なお、事情によりオリヴィアはハーレムルートを選んでいることになっていますw
共和国については、この後話には出さないつもりなので無難な形で終わらせました。
ブレイブと静かな声で前世と皇帝について話をしていると、俺の部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「誰だ? 鍵は掛けてない、空いているぞ」
「失礼します」
ノックをしていたのは、今朝案内をしてくれたメイドだった。
「皇帝陛下からの直接の言伝です。
一刻後に、任命の儀の際の控室に一人で来るようにとのことです」
それだけ言い終えると、ではと俺の話を聞かずにメイドは去ってしまう。
言伝の相手は皇帝陛下だ。俺の返事を聞く必要はない言われているのかもしれないがせめて軽い質問くらいには答えて欲しかった。
「相棒、来いってさ……行くつもりか?」
「ああ、そのつもりだ。
罠かもしれないが、このタイミングで俺をハメるくらいなら皇帝の権力を使って俺を騎士殺しの大罪人に仕立てることだってできたはずだろ?
それがないってことは罠じゃないってことさ。
本当は罠なのかもしれないけど、いざって時のためにお前は控室に入らず待機しておいてくれよ」
「わかったぜ。
何かあったらすぐ助けに行くからな。
相棒も危険を感じる前に俺様を呼べよな」
わざわざ一人でと釘を刺してくるくらいだから、俺一人で来ることを望んでいるのだろう。
もしかしたらブレイブを感知する方法があるのかもしれない。
下手にブレイブを伴って行って、翻意の気ありと判断されても困る。
よって俺は一人で行くことにした。と言っても、控室のドアの前にはブレイブが隠れているから、実質一人じゃないんだけどね。
控室の前についた俺はドアをコンコンとノックする。
「入りたまえ」
すると中から声がした。あの時の声と同じだ。
声に従って中に入ると騎士任命の儀の時にいた皇帝がいた。
服装はあの時の儀礼用の物とは違っていたけれど間違いなく本人だ。
「皇帝陛下に置かれましては……」
俺はかろうじて覚えた拙い言葉を使おうとしたが、
「ああ、そういうのはいい。
と言うより、もうわかっているんだろう?」
そう遮られた。
「じゃあ、口調を崩させてもらう。
あんたは俺と同じ前世の記憶を持つ者。
それであってるか?」
「ああ、その通りだ。
まさかわしと同じ転生者が存在するとは思わなかった。
ブレイブを手に入れていたから、もしやと思ったのだ。
正解だったようだな」
テーブルの上に置かれた紅茶を飲みながら、皇帝陛下……いや、この場では皇帝でいいだろう。は笑っている。
「改めて聞くが何の用だ?
ただ転生者同士、転生前の世界の話に華でも咲かせようってわけじゃないんだろう?」
「もちろんだ。
まあ、仲良くしたいと思っているのは事実だが。
今回お前を呼んだことには理由がある。
お前は前世のゲーム、アルトリーベを当然知っているよな?」
ブレイブは皇帝の言ったアルトリーベでの課金アイテムだった。
当然課金アイテムと言う言葉に反応してここまで来ることになったのだから、知っているに決まっているのだが。
「ああ。妹にやらされたからな……あんなゲームやりたくなかったが‥…」
俺は前世で妹に無理やりやらされたゲームの事を思い出した。
妹はクリアできずに困っていたゲームを俺に押し付けて旅行に出かけてしまった。俺はとある事情によりそのゲームをクリアせざるを得ず、貴重な休みを使ってクリアし……そして過労の結果死んでしまった。
細かい部分は省くが、このゲームに対して全く良いイメージはなかった。
「ふむ。
アルトリーベは複数作あるのだが、どこまで攻略した?」
「は? そんなに出てるのか?
俺は一作しか攻略してないぞ?」
「そうか。わしは都合により、3作目までクリアしている。
今回お前を呼んだのはその3作目の話をするためだ。
アルトリーベはクリアできないとどうなるかわかるか?」
アルトリーベはクリアできなかったとき、バットエンドになる。
バットエンドはそのほぼ全てが世界の破滅に繋がっている。
つまり、放っておけば世界破滅の可能性があるということだ。
「ああ……。
せっかくの二回目の命だ。無駄にはしたくない。
世界崩壊だけは回避したいね」
「その話が聴けて良かった。もちろんわしも同じ考えだ。
つまり、わしたちはバッドエンドを回避して世界破滅を回避することに力を注ぐ仲間と言うわけだ。
では改めておさらいだが……」
帝国皇帝はそう言うと、皇帝がまとめた1作目,2作目の資料を基におさらいを始めた。
1作目はこの世界の王国が舞台。
後に聖女として覚醒する少女、平民のオリヴィアが特待生として貴族の学校に通うところから話が始まる。
オリヴィアは5人いる攻略対象と恋愛し、共に王国に攻めてきたファンオース公国と戦うと言うストーリーだ。
アルトリーベと言うゲームとに関しての話については全く同じ認識だった。しかし……、
「この世界のオリヴィアは、攻略対象の5人全員と婚約を結んだ。
どうやらハーレムルートを選んだようだ」
皇帝は深くため息をついた。
オリヴィアを操作することになるプレイヤーが望めば、確かにそういうルートを通ることはできる。
攻略対象の好意度が上がるイベントを、針の穴を通すような正確さで全てこなし、それでやっと達成できるのがハーレムル―トだ。
そんな現実的ではないルートをなぜ通ることができるのか。それはオリヴィアも転生者かもしれない、そういう事実を示していると思ったのだが。
「言いたいことはわかる。だがオリヴィアは転生者ではない。
本当に偶然なのだがなぜかハーレムルートを選び、攻略できてしまったんだ」
「どうしてそんなことがわかる?」
「世界が破滅しては困るからな。
帝国からスパイを複数侵入させ、オリヴィアの情報を掴んでいる」
皇帝陛下もなかなか苦労が絶えない性格らしい。
確かに世界破滅の可能性を知っている身……しかも帝国皇帝と言う、それを止めることもできる地位にいるなら、俺も同じことをしたかもしれない。
「その話を聞く限り、もう過去のことなんだよな?」
「ああ。今話しているのは彼らが学園の一年生の時の話だ。
今はそこから二年が経っている」
つまるところ、1作目の破滅の未来は無事回避されたと言うことだ。
俺はホッっとするも、あの時ゲームで散々苦労させられた攻略対象5人の無謀な行動や、何度もゲームオーバーにさせられた黒騎士のことを思い出した。
ちょっとのミスですぐゲームオーバーになってしまう、アンバランスなあのゲームが現実の世界となったなら……間違いなく、どこかうまくいくことがなかったのではないか?
「うむ……本当に不思議なのだが……。
オリヴィアは攻略対象5人の力を上手く引き出していた。
逆に考えれば、ハーレムルートを通り5人の力を合わせなければ世界は破滅していたのではないかと思うよ」
結果として良かっただけのことかもしれないが、ひとまずほっとすることにした。
まだ話は1作目の段階だ。今の時点で疲れていてはこの先には進めない。
2作目、3作目の話が控えている。
「では続けるぞ。
2作目は、王国の隣にある共和国の話だ。
お前は1作目しかクリアしていないと言う話だったな」
共和国編では6つの大きな家があり、その家の者たちが共和国を実質支配していると言う。
6つの家は元は7つあって、主人公はその中の滅んでしまった家の末裔だと。
2作目の流れとしては主人公が攻略対象たちと愛を育み、共和国の象徴たる聖樹が暴走したところを倒すと言うことらしい。
「細かい話は後にして結論だけ言うが、主人公は無事攻略者の一人と愛を育み、聖樹を倒したよ。
共和国は協力して聖樹に立ち向かったが、かなりを力を使い弱体化している。
今は新しい聖樹を植えて安定してるようだ。ただ……今の聖樹には元の聖樹ほどの力はない。
世界破滅は回避されたものの、力を落とした共和国は他国からプレッシャーをかけられている状態だ」
どうやらまたも世界破滅の未来を回避できているらしく、ほっとする。
しかし世界破滅が回避されたにも関わらず国力が低下したことで周りの国々から、攻められようとされているとは悲しい話だ。
そしてこんなにポンポン世界の破滅が訪れる世界ってどうなんだと思うが、一番苦労しているのがきっとこの皇帝だろう。
労ってやりたいと思った。
「あんたも大変なんだな……」
「まあ、な……。
で、2作目も終わって今度は3作目なわけだ」
ここでいっそう皇帝の顔が真面目になる。
3作目の舞台はまた王国に戻るらしい。
主人公はなんと帝国からの留学生とのことだ。
この留学生、平民なわけだが……実は今目の前にいる皇帝の血を引いた者らしい。
しかも皇帝の血を色濃く受け継いだ唯一の人物だと言う。
皇帝の血を継いだ者は他にもいるが、どうしても他の貴族の血を濃く継いでしまったことで跡取りとしてふさわしくないとされている。
「お前には是非3作目の主人公と一緒に王国に留学し、世界の破滅を回避して欲しいんだ」
「は?! なんて俺がそんなこと!」
「頼む! こんなことお前にしか言えないんだ。
誰が前世のゲームのことなんて話して信じてくれるだろうか」
確かに皇帝の言う通りだ。
俺だって誰にも信じてもらえないと思って誰にも話してないし、唯一伝えたブレイブにだって今だ半信半疑に思われている。
それに何より世界の破滅を運に任せたくない。そういう思いもあった。
「もしかしてそのために俺を騎士にしたのか?」
「お前を騎士にしたのは間違いなくわしがお前を転生者だと思ったからだと言うのはある。
だがお前の実力が本物だった、わしが手を下さなくても騎士になれた可能性は高かった。
ところが城の中にはお前を騎士にすることに反対の者も多かった。
しかし、だ。わしは半ば無理やりお前を騎士にした。
わしがそれほどまでにお前にわしの代わりに頑張ってもらいたいと思っていることをわかって欲しい」
「それはわかった。
正直な気持ち、騎士にしてもらえたことはありがたいと思ってるよ」
「うむ。しかし、王国に行くには今のままではダメだ。
お前自身が留学するのではなく、我が娘の護衛騎士と言う形でなければならん。
中級騎士以上の騎士に限り護衛騎士と言う専属の騎士になることができるのだが、お前には周りを説き伏せるため中級騎士ではなく上級騎士になってもらう」
「護衛騎士になるのに条件があるのがわかった。
しかし……無理に騎士に任命した結果、周りを説き伏せる材料が必要とはな」
「それについてはこちらの力が足りなかったと謝っておこう。
ただわしは心配してはおらんぞ。何せお前はすでにブレイブを持っているからな。
上級騎士に上れるような場はこちらで整える。
だからお前はしっかりと力をつけて、上級騎士にふさわしい実力をつけてくれ!」
俺と皇帝の話はこの後も一時間以上続いた。
そして俺は皇帝からの頼みを了承せざるを得なかった。
毎回三日後の19時更新と言う形にしていますが、それを楽しみにしてくれてる人がいたらいいなーと思います。