魔法科高校の〝ガチ〟劣等生   作:使命

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Step13 True end

 

 

「……はい?」

 

 

 訂正。どうやら彼女の精神状態はこの上なく不味い状態らしい。ウェイトリーの何を指して神と称したのだろうか。ウェイトリーの周りには、それこそ旧支配者最強格であるナグとイェブ。それらを含めた全てを冷笑し、玩弄する超越者、外なる神2柱がいるのに。

 

 

「……ほう、悪くない着眼点ですね」

 

 

 何故かどこか嬉しそうに感心しながら嘲笑するナイ神父はさておき、真由美に精神分析をしなければ。幸い、殺人衝動や異常な食欲などの症状は見受けられない。

 

 

「あー……真由美さん?」

 

「違うの?」

 

 

 全くもって違う。彼らに比べたウェイトリーの存在格など蟻以下の塵にも満たない。確かにウェイトリーは彼ら外宇宙に住まう深淵と狂気の存在たちの生みの親だ。だがウェイトリーはあくまできっかけを創っただけであり、彼らは彼ら自身の意思で存在をしているのだ。

 

 

「しゅ……ウェイトリー君、よくお考えください」

 

「ん?」

 

「まずは貴方の尊顔。我々外なる神の手がけた造形には劣るといえど、その美貌は人類最高峰でしょう。そして貴方が先ほど召喚されたナグとイェブ。そこの小娘は『マルチスコープ』という異能持ちです。ご存知ですね?」

 

 

「あぁ、確か認識力をそのまま上げるのではなく、認識のチャンネルを増やし物事を多角的に認識する魔法を先天的に持っていると聞く」

 

「えぇ、その通りです。そしてその眼であれはナグとイェブを観測し、あの双子の()()()を認識したのでしょう。そしてその後それを難なく鎮圧した我々をも従わせる貴方」

 

 

 ──なるほど、何となく分かった。彼女の眼が捉えたナグとイェブ。遥か永劫の座にて無数の奉仕を従え君臨し、クトゥルフやツァトゥグアを始めとした数々の神格を産み出した、三次元宇宙においての副王と地母神の落とし仔にして名代。旧支配者最上格の存在を、彼女の眼は無慈悲にも認識したのだろう。それこそ常人より遥かに多くの視覚で。神への冒涜にして、神としか形容できない強大なるあれらを。

 

 さらにそんな神の如き存在の神威を嘲笑しながらあしらい、その上懲罰まで下した人の形をしたそれ以上の化け物2名。ナイ神父、タウィル司教。そしてそれらを召喚し、忠誠を受ける泣く子も見惚れる美貌の存在を表す言葉など……神しかないだろう。

 

 

「……確かにね。場面のせいか」

 

 

 ワシワシと普段はしないような様子でやや乱雑に頭をかき、一つ息を吐く。さてこれからどうしようか。とにかく彼女の精神状態が気掛かりだ。ひどいようなら記憶の処理をしなければならない。

 

 

「……手数だがナイ神父かタウィル司教、彼女の記憶を」

「それはやめて」

 

 

 そうウェイトリーが頼もうとしたところを、真由美は小さく手を出して止める。

 

 

「──どうしてかな? それははっきり言って人類には過ぎたもの……というより、害しかないものだ。君が、君たちが送る平穏を壊す代物でしかない、知る必要のないものだ」

 

 

 真由美の言動に訝しげに目を向け話すウェイトリー。まさかとは思うが、今になって奴らの言う叡智やら何やらに魅了でもされたのか。

 

 もしそうだとするならば、真由美はもはやウェイトリーの保護対象ではない。駆除すべきサバト(害虫)に切り替わる。

 

 すっ、とウェイトリーの目線が下にずれる。その目の先はスレンダーながらも起伏に富んだ肢体の奥、肋骨という脆弱な防護に守られている心臓だ。先ほどのサバトたちが使用していた『萎縮』を用いれば、一瞬で殺すことができる。

 

 

「だって、記憶が消えたところでどうなるの? 彼らの存在が消えるの? ……このどうしようもない真実は覆るの?」

 

 

 どこか諭すようなその言葉にウェイトリーは目を見開き──

 

 

「──は、ははははは! なるほど、そういうことか!」

 

 

 突如大笑いし始めたウェイトリーに困惑する真由美だが、当人は意に介さず笑い続ける。

 

 彼女は見た。垣間見た。この世界の姿を。見るも悍ましい醜悪な真実の一端を。記憶を消すことも出来ただろう。また無知の安寧に戻ることも選べただろう。だが彼女は選んだのだ。真実をしりながら、無知の安寧に背を向けて、未知と狂気の道の一端を歩むことを。──即ち、探索者への道を。

 

 ウェイトリーに比べれば小さな、本当に小さな一歩だが、一歩は一歩だ。

 

 確かに此処に、蒙は啓かれた。祝福するべきかは微妙だが歓迎はしよう。ようこそ、此方側へ。ようこそ、非日常へ。

 

 

「──取り敢えずだ。教会へ行こうじゃないか。我が家へ歓迎しよう。ナグ、イェブ、君たちも」

 

「かしこまりました」

「かしこまりました」

 

「え、えぇ……て家?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 落ちていく。落ちていく。常識が、ルールが、社会が、秩序が、七草真由美を支えていた全てが粉々に砕け散り、恐怖と絶望の淵へと落ちていく。

 

 辺りが真っ暗になる。意識が奥底へと落下していく。このまま狂い、狂い果てれば、きっと楽になるのだろう。その先にあるのが死だとしても、この世界の醜悪な真実から目を背けられるのだから。

 

 そのまま眠ろうと、眼を閉じようとしたそのときだ。

 

 突如暗闇に、眩い光が差し込んだ。それはこの世のどんな宝石より煌びやかで、太陽のように荘厳で暖かく、神の慈悲のように神々しかった。

 

 思わず見惚れていると、その光は彼女を呼んでいるようだった。光はどんどん此方に近づいてきて、手を差し伸べているようだ。

 

 必死に手を伸ばした。この光を逃せば、もう自分は自分ではなくなってしまうから。

 

 この世界は悍ましい。この世界は醜い。それは吐くほど味わった。

 

 ──だがあの光は別だ。このどうしようもない世界でただ唯一美しく輝くあれだけは、離したら駄目なのだ。

 

 伸ばした手は掴み取られ、引っ張り上げられた。もう狂気に沈むことは許されなくなった。だが後悔はない。

 

 彼女は、この世界で生きることを選んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、ナイ神父がすまないね。彼も悪気はないんだが……彼はこの美貌だろう?」

 

「良いではないですか。信者が増えるのは喜ばしいことです。それで心が救われるのであれば、御主も遍く全てを歓迎するでしょう。──ね? し……ウェイトリー君」

 

「あぁ……うん……その御主当人が信仰されてることに気づいてたらね」

 

 

 仲睦まじく話す、絶世の美男子2人。ウェイトリーよりやや高いナイ神父と並ぶと、人種などは違うがまるで兄弟のようだ。しかし彼らの話している姿を見ると、親子のようにも──保護者という視点からでも、創造主という視点から見ても、事実彼らは親子同然なのだが──思える。

 

 

「ふふ、そうね。……色々聞きたいこともあるし、受験頑張ってね?」

 

 

 底なしの暗黒で見つけた、一条の星。もう離さないよう握りしめなければ。

 

 ウェイトリー・アルハズラットは彼女にとって、光り輝く一等星であり───この世界で生きる希望なのだから。

 

 




導入シナリオ『入学前』はトゥルーエンドだ。

コネクション『七草真由美』を獲得。

七草真由美は永久的狂気【ウェイトリー・アルハズラットへの執着】を発症。

次のシナリオの推奨技能は『言いくるめ』『説得』『現代魔法』かな?次も楽しんでくれたまえ。
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