「頼みがある」
「聞こう」
翌日、俺は殿下たち5人に声をかけた。
理由は王国のダンジョンを攻略するためだ。
ミアがずっと前からミアが体調不良であることを告げ、ダンジョンで戦ううちにミアの体調がよくなっていったことを伝えた。
「ミアの体調に影響をする何かがあのダンジョンにあるのではないかと踏んでいる。
もっと奥……ダンジョンの最下層には何かあるのではないかと」
「ダンジョンでモンスターを倒すと体調がよくなる?
そんな話聞いたことありませんね」
「リオンは嘘をついてるようには見えない。
リオンは信用に値するやつだ」
「そうだな! リオンは悪いやつではないぜ」
「僕もそう思うよ。
モンスターを倒すと体調がよくなることは聞いたことがないけれど、実際に僕たちも目にしていたからね。
ミアの調子がよくなっていくのは感じていたよ」
「そうだな。
あのダンジョンはオリヴィアの聖女のアイテムがあったダンジョンだ。
もしかすると他にも何かあるのかもしれない」
俺たちが潜っているダンジョンはゲーム内で聖女のアイテムが見つかるダンジョンでもある。
ファンオース公国を無事退けていると言うことは間違いなく聖女のアイテムは回収されたはずなので、こいつらもオリヴィアと一緒に入手したのだろう。
王国としてはある意味神聖なダンジョンなわけで、であれば不思議な効果の1つや2つあってもおかしくないと思ってもおかしくない。
皇帝から聞いた話はゲームの攻略情報であるから間違いはない。
「じゃあ、協力してもらえるのか?
どこまで潜ることになるのかわからないが……」
「聖女のアイテムを手に入れた階層よりは深く潜る必要がありそうだね」
「ちょうどいいぜ。最近体がなまって仕方なかったんだ」
「良い機会だ、俺たちの実力を見せてやろう」
「そうだな。事前に母上に了承も取り付けておこう」
「では殿下私は先に動いておきますね」
「ああ、頼む」
ゲームではあまり役に立たないと思っていたのに、これほど頼りになるとは。
あのゲームはそもそも鬼畜設定であったし、子供の頃から英才教育を受けているだろうことを考えればこいつらが優秀なのは当然なのかもしれない。
その後、俺たち6人はダンジョン攻略についての打ち合わせを始めた。
殿下たち6人は聖女のアイテムを回収したところでダンジョン攻略を止めていたようだ。
ダンジョンの攻略は学園の卒業に必須なのだけど、聖女のアイテムはその攻略階層より先にあったのでそれ以上は不要と感じていたようだ。
だがその先に行くのであれば、それまでの階層は難なくクリアするくらいでなければならない。
しかも、今回はそれほど強くないミアを守りながらと言うことになる。
よってそおに辿り着くまでにあったほうが良い魔道具や補助アイテムなんかをあげていった。
「結構な量だな……頼んでいるのは俺だ。
何かあったらこちらで用意する」
「何言ってんだリオン!
水臭えな。俺たちにも頼れよ」
「そうですよ。
殿下なんてリオンくんたちと一緒にいない時でも、彼らは学園で困っていることはないだろうかと心配しているんですから」
「おいジルク、そういうことはこういう時に言うものじゃないだろ!」
「殿下ってはほんと照れ屋さんだよね。
「そう言うことだ。
それに使わなければ武器ももったいない。
せっかく黒騎士から奪った武器を改良して作ったのだからな」
「お前ら……ありがとな」
嬉しくなって下を向いてしまったら、すぐさまグレッグが俺に腕にかけてきた。
「良いってことよ!
俺たちがお前を気に入った。理由はそれだけで十分だ!」
数日かけてきっちり準備をして、ようやく次のダンジョンの日が訪れた。
もうすでに初日に説明を終えているため、この日は各パーティごとに自由行動が許されている。
数時間だけ潜るものもいれば、丸一日ダンジョンに挑む者もいる。
そして俺たちは朝早くから出発して完全攻略を目標にしていた。
「良いか、俺たちが考えた作戦はこうだ。
いくら俺たちが強いと言っても何度も何度も雑魚を倒していてはさすがに疲れる。
よって、男性6人……主に2人ずつでコンビを組んで代わる代わる敵に当たる。
疲労回復はポーションとオリヴィアの魔法頼りだ。
ミア、君には申し訳ないがみんなの補助を頼む」
「皆さん、疲れたらいつでも言ってくださいね!」
「わかりました! 皆さん私のためにありがとうございます。
お役に立てるよう頑張ります!」
合計8人のパーティでダンジョンへのアタックを開始した。
ダンジョンにアタックするときは当然一番大変なのは先頭の二人だ。
他の四人は基本的に休憩をメインにして、軽く索敵をする形になる。
もしどうしても危うい時があれば、俺はブレイブを使うつもりでいた。
ブレイブの存在が殿下たちにバレても仕方ない。奥の手を隠していたとでも言うしかないだろう。
最優先はミアの体調回復なのだから。
最初に先頭に立ったのはグレッグとブラッドだ。
接近戦に強いグレッグに、後方支援に優れたブラッド。二人の連携はなかなかのもので、互いに邪魔にならないように動いている。
グレッグはダンジョン用に専用の槍を準備していたようでいつも持っている槍とは別のものだった。
ブラッドの魔法の操作もとても上手く、グレッグに当てることなく敵を殲滅していく。
おかげで最初の数階は簡単に進むことができた。
「次は私達だな」
その次から先頭に立つのはクリスとジルクだ。
クリスの洗練された剣技はとても学生の者とは思えない。さすがゲームであれほど苦労した黒騎士を倒したと言うだけだる。
クリス一人で倒したわけではないと思うが、他の4人が自分たちの功を言おうとしてないのをみればわかる通り一番活躍したのはクリスなのだろう。
剣技の片手間、時折片手で扱う銃を使っては難なく敵を倒していく。
ジルクはクリスに向かう敵がなるべく一匹ずつになるように中距離用の単発銃で敵を倒していく。
時折魔道具を使って敵の邪魔をしたりと、敵に回したらおそろしいことばかりしていて正直味方で良かったと思えた。
多少の怪我はあったものの、特に問題と言う問題もなく階数を増やしていった。
最初の方の5馬鹿+リオンの会話ですが、どれが誰のセリフかわかるでしょうか。
一応わかるように区別をつけたつもりですが・・。