リオンとブレイブ   作:駿州山県

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帝国の剣聖、リーンハルトが話にインしました。


19話

 

他の全ての予戦が終わりようやく本戦だ。

軍務派閥の思い通り上級騎士たちは全て勝ち進み、また本戦出場の16人に残った他の者たちも軍務派閥の息がかかった者達だということだった。

俺を抜かすほとんどが軍務派閥であるのに対し、一人だけ知らない者がいた。

 

「あれは、帝国の剣聖の一族の者ですね」

 

本戦出場前にいつものメイドが俺に話しかけてきた。

 

「剣聖の一族? 今の騎士の中にはその一族の者はいないのか?

 剣聖と呼ばれるほど強そうなやつは見なかったけど」

 

「残念ながら今の騎士の中に剣聖の一族の者はいません。

 剣聖の一族となれば、いつでも帝国に口を利いて子息を騎士に入れられますから何の問題もなかったのでしょう。

 彼の実力ですが……はっきり言って上級騎士レベルでしょうね」

 

なぜ今になって剣聖の一族が選抜模擬戦に入り込んできたのか全くわからない。今の騎士の中にもいないんだろ?

だが1つだけ言えることは、全く情報のないこいつが俺の一番の強敵に成りえると言うことだった。

ブレイブを纏った俺に勝つほどの強さはないだろうが、苦戦をさせられるようなことだけは避けたいと思った。

そいつのことを睨みつけるようにして見ていると、こちらに気づいたそいつがなぜかこちらに手を振りながらやってくる。

 

「何の用だ」

 

「嫌だなあ。ただの挨拶ですよ。リオン先輩」

 

こちらが睨みつけていると言うのに、ヘラヘラとしたやつだ。

他の騎士と違って表情が読めないのもあって、余計に嫌な気持ちだ。

 

「僕、リオン先輩と同じ歳なんですけど騎士になったのって今日なんですよね。

 ほら僕の実家って剣聖の一族じゃないですか。あ、知ってました?

 今の騎士の中にとても強い人物がいるって言うんで、実家に頼んで急遽騎士にしてもらったんですよね。

 今までは強いと思える奴なんていなかったから騎士になんて興味なかったんですけど」

 

どうやらこいつの目的は俺のようだった。

強い人物がいるからきたって、ストリートファイトの主人公みたいなことを言わないで欲しい。

これが美少女で強いリオンさんに会いに来ました! って言うなら大歓迎なのだけど。

 

「まあ、俺に当たるまで負けないことだな」

 

「大丈夫ですよ~。

 あんな雑魚共に負けたりしないですって。

 それに……もしかしてこっちは知りませんでしたかね?

 僕、当代の剣聖なんですよね~」

 

この若さで当代の剣聖であると言うことに驚く。

剣聖なんて言う者は、何十年と技術の研鑽を積んだ者がなるものだと思う。

それをこの若い……と言っても俺と同じ歳らしいのだけど、こいつが今の剣聖だと言う。

だとすれば恐ろしいほどの才能だと思った。アルトリーベの中にも剣聖の息子はいたけれど、あいつなんかとは比べ物にならない。

いつかはあのトラウマ級の黒騎士くらい強くなるのではないか、とそう思えた。

 

「じゃ、先輩こそ負けないでくださいよね~」

 

最初から最後まで緩い感じのやつだった。その実力はともかく、何を考えているのか見抜けないところがある。

だがようやくいなくなったと思ったのになぜか急ぎ足で戻ってくる。

 

「言い忘れました!

 僕、リーンハルト・ルタ・キルヒナーって言います。

 もしリオン先輩が勝ったらリーンって呼んで良いですよ」

 

それだけ言い直すとリーンハルトは去って行った。

だが彼は軍務派閥の人間でもないらしく、軍務派閥の人間達がいるところとは別のところへと向かって行った。

 

 

 

「第一戦、開始!」

 

いよいよ本戦が開始となった。

本戦はトーナメント方式で、第一戦で戦うのはあのリーンハルトだ。

俺はリーンハルトとは全く反対のブロックになったので、戦うことがあるとすれば決勝戦だ。

そして一回戦も8戦目まであるので、俺が戦う6戦目までまだ時間があって観戦にきていた。

ちょうど観戦に来ていた騎士トレヴァーたちと一緒にリーンハルトを見ていたのだが……。

 

「今まで騎士に興味がなかったキルヒナー家が一族の者を出してくるなんて……」

 

騎士トレヴァーはとても驚いていた。

ぶっちゃけ俺は帝国の剣聖のことなんて知らなかった。

なので騎士トレヴァーからできるだけ多くの情報を聞く。

剣聖と言う称号は各国ごとに存在するようで、そのため戦争が起こった時には基本的に剣聖同士の戦いとなるそうだ。

当然剣聖同士の戦いを制した方の指揮が上るため、国の中で最も強い人物が剣聖として扱われるし、剣聖は一族を強く育てようとしているとのこと。

帝国の剣聖は周辺国の中でもかなり強い部類らしく、ほぼ負けなしと言っても過言ではないほどだった。

剣聖の一族は、どの代でも子供を騎士として排出してきていたが……今代に限って出さなかったらしい。

その理由は、すでに帝国の剣聖は代替わりを果たしていて当代の剣聖は13歳の時になったそうだ。つまり、リーンハルトは2年も前にすでに剣聖になっていたと言うことになる。

一度騎士を見に来たのだが、弱いと一言だけ言って帰って行ったと言うのはもっぱら有名だそうだ。

軍務派閥が怒りそうな人物だと思えた。

 

そんな才能の塊でしかないやつが俺と戦うためにわざわざ騎士になりにきたと言うことだ。

しかし、

 

「まあ、俺様の敵じゃないな。

 相棒もそう硬くなるなよ。剣聖の一族ったって、所詮使うのが魔装じゃあな」

 

ブレイブはいつものように楽観視している。

俺はやけに嫌な気持ちになって、それ以上に何かあると感じていた。

突然、観客たちが大声を上げ始めた。それでリーンハルトの試合が始まったのを知った。

リーンハルトの試合は一瞬だった。相手が上級騎士ではなく中級騎士であったこともあっただろうが、勝負は最初の一振りでついた。

 

「弱いなあ」

 

試合を一瞬で終わらせたリーンハルトはそれだけ言うと、審判の判断も聞かずに戦いの場から去って行った。

観客はリーンハルトの強さを見て大喜びだ。

娯楽に飢えていたと言うのもあると思うが、強すぎる存在は英雄と言う形で彼らの夢,憧れになる。

今、リーンハルトがまさにそれなのだろうと思えた。

次々に試合が終わって行って、ようやく俺の出番だ。

すでに互いに戦う準備は万端で、審判の合図で戦いを開始する。

黒い剣を持った相手は、ブレイブの中にいる俺めがけて剣を突き込んできた。

こいつらくらいの攻撃ならブレイブの装甲を突き破ることなんてできないのは知っているけれど、敢えて避けてやる。

 

「トレヴァー隊のやつらは逃げ足ばかり早くて困るな。

 お前らのせいで俺たちは軍務からひどいことを言われたんだ。

 大人しく俺の攻撃を受けてくれないと困るじゃないか」

 

実力で劣っているからトレヴァー隊に負けたのに、その事実を認められないらしい。

そりゃ軍務の人間に怒られもするわな。と呆れかえった。

そしてまた突撃してきたところを避け、こちらは剣を使わずに後ろ回し蹴りを見舞う。

魔装を纏った人間は、動きがロボットのようになってしまう。だがブレイブを纏った俺の動きは滑らかだ。

ブレイブの質量が込められた俺の回し蹴りは、見事に相手の腹の部分に入って相手を大きく吹き飛ばす。

まあこれで終わりとはならないだろう。

俺はここでようやく大剣を取り出した。

 

「手ごたえがねえな。

 相棒、こんなやつ早く倒しちゃおうぜ」

 

相手は仮にも上級騎士であるが、俺と完全体になったブレイブの前ではこの程度だ。

今回の試合では、リーンハルトのようにただ一撃で倒すだけで良い訳じゃない。

俺が強者であることを、市井の目に焼き付けなければならない。

よって俺は武器を持っていなくても、上級騎士より強いと言う一面を見せつける必要があった。

事実俺が上級騎士を蹴り飛ばした時、観客たちは大盛り上がりだった。

相手は再度起き上がって向かってきたが、先ほどのような安直な突撃ではなかった。

最初は油断していたのだろう。自分たち上級騎士のほうが本当は強いと思っていたのもあると思う。

だけど俺を本当の強者だと感じ警戒して向かってきたのだが、無駄だ。

俺は大剣で相手の魔装を破壊した。

布を剣で斬るように相手の魔装は破壊され、俺の勝ちが宣言された。

観客席の方から、騎士トレヴァーたちが手を振っているのが見えた。

 

こうして一回戦は全て終わった。

すぐに二回戦が始まるわけだが、二回戦の初戦は俺の連戦だった。

これまた軍務の奴らが暗躍しているのだろうと思うが、この程度の嫌がらせなら大したことはない。

俺は一回戦同様、最初は武器を使わずに相手をいなし、倒す。

起き上がってきたところを大剣で倒すと言う方法で問題なく倒した。

これで俺はベスト4になった。他の試合を、今度は観客席ではなく控室で見るが……リーンハルトだけが圧倒的だった。

しかも、まだ本気を見せていないような不気味さがある。

準決勝の試合が始まった。先にリーンハルトの方だ。どうやら俺は決勝戦を連戦にさせられるらしい。

軍務の者は俺が勝つくらいならリーンハルトに勝たせないらしい。

 

流石に準決勝まできたのもあり、リーンハルトの試合は今度は簡単には終わらなかった。

だがリーンハルトはどこかふざけているようであり、焦っている相手の上級騎士とは正反対だった。

上級騎士はリーンハルトの斬撃でどんどん削られ、とうとう魔装が解けて負けてしまった。

相手の魔装が解けると、リーンハルトはおもちゃに興味をなくしたように場を去っていく。

もしかするとこの上級騎士もそこそこの実力があったのかもしれないが形なしだ。

次は俺の試合……だったが、どうやらリーンハルトが派手に場を壊したらしく、先に修復が入るとのことだった。

時間は一時間もかからなかった。

 

「相棒。地面に魔素の反応があるぜ」

 

どうやら、先ほどの修復と言うのは嘘のようだ。

本命は爆発の魔法をしかけ、俺を巻き込むことだろう。

試合が始まり、相手は俺をそこに誘導するかのように動く。

 

「小僧。先ほどのように俺を倒してみろよ」

 

きっと俺が爆発の魔法に気づいていないと思っているのだろう。

見え見えの挑発だが、敢えて俺は乗ってやることにする。

 

「ブレイブ、防御頼んだぞ」

 

「任せろ相棒。あれくらいの魔法、屁でもないぜ」

 

ブレイブが屁に理解があったとはなんて、無駄なことを考えつつ俺はわざと爆発の場所へ向かう。

すると相手は魔法を放ち、俺は真下にあった爆発の魔法に巻き込まれた。

想像していたより強力な魔法に巻き込まれ、煙で辺りが見えなくなる。

 

「ざまあみろ!」

 

きっと勝ったと思い込んだのだろう。

だが終わったと判断ができていないのにそれははやいと思う。

俺はまだ煙で見えない間に相手に接近し、ブレイブの作り出した大剣を鎧に差し込む。

他に聞こえない声で、

 

「残念だったな」

 

そう言ってやると、

 

「なぜお前……まだ生きて……魔装も壊す魔法だぞ」

 

どうやら軍務はなりふり構わなくなってきているということを知った。

魔装を壊せるような魔法を仕込んだら、流石にわざとであることはまぬがれない。

それをしてでも俺を排除したかったのだとわかって、軍務は間違いない潰すべきだと思えた。

 

煙がやみ、こちらからも観客席が見えるようになると……まだ残っている俺の姿を見て観客たちが沸いた。

立っているのは俺だけだ。俺に相対した上級騎士は魔装を剥がされ、地面に横たわっていた。

審判により俺に軍配が上がり、その場を去る。

残すは決勝戦のみだ。

相手は現剣聖、リーンハルト。強いやつと戦うためだけに選抜模擬戦に参加した、根っからの戦闘狂だ。

だからと言って俺は油断はしないし、負けることも許されない。

約半刻の休憩の後、すぐに決勝戦が行われる。

前戦が激戦であったなら、たった半刻しかないのかと思っただろうが俺は疲労もしてないしブレイブも調子は良い。

リーンハルトと戦うのに何の問題もなかった。

 

「騎士リオン、決勝戦です」

 

控室でそう言われ、俺はブレイブを纏って戦いの場に向かう。

リーンハルトは魔装を纏った状態で、俺が来るのを待っていたようだ。

 

「やっぱりリオン先輩はすごいな。

 さ、早く戦いましょう。みんなもそれを待ってる」

 

娯楽に飢えた市井の民たちが、俺とリーンハルトの戦いを待っている。

リーンハルトは俺との戦いを待っている。俺も、リーンハルトに勝って優勝するためにこの戦いをずっと待っていた。

向きあい、開始の合図がされるとまずはリーンハルトがこっちにまっすぐ向かって来る。

はっきり言って、リーンハルトと他の上級騎士の戦いは何の参考にもならなかった。

リーンハルトは本気を出していなかったのだ。その証拠に、今現時点でのこの突撃は今までのどの戦いのときより速かった。

 

「相棒、こいつなかなかやるぞ」

 

「そりゃあそうだろう。剣聖らしいからな。

 剣聖なんて大層な名前をもらってんだから、弱かったら困るだろ?」

 

「それもそうだな」

 

けれど俺とブレイブにはそんなくだらない会話をする余裕がある。

リーンハルトはロングソードほどの長さの片手剣を、突進のスピードでそのまま突き込んで来る。

他の騎士ならギリギリ反応できるかどうかと言う速さだ。

だが、

 

「この程度の攻撃ならまだ楽勝だな」

 

思ったほどの強さではなかったことで、ブレイブが俺だけに聞こえるように声を漏らす。

そう、間違いなく上級騎士より強いのだが俺とブレイブと比べたらそこまでは強くなかった。

数度の攻撃を難なくかわし、リーンハルトも俺も一旦離れて元の位置に戻る。

 

「うーん……? おかしいなあ。当たらない」

 

リーンハルトからすれば驚きだろう。今まで圧倒的強さを誇ってきた自分の攻撃が当たらないのだ。

しかも、先ほど上級騎士たちと戦っていた時のように手を抜ているわけじゃない。

本気を出しても当たらないのだ。

 

「その年で剣聖って言うからどれだけだと思えば……まあそんなもんか」

 

これが俺の正直な感想だった。

ならすぐに倒してしまおうか、そう思ったところでリーンハルトの表情が一変する。

 

「はぁ? そんなもんって何さ。

 剣聖の僕が負けるわけないだろぉ」

 

俺の心ない一言でプライドが傷ついたらしい。

先ほどの技術がさえわたったような斬撃から一変して、ただ力任せに叩きつけるような攻撃を繰り返してきた。

感情に任せた攻撃なだけに、呼び動作がわかりやすく避けるのは一層たやすくなる。

しかしブレイブも力を使えなくて暇そうにしていたので、途中で隙を見つけて今度はこちらから攻撃をする。

ブレイブの出した大剣をいとも軽そうに操りリーンハルトの片手剣を跳ね返すと、連続でこちらから攻撃をする。

斬り降ろし、横薙ぎ、突き。余裕そうに……と言うわけではないが、リーンハルトはなんとか俺の攻撃を躱した。

ここだけ見ると、さすが剣聖と言うべきか。

俺の攻撃は彼から見ればまだまだ未熟なものだろう。だから実力差があっても避けられてしまう。

ならば、

 

「ブレイブ、魔法だ」

 

「わかったぜ、相棒」

 

小,中織り交ぜた魔法を10程ブレイブが放つ。

いくら魔装があるからと言っても直撃すればかなりダメージがある攻撃だ。

リーンハルトはそれを力任せに斬り、いくつかは消し去ったものの2・3は魔装に当ててしまっていた。

都度小規模の爆発が起き、戦いが俺優勢に傾いてることを知らせる。

剣で戦えば避けられてしまうので、ちょうどいいとばかりにそのままブレイブに連続して魔法を放たせる。

 

「ちくしょう! なんだよ! 卑怯だろうが!

 お前は騎士だ! 剣で勝負して来いよ!」

 

全く考えが子供だ。

いくら剣聖になった、実力があると言っても考えが子供であっては意味がない。

 

「実際の戦争で、お前相手に剣だけで戦ってくれるやつがいると思うか?

 俺と同じ歳だって言うが、ただのガキじゃねーか」

 

「くっ」

 

先ほどはこちらを卑怯と言ったものの、ブレイブの魔法にどんどん押され無駄な話ができなくなっていった。

そしてとある一撃を正面から受け、吹き飛ばされていた。

その攻撃が致命な一撃となり、この勝負は俺の勝ちで終わる。

魔法はブレイブの力であるが、圧倒的強さで俺が二位のリーンハルトを下したのはこれで周知の事実となった。

今までのような、上級騎士は皆同じくらいの強さと言う話じゃない。

俺だけが、騎士の中で圧倒的に強い。その事実により、俺は間違いなく序列一位に行けるはずだ。

戦いが終わり、観客たちの俺を称える声を聞いて俺は少し高揚していた。

 




思えば19話はすでに書き終わってたのに更新が今になってしまった・・・。
ごめんよ
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