リオンとブレイブ   作:駿州山県

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一週間毎であれば問題なく更新できそうです。
と言うことでお待ちいただいてた皆さま、23話更新です!
え? 待ってないって?


23話

 

いつもより早く巡回を止めて保健室を訪れると、ミアが本を読んでいた。

昨日の苦しみはもうないようで安心して中に入る。

 

「リオン様っ」

 

俺が入ってきたことに気づいたミアが呼んでいた本をパタンと閉じた。

 

「元気になったみたいだな」

 

「はいっ。

 今までこんなに元気になれたことありません。

 騎士様がくれた薬のおかげなんですよね?」

 

「ああ、そうだな。

 ただあの薬は常用できるような類の物じゃ、ないんだ。

 本当に困った時はあげられるが、普段から準備できる物でもなくてな……」

 

昨日のブレイブと話したことを思い直しながら、1つ1つ言葉を選んで伝える。

 

「ですよね……。

 大丈夫です! 今までもっと苦しい思いをしてきたんです。

 あの薬のおかげで体調が一時的によくなっただけでも嬉しいんですよ。

 だからそんなに悲しそうな顔をしないでください」

 

逆にミアに慰められてしまった。前向きに考えることができているし、本当に強い子だと思う。

 

「それと……昨日見たあの黒い球の……」

 

急いで薬を渡そうとしたことでブレイブの存在を見られてしまっていたようだ。

失敗したと思った。しかも意識を失う前に幻覚を見たんじゃないかと言いくるめれる気がしない。

それにミアは賢い子だ。もしそんな言い回しをしたら自分には伝えることができないことなんだと理解して、追及してこなくなってしまうだろう。

せっかく少し仲良くなれたのに溝を作ってしまいかねない。

ブレイブ、と念和で伝えると隠れていたブレイブが出現する。

 

「あ~あ、バレちまったな」

 

出現したブレイブはいつもの黒い球が触手を纏っているような姿をしていた。

少し不気味だが、どうやらミアはブレイブに対して特に不気味だとは思ってもいないようだ。

 

「ありがとうございます! あなたにもお礼が言いたくて。

 お名前を伺っても?」

 

「俺様か? 俺様はブレイブってんだ」

 

「じゃあ、ブーくんですね。

 お薬ありがとうございました。

 これからもよろしくね、ブーくん!」

 

「なんで俺様だけブーくんなんだよっ。

 なんとかしてくれよ相棒」

 

ブレイブから助けを求められたが、俺はブレイブとミアのやりとりが面白くてただ笑うだけだった。

その後数日経ちミアの体調は完全によくなり、外出もできるくらいに体力が戻った。

俺はミアと約束した通り外出に連れて行った。街に連れていくと、そこで会った多くの者から騎士団長様と囲まれることになった。

以前の騎士団はひどかったが、騎士の名誉を回復した立役者の俺への態度はとても良いものだ。

 

「騎士様はみんなから慕われてるんですねっ」

 

ミアは俺のことを自分のことのように喜んでくれる。それが俺としても嬉しかった。

それから数日後、ミアはまた苦しみ出した。しかも外出中にだ。

俺はすぐにブレイブに薬を出してもらい、ミアに投与する。

薬を飲ませるとすぐにミアの苦しみは止まったが、苦しみは相当のものだったようで以前の時のように寝てしまった。

苦痛に歪んだ顔が今で安らかな寝顔だ。しかし結構な汗をかいていて、それがどれだけ苦しかったのかを俺にも理解させる。

その日の夜、俺は例のメイドに言伝を頼んだ。内容はもちろんミアの守護騎士になる件だ。

本来であればもっと仲良くなってから守護騎士になろうと思っていた。

だが俺がいない状態でミアがまたあの苦しみに苛まれるかと思うと胸が苦しくてたまらなかった。

俺が守護騎士として近くにいれば、なるべく苦しい思いをさせてやらずにすむ、そう考えてのことだ。

 

「相棒の気持ちはわかる、まあ仕方ないよな。

 俺様もミアのことは心配だ」

 

ブーくん呼びも慣れたのか、ブレイブもミアのことを親身に心配しているようだった。

そしてさらに翌日の夜、メイドを経由して皇帝からの返事がきた。

 

「皇帝陛下からの言伝を伝えます。

 騎士リオンがミリアリス様、もといミア様の守護騎士になることを了承するとのことです。

 一ヵ月以内に留学の旨連絡をするので、留学させる理由についての口裏合わせを行います。

 騎士リオンは明日の夜、いつもの場所に来るようにと」

 

俺が守護騎士になったことで、以前に皇帝から頼まれたミアと一緒に留学に行くことがようやくできるようになった。

だが問題は、なぜミアが留学に行く必要があるかだ。

そもそも今まで体調が悪く、外出がろくにできないような人間を留学に行かせる理由がない。

そんなことを伝えられれば本人も間違いなく疑問に思うだろうし、留学に行くべき人間が行ったほうが良いと言うだろう。

そのための口裏合わせが必要になる。

俺は翌日の夜、いつもの応接室へと向かった。

そこにいたのは皇帝といつものメイドのみだ。

 

「やあ。どうも上手くいってるようで何よりだ」

 

「こっちとしてもミアを放っておけないんでな。

 それよりどうするつもりだ?」

 

俺は早々に本題に入ろうとした。

口裏合わせが必要とメイドが言ったのだから、おそらく皇帝にはすでに何かしらの考えがあると思ったからだ。

 

「随分と急いでいるな、まあ良いだろう。

 わしはお前……リオンを理由に使わせてもらおうと思っている」

 

「俺を理由? どういうことだ?」

 

「お前もわかっているだろうが、留学するのはミアだと言うのは無理がある。

 本当に留学するのはリオンであることの方が納得させやすいのだ。

 リオンは王国を調査すると言う目的で留学することにする。ミアはそのついでだ」

 

俺はまだ若い。実際に俺と同じ年齢で学園に通っているものは数多くいる。

ミアが留学するよりは俺が留学するということのほうが何の問題もない。

 

「そういう体でミアを留学させるのはわかった。

 だけど今度は逆に対外的にはミアを留学させるついでに俺が一緒に行くと言うことにするわけだな?」

 

「そう言うことだ。

 さっきの話はあくまで帝国国内でのこと。

 王国相手には、ミアを留学させるついでにお前が守護騎士としてついていくことにする。

 守護騎士は帝国の風習だしな。仕方ないと納得させるのはたやすいだろう。

 王国としても今は帝国と争っている場合ではないからな、お前が騎士だとしても受け入れることで関係を良好させられると思えば喜んで受け入れるだろう」

 

「わかった。

 ミアからは俺から伝える必要があるな」

 

「ああ、そうだ。

 ミアにはお前から伝えて欲しい。

 メイドからの報告でも、どうやらミアはお前を慕っているみたいだからな。

 そうそう、1つだけ言っておくがミアに手を出すなよ?

 そんなことしたら帝国皇帝の全権利を使ってお前を地の果てまで追い込んでやるからな」

 

いきなり皇帝が恐ろしいことを言う。

そもそもこいつがミアと親しくなれと言ったのだ。俺にそのような気持ちがないにしても、そんなことを言われる筋合いはない。

 

「怖いことを言うなよ!

 って言うか、公私混同させるな!」

 

「私は皇帝だ。

 皇帝の言うことなら、たとえそれが私事であっても公事にもなる」

 

「わかったわかった。

 安心しろ。俺にその気はねーよ。

 って言うか、何かを頼む相手に何を言い出すんだまったく……」

 

俺はもうこれ以上会話するのはごめんだと思い、席を立って応接室を出る。

 

「よろしく頼んだぞ、守護騎士」

 

帰り際にそう言われて俺は応接室を去った。

全くおそろしいじじいだ。

翌日、俺はいつものようにミアに会いに行った時に守護騎士になることを告げた。

 

「守護騎士?」

 

「守護騎士って言うのは、帝国の上級騎士だけが持つ権利だ。

 一人を選んでその人の事を守り続けることを約束する。

 つまり選んだ相手に付き添うということだな。

 ミア、俺はお前の守護騎士になることを誓おう」

 

「え? 私の……守護騎士……?

 えっ、えっ。リオン様が私の守護騎士ーっ?!」

 

ミアは驚いていたが、俺が見る限り嫌と言う感じてはなくてうれしそうな感じだった。

 

「その、本当に私なんかで良いんですか?

 騎士様ならもっとふさわしい貴族令嬢とかが……」

 

「前にも言ったと思うが俺は元平民だ。

 確かに今は騎士団長と言う立場だが、貴族は血筋を尊ぶ人種だからな。

 俺なんかの守護を喜ぶようなやつはいないだろうよ」

 

「若くして帝国最強の騎士団長が人気ないわけないじゃないですかっ。

 この学園内でだって、リオン様の姿を見るだけでキャーキャー言ってる女性がたくさんいるんですよ?

 気づいてないかもしれませんが、学園の外にたまに貴族令嬢が乗ってる乗り物が来てますからねっ」

 

「そう言えば、たまに騒いでいる集団がいるなと……」

 

「ミア、相棒はそういうの鈍感だから何言っても駄目だぜ」

 

ひどい言われようだ。そもそも騎士になるまでモテたことなんてなかったんだから仕方ないだろと言いたい。

 

「でも、嬉しいですっ。

 これからもよろしくお願いしますね」

 

ミアには守護騎士のことを了承してもらえた。

その翌日から、俺はミアの守護騎士として動くことになった。

とは言ってもやることは変わっておらず、ミアを外出に連れて行くだけだ。

外出に連れていくこと=街の警邏のような形になっていて、ミアもそれに同行できてうれしそうだった。

そして守護騎士になることを了承してもらった日からきっちり一週間後。

軍部経由で皇帝から手紙が届いた。内容は帝国への留学の件だ。

俺はそれをミアに伝える。

 

「つまり本当の目的はリオン様の留学なんですけど、それをカモフラージュするために私の留学に騎士様がついてくることにするって言うことですか?」

 

「ああ、そう言うことだ。

 王国相手には、俺は守護騎士としてミアについて留学すると言うことになる。

 帝国の風習だから仕方ないという形だ」

 

「えっと……私なんかが騎士様のお役に立てるのであれば、喜んで受け入れます!」

 

今まで体調がずっと悪かったせいで、誰かの役に立てたことなんてなかったんだろう。

役に立てることが嬉しいかのように、ミアは受け入れてくれた。

しかし俺はミアを騙すことが心苦しかった。

だけどこれはミアのためでもあるんだ。決してミアの人生を悪くするわけじゃない。

そう思うことにして、ミアに留学してもらうことを納得してもらった。

 




原作との間をようやくカバーできました。
次からは原作と同様、ミアが留学する話になります。
簡潔よ停の30話まで後7話!
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