魔法科高校の〝ガチ〟劣等生   作:使命

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入学前
Step1 転生、そして蒙は拓かれる。


 

 最初に。この男、ウェイトリー・アルハズラットは転生者である。前世の名は記憶にないが、とある町にて医者として働きながら、尊敬するべき友人と共にとある創作神話を書き上げた作家である。

 

 

 その友人は死後、発行した自分の作品がTRPGに使用されたことで評価を上げ、()()()()()()()()の巨匠として有名になる。

 

 

 だが彼は自分の作品を公にせず『趣味:執筆』として作品を制作し続け、生涯友人とその後継者以外にはその作品を見せることなくひっそりと生涯を終えた。

 

 

 そして彼……ウェイトリーはここ日本に転生を果たす。正確に前世の記憶と人格を取り戻したのは五歳になったときだ。

 

 

 この世界はウェイトリーが生きた前世より、遥か先の未来らしい。たしか1942年に死んだ筈だが、今は2085年。さらに20年前には第三次世界大戦が起こったらしい。第二次はおそらく存命時に起こっていた戦争のことか。そして、この世界には特筆すべき事情がある。

 

 

 ───かつて《超能力》と呼ばれていた先天的に備わる能力が《魔法》という名前で体系化され、強力な魔法技能師は国の力と見なされるようになった。

 

 

 そう、魔法だ。かつて憧れ、所詮は空想と諦めたあの魔法が実在しているのだ。

 

 

 それを知った瞬間、どれだけ歓喜したか、どれだけ心踊ったか。

 

 

 炎を打ち出し、水を繰り出し、風を操り、地を支配する。誰もが夢見る魔法使いの姿がそこにはある。

 

 

 魔術についての本を読み漁り、かのソロモン王やアリストテリオス、ヘレナ・P・ブラヴァツキーの書物を愛読し、自身の作品にも魔術師を登場させるなど、

 魔術好きだった彼の心は狂喜乱舞の大喝采、超絶怒涛の空前絶後のフィーバー状態だった。

 

 

(本当にありがとう運命よ! 私は素晴らしき第二の生を謳歌できる!!)

 

「どうしたのウェイトリー? そんなに嬉しそうにして」

 

「……いいや、何でもないよ」

 

 

 さらに美人な母親に面倒をみられるという最高な運命に感謝をする。

 

 

 そんな世界と自身の未来への期待を胸に、いつ魔法を学ぶのかと思いながら一日を過ごす。それがウェイトリー少年(前世含め57歳)の日常であった。

 

 

 ──その日常は、音を立てて崩れ去ることになるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寝ていた筈が、目の前に長い階段がある。周りを見渡すと、星空のような空間が無限に広がっているように見える。夢か? 

 

 

 しかし夢ならばこうして夢と認識出来ているのはおかしい。認識できた時点で目が覚める筈だが、今もこの空間は現実であると示すように存在している。

 

 

 何よりこの空間が、時間、空間、この宇宙から完全に逸脱しているように思える。そして実際にそうなのだと、おおよそ人間的ではない本能によって理解する。

 

 

 気付いたら一歩階段に足をかけていた。無意識の内の自らの行動に驚くが、それよりも脳は『この階段を上らねばならない』と強迫観念に駆られ命令をする。

 

 

 一歩一歩、踏みしめるように階段を上がる。今が何段かも分からないが、体は微塵も疲れを見せないばかりか、その足を早めていく。

 

 

 どれだけ上ったか、どれだけ時間が立ったかも分からぬまま前を見る。

 

 

 ────そこには()があった。否、正確には門ではないのかもしれない。空間の歪み、宇宙の穴。そのどれであろうとなかろうと、ウェイトリーにはそれが門、『門にして鍵』として知覚されていた。

 

 

「私は、■■■※"~:.%,"#^●だ」

 

 

 この世界には存在しない筈の()()()()名前を告げる。無論、それがウェイトリー本人の意思で発せられたのかは不明である。

 

 

 門が独りでに開く。その先から世にも悍ましい、地球はおろか太陽系において知られざるものの囀りや呟きに似た音が聞こえる。

 

 

 常人が聞けば、それだけで発狂し死に至るその音を、どこか懐かしいような思いで聞き流しながら軽やかな足取りで門をくぐる。

 

 

 そこに【彼】はいた。極彩色に光輝き、絶えず膨張と収縮を繰り返す球体のような集合体。

 

 

 理解する───彼はウェイトリーであり、■■■であり、その雛型であり、終局だった。

 

 

 彼は人間であり非人間であり、脊椎動物であり無脊椎動物であり、有意識であり無意識であり、動物であり植物だった。

 

 

 彼は私で、俺で、僕で、君で、貴様で、あなたで、あれで、これで、それで、彼処で、此処だった。

 

 

 彼は過去であり、現在であり、未来だった。

 

 

 あらゆる時空間の外に座し、その全てに隣接する者。若しくは()()()()()()

 

 

 万物の原型にして終末たる存在、それは人間風情の信仰によって力を左右される脆弱なる神という存在ではない。その性質は『神と呼ぶべき生物』と言える。

 無論、眼前の存在がその程度の言葉で言い表せるものではないが。

 

 

「……ia」

 

 

 自らの口から本来人間では発音不可能な音が出てくる。それは言葉だ。かの偉大なる存在を讃える冒涜極まる言語。

 

 

「ia!」

 

 

 讃えねばなるまい。この遥か高次元の者を。何より、ウェイトリーは()()()()()。彼を、彼の名を。

 

 

「Yog-Sothoth!! ia! Yog-Sothoth!!」

 

 

 ──彼はその言葉と、目の前のウェイトリーを、その人知を超越した認識能力により知覚した。

 

 

【……■■■■】

 

 

 そしてこの世ならざる言葉のような意思が流れ込んでくる。果たしてそれが何を意味するのかはウェイトリーには分からないが、彼は動いた。

 

 

 そして彼は()()()()。この世界の、宇宙の外の原初の渾沌世界の中心である『神殿』にてかの者は眠っていた。

 

 

 無限の中核で冒涜的な言辞を吐きちらし、創造と破壊を繰り返しながら眠りこける盲目にして白痴の魔王。

 その周りには見るからに醜悪な異形たちが、呪われるような狂ったフルートの音を掻き鳴らし、くぐもった太鼓を下劣なリズムで叩き、()()()()()()()()()()魔王をあやしている。

 

 

 本来なら存在の核がぐずぐずに溶け、死体すら残らず消滅する筈だが、ウェイトリーは血涙を流しながら呟く。

 

 

「……美しい」

 

 

 知っている。知っている。ここにいる存在たちを知っている。

 

 

 千の仔を孕みし、黒山羊にも人間の表情にも似ていて、同時にどれとも違う顔に冷笑を浮かべる地母神を。

 

 

 咆哮する貌のない円錐形の頭部を持ち、触腕、鉤爪、手を際限なく伸縮させながら、万物を嘲笑する混沌を。

 

 

 前世にて友と創り上げた、至高なる外宇宙の神々にして、

 何よりも()()()()()()()()

 

 

「ia……!」

 

 

 あぁ、なんと! なんと美しいのだ! 地球の矮小な神など及びもつかぬ偉大なる者たちが今こうして目の前に存在している! 

 

 

「ia! ia! Azathoth!!」

 

 

 賛美する。この世で最も偉大な存在を、外なる者たちの長の名前を。

 

 

 ──瞬間、魔王が動いた。眠りながら、知能を持たぬまま触手を際限なく動かし、ウェイトリーの方を指す。

 

 

 異形たちがどよめきながらウェイトリーを知覚し──

 平服した。

 

 

 気づいたのだ。目の前にいる小さく矮小な存在の正体を。

 

 

 我らを創造せし偉大なる主の姿を。

 

 

 地母神が慈愛を込めた冷笑をし、頭を垂れた。

 

 

 混沌がいつもの嘲笑に大きな敬意を滲ませ、慇懃に礼をした。

 

 

 世界が彼を祝福し、加護する福音を鳴らした。

 

 

 ウェイトリーの脳に大量の情報が流れ込んでくる。

 あらゆる旧神の脆さが、性質が。

 あらゆる旧支配者の弱さが、性質が。

 あらゆる外神の強大さが、性質が。

 

 

 自分たちの後継者が創り上げた、異形の神々が浮かんでは消える。

 

 

『……我らの創造主に』

 

 

 世界が言葉を発する。音ではなく、意思として。

 

 

『外なる神の祝福を』

 

『父王の寵愛を』

 

『全神に告ぐ、偉大なる■■■を守護せよ』

 

 

 その声を最後に、ウェイトリーの意識は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まだ夜も明けてない暗い部屋のベッドの上でウェイトリーは目を覚ました。隣の母親はぐっすりと眠っている。

 

 

 先ほどまでの景色は、幻だったのか? しかし本来人間では発音不可能な言葉を発したことによる喉の痛みで、現実味を帯びてくる。

 

 

「……いやまさか、単に口を開けて寝てただけだろう」

 

「おや、お目覚めですか? まだ早いのでは?」

 

 

 自分たち以外いないはずの真横から、急に甘く耳触りの良い男の声が聞こえてくる。

 

 

「なっ……!?」

 

「安心してください。あなたのお母上には私たちの声は聞こえません。そう細工致しましたので」

 

 

 目の前に立っているのは、長身痩躯な体に黒いカソックを着て、首から十字架をぶら下げ、神父のような格好をしている。

 褐色の肌に、漆黒ともいえるような髪と瞳をした、美貌の男。

 

 

 数値にするとするならばAPP20から22。()()の美である。

 そしてその美貌には隠しようもない嘲笑が貼り付けられている。

 

 

「こんばんは、我らの創造主よ。私はナイアーラトテップ。いつもニヤニヤあなたの周りに這い寄る混沌でございます」

 

 

 考えうる限り最悪に近い自己紹介をし、見事な礼をする。すると、その隣がまるで陽炎のように揺めき、人の形を取った

 

 

「……夜分にすまぬ我らが主よ。我が名はヨグ=ソトース。外なる神の副王を勤めている。創造主を守護させるため、先ほどのような手荒な手段をとらせてもらった」

 

 

 荘厳な言い回しの美男が現れ、こちらも人外の美を纏っている。

 

 

「直に他の神たちも挨拶しに来るのでしょうが……今は夜遅いですからね」

 

 

 先ほどから人の姿をしているが、根底にある存在感が漏れだし、知っているウェイトリーからすれば人の形をした悍ましく冒涜的なナニかが立っているようにしか見えない。

 

 

「お休みなさいませ我らの創造主よ」

 

「よい眠りを」

 

 

 ナイアーラトテップが人差し指を額に当てると、急激な眠気に教われ、ウェイトリーの意識を奪った。

 

 

 




この作品において、幾つかの神格は■・■・■■■■■と■■■■・■■■■■とが自身のアイデアを出しあい、実際に形にしたのは■■■■■ですがそのアイデアを■■■■が出したため神格の認識で、共同創造者となっております。
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