けれど今回は5000文字越え! ってことで勘弁。
「いえ、騎士トレヴァーに呼ばれたなら本望ですよ。
もし今回の討伐に呼ばれなかったら、どうやってついていこうかと考えていましたから」
騎士トレヴァーの悪戯っぽい話に、こちらも冗談混じりで返した。
まあ冗談は1割もなくて9割以上が本気の話なんだけどね。相手からしたら冗談混じりにしか聞こえないから問題ないか。
「本当に君は上昇志向が強い人間だね。
ほとんどの騎士は貴族の派閥に入ってないと、なかなかあがれないと言うのにな」
騎士がどれだけ強いと言っても、一個人の話である。
上級騎士が上級貴族相当の権力を持っていると言っても、結局一人しかいないのであればできることは少ない。
結果的に貴族の派閥に加わらないと何もできないし、何かあった時に助けてももらえないと言うわけだ。
俺のようにブレイブがいて、最悪すべてをなげうってでも生きていける人間でない限りは普通は貴族の枠組みに入ることになるだろうことは想像できる。
「騎士トレヴァーもそうなんですか?」
そこで、普通なら答えてもくれないことを敢えて聞いてみる。
「気になるかな?
まあ私は貴族出身でもないし、個人で動いているだけの人間だよ。
まさか臨時にでも上級騎士になんてあがれると思ってはいなかったから、今までは派閥に属さなくても放っておかれたみたいだけどね。
きっとこの討伐が終わった時には、めでたく勧誘争いに巻き込まれるかな」
騎士トレヴァーは派閥争いに巻き込まれることをなんとも言えない顔で話していた。
中級騎士であれば最悪派閥に入らなくてもなんとかなるのかもしれない。
けれど臨時とは言え現在は上級騎士だ。つまり討伐が終わった時、戦功をあげていれば上級騎士の第一候補になるのは間違いない。
彼女は貴族ではないと言ったが別に上級騎士が貴族である必要なんてはずだ。もしそうだとするのであれば、経歴ロンダリングをすればなんとでもなる。
それより、これほど優秀な人物を皇帝陛下とは違う派閥に入れたくない。
もし可能なら俺と一緒に第三の派閥……第二軍閥とでも言おうか、を立ち上げて欲しいくらいだ。
とは言っても彼女は俺の上司であるし、部下が上司を派閥に誘うのもおかしな話で、そうポンと進むわけもない。
俺が話を聞いて難しい顔をしていたからだろうか、騎士トレヴァーはこちらの様子を心配してくれていた。
「いきなりこんな話をして悪かったね。そんなに心配しなくても、一足飛びに何もかもが変わるわけじゃないよ。
とりあえず君を我が隊に編成したのは、討伐に置いて上級騎士より優秀だってことを認めてるからだよ。
討伐の時には頼りにしてるから」
そう言って一度離れて行った。
ともかく、俺は騎士トレヴァーの隊として討伐に参加することができた。
これでブレイブの欠片を入手しにいくことができる名目を得ることができた。騎士トレヴァーはそんなことを知らないとは思うけど、ありがたい限りだ。
その後俺たちは隊としての簡単な連携訓練を1日だけこなしてから出発することになった。
俺以外の中級騎士は3人いるが、どの人物も当然俺は知らない。
訓練がてら自己紹介をしたのだけど、誰もが貴族から嫌われそうな性格の人間ばかりだった。
「騎士リオンも我々も、貴族様には好かれなさそうな性格をしているな!
まあ上級騎士に上れることもないだろうから、これからもよろしく頼むよ」
うち一人の爽やかな性格の騎士がそう言う。
実力は訓練で推し量ったが決して低くない。その上人格的にも優れているやつだった。
こういう、上に上るべき人間が上れないと言うのは間違いなく帝国としての損失であると思う。
他二人も同様だった。全員が全員平民からの出身だと言うからお察しである。
出発の日、騎士トレヴァーの号令で他の騎士達と共に討伐に旅立つ。
どうやら俺たちは編成されたものの、決して戦功をあげれないようにと一番後ろに配置された。
今回上級騎士が4人も配備されているので、もしかすると俺たちの出番はなく欠片も回収できずに終わるのではないかと思ったのだが、
「大丈夫だぜ相棒。あれだけ欠片が集まってるんだ。
間違いなく向こうも俺様の存在を把握するはず。
いくら他の騎士も魔装を持っているからと言っても俺様とは大違いだ。
だから……俺様を狙って来るはず。
何もしなくても向こうから訪ねてきてくれるぜ」
ブレイブが言うなら間違いないと思う。
おそらく軍務派閥のやつらがわざと俺たちを最後尾に配置したのだろうが、それも徒労に終わるのだと思えばざまあみろだ。
逆に自分たちは最後尾で安全だと思っている隊のメンバーからしたらとても最悪な事実かもしれないけど。
「なあブレイブ、お前分裂とかできないか?」
「できるわけないだろ相棒。
そんなこと出来たらさっさとやってるし、旧人類との戦争だってそれで片がついてたぞ。
相棒のやりたいことはわかる。多少なら俺様の欠片を与えることならできるぜ」
俺がやりたかったことは、ブレイブと同じとまでいかなくても隊のメンバーの魔装を強化できないかを知りたかった。
ブレイブは味方を的と思っているくらい俺以外の人間には興味がなさそうだけど、これくらいのことを考えるくらいには俺のことは理解してくれているらしい。
「それは、どれくらいだ?」
「モンスターの攻撃が俺様に掠って、体が多少削られる分くらいだな。
俺の被害としてはごくわずかになるけど、当然他のやつらの魔装の強化分もわずかだな。
魔素で回復が可能なくらいの小ささだ。
その分け与えた分を回復するのに魔素だって必要になるぜ。
相棒には魔素集めを手伝ってもらうからな!」
途中で隊を抜け出す罰くらい喜んで受けてでもそれくらいはやろうと思えた。
将来自分の仲間になるかもしれないやつらを、こんなことで殺したくはないし。
そして俺たちは団体行動をしつつ、途中途中こっそりと隊を抜け出してはモンスターを討伐し魔素を集めた。
ついでに隊のメンバーの魔装を少しずつ強化した。きっとこいつらはそんなことにも気づいていないだろう。
数日してやっとのことでモンスターがいるとされる場所に辿り着いた。
そこは俺が騎士となる前に大きめの欠片を持っているモンスターを討伐した場所より、はるかに大きな荒れ地となっていた
「これはひどいなんてもんじゃない。災害レベルだ……」
荒れ地を目の前にした騎士の一人がそう言う。
辺り一面土が露出した茶色の景色だ。そこに元はあっただろう木々や緑色の草、水のようなものさえ全く見当たらなかった。
改めてブレイブが暴走したときの恐ろしさを知る。
ブレイブにはちゃんとした知性があり、理性もあるが何かの理由で失くなってしまった場合、これよりもっとひどいことを起こすと思うと少しだけ背中がぞっとした。
「各隊ごとに巡回するように指示があった。
どうやら討伐目標は大きく動き回っているようだ。
我らが指示された場所はこの方角だ。
行くぞ」
騎士トレヴァーの合図で、目標とされた方角に向かう。
「ブレイブ、欠片はこっちの方角にあるのか?」
「いや、ないな。
けれど俺様の欠片がそう簡単に倒されるわけないし、大丈夫だろうぜ」
それに頷いて、隊としての行動に移る。
しかしその約一時間後に、騎士トレヴァーに通信が入った。
「討伐目標を補足した隊がいるようだ。
我々も急いでそちらに向かうぞ!」
ブレイブの言う通り、欠片はこちらにはなかった。
だが発見した隊はすぐに通信で呼びかけたようだ。
そこから一時間ほどして向かった先には、ほぼ俺たち以外の全隊が揃っていた。
すでに攻撃を開始しているようで、俺たちには待機もしくは負傷した騎士の確保と半壊した隊の予備とすると言う指示が与えられた。
だが……。
「討伐目標、急に行動が変化。
こちらに向かって突撃してきます!」
俺たちが戦いの場についてすぐに、欠片が吸収したモンスターの行動が変わった。
ブレイブが言っていた通り、ブレイブの姿を把握したためにこっちに向かってきていると思われる。
「当初の戦術は破棄!
一旦戦場からの離脱を謀るぞ」
騎士トレヴァーの指示で俺たちは隊でその場を離れる。
騎士トレヴァーはそれでも待機と、負傷した騎士の確保を優先しようとするのだが……。
「目標、こちらを追ってきます!」
隊のメンバーのうちの一人がそう告げる。
ブレイブを追ってきているのだから当たり前だ。
「他の上級騎士に問い合わせても意味ないか……。
我らの隊はこれから討伐目標に相対する!
皆離脱をやめ、騎士リオンを先頭に戦闘隊形を組め!
いいか、討伐目標の攻撃は決して食らうなよ」
事前に展開されていた、モンスターの攻撃は魔装を溶かすと言う情報から、決してモンスターの攻撃を受けてはならないと騎士トレヴァーが伝える。
ブレイブなら問題ないらしいが、一応俺も攻撃を受けないようにしようと思う。
すぐに隊形は変更され、俺を先頭にしてモンスターが来るのを待ち受ける。
モンスターの後ろからは他の隊も追って来ていて攻撃を加えている上級騎士の攻撃だ、間違いなくモンスターの損害もそこそこのものだと思うが、それを無視してでもブレイブに向かってこなければならないと言うのは、相当ブレイブを脅威と感じているに違いない。
それとも、元は同じ存在だったことに対する執着のようなものなのか。
「ブレイブ!」
ブレイブの名前を呼ぶとすぐに、ブレイブは現在使える最大の魔法を放つ。
俺の前に複数の魔法陣が出現し、そこから出現した炎の魔法が全てモンスターに向かう。
巨大なモンスターだったゆえに全ての魔法は命中したが、消滅した部分は黒い靄となってもそれほどのダメージを与えたとは思えなかった。
「騎士リオン? なぜそんな複数の魔法を……」
ブレイブを纏った俺の実力……と言ってもほとんどはブレイブの実力なのだけど、それを見て隊の仲間が驚いている。
一人だけ気にもしていないのは騎士トレヴァーだ。彼女は前回の討伐の時に一緒だったし、俺の実力も知っているしな。
ダメージも気にせずこちらに向かって来るモンスターに対し、ブレイブが取り出した大剣を持って俺も向かう。
巨大な鎌のような前足をこちらに向かって振り下ろして来るが、それを最大スピードで前進して躱す。
本当にブレイブしか見えていないのではないかと思うような攻撃だ。
俺は避けた後に大剣で通り過ぎざまにモンスターを切り裂く。決して少なくない大きさが消滅し、魔素をまき散らしていくがそれでもモンスターの勢いは衰えない。
「相棒、こいつ再生していやがる。
一定量の攻撃を当て続けるかしないと倒せないぜ」
「じゃあ他の騎士様にも頑張ってもらわないとだなっ」
俺が与えたダメージだけでは倒せないとなるなら、後は他の騎士達に頑張ってもらうしかない。
この場には実質的な上級騎士も4人もいるのだからせいぜい俺のために頑張ってもらいたいと思う。
通り過ぎた俺にすぐに振り向いて攻撃を続けて来るモンスター。
他の騎士達にも攻撃されているが、他の騎士には細い触手を向けて攻撃している。
だが多くの騎士は近づかないため遠距離攻撃で触手を確実に消していっている。
近接で戦っているのは俺と上級騎士くらいだった。
「そこの中級騎士! 下がれ!」
俺が近接で戦っていることを快く思わない上級騎士の一人がそう言う。
だがモンスターは俺を狙ってきているので、下がることなんてできないのはわかることだろうに。
俺は上級騎士を無視して戦いを続行する。
「この方法はとりたくなかったけどな。
相棒、近接攻撃に集中するぜ」
モンスターはずっと俺に集中して攻撃してくるため、俺は離れても離れても遠距離攻撃をする暇がなかった。
そのためブレイブの提案で近接攻撃だけをすることにした。
ブレイブの体でできた大剣が、魔素の消費によってオーラをまとったように一段階大きくなる。
「魔素を消耗するから、出来るだけ早く片付けてくれよ」
今まで蓄えた魔素を消費してでも攻撃力をあげる。
その大剣でもって、俺はモンスターの体を引き裂き続ける。
すると、先ほど攻撃したときよりモンスターの修復が遅くなった。魔素を消費しての攻撃は間違いなく有用のようだ。
周りの中級騎士達は引き続き遠距離攻撃を続け、上級騎士達も隙を突いて攻撃を繰り出し、2時間ほどそれを続けた結果、モンスターはようやく弱り出してきていた。
「相棒、チャンスだ!
良いか……あのモンスターの腹部分を狙うんだ。
そこに俺様の欠片が集まってる。
そこに穴をあけてくれれば俺様が欠片を吸収する。それで終わりだぜ」
ブレイブの提案に俺は頷き、ブレイブと共にもっと多く魔素を大剣に集める。
もうボロボロになってきている鎌を大きく避けて、相手の懐に潜り込むと大剣に込められた大量の魔素を使って大規模な魔法を繰り出した。
「食らえ!」
巨大な炎のビームのような魔法は、大剣からモンスターの腹に打ち出され大きな爆発となった。
爆発は俺たちも巻き込んでいるが、ブレイブがシールドを張ってくれてなんとかこちらは助かっている状態だ。
爆発の煙で何も見えない状態だがブレイブが感知した欠片を取りに向かうことができた。
「よし、掴んだ!」
ブレイブが触手を伸ばして掴んだ欠片を引っこ抜くようにして引くと、それを合図としてモンスターが苦しみだす。
俺たちが欠片を吸収している姿は煙のおかげで見えない。
しかし苦しんでいるモンスターの姿だけは周りにも見えていて、チャンスとばかりに上級騎士達が合図を出してモンスターに最後の攻撃を加えるべく向かって行った。
欠片がなくなった今、モンスターはその大きな体を万全に動かすことはできず、騎士達の攻撃でどんどんと消滅させられていった。
そして最後は欠片を吸収しきって完全体となったブレイブと、俺の攻撃により消滅させられた。
遅れ更新していることは把握しているので、今日,明日書き溜め予定。
後二回分くらいは元の予定通りの更新にしたいと思います。