あの後半年がたち、俺は騎士団長としての実績を積み重ねていった。
はっきり言って実績のほとんどは騎士トレヴァーのおかげであることは間違いない。
基本的に俺はふんぞり返っているだけであり、たまに出て来る強力なモンスターを倒すことだけが俺の役目だと思えるくらいだった。
俺いらなくね……?
その頃になると軍務派閥の者達はもう息をしておらず、今まで軍務派閥の者がいた役職は皇帝派の貴族にとって代わられていた。
帝国の中は皇帝派が幅を利かせるようになり、地が盤石となったからなのか皇帝から連絡がきた。
「近々、リオン様を守護騎士に任命するとのことです」
いつものメイドが訪ねてきて皇帝からの言伝を教えてくれる。
忘れもしない一年前の皇帝の話を思い出す。
皇帝の娘……今はその事実を明かされていないが、その娘と一緒に王国に転入して世界を救って欲しいと言う話だ。
「ただし、守護騎士と言うのは本来騎士から名乗り出る者です。
それも誰の守護騎士になりたいと明確に名乗り出る必要があります。
つきましては、リオン様にはこれから一か月の間守護騎士となるミア様の周辺護衛の仕事に就いて頂きます」
「つまり、仲良くなって守護騎士に名乗り出る名目を作れってことか。
それはわかった。
だが今そのミアは皇帝の娘と言う扱いになってないんだろ?
じゃあ俺はどういう名目でその娘に近づけばいいんだ?」
「それを考えるのがあなたの仕事ではないんですか?」
仲良くなれ! ただし方法は任せる。そんな馬鹿な……。
食パンでも加えながら廊下を走ってぶつかれと言うのだろうか。
ちなみに廊下で走ってぶつかるのはおすすめしない。相対速度も相まってお互い大ダメージを食らうからだ。
なんならその後仲良くなるどころか、相手の顔にケガをさせて遺恨を残す可能性も高い。
「いやいや、せめて何かこう……とっかかりみたいなものだけでもなんとかならないのか?
いきなり騎士団長が平民と仲良くなろうとし始めたらおかしいだろ」
「騎士団長ともあろうものがそれくらいのこともできないなんて……。
仕方ありません。では、よくいそうな場所とかはこちらで調べておきます。
それと宮廷画家に書かせた似顔絵を渡しておきますので、しっかり覚えてください」
そう言って一枚の絵を渡された。
そこに描かれていたのは笑顔の少女だった。
そう長くはない髪の毛をサイドでまとめている。まだ大人になりきってない少女としての可愛さがあり、体つきはまだ子供と言ってもおかしくないほどだった。
将来美人になるのかもしれないが、今はまだ可愛らしい少女。その範疇を出ない、そんな姿。
こんな妹がいたら、兄としては楽しかったのかもな……と前世の妹を少しだけ思い出すがやめた。
あれは妹ではなかった、そう思うことにした。
これが、ミリアリス・ルクス・エルツベルガー……今はまだ平民だからミアか。
俺がやったのは1作目だけだけど、こんな少女が世界破滅を防ぐために行動しないといけないなんてと思うと、とても不憫に感じられた。
それから一か月後、俺はとある平民の学校に向かっていた。
どうやらミアは今その平民の学校で勉強をしているらしい。
俺は市井を見回ると言う体で、その学校に一か月の間勤務することになった。
本当の目的はそこでミアと出会い仲良くなり、ミアの守護騎士となることだ。
俺が学校に辿り着くとすぐそこにいる生徒全員が集められ、学園長によって俺を紹介される。
「顔を見たらわかる者も多いと思うが、こちらのお方は15歳と言う若さで帝国の初代騎士団長になったリオン・ルタ・ヘリング様だ。
これから一か月の間、この学校付近で騎士としての任務をされる。
皆リオン様の邪魔をしないように」
「今紹介されたリオン・ルタ・ヘリングだ。
俺は実際には貴族ではないし、平民に対して差別意識などもない。
だから学園内で会った時は気軽にリオンと声を掛けてくれ」
出来るだけクールに、そして最後に軽く微笑んで大人っぽさを出したつもりだが……。
俺には似合ってない。昨日の夜もちょっとだけ鏡の前で練習をしてみたが、ブレイブに爆笑されただけだった。
なのであまり長くは続けずにそれだけ言って下がった。
先日見たミアと同じくらいの年の娘達がキャーキャー言ってくれていたことだけは少し嬉しかったけれど、俺の精神年齢は実際には実年齢の二倍以上ある。
よってこの年頃の娘さんたちにキャーキャー言われても……まあ少しだけ嬉しいのは違いないな。
その後、いつものメイドにあってミアがよくいる場所の統計結果を渡された。
統計結果と言うことは何日も何日もストーカーしていたと言うことに違いない。
たまにこのメイドが怖くなる。
「どうやらミア様は主に屋内にいるみたいですね。
元気そうな見た目とは逆に、あまり体調がよくないそうです。
ほとんどが保健室と言う名の彼女専用に近い勉強室に、図書室だそうです。
ベッドで寝ている時に、たまに外で遊んでいる他の子供たちを見てはとても悲しい顔をしています。
また、たまに母親が恋しくなるらしくお母さんと言って泣いて」
「暗いわ! 話が暗い!」
メイドがどれだけのことを調べたのかがよくわかるけれど、だんだん統計結果ではなくただ彼女の辛い状況を説明するだけになっていった。
「まあそう言うことです。
なので、出会うのであれば保健室か図書室ですね。
後はお任せ致します」
保健室に図書室か……俺とは縁が遠い場所にしか思えないがこれも世界のためだ。
漫画の一冊でもあれば喜んで通うのだけどな。
メイドから書類を受け取った後、早速図書館に向かってみた。
いきなり今日出会えるかはわからないが、場所くらい覚えておいても損はない。
そう思って図書室のほうへ向かう。
図書室は学園の中でも一番端のほうにあるらしく、保健室からは結構遠い位置にある。
体調が悪いのに保健室と図書室を行き来するなんて大変だ。
そんなことを考えながら図書室のドアに手を掛けようとしたときだった。
「ゲホッ、ゴホッ」
中から、ただの咳でない音をさせている人がいるのに気づいた。
とても苦しそうですでに床に倒れている。
「大丈夫かっ」
近寄って声を掛けると、ミアはうつろな目でこちらを見た。意識はしっかりとあるようだ。
「騎士様……大丈夫とは言えません。
騎士様のような方にこのようなお願いをするのは申し訳ないのですが……保健室まで……連れて行って……ゲホッ」
「わかった。喋らなくていい」
俺はすぐにミアを抱きかかえると、あまり揺らさないようにして保健室まで運んだ。
ミアとフィンとの出会いは細かく書かれていませんでした。
フィンは前世にミアに似た妹がいて、ミアをどうしても助けたいと言う気持からミアに接触しましたがリオンはどうするでしょうね。前世の妹が違いすぎますのでw