三嶋先生を尊敬していますので、なるべくリオンやブレイブの口調は三嶋先生の書くものに倣っているつもりです。
なお、当然のようにネタバレも含まれるので読む際はお気を付けください。
「やっと……見つけた」
俺はとある洞穴の前にいる。
洞穴と呼んだが、中は全て未知の金属で出来ているので正しくは洞穴ではない。
そこは今の世の中にふさわしくない未知の科学で作られた兵器の工場だ。
俺は今までずっとこの洞穴に来るチャンスを伺っていて、ようやく来ることができた。
昔からここの存在を知っているような言い方をするのは理由がある。
それはこの世界が前世で俺がプレイしていた乙女ゲーの世界であり、この洞穴は俺がそのゲームで購入した課金アイテムが隠されている洞穴だったからだ。
課金アイテムを購入してもすぐには手に入らず、わざわざ取りに行かねばならない仕様だったのは当時はとても面倒臭かったが、こうして転生した今となってはその仕様に助けられている。
俺は今から、専用の鎧を手に入れる予定だ。
剣を構えて警戒しつつ兵器工場に入る。俺が入口から入ると、まだ電源は生きていたようで兵器工場内に明かりがついた。
生体感知のシステムだろうか、今の世界には存在しないエネルギーによる明かりのつく機械。
鎧を手に入れることができると言う嬉しさと、未知の遺跡を探索しているようなドキドキとした気持ちに背中を押されながら奥に向かって進む。
兵器工場内には壊れたロボットがところどころに転がっている。足で蹴飛ばして動かないことを確認し、見つけたドアを片っ端から開けていく。
だが会議室や更衣室,その他雑務を行うような部屋ばかりで俺が求めている鎧が見つかる気配が全くない。
本当にあるのか? やはり完全にはあのゲームと一緒ではないのではないか。そういう不安を抱えて、それでもまだ先があると期待を持って奥に向かった。
その後もいくつもドアを開けて確認したが、壊れた機械やもう動かせない船ばかりで俺の求めているものが手に入らなかった。俺は焦りに焦り、気づけば歩く速度が速くなっていることに気づいた。
そして今目の前にあるのは本当の本当に最後のドアだ。兵器工場内のドアは全て開けた。このドアの向こうに鎧がなかったら……不安が頭をよぎる。
ドアに手をかけて思い切って開けた。
「やっと来たかよ、人間」
瞬間、中から声が聞こえた。俺より先に人がいる?!
もしかして鎧はすでに持ち去られた後か? そんな疑問を持ちながら、声がする方に向かった。
「誰だ!」
剣の先をその声のする方に向けて、相手を威嚇する。
「そんなツンケンするなよ。
兵器工場に入ってきた時からずっと見てたんだからよ。こっちは敵対する気はねーよ。
あんた新人類だろ? むしろ味方さ」
「味方だと言うなら、俺のものになれ。
お前は前世でも俺の物だったんだ」
「前世? なんだそりゃ。
まあいいや、じゃあ早速確かめさせてもらうぜ」
声がそう言うとそちらの方向から急に黒く大きい球のような物が飛び出してきた。
あまりに速く俺は手で顔をかばうので精一杯だった。黒い球には目のようなものが見えた。
黒く大きい球は、俺に当たる直前に広がって俺の体全体を包み込んだ。
喰われる! すぐさまそう思って、腕や足を無理やり振って暴れたが黒い球が俺の体に密着するのはすぐだった。
終わった。俺はこの黒い球に騙されたのだと思ったが、
「おお、お前良いな!
俺様と相性が抜群だ。お前ならそのうち俺様の能力を完全に引き出すことができるぜ。
こんなこと初めてだ」
好意的な言葉が聞こえた。
俺はそいつに食われたわけじゃなく、むしろそいつを鎧として体に纏っていた。
「な……体が軽い?」
重騎士のような装いの自分に気づき、体を動かすと普段より体が軽い。重鎧を着ているようなものなのに、むしろ生身でいるより体が軽いなんておかしい。
「言ったろ。
俺様との相性が良いって。
今日からお前は俺の相棒な! 名前はなんてえんだ?」
「リオンだ……」
先ほど喰われたと思ったこともあってか今いち味方と言う感に欠けているが、俺は最強の鎧……前世の課金アイテムを手に入れたのに違いがなかった。
だが俺の記憶の中の鎧はもっと禍々しく大きかった気がする。今の鎧は重騎士程度しかないのはおかしい。
「言いたいことはわかるぜ。
今はパーツが欠けていてまだこの程度しか力が出せないけど、欠片を集めてくれれば俺はもっと相棒の役に立つよ!
俺様の完全体はもっとすごいんだ。
俺様は鎧になって相棒を助ける。相棒は俺様の欠片を集める。
両方に得のある話だろ?」
「鎧の割に真っ当なこと言うじゃないか。
だがその提案には賛成だ。
お前が強くなればそれも俺のためにもなるしな」
「そう言うことさ。
それより! 俺様のことを鎧なんて呼ぶなよ。
俺様にも名前があるんだ」
「名前なんてあるのか? 鎧でいいじゃないか」
「ダメだ!
ブレイブだ、ブレイブって呼んでくれ」
「わかった、ブレイブな」
「ああ! 今後よろしく頼むぜ、相棒!」
こうして、俺とブレイブの奇妙な共同生活が始まった。
今日はまず五話分投稿します。
その後一定期間ごとに一話ずつ更新します。