忙しいところに研修が重なって時間がとれませんでした。
なので、できるなら今日2話更新しちゃおうかと思います!
帝国から王国に出ている定期便の船に乗り込んだ俺たちは、ホルファート王国の地を踏んだ。
ここがあのホルファート王国かと思うと、なんとも微妙な気持ちしか出てこない。
何せ俺はこの国を基にしたゲームのせいで死んだも同然だ。
いい思いを抱いているはずなどない。しかも今後アルトリーベ一作目に出て来るやつらと顔を合わせるかと思うと一層嫌な気持ちになるのだ。
だって考えても見て欲しい。どうして男の俺が好き好んで自分よりイケメンの男共に顔を赤めさせられながら愛を囁かれないといけないんだ?
そんなことを思っていたら、同じように船から降りたミアから声を掛けられた。
「騎士様っ。王国ですよ王国っ。
私、あの町から出たことさえなかったのに、他の国に来ているなんて今だに不思議な気分です」
ミアはあの後、定期的にブレイブの出す薬を飲んでいることもあって健康的になった。
運動もできるようになり、本来の性格だろうお転婆が見え隠れするようになって嬉しい。
「(ブレイブ)」
隠れているブレイブに念話で声を掛けると、ブレイブが辺りを探知してくれる。
「(大丈夫だぜ相棒。どうやら敵意を持ったやつどころか隠れてるやつさえいない)」
ブレイブから大丈夫と言う言葉が聞けてホッとした。
その場で待っていると、王国から俺たちを迎えに来たらしい者に声をかけられる。
「帝国からの留学生、ミア様と騎士のリオン・ルタ・ヘリング様ですね?」
「ああ。俺がリオン・ルタ・ヘリングだ。
貴殿は?」
「若くして帝国の騎士団長となられた騎士殿に敢えて光栄です。
私は学園長のルーカスと申します」
美しい所作で礼をした男性は、なんと学園長だった。
アルトリーベ1作目には学園長なんて、学園長と言う言葉でしか登場しなかったのでどんな人物かは知らなかったのだが……。
若い頃はさぞモテただろうと言う
「学園長自らの出迎えとは……感謝いたします」
「ありがとうございますっ」
俺が挨拶をしているのを見て、ミアも急いで近寄ってきて学園長に挨拶した。
皇帝から聞いているがこのルーカスと言う学園長。実は現王の兄らしい。
弟より優秀であるのに、王位を継がなかった変わり者だという話だ。
当然能力は高いらしく侮ることはできない相手だ。
「いえいえ、これから私の学園の生徒となるお二人を迎えるのですから当然のことです。
まあ本当は我が国も人出が少ないからこうして私が出向くことになったのですがね。
まあせっかくですから話は馬車の中でしましょうか」
どうやら学園に向かう馬車の中で話をすることになりそうだ。
空を飛ぶ船で国家間を移動しながら、王都の中は馬車で移動するなんてまた変な話だ。
だが所詮ゲームの世界の話なのだからでたらめなのは仕方ない。そう思ってミアに手を貸して馬車への搭乗を補佐する。
「ありがとうございます、騎士様」
ミアが照れながらそう告げた。
「ミスタリオンはとても紳士ですね。
帝国の騎士と言うのは皆が皆ミスタリオンのようなのでしょうか」
席についた俺にルーカス学園長がそう言う。
「そう言うわけではないですね。
帝国の騎士と言えどピンキリです。
今は改革がされて皆が皆紳士になるようにしていますけどね」
騎士トレヴァー主導の元、という言葉を敢えて言わずに告げる。
目の前のルーカス学園長は笑顔でうんうんと頷いている。
「ところで王国はここ数年で戦争があったとか。
情報としては聞いていますが、今はもう安定しているのでしょうか」
「ファンオース公国とのことですかな。
他の国にも知られていることですから、隠しても仕方ないですな。
あの戦争は、我が国の聖女と若き英雄たちによって無事解決されましたよ。
まだ若いあの者達が今後国の中核を担うことになれば、王国は安泰でしょうな」
聖女とは間違いなくオリヴィアのことだろう。
ゲームの中でもオリヴィアは聖女と呼ばれていた。聖女専用の装備をすることで魔法の能力は各段にアップし、そして何より聖女の力をもってすれば間違いなく1作目のボスは倒せるはずだったし。
「聖女ですか……。
相当な力を持っていそうですね。一度お会いしてみたいものです」
「それならば学園に行けば会うことができましょう。
聖女は平民の出ですからな。
学園でのあなたたちの補佐役を頼んであります。
他の者では、あなたたちを虐げかねませんのでね」
聖女オリヴィア。ゲームとこの世界とでどれだけの違いがあるかはこの目で確認しなければならないと思う。
さすがにあまり王国のことに突っ込んでは怪し前れてしまうと思い、残りはミアに質問はあるかと聞いたり、学園内のルールの様な物を聞いたりして過ごした。
そして、ようやく学園についた。
馬車を降りて学園を見ると……そこには豪華絢爛な建物があった。
ゲームで見たアルトリーベそのままだ。
帝国の学園は必要最小限の衣装しか凝らしていないのに対し、こちらは王城かと思えるほど衣装の凝った造りが多くされていた。
「わぁ……ここに通うことになるんですね」
学園を見たミアが感動に目を潤ませている。
ミアは体が弱かったし、学園ではまともに友人を作れていないようだった。
こうして王国の学園に留学できるようになったのは、ミアに新しく友人を作って欲しいということにも違いないと思う。
ミアは性根の良い子だ。所属する国が違ってもきっといい友人ができることを祈りたい。
「あなたたちが学園に留学する方々ですか?」
馬車を降りて学園を見ていると声を掛けられる。
そこには……アルトリーベ1作目のヒロインがいた。
ゲームの中ではお花畑満載だったが、こう見るとそうは思えない。
ただの可愛い女性と言った感じだ。ただし胸はでかい。
「帝国騎士で、こちらのミアの守護騎士であるリオン・ルタ・ヘリングです。
貴方は?」
すでに知っていると言うのはおかしいので、敢えて名前を聞く。
「私はユリウス・ラファ・ホルファートだ。
お前が帝国の騎士か、一体何しに来た」
「殿下っ」
しかし返事をしてきたのはオリヴィアと俺の間に割り込んできた、王国の第一王子であるユリウス・ラファ・ホルファートだった。
しかも威嚇までしてくると言うおまけつきだ。
王国の王子がオリヴィアについてくると言うことは、オリヴィアはユリウスルートを通ったのだろう。
「(相棒、近くに4人隠れてるぜ。襲って来るつもりはないようだが、気を付けておけよ)」
4人と言うのはおそらく1作目の他の攻略キャラたちのことなのだろう。
俺がプレイした1作目には帝国からの留学生なんて話はなかったからわからないけれど、ユリウスの護衛できたのか?
それとも……。
「わざわざ帝国から来られたのに威嚇するような真似をしてすいません。
ユリウスは聖女と呼ばれている私が害されないか心配してくれているだけなんです。
悪気はないので……どうか許してもらえたら嬉しいです」
「大丈夫です。ユリウス王子の言葉でわかりました。
あなたが有名な聖女様なのでしょうから、心配が過剰になるのも当然でしょう。
しかし私は今武器も持っていませんし、私が守護するミアを危険に晒すようなことは致しませんよ」
近くにいるミアは、王国王子と聖女の組みあわせに緊張していてどうも話には入って来れないようだ。
「良かったです……。
それにしても、殿下も威嚇したらダメって言ったじゃないですか」
「オリヴィア、ユリウスと呼んでほしいと言っているではないか。
私はオリヴァアの思ってのことをだな……」
「ダメです。メッですよっ」
「悪かった。謝るから許してくれ、オリヴィア」
俺は何を見させられているのだろうかと思う。
急に威嚇してきたと思ったら今度はいちゃらぶを見せつけられている。
隣のミアだって急に雰囲気が変わったのでまた余計に緊張してしまっている。
「そ、そのだな……。
オリヴィア……殿は学園を案内してくれるために来たのだろう?
ルーカス学園長からそう聞いたのだが」
「そうでした!
話がそれてしまってすいません。
それと、オリヴィアで構いませんよ」
「大丈夫だ。
では、俺がオリヴィアを襲わないと言うのも少しは理解してもらえたと思う。
だからそこで隠れている4人に自己紹介を要求してもいいかな」
先ほどブレイブに言われた、隠れている4人の方向を見る。
イチャラブを始めたユリウス王子とは違い、ブレイブからは今だ4人は警戒を解いていないと聞かされていたので俺はそれを指摘する。
「えっ」
しかし当のオリヴィアはどうやら4人が隠れていることを本気で知らないようだ。
よって俺が隠れているやつらを睨みつけてやると、バレたので仕方ないと言った感じで草むらから出てきた。
「いやいや、まさかバレてしまうとは……」
緑色のやつだ。遠距離攻撃が得意で、もし俺を隠れて攻撃してくるならこいつだと思っていた。
確かユリウス王子の乳呑兄弟だった。
「帝国の騎士もなかなかやるな。そのうち手合わせ願いたいもんだぜ」
次は赤色。隠れていたことがバレていたというのに手合わせをしたいとは本当に脳筋だと思う。
なぜか抜身の槍を持っている。それ常に持ち歩いてるのか?
「……」
青色。メガネをかけた、沈黙の剣聖。
ファンオース公国戦ではかなりの活躍をして、若くして王国の剣聖になったはずだ。
「草むらなんかに隠れていたせいで髪の毛に葉がついてしまったよ。
僕の美貌が台無しだ」
紫色。ただのナルシスト……なわけがない。ナルシストには違いないが、こいつは魔法が得意だ。
ゲームでは撃たれ弱かったがなめてかかるわけにはいかない。
その4人が近づいてくる。隠れることはやめたが俺を警戒するのはやめていないらしい。
まさか、いきなり攻撃してくる気か? そう思って身構えた時だった。
「みんな! 謝って!
留学生を多数で脅かすとかどういうつもりなの?」
聖女オリヴィアは自分が知らされてなかったことに怒ったのか、それとも俺たち留学生を脅かしたことに怒ったのかはわからないが。5人に対して怒っていた。
「いや、これもオリヴィアのことを思ってだな……」
ユリウス王子が真っ先に弁解する。気持ちはわかる。帝国でも同じようなことがあれば、きっと俺がユリウス王子の役を買って出ることになっただろう。
「殿下の言う通りです。
ジャンケンで負けてしまい、隠れて警戒する役に回ってしまいましたが、あなたを心配していたのですよ?」
「そうだぜ。まあ俺がいればどんな相手でも平気だったけどな」
「あなたを傷つける輩など私が魔法で片づけていましたよ」
「みんな、謝って! 留学生の二人に謝って!」
どうやら5人はオリヴィアが本気で怒っていたことを見抜けなかったようだ。
再度オリヴィアに本気で怒られた5人はさすがにまずいと思ったのか、俺とミアに素直に頭を下げて謝った。
しかし……5人がオリヴィアの言うことを素直に聞くと言うことは、これってもしかしてユリウスルートじゃなくてハーレムルート?
こいつ、清楚な感じを出しながらハーレムルートを通ったのか?!
俺は今日一番驚いていた。
ちなみにミアは何が起きているかわからずただ茫然としていた。