「リオン様。
先日の決闘にて下級騎士の中でも上位の者を複数同時に相手にした戦いが見事だと、観戦なされていた皇帝陛下より中級騎士への昇格が指示なされました。
本日中に中級騎士の中で事務を請け負うものより褒美などを含め話があります、是非時間を空けておいてください」
いつものメイドさんがノックをして部屋に入ってくるなり事務的な口調で話し出す。
ことは先日の決闘騒ぎに対する褒美だった。
俺はてっきりあの騒ぎをほぼ私闘とみられて降格だと思ったのだけれど、皇帝陛下がやってくれたらしい。
皇帝陛下は言っていた、上級騎士に上れる場はこちらで整える、と。
もしかすると下級騎士複数を俺に炊きつけたのも、皇帝陛下の差し金だったのかもしれない。
ぶっちゃけ相手の性格が悪かったこともあってたたきのめしてスカっとしているので、問題ないと言えば問題ないわけだが。
「騎士リオン、昨日の戦いは私も見させてもらっていたよ。
銃を使うとは思い切ったことをしたね」
先ほどメイドが言っていた、事務を請け負っている中級騎士の元に呼ばれて行くと、とても気の良いおっさんがいた。
騎士と言うより、事務方の人間にしか見えず戦いも行っていないのではないかと思える。
「君が思っている通り、私は騎士としては異例の人間でね。
物資の調達や補給、書類仕事を主に担当しているんだ。
騎士が書類仕事だなんて不思議だと思うかい?
まあ、他の国にだって騎士の中には私のようなものがいるものさ。
おかげで実力がないのに中級騎士にさせてもらっているからありがたいね」
確かに騎士が何かすれば当然金がかかる。
訓練用の装備や、設備の整備だってそうだ。
壊れた者には修復が必要だし、遠征に出ようとすれば遠征費用だって必要になる。食料の見積もりからその他持っていくアイテムを揃えたりなど、やることは多いはずだ。
それを全て一手に引き受けている。例え騎士として二流,三流であろうとも彼が騎士として必要であるのは間違いなかった。
「で、だ。
中級騎士になると得られるものが2つある。
1つは鎧だ。
帝国が持つ最強の鎧の1つを本来なら君にも与えることになってるんだけど、陛下から聞いているよ。
君はすでに持っているそうだからこちらは不要だね」
ブレイブはあるけどもう1つ欲しい! と思うが、流石にそうはいかないのだろう。
騎士の中でも中級騎士以上にしか渡せないと言うことは、帝国でも数多く……有り余るほどは残ってはいないのだ。
仕方ない、諦めるしかない。
「もう1つは名前だ。
中級騎士は正式な騎士として扱われ、ルタと言うミドルネームが与えられるんだけど……。
君は平民の出身だったね? 陛下より、今はなき武の名門へリング家の名前を与えるように言われているよ。
今日から君はリオン・ルタ・ヘリングを名乗りなさい。
そして貴族同等の権力と地位を得たことをここに告げよう」
「はっ。謹んでお受けいたします」
現代人の俺からすると、ミドルネームをもらっても何の足しにもならない。
一応、ははーありがたき幸せ、みたいなそこまで大げさじゃないけど喜んでおくけれど、名前をもらっても腹の足しにもならない。
まあ褒美は実質ないけど、もしかしたら何か意味があるかもしれないし、もらっておくことにしよう。
事務のおっさんとはそれだけ話すと、最後に騎士のナンバリングについて話をした。
中級騎士はナンバー11から40までのことを言う。
俺は当然中級騎士成りたてなので、ナンバー40だと言うことだ。
最下位かよと思うけれど、さっきまでが下級騎士の最下位だったことを考えれば異例な出世であることは間違いなかった。
部屋に戻ってベッドに寝転ぶと、すぐさまブレイブが話しかけてきた。
「相棒がまさかあんな卑怯な手を使って勝つとはなー。
何かやりそうだと思ってたけど、まさか銃を使うなんて俺様も思わなかったぜ」
「剣で戦ったってきっと勝っただろうけどな。
だがあんなやつらとの戦いで無茶をする必要なんてないし、銃で戦ったほうが楽だろ?
別に銃を使っちゃいけないなんてルールもないし」
「そうだけどよー。
やっぱ騎士ってのは、剣を使ってこそだろ?
俺を纏う時は銃じゃなくて剣で戦ってくれよな!」
「いや、お前を纏う時は魔法だって使えるから別に銃は必要ないぞ」
ブレイブの魔法はまだ完全ではないと言う本人の話だが、それにしても十分なほど強力なものだ。
当然今日使った銃なんて比べものにならないほど強力なので、銃を使う必要がない。
そのことを教えてやると、なんだよそれー! と黒い球のくせに器用に怒っていた。
騎士としてまだ一か月も経っていないが、すでに色んなことがあった。
トマスへの手紙にはすべてを書くことはできない。
俺は彼には前世のことは話してないし、今回皇帝陛下と話したことは当然誰にも話さない。
それでもトマスに話したいことはたくさんあり、大部分が騎士に対する愚痴なのだけれど手紙は枚数を重ね、なんと書いてるうちに10枚にもなってしまった。