

 

「ハイ、先生。」

 

「まあ良い、呼び出した理由だが先日の私闘騒動だ。」

 

予想通りと言えば予想通り、状況的に周りに人が大勢いる状態で私から仕掛けた訳で

怪我人が出なかったにしろ罰を受けても仕方がないと言った感じだ。

しかし、その次の言葉を聞いて私は驚きを隠せなかった。

 

「だが、今回の件は不問とする。」

 

「何故です!?」

 

「織斑弟からの頼みだ。」

 

教官がそう言うと“携帯電話”とやらのディスプレイに文字が入っていた。

 

『From:一夏

 Re:今回の騒動について

 千冬姉、今回の騒動の事は耳に入っているかもしれねえ。

 だけど、ボーデヴィッヒがやった事は全てアンタの為の行動なんだ。

 罰は俺が代わりに受けるから、ボーデヴィッヒを許してあげてほしい。』

 

理解できなかった、敵対している者を許すなど、私には本当に理解できなかった。

深く考えさせる前に教官が私に言う。

 

「お前は“2人の所為で私が苦しむ”と言ったな。この際だからお前に言っておこう。」

 

「なんでしょうか?」

 

「私が苦しんで見えるのなら、それは私自身への罰だ。それを覚えておけ。」

 

教官がそう言うと前に見た暗い表情をしていた。

何が何だかわからないまま、話は打ち切りになり私は気付けば指導室を退室していた。

 

 

一夏side

 

今日は何事もなく過ごせる・・・・なんて思っていたが掲示板の前に着いた途端

焦る事になってしまう。

 

『学年別トーナメントについて

 今年の学年別トーナメントはクラス対抗戦の様な出来事が起こらないとも限らない為

 今年度はタッグマッチで行いたいと考えています。

 タッグを組む相手が居る場合は6月中旬までに登録用紙にて登録してください。

 なお、パートナーが決まっていない生徒は当日ランダムで決定させて頂きます。

                               IS学園生徒会執行部より』

 

なんてこった、1対1かと思って準備をしていた結果がこれだよ。

このままでは俺と春斗、そしてシャルルの3人が女生徒たちから言い寄られてしまう。

それだけならまだ良い、問題は俺は誰と組むかだ。

箒、セシリア、鈴の3人からおそらくタッグを組む様に言われるだろう。

箒はともかく、セシリアと鈴とは再戦したいと思う自分が居る。

鈴に至ってはクラス対抗戦があんな感じになって不完全燃焼だから尚更だ。

さあ、どうしよう!!期限は刻々と迫って来るぞ!!

 

「・・・・とりあえず整備室に行こう。」

 

今日は定期的に紫炎を観る日で専用機持ちは自分でISを観てあげなくてはならない。

俺個人の課題としてエネルギー効率の調整が急務だった。

現在エネルギー効率が全くと言っていいほど合っていない。

微調整を繰り返して何とか保っているが後々後れを取る事になってしまう。

いくら束さんから教わっても微調整が非常に難しいのだ。

 

「今度の調整はどうするか・・・・うん?」

 

「(カタカタ・・・・)」

 

あっ、更識さんだ。彼女も整備中なのかディスプレイと睨めっこしている。

丁度、隣が空いている事だし、一声かけてから整備に入ろう。

 

「よっ!!隣良いか?」

 

「おっ!?織斑君!?」

 

「そんなに驚かなくても、それで隣良いか?」

 

「あっ、うん。大丈夫。」

 

「そっか、じゃあ、お言葉に甘えて。」

 

そう言って俺は紫炎を展開して整備に入る。

ディスプレイを広げていき、問題点であるエネルギー効率の項目に入った。

睨めっこし始める俺、すると横から声が聞こえた。

 

「織斑君、エネルギー効率が合っていないよ。」

 

「あっ、やっぱり?正直、俺もそう思っていたんだが微調整が難しくて・・・・」

 

「だったらこうすれば・・・・」

 

そう言って更識さんは俺をどけてキーボードを入力し始める。

慣れた手つきでタイピングしていき、俺は静かにその様子を見ていた。

 

「これで良くなった筈。」

 

「どれどれ・・・・おお!!すげぇ!!」

 

ディスプレイを見るとエネルギー効率が30%以上向上した状態で映っていた。

こう言うの『棚から牡丹餅』って言うんだっけ?使い方違ったかな?

まあ、とにかくこれで問題点の改善に成功したのだ。

 

「更識さん、ありがとう!!おかげで助かったぜ。」

 

「この間のお礼、出来なかったから大丈夫。」

 

「この間・・・・ああ、あれか!!そう言えばあれからどうなった?」

 

「起動テストも異常が無かったから後は本番を待つだけ。」

 

「そうなのか、いや~、自分から首を突っ込んでそのままだったから気になったけど

それを聞けて安心したぜ。」

 

「うん、織斑君のプログラムのおかげだから・・・・」

 

「ちょっと待った。」

 

「何?」

 

「俺の事は“一夏”って呼んでくれ。同じ学年にもう1人、先生含むと

合計3人“織斑”が居るからな。」

 

「なら私も“簪”で良い。」

 

「それじゃあ、簪。本番と言うと学年別トーナメントになるよな。」

 

「うん、打鉄弐式がこうして出来たから・・・・」

 

「そっか、なら今日の掲示板を見たって事だよな?」

 

「うん、一夏は誰とタッグを組むの?」

 

「それが困った事に迷っているんだよ。」

 

「えっ、そうなの?」

 

「ああ、セシリアや鈴、そしてシャルルとは再戦したいし、箒は日頃の訓練の成果を

見てみたいし、春斗とボーデヴィッヒは嫌がるだろうし・・・・」

 

「色々考えているんだね。」

 

「そっ、困り果てている所なんだ。」

 

今の自分の気持ちを正直に言う俺、全て事実だし、1人に絞り込むのも難しかった。

自分の心境を言った後、簪は言い出す。

 

「私とならどうかな?」

 

「えっ?簪が?」

 

「うん、私も誰かと組む予定が無いから。」

 

「う~ん・・・・」

 

「やっぱり、ダメかな?」

 

弱々しく呟く簪。しかし、考えてみれば自分から首を突っ込んで放置していた訳で

アフターケアをやらないと駄目だと思う。

それに打鉄弐式の性能を見てみたい自分も居るのも事実で、そう思うと答えはすぐに出た。

 

「面白そうだな。」

 

「えっ?」

 

「簪とタッグを組む事がさ、打鉄弐式の性能も見てみたいし、首を突っ込んだから

最後まで見ないといけねえ。」

 

「じゃっ、じゃあ!!」

 

「目指すは頂点だ!!よろしく頼むぜ!!」

 

「うっ、うん!!こちらこそ!!」

 

お互い握手を交わす、こうして俺はタッグパートナーを得たのだった。

 

 

簪side

 

思い切って勇気を出したら一夏は応えてくれた。

理由はどうであれ私は嬉しかった。

お互い整備を終えて、一夏に引っ張られて職員室に移動する。

職員室で登録を行うが私たちが一番乗りらしく、先生方が「早いわね。」って言っていた。

無事登録を終えた私たちは早速訓練に挑む。そんな中、一夏はアドバイスをしてくれた。

 

「良いか、簪?“ISに対抗できるのはISだけ”って言うのは知っているな。」

 

「うん、篠ノ之博士が言っていたから有名だよ。」

 

「聞くだけ野暮か、でも知ってほしいのはそれだけじゃないんだ。」

 

「何?」

 

「“ISの事を知るにはISから聞くしかない”これを念頭に入れてほしいんだ。」

 

「“ISの事を知るにはISから聞くしかない”?」

 

「ISのコアは意思がある事は知っているな。」

 

「うん、授業で言っていたから・・・・」

 

「つまり、ISだって人と同じ様に人格があるんだ。簪に聞くけど人の名前を聞いただけで

その人と“親友”になれると思うか?」

 

「っ!?多分無理・・・・」

 

「だから、一方的だとISのコアは心を閉ざしてしまう。ISの事を知るには自分の心を

開かないといけない。言っている事わかるか?」

 

「なっ、なんとなく・・・・」

 

「そっか、今は出来なくても、いつか出来る様になれば良い。特に専用機は一番身近な

相棒になるんだから接し方によってはすぐに出来る筈さ。」

 

「うっ、うん・・・・」

 

『自分の心を開く』か・・・・今までの私の行いを考えると少し難しく感じた。

でも、一夏の言葉は説得力があって本当に信じていると感じさせられた。

私も出来る様にならないといけない、まずはそれからだ。

 

「これは同じクラスの篠ノ之 箒とセシリア・オルコット、それに2組の凰 鈴音にも

教えている事なんだ。」

 

「ひょっとして3人が急に強くなったのも・・・・」

 

「そう言う事、アイツ等も俺が教えた事をやっているから得た強さなんだ。」

 

「なるほど・・・・」

 

「おっと長話が過ぎたな、早速訓練に励もう。」

 

訓練を開始するけど、訓練の内容は基礎から始まって応用・実戦・駆け引き等様々。

特に駆け引きでは一夏の考えが複雑に張り巡らせており

どの様にすれば攻撃を連鎖していくのか深く考えていた。

これが俗に言う「スタイリッシュアクション」と呼ばれる所以なのかもしれない。

少し経った頃に私にとっては見かけない顔が現れた。

 

「一夏!!掲示板の内容見た?」

 

「もし見たのならわたくしとタッグを・・・・」

 

「何を言う!!私とタッグを組むのだ!!」

 

「そっちこそ何言っているのよ!!あたしに決まっているでしょ!!」

 

「悪いが、俺は既にタッグを組んでいる奴が居るよ。」

 

「「「何ですって(だと)!?」」」

 

「それで相手は誰なのよ!!」

 

「隣に居るだろ?」

 

「っ!?」

 

突然一夏が私を指さし、3人は私を睨んでくる。少し経って一夏は理由を述べた。

 

「オイオイ、これでもちゃんと理由があるんだぞ。」

 

「言ってみろ。」

 

「理由は簡単、お前等と闘いたいからだ。」

 

「だったら・・・・」

 

「鈴とはクラス対抗戦の決着をつけたいし・・・・」

 

「ぐっ!?」

 

「セシリアとは再戦がまだだし・・・・」

 

「むっ!?」

 

「箒は日頃の成果が見たいからだな。」

 

「むむむ・・・・」

 

「そう言う訳だ、それに最初に誘われたから早い者勝ちって奴さ。」

 

「「「ぐはっ!!」」」

 

一夏がとどめの正論を述べて3人はがっくりと項垂れる。

ちょっと悪い事をしちゃったかな?色々考えていると、3人が私に言い寄る。

 

「アンタ、何者よ?」

 

「簪・・・・更識 簪、日本の代表候補生、“簪”って呼んでほしい。」

 

「簪さんですわね、わたくしはイギリス代表候補生のセシリア・オルコットと申しますわ。」

 

「私は篠ノ之 箒だ。」

 

「あたしは中国代表候補生の凰 鈴音よ、トーナメント楽しみにしているわ。」

 

「うっ、うん・・・・」

 

ちょっとした会話の後、一夏に似た人:織斑 春斗がやって来た。

 

「うん?春斗か。」

 

「こんな所で訓練とは御苦労様だね。」

 

「そう言う春斗も訓練か、休んでいた分やらないと駄目だもんな。」

 

「そうさせた張本人が何を言うか。」

 

この雰囲気を感じて初めて知った、2人は本当に仲が悪いんだって・・・・

最初は噂だけだと思っていたけど、雰囲気そのものを感じると実話である事を認識してしまう。

周りを見ると篠ノ之さんはハラハラしていると言った感じで

オルコットさんと凰さんは睨み付けている。

特に凰さんの目は尋常じゃないくらい怒りに満ち溢れている事がよくわかった。

 

「それにしてもお前も馬鹿な選択をしたものだよ。」

 

「何の事だ?」

 

「だってお前の相棒の人、噂じゃあこう言われているからね。“更識家の無能”だと。」

 

「っ!!!!!」

 

織斑 春斗の言葉を聞いて私は言葉を失った。

一番思い出したくない事、一番言われたくない言葉・・・・嫌だ!!嫌だ!!気持ち悪い!!

私は気付けば呼吸が荒くなっていて、それに気づいたオルコットさんに介抱されていた。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「あっ・・・・ああ・・・・」

 

過呼吸の状態になっていて目の焦点が合わず、今にも気を失いそうだった。

凰さんは今にも食って掛かりそうになっていて

篠ノ之さんはいつでも凰さんを止めれる位置に居た。

私は必死に彼から言われた言葉を忘れようとしていたけど、一度聞いたら忘れられなかった。

「居なくなってしまいたい」そう思うくらい私は最悪な事ばかり考えていた。

そんな中、一夏は堂々と答える。

 

「簪は無能なんかじゃないぜ、俺が思っているよりもずっと強い。勿論お前よりもな。」

 

「ほう?」

 

「お前にはわからないんだよ、孤独に闘っていたヤツの強さをな。それに落ちこぼれや

無能だって必死で努力すればエリートを超えられるかもよ?」

 

「何を根拠で・・・・」

 

「俺が証拠さ、春斗(エリート)を倒している。そして今のお前は自分の敗北を認めずに

人の心を簡単に傷付けるただの小者だぜ。」

 

「なんだと!?」

 

「自分の力量を考えてから言ってくれ、でないとお前の言葉に聞く耳持てねえからな。」

 

一夏は見た事が無いくらい純粋な瞳を持って織斑 春斗の言葉を否定した。

その瞳は誰よりもまっすぐでいつも見ているヒーローの瞳に似ていた。

そう思うと、自然に呼吸が安定していき、落ち着きを取り戻しつつあった。

 

「良いだろう、ならその幻想を学年別トーナメントで壊してあげるよ。」

 

「俺だって、お前をぶっ潰して腐った性根を叩き直してやるさ。」

 

お互いに宣言して織斑 春斗は笑いながら、この場を去って行く。

その後、一夏は私の元に来た。

 

「大丈夫か、簪?」

 

「うん、もう落ち着いたから。それにさっきの一夏はまるでヒーローみたいだったよ。」

 

「ヒーローね、俺はヒーローよりもダークヒーローだと思っているけどな。」

 

「そんな事は無い、私はそう見えたから・・・・」

 

「そうか、今日は大事をとってもう止めにしよう、明日から厳しいぞ。」

 

「うん。」

 

私は今できる精一杯の返事をした。

私が見ていたヒーローも1人で立ち向かえない場合は仲間を信じて頼っていた。

それと同じ様に私も“信じる仲間(一夏)”を頼って前に進みたい。そう思えたのだった。

 

≪To be continued…≫

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