リオンとブレイブ   作:駿州山県

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帝国で生まれてもリオンはリオン。


12話

 

決闘のルールが決まった。

決闘は5対1で行う。武器は模擬戦にて使用可能な物を使用。下級騎士はまだ鎧を与えられていないため、俺に限ってブレイブの使用は不可能だ。

勝ち負けの判定については、俺と相手側で異なる。

俺側の場合は、気絶,骨折などによる戦闘続行不可,負けの宣言により即座に負けが決定する。

勝利条件は相手5人全員を敗退に追いこむことである。

相手方の場合は、気絶,骨折などによる戦闘続行不可,負けの宣言,により敗退したとされる人物は即座に決闘の場から離れること。

5人全員が上記の状態になった場合、負けが決定。

勝利条件は、俺一人を負けに追い込むことである。

 

「おい、相棒。

 随分こっちに不利な条件をつきつけられたが大丈夫なのか?

 俺様だって手伝えないんだぞ」

 

誰に判断させても俺に不利な条件であるが、俺には負ける気はないし負ける要素もゼロだった。

 

「ブレイブはまだまだわかってないな。

 良いか、戦いって言うのは戦闘が始まる前から始まってんだよ。

 そして勝ち負けと言うのも戦闘が始まる前から決まってるんだ」

 

「何言ってんだ?

 戦闘が始まる前から勝ち負けが決まっているわけないだろ。

 そりゃ、俺様が相棒に力を貸せば万が一にも負けるなんてことないけどな!」

 

「頭が固すぎんだよ。

 今回の決闘で、お前にそういう戦い方を見せてやるよ」

 

「ま、俺様と一緒に鍛えた相棒が負けることは思ってないけどな!」

 

ブレイブは最強の鎧だ。間違いなく纏って戦えば、敵となる相手はいないだろう。

だがそれ故なのか、戦略,戦術と言うものに極端に疎い気がする。

今回のことはちょうどいい、最強の鎧を纏っていても負けることがあると言う危機感を覚えてもらおうと思う。

 

決闘の時間になる。

今回の決闘については、騎士と一部の人間のみが観戦できると言うことで、騎士同士の戦いをあまり見ることもできないこともあり、貴族や一部の皇族らしき人物も観戦していた。

ただしブレイブが存在を感知しているだけで、俺からは見ることはできない。そういう特殊な部屋から観戦しているようだった。

 

「両者、使用する武器はすでに検閲済である。

 決闘で死ぬことはほとんどないが、死に至る事故になることも稀にある。

 危ないと思った時点ですぐに負けを宣言するように」

 

今回の審判役を務める騎士三人の内の一人がそう告げる。

模擬戦用の武器と言っても、打ち所が悪ければ当然骨折するし頭部などに受ければ死に至ることだって多い。

よって、無理はしないように……もっと言うと悪意を持って相手を殺さないようにと言っているわけだ。

俺は相手を殺すつもりなんてないから問題ない。

ただ……こいつら、可能性的に他の貴族から指示を与えられている可能性もある。

例えば、騎士になる試験で俺のエリアの担当だった元騎士の実家からだとか。

よって警戒するに越したことはない。最悪、ルールを破って襲ってくることだってありえるわけだ。

 

審判役の騎士からの話が終わり、俺と相手方は離れる。

俺の武器は鞘に収まった特殊な大剣だ。今日のために特別に作ってもらった。

ちゃんと武器は検閲されているので、使用しても問題ないと言う帝国からの御墨付きである。

相手方は全員同じ片手剣の武器を使うようだ。

 

「では、始め!」

 

開始の合図により決闘と言う名の戦闘が開始される。

俺は大剣を肩に担いだまま動かないが、相手方5人は広がるように移動しながら俺一人に向かって突っ込んで来る。生身の速度ではないので、全員身体能力を向上させる何かを使っているのに間違いない。

だが俺は慌てない。予想の範囲内の出来事であるからだ。そのままの姿勢で相手が近づいてくるのを待つ。

そして後3メートルほどの距離になったところで、俺は大剣を鞘に入れたまま右脇に抱え、先端を左手で添えて正面の相手に向ける。

突如、正面の相手が吹き飛んだ。

まだ3メートルの距離があり、打ち合いをしているわけでもないのにかかわらずだ。

当然残りの4人はその事実に気づき驚くが、そう簡単に止まれないし止まるわけにもいかない。

俺は一人目を倒した後、すぐにバックステップで距離を取り、次の敵に向けて鞘の先端を向ける。

鞘の先端からは模擬弾が発射され、避ける間もなく相手に当たりまた吹き飛ぶ。

流石にこいつらも気づいただろう。俺が使っているのは大剣ではなく、そのような形をした模擬戦用の銃だ。

当然弾は殺傷の要素がない模擬弾であるが、ゴムで出来ている割にかなりの威力があり相当の痛さである。

銃を持っている相手に真っすぐ突撃をするということは悪手中の悪手であることは誰でもわかることだ。

騎士ならなおのことで、こいつらは今になってやっと自分たちがその悪手をしていることに気づいたらしい。

しかし気づくのが遅い。俺は三人目を同様の方法で吹き飛ばす。

決闘の開始足らずで戦闘継続可能な人間が残り2人になってしまった。

しかも俺はその間バックステップを繰り返し、相手との距離を3メートルから詰めさせようとしない。

残り二人になったところで、相手が左右にステップを踏みながら近づこうとして来る。

ジグザグに進むことで狙いを定めさせないとつもりなのだろうが、無論それも想定している。

俺は弾を単発式のものから散弾式のものに変える。

一球の威力が下がるが広範囲に当たるため、命中率が上がる。また、複数の弾が一度に当たればダメージもそれなりである。

俺はそれを相手が移動する真ん中あたりを狙って撃つ。

全ての弾が当たることはないが、半数に満たないほどの弾が当たり相手は地面に倒れ込んだ。

足にでも当たれば、このようなことになる。そして後一人だ。

俺は最後の一人に銃を向けると、相手は駆けるのをやめていた。

 

「貴様、卑怯だぞ!

 騎士なら騎士らしく剣で戦え!」

 

どうやら舌戦をお好みのようだ。

 

「騎士らしく? 何を言ってるなお前は。

 戦争で同じように負けた時も同じことを言うつもりか?

 良いか。負けは死と同一なんだよ。

 それに卑怯って言うならお前らのほうが卑怯だろ」

 

俺はそう言いながら、俺の銃によって倒された奴の一人を撃った。

 

「い、いてぇーっ」

 

隙だらけのところを模擬弾で打たれたのだからさぞ痛かろう。

俺の行動を見て観戦していた貴族,そして騎士たちが驚いていた。

 

「なんだあれは……」

 

「負けた相手に追い打ちをするなど騎士として不道徳ではないのか?」

 

「いや、むしろ負けた相手を攻撃するなどルールを破っているだろう。

 審判! あれはどういうことなんだ!」

 

俺を責める声が聞こえる。それで自分が有利になったのだとでも思ったのだろう。

残った一人の相手がニヤと笑顔を浮かべた。

 

「審判! 負けを認めたのは何人だ?

 現在、戦闘続行可能な人数は?」

 

俺は辺りの声を打ち消すかのような大きな声でそう審判役の騎士に聞く。

 

「現在負けを認めたのは0人。

 全員戦闘続行可能と判断!」

 

審判役の騎士は俺に負けず劣らず大きな声でそう叫んだ。

つまり、この倒れたやつらは倒れただけで負けと判断されていないわけだ。

それにも関わらず倒れたことで、負けたと思わせている。最悪近づけば不意打ちをくらわしてくるだろう。

 

「わかったか! そう言うことだよ。

 こいつらはまだ負けちゃいねーんだ。俺が近づいたり隙を見せたら不意打ちをくらわすつもりだったんだろうよ。

 ほらほらほらほら、早く負けを認めねえよ続けるぞ!」

 

俺のことを卑怯と言いつつ自分たちのことは正当かしようとするこいつらの行動を暴露しつつ、俺はまだ負けを認めていない戦闘続行可能な一人に銃を撃ちまくった。

 

「いっ、痛いっ! わかった! わかったから!」

 

ただし俺は撃つのをやめていない。俺が撃つのをやめるときは、こいつが負けだと認められた時だ。

 

「やめてくれ! 頼む! 負けだから、俺の負けだから!」

 

ようやく負けを認めたので、そいつのことはこれ以上撃つのをやめてやる。

何しろ俺は心が広いからな。例え俺をだまそうとしてきた相手だとしても、負けを認めたなら許してやれる心の持ち主だ。

そして銃を次のやつに向ける!

 

「許してくれ! 負け、負けだ!」

 

最初に俺に撃たれまくったやつを見ていたからか、俺に銃を向けられたやつらが次々と負けを認めていく。

結果的に残ったのは、俺に銃を撃たれていない最後に残った奴一人となった。

 

「で? あんたはどうするんだ。

 早く負けを認めた方が得策だぜ」

 

俺がトリガーに指をかけた状態で、相手を威嚇する。

 

「クソ野郎……俺はてめえになんて負けを認めねえ!」

 

しかし相手も、きっと背負っているものがあるのだろう。

俺に片手剣を向けると、その刀身部分……模擬用のはずだったが、それが飛び出た。

それは銀色をしていて間違っても模擬戦用の武器ではなかった。

武器は全て帝国で検閲済みだったはずだ。見抜けなかったか、もしくは貴族の横やりが入ってそれを見逃したか……。

俺は飛んできた刀身をとったのことで銃で受けた。我が身を守ることはできたが、おかげで銃は使えなくなってしまった。

 

「勝機!」

 

銃が使えなくなったことでそれをチャンスと思ったのだろう。

残りの一人が素手で俺に向かって来る。刀身のなくなった武器はすでに捨てているようだ。

 

「バカか。

 お前らなんて1対1なら最初からわけなんてねーんだよっ」

 

しかし侮ってもらっては困る。

俺はブレイブと一緒に何十、何百と言うモンスターを倒し、魔素を吸収してきたのだ。

1対1でただの下級騎士に負けるなんてことはありえない。

勢いよく突っ込んできたこいつを横身になりながら躱し、背中に肘を打ち下ろす。

 

「ぐがっ」

 

肘が強く当たり、肺の中の空気が吐き出される。

地面に這いつくばるように倒れ込み、俺はその背中に向けて足を置いた。

 

「負けを認めねーんじゃしょうがないよな。

 俺も別に痛めつけるのが趣味なわけじゃないけど、負けを認めないんじゃしょうがないよなー」

 

足に力を入れながら、笑顔でそう言ってやった。

 

「負けだ! 俺の負けだ! 助けてくれ! 頼む!」

 

先ほどまでの勢いは、まだ策があったからのことだったのか。

もう策もなくなった相手は素直に負けを認めた。

 

「この決闘、騎士リオンの勝利!」

 

負けの声を聴いた審判役の騎士が片手をあげ、辺り全体に伝わるような大声で勝利の行く末を告げた。

 

 




次は三日後、8月10日(水)の19時に更新ですー。
この話は大体30話くらいまで続く予定です。
後数カ月続くことになりますので、お付き合いよろしくお願いします。
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