魔法科高校の〝ガチ〟劣等生   作:使命

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Step16 魔法の学び舎にて黒山羊は鳴く

 

 

「おはよー!」

 

「おはようございます」

 

「柴田さん、また隣なんだ。よろしく」

 

 

 翌日、E組では昨日のメンバーが朝の挨拶を行っていた。美月と達也は隣の席らしく、エリカも近くの席が良かったとゴネている。すると廊下から黄色い歓声が聞こえてきた。

 

 

「おはようアルハズラットくん!」

 

「ねぇ今日お昼ご飯いっしょに食べない?」

 

「放課後私たちと……」

 

 

 見れば登校してきたウェイトリーの周りに多数の女子生徒が集まっているのが分かる。1日前は尻込みしていたというのに、美月とエリカが普通に会話しているのを見たのか次々とウェイトリーに声をかけていく。

 

 

「あぁおはよう。すまないね、昼食は先約が……あぁ、うん、また今度……」

 

 

 ウェイトリーも朝からこの人数の対応はキツいのか、気持ち怠げに返事をしている。実はウェイトリーは低血圧なので朝に弱い。昼頃ならきっと爽やかな笑顔でジョークと蘊蓄を混ぜながら断っていただろう。

 

 

「うわー……本当にあんなことあるんだ」

 

「フィクションでしか見たことない光景だね」

 

 

 確かに見た目なら金髪碧眼の王子のようだ。しかしウェイトリーと話した達也たちからすれば彼の印象は『近所に住むお爺さん』──精神的に考えれば、ウェイトリーは紛れもないお爺さん──だ。昨日の帰りに貰った飴のことも覚えている。

 

 

「ねぇねぇそう言わずに──」

 

 

 なおも詰めよろうとする女子生徒たちの動きが止まる。──なぜなら彼女らの視線の先には、背筋が凍るような無表情でこちらを睨む涼の姿があったからだ。

 

 

「失せろ」

 

「は、はい!」

 

 

 散り散りになっていく女子生徒たちを一瞥した後、溜息を吐き涼は苦言を呈す。

 

 

「兄上は甘すぎる。あんなものら、拒絶すればいいだろう」

 

「そうはいかないよ。彼女らも悪気があるわけでもないし

 ……ところで()()()()は?」

 

「伝えた通りだ。そこまでの心配はいらないはずだ。では俺は行く、また後で」

 

「あぁまた後で。皆と仲良くするんだよ」

 

 そう言い涼と別れたウェイトリーは教室に入ると、達也らを見つけ柔らかく微笑んだ。

 

 

「やあおはよう皆。君たちは早いね。私はどうも朝が弱くてね……」

 

「おはようウェイト」

 

「おはようございます」

 

「おはよ、色男!」

 

 

 ニコニコと揶揄うように笑いながら言うエリカに困ったような微笑を浮かべるウェイトリー。そこそこ困ってたのだから、見てたのなら助けてほしかった。

 

 

「美形に生まれるのも困りものだね。この顔は母の誇りでもあるが」

 

「──そういえばさ、ウェイトとお母さんってそんなにそっくりだったの?」

 

「あぁそうさ。正直父親の要素がどこにいったのか分からない程にね」

 

 

 思い浮かべるのは亡き母フレンの姿。ウェイトリーに魔法を教え、愛を与え、その成長を見届けることが出来ずに生涯を終えた、ウェイトリー最後の肉親。

 

 ウェイトリーと瓜二つの金髪碧眼に整った顔立ちと、未亡人特有の色気。何度も言うが、前世で見かけたならば間違いなく声をかけていた。

 

 彼女に終ぞ愛を向けることが出来なかったウェイトリーだが、その償いは今現在涼へと行われている。彼女に注げられなかった愛を彼へと捧げることによって。

 

 

「この晴れ姿も見せてやりたかったが……まあ暗い話になりそうだからやめておこう。それより、選択科目の履修登録があったはずだ。さっさと済ませておこう」

 

「……そうだな」

 

 

 話題を変え、面倒な作業を先にやっておこうというウェイトリーの提案に賛同した達也が机の機材を起動する。そしてキーボードの手打ちとは思えない速度で作業を始めた。

 

 

「す、凄い。キーボードの手打ち登録……!」

 

「しかも凄い速度……!」

 

 

 前の席で達也が妙技を披露してる一方、ウェイトリーはというと、オドオドと両人差し指で懸命にタイピングを行っていた。

 

 

「くっ、なんでこういう機械なんだ……! 紙とペンでいいだろうに……!」

 

 

 最新機器の扱いにウェイトリーが四苦八苦してる間に、達也たちに西城レオンハルトという男子生徒が話しかけていた。ちなみに登録は達也と西城の協力により滞りなく行われ、予鈴のチャイムに間に合った。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、入学おめでとう。私はこの学校の総合カウンセラーの小野遥です」

 

 

 チャイムが鳴った後、本来いるはずのない先生が入って来たことにより騒然とする教室を見回し、自己紹介をする小野遥。というのもこの学校ではオンライン授業が基本であり、唯一の個別指導も一科生のみ──この辺りが校内での差別にも繋がっている──だからだ。

 

 

「私は皆さんの相談相手となり専門的なカウンセリングが必要な場合、それを紹介する役目です。皆さんの充実した学生生活をサポートしていきますのでよろしくお願いしますね?」

 

 

 彼女はこれから高校のカリキュラムに関するガイダンスを行うらしい。映し出された資料には様々なイラストや写真があった。

 

 

「もし履修登録が済んでるのでしたら退出しても構わないのですが……今日は非常勤のカウンセラーの先生も来ていただいてるので、自己紹介してもらいましょう」

 

 

 ではお入りください。という言葉の後教室の扉が開かれた瞬間、生徒たちは時が止まったかのような感覚に陥った。

 

 

 

 ──教室に入ってきたのは、妙齢の女性だった。だが異常であったのはその()()()だ。

 

 夜闇のように漆黒の長髪に、メッシュのように全体に不規則に差し込まれた銀としか表現出来ない銀髪。本来ならそれは衰えや老いたことを強調させるような白髪として認識されるはずだが、彼女のそれは逆に月と星々が浮かぶ夜空のように美しさを主張する。

 

 白い陶磁器のような肌と豊満な肢体は、身に纏う漆黒のスーツによってその魅力を存分に輝かせている。

 

 妖しく魔力を帯びたブラックダイヤのような瞳を穏やかそうに曲げ微笑む彼女の容姿、そのAPPは22。──人外の美だ。

 

 その美貌に誰もが目を奪われる。あの達也ですら息を呑むほどの圧倒的美の化身。精神を蝕む麗しき毒。

 

 しかしこの中で唯一、他とは全く違う理由で硬直している生徒がいた。

 

 

「……おやおや、これは……」

 

 何故ならウェイトリーが真っ先に感じたのは、ヒトの形をして尚嵐の真っ只中のような暴力的で、この世全てを唾棄するような悍ましい()()だったからだ。

 

 

「初めまして。カウンセラーの千子柳子(せんじやぎこ)といいます。小野先生と違って非常勤だけど、よろしくね」

 

 

 そう優しく微笑んだ瞬間、達也とウェイトリー以外の男子生徒が苦しげに胸を抑え机に突っ伏す。そしてそれは男子だけでなく一部の女子生徒も蕩けきった顔をしている。

 

 さて、そんなことより───

 

 

 

 

 

 

「何故ここにいるんだい?──シュブ=ニグラス」

 

 

 

 

 




どうも。自称女体レビュー家の使命と申す者です。
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