頑張ってるアピール!
「騎士トレヴァーの隊が戦功第一位か」
皇帝が軽く笑いながら発したその言葉に、軍務派閥の者達が一斉に声をあげる。
「騎士トレヴァーは臨時で上級騎士をしているとは言え、実際は中級騎士。実力では上級騎士に遠く及びますまい。
他の上級騎士の隙をついて、良いところだけ持って行ったと言うところででしょう」
「中級騎士が上級騎士の実力を越えることなんてできません。
そのためのランキング付けですからな。
一体どんな手をつかったのやら……」
「上級騎士の手柄を横取りしたのではありませんかな?」
誰が聞いても苦し紛れにしかなっていない軍務派閥の意見に皇帝はこう告げる。
「ふむ。
では上級騎士と言うのは4人もいても、中級騎士に後れを取るものだと言うことか。
騎士の制度を根本から考え直さねばならない案件だな。
それとも今の上級騎士は、本当は上級騎士に足る実力はないのではないか?
貴殿らの話を聞いているとそう思えてならないのだが……」
「ぐっ……」
「いや、それは……」
「……」
軍務派閥の者たちは皇帝の言葉に何も返すことができず無言となっていた。
「まあよい。
余は今回の討伐で上級騎士たちが実力でトレヴァー隊に劣っていたと思っているわけではないのだ。
むしろ帝国に甚大な被害をもたらす前によく協力して倒してくれたと思っている」
「その通りでございます」
「流石陛下。
そうです。今回で一番大事なのは、騎士達が協力して強力なモンスターを討伐したということ。
決して1つの隊が優れていたことを示しているわけではありません。
活躍する隊がいてもその裏にはそれ以上のサポートをしている隊だってあるのです」
「騎士トレヴァーの隊が活躍したのは見事でしょう。
しかしその他の上級騎士の活躍があったことも忘れてはいけませんな」
軍務派閥ではない者たちは皇帝のこの言い分、そして軍務派閥の意見に対して間違いなく不服があるはずだ、なのに何も言わない。
それもそのはず。皇帝はこの後の話をメインでしようとしていたからだ。
「うむ。皆も余と同じように思っていれてくれてるようで嬉しい。
だがな……市井の者はどうだろうか?
今回の討伐で一番活躍したのは騎士トレヴァーの隊だとすでに衆知されている。
しかし今回の討伐は騎士全体の活躍であってのことで、一番活躍したとされるトレヴァー隊に特別な恩賞がないと言うのは。
トレヴァー隊に恩賞を出さない理由を疑われないか? 本当に他の上級騎士は強いのかと噂をしないだろうか」
「そんな市井の者の意見など気にしてはなりません!
臣民が皇帝陛下の言葉に異を唱えるなどあってはならないのです!」
皇帝陛下の誘い言葉に、軍務の者の一人が席から立ち上がり力強く反論した。
これはまさに餌に魚がかかったと言うべきだろう。
「よく言ってくれた、わしもその通りだと思う。
だが余としてもわかりやすい形で今まで帝国のために戦ってくれた上級騎士達に報いたいのだ。
臣民がそのように上級騎士達の実力を疑うことは余の思うところではない。
ならば前に話のあった、騎士達の選抜模擬戦を実現させてみるのはどうだ。
この選抜模擬戦で上級騎士達を活躍させることで、今回戦功一位とならなかった他の上級騎士の溜飲が下がると思うのだ」
皇帝が明らかに軍務派閥に有利な発言をしたにも関わらず、勢いづいたのは軍務派閥意外の者達だった。
「実力で優りながら、戦功を逃した他の騎士への素晴らしい配慮になりますな」
「今まで隠れていた騎士たちも実力を示す場となることでしょうな。
実力があるものはその実力を示すことで一層評価され、また今まで正当な評価を受けていなかった者はここで評価を受け昇進もできる。
素晴らしお考えです」
軍務派閥の者達はここまで言われて初めてしてやられたと思った。
しかしこれを拒否したとあっては、では他の上級騎士たちは実力がないから参加できないのかと言われることになる。
今の上級騎士達は彼ら軍務派閥の者達が選んだのだ。それを否定されると言うことは、彼らの能力を否定されるも同然だった。
「皇帝陛下の良きように」
軍務派閥の一人がそう言ったのを皮切りに、一気に皇帝が会議を終わらせる。
「では一か月後だ、選抜模擬戦を開くぞ!
どうせだ。市井の者達にも上級騎士の強さと言うものを目の当たりにしてもらおう」
こうして上級騎士,中級騎士を巻き込んだ選抜模擬戦が決まった。
「と言う話が会議にて決まりました」
いつものメイドさんが俺の部屋でそう教えてくれた。
このメイドさんは気づけばいつも俺の部屋の前にいる。
何かあればすぐ報告してくれるのは嬉しいのだが、俺が部屋にいるタイミングを狙ってそこにいるのは監視されているのではないかと思えて怖い。
「で、陛下から何か俺に言伝が?」
「場は整えたぞ、とのお言葉です」
前に言っていた、俺が上級騎士……それも序列一位に上がるための場を準備したと言うことであることは間違いない。
もし今回の選抜模擬戦で俺が圧倒的強さで優勝をすれば、なぜこれほど強い人物を上級騎士にしないのかと言う話があがるに違いない。
この話を軍務でもみ消そうものなら市井の民たちは軍務の者に疑いをかけるに違いないのだ。そのための選抜模擬戦であり、市井の民の観戦だ。
メイドが必要なことを告げ終わり、部屋を去るとブレイブが出現して俺に話しかけてきた。
「相棒、俺様はもちろん問題ないぜ。
完全体となった俺様の強さを知らしめるチャンスだ」
念話でそう伝えてくるブレイブはやる気まんまんだ。
と言うよりせっかく完全体となったのに力を発揮する場がないために、力を余しているようだ。
「やりすぎて、上級騎士にあがるどころか翻意を疑われるようなことはしてくれるなよ?」
「俺様が悪いんじゃない。
弱いやつらが悪いんだ。俺様が強すぎても問題ように相棒がしてくれたらいいんだぜ」
ブレイブが言っていることは、ブレイブが強すぎてもそれは上級騎士序列一位だから当然だ。と言う風潮にしてほしいと言うことだと思う。
実際、皇帝陛下もきっとそれを望んでいるだろう。
騎士と言う両親の夢だが、とうとうここまできた。後少し……手を伸ばせばその序列一位が手の届くところにある。
俺はその夢を現実のものとするため、ブレイブと更なる魔素の収集を行った。
そして選抜模擬戦の当日になった。
一カ月の間、俺とブレイブは休みの日にひたすらモンスターの討伐を行った。
おかげで完全体となったブレイブの動きにバッチリついていけるようになったし、能力の把握も済んでいる。
はっきり言って誰にも負ける気はしないと思えるほどだった。
しかし今回の選抜模擬戦だが、あの後軍務派閥の者達に多少の変更を加えられていた。
ブレイブの欠片の討伐前に負傷した騎士達も復帰した今でも、選抜模擬戦に出ることのできる上級騎士,中級騎士は全部で本来の50名には満たない。
その上全ての試合を市井に観戦させるように準備するのはとても大変で金がかかることであったため、予戦と本戦に分けられることになった。
本戦に出場することができるのは16名で、そのため予戦は約4人一組で行われる。
予戦を勝ち抜いた者が本戦に出場できるというものだ。
軍務派閥のやることだ、当然今の上級騎士や彼らが懇意にしている貴族の息子たち……その中級騎士は、バラバラの組にされている。
その反面、軍務派閥に反対する権力者たちの息子たちは、皆揃って同じ組にされている。
そして俺がいる組にも、先日一緒の隊になった騎士トレヴァーがいた。
「騎士リオン。
どうやら同じ組になってしまったようだね」
俺と同じ組になると言うことは騎士トレヴァーは本戦に出ることができないと言うことだ。
「そんな顔をしないでくれ。
今回君に会いに来たのは、戦う前に親交を深めに来たとかではないんだよ」
「ではなぜ?」
「辞退しようと思ってね。
ほらそんな顔をしないでくれ。
私自身はそれほど戦闘力が高いわけじゃないんだ。
それは君もわかっているだろう?
だから頑張っても本戦には出れないだろうと最初から思っていたんだ」
騎士トレヴァーの言い分は正しいだろう。
だがブレイブによって他の魔装より多少強化された彼女の魔装であれば、俺や他の上級騎士と当たらなければ本戦に出られたかもしれないのだ。
「本当にそれでいいんですか?」
「もちろんだよ。
それに、君はもう忘れてしまったのかい?
君が序列一位になったら、私を引き上げてくれるんだろう?」
「はは……負けられない理由がもう1つ出来ちゃいましたね」
「1つ目の理由を聞きたいところだけど、そういうことで私は辞退するよ。
君の試合、他の仲間と共に応援させてもらうから。
頑張ってくれ」
俺の組は騎士トレヴァー意外にも、あの時のトレヴァー隊にいた者達が組み込まれていた。
トレヴァー隊のせいで今回のことになったのだから、わかりやすすぎる嫌がらせと言うことだろう。
しかし騎士トレヴァーだけではなく他の騎士たちも戦いを辞退した。
「俺は割と中級騎士ってのが性に合っててさ。
本戦は騎士リオンに譲るよ」
「俺は騎士リオンが他の上級騎士達をバッタバッタを倒すのが何よりの楽しみなんだ。
酒を持って応援しに行くから、美味い酒にしてくれよ? 頼むぜ」
変な冗談だがそれでも応援してくれてるのは本心だとわかる。
俺は彼らの思いを背負って戦うことを決めた。
当初のスケジュールに対し遅れているので、巻きで更新していきます。